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今更ですが、『ブラック・レディオ』

もうほとんどほとぼりが冷めたと思います。今頃書いてもしょうがないかもしれませんが、やっと届いたので一応書いておきます。

P82 ロバート・グラスパー『ブラック・レディオ』(2012年、Blue Note Records)です。メンバーは、ロバート・グラスパー(p,rhodes,syn)、ケーシー・ベンジャミン(vocoder,fl,sax,syn)、デリック・ホッジ(b)、クリス・デイヴ(ds,per)、ヤヒ・サンダンス(turntables)、シャフィーク・フセイン(vo)、エリカ・バドゥ(vo)、レイラ・ハサウェイ(vo,additional vo)、ルーペ・フィアスコ(vo)、ビラル(vo)、レディシ(vo)、アンバ・ストローザー(lead and background vo)、アニタ・ブラス(lead and background vo)、パリス・ストローザー(aux keys)、ミュージック・ソウルチャイルド(vo)、クリセット・ミッチェル(vo)、ミシェル・ンデゲオチェロ(vo)、ストックリー(vo,per)、ヤシン・ベイ(モス・デフ)(vo)です。

たくさんのボーカル(ラッパー)を招いて作ったブラコン(ブラック・コンテンポラリー)と言ってしまいましょう。こういうアルバムを作ってR&Bチャートに乗せようという発想はハービー・ハンコック的ですよね。インタビューによれば、自分達のジャズをより多くの人に知って(聴いて)もらうきっかけにしたいみたいなことを言ってました。チャートをどこまで上がるかは知りませんが、意図は反映されているアルバムだと思います。

音楽そのものは、強くはないにしてもグラスパーの個性は発揮されていると思います。”ポロポロポロン”と奏でられるピアノの響きと曲想からは何となくアンニュイで儚い美しさがあり、こういうレイジーなサウンドは私の好きなテイストです。強烈な個性がないところが今時なんだろうと思います。今時のジャズを聴く際、聴く側はサウンドから微妙なニュアンスを聴き取ってあげないといけないと思いますよ。

ジャズという部分で見れば、アドリブ・ソロが少なくてあっても弱いことから、頑ななジャズ・ファンがつまらないと言うのも分かります。これもインタビューですが、今回はソロよりは作曲(編曲もだと思う)を聴いてほしいと言っていましたので、本人の意思を汲んであげるべきでしょう。コンポザーとしてのグラスパー、上記のとおり曲はなかなか良いと思います。

さて、私が何に一番惹かれたかと言えば、それはもうクリス・デイヴのドラミングです。最近すっかりヒップホップのブレイクビーツ好きになってしまった私にとって、このビートはかなり面白いです。ヒップホップを経由しなければ出てこないグルーヴです。音色もイコライジングしているみたいで、バスドラのファットでありながらミュートした感じ、シンバルの余韻をカットした人工感、スネアの響きとミュートの変な塩梅がかなり心地良いです。それからたっぷり入っている低音がオーディオ・ファンには魅力的。

トラックで言えば、好きなボーカリストのエリカ・バドゥが歌っている《アフロ・ブルー》が編曲も含めて一番気に入っています。ここでのピアノを聴くとハービー・ハンコックからの影響を強く感じますね。ビラルがラップしている《オールウェイズ・シャイン》はカニエ・ウェストがやっている内省性を持ったヒップホップに近い感じがして面白いです。ジャズ的にはピアノ・ソロが長めでメンバーのインター・プレーが感じられる《ホワイ・ドゥ・ウィー・トライ》が、アルバムの中では尖がりぎみの編曲も含めて気に入りました。一方タイトル曲は意識し過ぎで微妙な出来だと感じました。

ジャズの歴史においてどうとかこうとか言うようなアルバムではないと思いますが、現代ブラックミュージックとしてそのポップさも合わせて、評価して良いアルバムになっていると思います。あんまり肩に力を入れず自分達に出来ることやりたいことを自然体でアピールする現代ジャズ/フュージョンがあっても良いんじゃないでしょうか。

私の感想はこんなところです。

アルバム名:『BLACK RADIO』
メンバー:
Robert Glasper(p, rhodes, syn)
Casey Benjamin(vocoder, fl, sax, syn)
Derrick Hodge(b)
Chris Dave(ds, per)
Erika Badu(vo)
Lalah Hathaway(vo)
Bilal(vo)
yasiin bey(vo)
e.t.c.

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フュージョン・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
わたしも最近 「クオシモード」という ジャズじゃないような クラブ風ジャズ・バンドを知りまして ちょと今までと違った冒険をしています。
このアルバムも 似たような雰囲気(違うかな?!)があって おもしろそうですね。

今まで好んでいたものも聴きつつ いろいろ冒険中です。

投稿: マ-リン | 2012年3月19日 (月) 15時49分

マーリンさん

こんばんは。

>わたしも最近 「クオシモード」という ジャズじゃないような クラブ風ジャズ・バンドを知りまして ちょと今までと違った冒険をしています。

私は「クオシモード」はフュージョンと言い切ってます(笑)。
こんな風に書いてます。

http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-8cd0.html

ジャズファンを長くやってますと色々な思いがありまして。
m(_ _)m

>このアルバムも 似たような雰囲気(違うかな?!)があって おもしろそうですね。

おもしろいですよ。
現代ブラック・ミュージックとして推薦します。

>今まで好んでいたものも聴きつつ いろいろ冒険中です。

いいですね。
冒険することができるって幸せだと思います。

投稿: いっき | 2012年3月19日 (月) 20時16分

こんばんは。
そうでした。いっきさんのところでも このアルバムについて読んでいましたね、わたし。

なるほど インタビュ-ではグラスパ-そんな風に言っていたのですね。

こういった ブラックミュ-ジックっぽいジャズも なかなか良いですよね。
気分を変えて聴けるように 一枚はグラスパ-,もう一枚はビル・エヴァンスの過去盤と 2枚買う時は こんな組み合わせにしています。

エスペランサを買ったら 同じようなの2枚になっちゃうので。
でもエスペランサも良かったなぁ♪

投稿: マ-リン | 2012年5月10日 (木) 23時57分

マ-リンさん

こんばんは。
>いっきさんのところでも このアルバムについて読んでいましたね、わたし。
そうです。読んでいただいてました。
>なるほど インタビュ-ではグラスパ-そんな風に言っていたのですね。
そうなんですよ。本人も色々思うところはあるようです。
>こういった ブラックミュ-ジックっぽいジャズも なかなか良いですよね。
私は結構好きです。良い感じだと思います。
>気分を変えて聴けるように 一枚はグラスパ-,もう一枚はビル・エヴァンスの過去盤と 2枚買う時は こんな組み合わせにしています。
>エスペランサを買ったら 同じようなの2枚になっちゃうので。
正解だと思います。
私もかなりの期間、新旧混ぜて2枚という買い方を実践していました。
今になればそれがジャズを知るのには良かったんだと思います。
>でもエスペランサも良かったなぁ♪
そういう2択を繰り返しながらアルバムを選んでいくのが、音楽を吸収する糧になるんじゃないかと思います。
なんでも手に入れてしまうと音楽への愛着が薄れてしまう気がします。

投稿: いっき | 2012年5月11日 (金) 00時18分

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