« とうとうPCオーディオに足を突っ込んじゃいました。 | トップページ | DAC&PCオーディオ »

日本の耳年寄りジャズファンには届かない音だと思いますが・・・

ロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ』、Amazonから送られてくる気配なし(涙)。ということで、こんなのはいかがでしょうか?グラスパーの配信『BOOTLEG RADIO』と聴き比べると面白かったりします。
もうダウンロードできないみたいですが『BOOTLEG RADIO』はこちらで聴けます。
http://www.okayplayer.com/news/audio-robert-glasper-experiment-bootleg-radio-live-compilation-lp-stream.html

日本のジャズ・ジャーナリズムってこういうの取り上げてます?
ディスクユニオン1月度WEB、店舗スタッフ推薦盤。

P71 マーク・アイザ『ライブ・アット・ホーム』(2011年rec. FRESH SOUND world jazz)です。メンバーは、マーク・アイザ(ds)、ロジャー・マス(p,Nord Stage keyboard)、トム・ワーブルトン(b)、ヘリオス(turntables)、コア・リズム(vocals)です。アイザが出身地スペインに帰った時のライブが収録されています。タイトルなそんなところから付いたものです。

マーク・アイザは前作『オファリング』(2008年rec.)で知りました。このアルバムは高野雲さんのラジオ番組「快楽ジャズ通信」の年末の「タワレコバイヤーおすすめアルバム特集」でかかって、ジャジー・ヒップホップではないが近いもので面白いものとして紹介されていました。メンバーは今回のアルバムと同じでしで、ピアノ・トリオを基本にして曲によってはDJとラッパーが参加するという構成のグループ。「ロバート・グラスパー・エクスペリメント」と同じ頃に結成されたんでしょうかね?

リーダーのアイザはスペイン出身でニューヨークで活躍するドラマー。ジェイソン・リンドナーの人気盤『1,2,3,ETC.』でドラムを叩いているのがこの人。グラスパーと同じくヒップホップを標榜していますが、グラスパーが生粋のブラック・ミュージックなのに対して、こちらはスペイン人というのが面白いところです。

ヒップホップ的という意味ではDJとラッパーがいる点ですね。DJはスクラッチ系効果音とサンプリングによる効果音として使われていて、それほど目立つというわけではありません。ラッパーはどちらかと言えばジャズボーカルで言えばスキャット、音響として扱っているように感じます。そしてラップだけでなくスポークン・ワードの部分もあります。

ヒップホップ的という意味では展開していかないメロディーというのが重要です。ブレイクビーツの如くあるフレーズを繰り返して演奏し続けます。ここではラップの伴奏時にはそうなっています。このミニマリズムを面白いと感じられるようになったのは、私の場合、昨年からヒップホップを聴いてきたおかげだと思います。グラスパーの場合にも同様なものがありますね。

こういう展開していかないメロディーのルーツを辿ると、その線上にマイルスの《ネフェルティティ》が浮かび上がってくるのが面白いところです。更にラップ自体も抑揚はありますが、展開していくメロディーはないわけで、ヒップホップのメロディー的考察はあまりされていないように思いますが、私は展開していかないメロディーの快感が重要な点だと思っています。

ヒップホップのブレイクビーツという部分では、ドラムが刻むリズムは要注目点です。アイザの場合は、今時のドラマーですから当然ブレイクビーツや機械的なリズムの影響は受けているわけで、複雑なリズムを平気でこなします。傾向としてはドラムンベース系だと思います。高速ドラムンベースが炸裂する《エゴ・ダンス》は強烈ですよ。

メロディーについてもうひとつ指摘しておきます。ピアノのロジャー・マスが”ポロポロポロ~ン”と弾くフレーズ、これがグラスパーの弾くフレーズに似ているところがあります。こういうフレースが全体に散りばめられているところが個性的なのですが、この点に関してはグラスパーにも全く同様なことが言えます。このフレーズが醸し出す”響き”に注目。

