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この人もヒップホップをやってました。重要作!

私はマーカスのアルバムの中でこれが一番好きなのですが、それがなぜなのか分かりました。ヒップホップをやっていたからです。私はヒップホップを聴いてきませんでしたが、以前からヒップホップのブレイクビーツは好きだったようです。なるほど、昨年からヒップホップを聴いて楽しい理由がやっと納得できました。

P81 マーカス・ミラー『テイルズ』(1995年、PRA records)です。メンバーは、マーカス・ミラー(el-b,syn,wurlitzer,org,key,b-cl,rhythm programming,sound programming,vocal samples,rhythm g,aflica flute)、バーナード・ライト(syn,org,clavinet,el-p,marimbas,funky synth lines,synth bass)、マイケル・”パッチェス”・スチュワート(tp)、ケニー・ギャレット(as)、プージー・ベル(ds,drum fills)、デヴィッド・”ザ・キャット”・ワード(sound programming)、ビリー・コズビー(vocal samples)、Q-ティップ(sporken intoroduction)、ザ・ポインター・シスタース(vocal sumples)、レニー・ホワイト(drum fills)、エリック・ゲイル(voice recording)、ハイラム・ブロック(lead guitar)、ジェイソン・マイルス(additional sound programming)、マイルス・デイビス(voice recording)、ジョシュア・レッドマン(ts)、ミシェル・ンデゲオチェロ(vo,synth solo)、バシリ・ジョンソン(percussion samples)、ビル・ウィザーズ(sporken intoroduction)、ジョー・サンプル(rap)、ロバータ・フラック(sporken intoroduction)、レイラ・ハサウェイ(vo)、ディーン・ブラウン(g)、ジュイス・アンド・ジュジュ(funky intoro)です。

とにかく各曲が凝っていて色んなところにちょろっとゲストが参加しています。Q-ティップも参加していたんですね。ジョー・サンプルがラップしてます。ミシェル・ンデゲオチェロ、レイラ・ハサウェイもいます。ラストの曲には2人の息子まで参加。きちんとしたコンセプト・アルバムになっています。

今聴いて思ったのですが、これはマーカス流ヒップホップです。で、完全にマーカスの音楽になってます。それこそアフリカから始まり黒人の歴史がこのアルバムに集約されています。アルバムの真ん中辺りに《奇妙な果実》のイントロとして詩の朗読が入っていたりして、ブラック・ミュージックというものを体現している感じです。マイルス・ライクなトランペットも随所に挿入され、マイルスの生前の声も聞けます。さすがは復帰後のマイルスを支えた当時先端最高ファンク・ベーシストです。

私はこのアルバムが出た時のジャズ・ジャーナリズムの反応を全く知らないのですが、ヒップホップまでを含んだ当時のブラック・ミュージック集大成という評価はきちんとされていたのでしょうか? その後でも良いけれどきちんと評価されたのでしょうか? 私は単にリズムの気持ち良さとベース音の快感から、オーディオ・チェックも兼ねてよく聴いていましたが、今聴くとそれだけでは済まされない重要なアルバムなのではないかという気がします。

この頃出たアルバムとして、私はハービー・ハンコックの『ディス・イズ・ダ・ドラム』、ブレッカー・ブラザーズの『アウト・オブ・ザ・ループ』、パット・メセニーの『ウィ・リブ・ヒア』を好んで聴いていました。いずれもヒップホップ・テイストを含むアルバムです。これらのアルバムについて書いた記事はこちら。

「ジャズ/フュージョン側のこんなヒップホップが好き!」

ちなみにこの記事は、中山康樹さんの「ジャズ・ヒップホップ・マイルス」に書かれているメセニーの部分にインスパイアしたものと思っております。特に私が書いたメセニーの《ザ・ガール・ネクスト・ドア》で、「ギターでラップしてますよね?」と書いた部分は、中山さんの「メセニーがこのアルバムで何をやろうとしていたか今になって分かった。」発言に繋がっているんじゃないかと思っています。com-post のロバート・グラスパーのクロス・レビューでも、最後にメセニーの件に触れてましたよね。

「ジャズ・ヒップホップ・マイルス」ではメセニーについて否定的に書かれているように受け取ったので、メセニーのこのアルバムが好きな私としては、”ムッ”としたことは言うまでもあありません。それでオタッキーなマッドリブ嫌悪へと・・・(笑)。

で、今回のマーカス・ミラーの『テイルズ』。ジャズ・フュージョン・サイドからのヒップホップへのアプローチとして、ロバート・グラスパーよりず~っと前にきちんとした成果を出していたことを私から指摘しておきます。で、マーカスはこの後6年を経て出した『M2』でもヒップホップ路線は残っていたのですがその後自然消滅?結局一過性のものだったみたいです。残念! 

そうそう言っておかなきゃ。《奇妙な果実》を入れていることや過去のジャズに関する繋がりをテーマとして扱っていることから分かるように、ここにはちゃんと「批評性」ありますから。そこんとこよろしく!(笑)

ということでいつものようにYouTubeから貼っておきます。

アルバム冒頭の《ザ・ブルース》。
タイトルからしてヒップ!

タイトル曲《テイルズ》。
マイルスがヒップホップをやっていたらもう一度マーカスと組んだのか?
この曲の前に短いイントロがあり、Q-ティップがヒップホップのことを言ってます。

そして《ヴィジョンズ》。
アコースティック・ベース(マーカスはエレベでこの音をだしているのか?)の使い方はア・トライブ・コールド・クエストあたりの使い方を逆輸入しています。この手のアコースティック・ベースはブレッカー・ブラザーズもメセニーもやってます。ヒップホップを勉強して始めてこの手のベースの使い方がどういう流れで来ていたのか分かりました。

《テイルズ(リプライズ)》
ジョー・サンプルがラップ?しています。
ジャズのファンクからヒップホップへの繋がりもきちんと解釈しています。
この映像は黒人公民権運動になってますね。フムフム。

以上を聴いても分かるとおり、ヒップホップを導入していますが、どこをどうとってもマーカスのサウンドです。ここが重要! ヒップホップを消化しているということなのです。今からでも遅くありません。このアルバムをきちんと評価しようではありませんか。こういう総括はジャズ・サイドにしかできないのですから。

もし万が一(笑)、com-postで「90年代の100枚」をやるのでしたら、このアルバムとメセニーの『ウィ・リブ・ヒア』は入れてやって下さいませ。m(_ _)m

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