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落ち着いた出来でなかなか良いです。

今日も新譜紹介。今回買ったクリスクロス・レーベル新譜の2枚のうちのもう1枚です。

P85 ダイナ・ステフェンズ『トゥデイ・イズ・トゥモロー』(2011年rec. CrissCross)です。メンバーは、ダイナ・ステフェンズ(ts)、マイケル・ロドリゲス(tp,fl)2,6、ジュリアン・レイジ(g)4,6,7、ラフィ・ガラベディアン(ts)3、アーロン・パークス(p)、北川潔(b)、ドナルド・エドワード(ds)です。2枚目のリーダー・アルバムらしいです。

これを買ったのはもうサイド・マンにアーロン・パークスとジュリアン・レイジがいたからです。比較的オーソドックスなバップ演奏をするこのレーベルでパークスがどういうピアノを弾くか聴いてみたかったのです。昨年出たゲイリー・バートン・カルテットのアルバムで好プレーをしていたレイジのギターも聴いてみたかったのです。レイジは残念ながら3曲にしか入っていませんでした。

1曲目はこのアルバム中唯一のスタンダード《スカイラーク》。私はこの曲が好きなので良い展開です。ステフェンズは擦れ気味の音で私の嫌いな”フガフガ”テナーの一歩前といった感じ。このくらいなら心地よく聴けます。スローでそろりそろりとテーマを進めて行きます。バックではパークスが心地よい音を配置していき、ベースとドラムが程よく煽ります。うむっ、これは大人な展開ですぞ。落ち着いた幕開けは悪くないです。ステフェンズさん、肩に力を入れるようなことはなく、落ち着いてソロを組み立ててます。続くパークスも大人やな~。

10曲中半分の5曲をステフェンズが作曲、色々なタイプの曲があり悪くはないです。パークスが2曲提供、他にはボサノバ曲?とジョー・ヘンダーソンの《ブラック・ナルシサス》に上記《スカイラーク》という渋い選曲。4ビートバップ曲、8ビートバラード、ボサノバなど色々な味がうまい具合に並べられていて幕ノ内弁当みたい(笑)。昨日書いたジョー・サンダースのような唐突な曲は入っていないのがよろしい。5曲がワン・ホーン・カルテットで、残り5曲にゲストが参加という配分も私好みのバランス感覚。適度に散らしながら頭から最後まで緩急流れがあるのも良いです。

ステフェンズの《レディオ・アクティブ・イヤーウォーム》は何となくユダヤ調の哀愁バラード。ガラベディアンとの2テナーでテーマ合奏と2人の掛け合いのみというのが面白いです。パークスのピアノ・ソロがこいういう曲に嵌りますね。ジョシュア・レッドマンらとの『ジェームズ・ファーム』で出していた雰囲気がここにあります。これっ、現代ニューヨーク・テイストの一つです。

《DE POIS DO AMOR, O VAZIO》はボサノバ調。レイジの哀愁スパニッシュ・ギターがいい味を出しています。ゲストがきちんと役割をこなしているのがいいですね。ステフェンズのテナーもなかなか聴かせてくれるじゃありませんか。スタン・ゲッツのスケールには及ばないものの、クールで大らかに振る舞っているところは買ってあげましょう。

ステフェンズの《ルーシー・グーシー》は何となく《フリーダム・ジャズ・ダンス》に似ているようないないような? オーソドックスな4ビートバップ曲。パークスのピアノ・ソロが先発してちょっと捻った解釈が知的。続くステフェンズもちょっと捻りがあるかないかくらいで王道展開のフレージングは安心して聴いていられます。北川潔のベース・ソロもあります。この人も特に小細工をせず王道なんだけれど存在感がありますね。現代バップ好演。

続く《ブラック・ナルシサス》はフリューゲルホーンとギターも交えて丁寧に綴ります。渋いっす。パークスの曲《ハード・ボイルド・ワンダーランド》は現代的浮遊感とクールな美メロの塩梅がいい感じの現代新主流派サウンド。ステフェンズもマーク・ターナー系フレージングでうねりつつクールに決めています。自分の曲なのでパークスのソロは現代性に溢れたカッコいいものです。

ラスト《カートゥーン・エレメント》もパークスの曲でちょっと幾何学的なテーマ。冒頭のピアノ・トリオ演奏が3者イマジネイション溢れるインプロビゼーションで、これを聴いちゃうとパークスのピアノ・トリオ・アルバムなんてのを聴いてみたくなりますね。サックスが加わってからもイマジネイティブに絡み、リズム・チェンジも決めつつ進んで、北川のベース・ソロが渋い光を放ってからエンディングという展開。

《スカイラーク》でゆったり幕を開け、ラストはインプロ強めの演奏でキリッと〆るあたりにプロデュースの良さを感じます。地味ではありますが、メンバーがいい仕事をしているこのアルバムを、私は結構気に入ってしまいました。

昨日のアルバムにしてもそうですが、こういう話題になりにくい人達を地道に紹介するところにクリスクロスの良心を感じます。一時期、80点のようなアルバムばかり作るクリスクロスを敬遠したこともありましたが、今はこういう活動を続けていってほしい気持ち一杯です。

評論家でもクラブで踊っている人達でもなく、こういうアルバムを聴いているようなジャズ・ファンこそが最後までジャズを支えて行くんだろうと思う今日この頃です。

アルバム名:『TODAY IS TOMOROW』
メンバー:
Dayna Stephens(ts)
Michael Rodriguez(tp,flh)
Julian Lage(g)
Raffi Garabedian(ts)
Aaron Parks(p)
Kiyoshi Kitagawa(b)
Donald Edwards(ds)

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コメント

実は私もサイドマンのクレジットを見て、ワクワクしてました。中身を確かめる前に、他の人からギターは3曲だけ参加、ということを聞いて、やっぱりちょっとガックリしました。

ただ、何人かが数曲参加ということで、ヴァリエーションが出て、色々なアプローチの演奏を聴くことができてよかったと思います。それと、アーロン・パークスはサイドながらやっぱりカッコいいですね。

リーダーはちょっと地味(渋め?)な印象もありましたけど、アルバムとしてはよかったでした。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2012年3月23日 (金) 17時43分

910さん

こんばんは。
ジュリアンにはせめて5曲入ってほしかったです。
とは言え、おっしゃるとおりヴァリエーションが増えるという意味でこの選択は正解だったと思います。
パークスはやっぱりいいですよね。
最近お気に入りのピアニストの一人です。
リーダーの味を上手く引き出したアルバムになっていましたね。
成功だと思います。

TBありがとうございました。

投稿: いっき | 2012年3月23日 (金) 19時54分

マークターナー好きなので聴いてみたくなりました。

クリスクロスは今でこそ超一流になった人たちも、若手時代から紹介している優良レーベルですね。

投稿: ああろん | 2012年3月24日 (土) 09時56分

ああろんさん

こんにちは。

>マークターナー好きなので聴いてみたくなりました。

マーク・ターナーほどのクールネスと個性はないのですが、なかなか良いテナー・マンだと思います。
聴いてみてあげて下さい。

>クリスクロスは今でこそ超一流になった人たちも、若手時代から紹介している優良レーベルですね。

マーク・ターナーとかシーマス・ブレイクとかその他諸々、初期の演奏がこのレーベルにありますよね。
おっしゃるとおり優良レーベルだと思います。

お名前が無かったコメントは削除させていただきました。

投稿: いっき | 2012年3月24日 (土) 12時13分

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