美意識を聴かせるユーロ・ジャズ
ちょっと遅めの新譜紹介です。黒々ヒップホップの後にこれでは説得力に乏しいのですが、雑食な私ならではということで[笑)。
ラーシュ・ダニエルソンの『Liberetto』(2011年rec. ACT)です。メンバーは、ラーシュ・ダニエルソン(b,cello,wulitzer piano on#8),ティグラン(p,vocals on #7)、ジョン・パリッセリ(g)、アルヴェ・ヘンリクセン(tp)、マグヌス・オストロム(ds)です。メンバーの組み合わせが面白そうなので購入。
ラーシュ・ヤンソン・トリオでベースを弾いていたダニエルソンに、フューチャー・ジャズ音響系トランペッターのヘンリクセンに、e.s.t.のドラマーだったオスオトロムに、アメリカで活動するティグラン(アルメニア出身とのこと)というちょと畑が違う人達が集まって、どういうサウンドを構築するのかに興味がありました。
聴き終えてみたら、ピアノ・トリオでの演奏を中心に、曲によってはトランペットまたはギターを入れ、北欧の美メロ系演奏にフューチャー・ジャズ系新風味や高いテンションを程良くまぶしたものになっていました。じっくり落ち着いて聴ける内容です。
曲はダニエルソンが8曲、ティグランが2曲、ダニエルソンとティグランの共作が1曲、アルメニア民謡が1曲という構成で全12曲。時にクラシックやエスニックを感じるヨーロッパらしいものです。このアルバムを買う人は誰も期待していないと思いますが、ブルージーなジャズではないことを一応言っておきます。少しずつ表情の違う曲が一連の物語のように流れていく展開。
1曲目こそニルス・ペッター・モルヴェルのようなフューチャー・ジャズ系の演奏になっていますが、他はそういうものではありません。2曲目のタイトル曲なんて日本もしくは韓流の恋愛ドラマのテーマ曲にピッタリで、私にとってはちょっと甘過ぎなのですが、他はここまで甘くないので許してあげます(笑)。んっ?10曲目も結構甘々ですね。まっ、許しましょう。
全編をとおしてティグラン(・ハマシアン)のピアノが素敵です。アリ・ホニックのスモールズ・ライブでこの人がピアノを弾いていましたがあまり印象に残っていませんね。甘いメロディーを丁寧に慈しむように演奏するだけでなく、e.s.t.のような高いテンションの演奏もあり、決して難解にならず美しさをたたえつつきっちり音を積み重ねていく様に説得力を感じました。
トランペットのヘンリクセンとギターのパリッセリはゲストのような感じです。ピアノ・トリオの演奏にバリエーションを与え一味加えてくれており、役目は2人ともきっちりこなしてくれています。全体を通してダニエルソンの美意識に筋が通っており、その世界をきちんと理解して深みのある演奏でサポートするティグランとオストロム。良いアルバムに仕上がっていると思います。
さすがACTレーベル、クオリティは高いですね。
アルバム名:『Liberetto』
メンバー:
Lars Danielsson (bass, cello, piano on #8)
Tigran(piano, vocals on #7)
John Parricelli(guitar)
Arve Henriksen(trumpet)
Magnus Öström(drums & percussion)
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コメント
こんにちは。
わたしも このアルバム聴きました。
甘いですか。
女性としては この甘い感じが好きです(笑)
ティグランのピアノ 良かったですよね。
美しい音の詰まったアルバムだと思います。
投稿: マ-リン | 2012年4月 8日 (日) 16時31分
マーリンさん
こんばんは。
>わたしも このアルバム聴きました。
おっ、なかなか良いですよね。
>甘いですか。
私には甘いものがいくつかあります。
そうでないものもあります。
>女性としては この甘い感じが好きです(笑)
分かります。
>ティグランのピアノ 良かったですよね。
はい、ティグランかなり気に入りました。
>美しい音の詰まったアルバムだと思います。
おっしゃるとおりです。
マーリンさんのブログへ遊びに行きますね。
投稿: いっき | 2012年4月 8日 (日) 19時22分
ダニエルソンのベースのスタイルをひきすぎ、って、いう人もいるんだろうなぁ。。
と、でも、ベースやチェロのソロでここまでドラマチックで感情移入できる人も少ないなぁ、、と。その表現方法が甘めなのはロマンチスト,って、ことで許してあげてください。(笑)
ティグランはここではあまり凄いことはしてないのですよ。
抑えてると思います。が、抑えても皆さん、凄いなぁ、って、感じルってピアニストです。ACTには、彼がベースで入ってたり、プロデュースで入ってたりするアルバムがたくさんあって、彼は看板ベーシストナノデスヨ。
って、日本ではこういうタイプのベーシストは本の一部の人にしか人気ないけど。(笑)
テなわけで、
投稿: Suzuck | 2012年4月10日 (火) 09時02分
あ、いっちゃった。
テなわけで、トラバありがとうございました。トラバいたしました。
投稿: Suzuck | 2012年4月10日 (火) 09時03分
Suzuckさま
こんばんは。
>ダニエルソンのベースのスタイルをひきすぎ、って、いう人もいるんだろうなぁ。。
そうですかね。
>と、でも、ベースやチェロのソロでここまでドラマチックで感情移入できる人も少ないなぁ、、と。
ベースそのものはユーロッパらしく重厚なベースを弾く人だと思います。
強いてい言えば音色がちょっと気になりますが。
>その表現方法が甘めなのはロマンチスト,って、ことで許してあげてください。(笑)
はいっ、私も一応ロマンチストなので許してます(笑)。
>ティグランはここではあまり凄いことはしてないのですよ。
尖がってはいないですよね。
>抑えてると思います。が、抑えても皆さん、凄いなぁ、って、感じルってピアニストです。
内に秘めているものが時々滲んできていて、「なかなかやるじゃん。」という感じで聴いていました。
>ACTには、彼がベースで入ってたり、プロデュースで入ってたりするアルバムがたくさんあって、彼は看板ベーシストナノデスヨ。
おおっ、そうでしたか。
私はまだACT初心者な部類なので知りませんでした。
最近はもう少し積極的にACTをフォローしようと思っていまして、これはそういう流れでの選択です。
>って、日本ではこういうタイプのベーシストは本の一部の人にしか人気ないけど。(笑)
意外と日本のジャズファンって頑ななところありますからね。
色々聴くチャンスを自ら消してしまっていてもったいないと思いますよ。
トラバありがとうございました。
投稿: いっき | 2012年4月10日 (火) 21時24分