そしてこのようなフレーズのルーツにハービー・ハンコックが浮かんでくるのがとても興味深いのです。マスのピアノ・ソロはハンコックの匂いがする時があります。グラスパーにも同じことが言えますよね。ヒップホップとハンコックのつながり、それがジャズ界に与えた影響。無かったと思ったのに今頃になって気になってきました。

独特なピアノのフレーズですが、これをエレピで弾いたらどうなるでしょう。マスはエレピも弾いています。グラスパーも同様。実はこれがマイルスの『イン・ア・サイレント・ウェイ』の中の《シュー/ピースフル》の中に散りばめられたエレピのフレーズに雰囲気が近いのです。あの時エレピを弾いていた中にハンコックがいますよね。

はいっ、メロディーということに注目すると、マイルスの『ネフェルティティ』『イン・ア・サイレント・ウェイ』が浮かんできます。これらにある”響き(サウンド)”に注目すべきだと思います。

このアルバムがジャズに強くつながっている点はピアノ・ソロ(アドリブ)がきちんとあることです。グラスパーの場合、あるにはあるんだけれどいまいち弱いのに対して、こちらはピアノがきちんと主張しています。そして哀愁ピアノ・トリオとして聴こえるところがユニークです。なので日本人のジャズ的視点から見ればこちらの方により親近感を感じるのではないでしょうか?

《アンダーカバー》が面白いです。最初と最後に”ヒップホップ、ヒストリア・ヒップホップ・・・”というサンプリングが入るのに内容はと言うと、スクラッチやラップのバックは哀愁ラテン・リズムのピアノ・トリオになっています。このハイブリッド感、お堅い頭には拒否反応が起こる事請け合い(笑)。私はこのセンスが好きです。中盤のピアノ・ソロだけ抜き出せば寺島靖国さんが喜びそうなピアノ・トリオになってます(笑)。

前に上げた《エゴ・ダンス》の、前半が高速ドラムン・ベースの上での強烈な繰り返し、中盤はペース・ダウンしてソフト・ソウル風という展開も面白いです。

《エール・フォー・ジャパン》という曲があります。このライブは昨年の4月22日、23日に行われていて、東日本大震災へのエールであることが分かります。こんなところからも日本にエールが送られていたというのが嬉しいですね。結構胸に迫る美メロの曲です。

ラストの曲《アンタイトルド》はヒップホップ色濃厚。ブレイクビーツに乗ってラップしてます。そこにマイルスの『イン・ア・サイレント・ウェイ』に連なるエレピが被さる展開。

YouTubeの映像をUPしておきます。
2009年のライブ。このアルバムを録音したのと同じ場所で2年前の録音です。

《エゴ・ダンス》。強烈でしょ。このリピート。

続き。このグループのサウンドはこんな感じです。
グラスパーの『ブートレグ・レディオ』にも似た感じの部分がありますよね。

マーク・アイザ、もっと注目すべきでは?

アルバム名:『Live at Home』
メンバー:
Marc Ayza(ds)
Roger Mas(p,Nord Stage key)
Tom Warburton(b)
Helios(turn tables)
Core Rhythm(vo)

|

« とうとうPCオーディオに足を突っ込んじゃいました。 | トップページ | DAC&PCオーディオ »

ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

おっ、良さげですねぇ。欲しくなりました。

ロジャー・マスって、特に強烈な個性があるというピアニストというわけではありませんが、派手ではないけど、カユいところにツボが多くて好きな鍵盤奏者ですね。

位置づけ的には自分の中ではジョン・デイヴィスに近いかも(笑)。
晩年のジャコとやっていた人です(ナイトフードとか)。

投稿: | 2012年3月10日 (土) 11時46分

雲さん

こんにちは。

>おっ、良さげですねぇ。欲しくなりました。

なかなか面白いですよ。

>ロジャー・マスって、特に強烈な個性があるというピアニストというわけではありませんが、

そうでうな。強い個性はないです。

>カユいところにツボが多くて好きな鍵盤奏者ですね。

面白い表現です。嵌ると心地良い人だと思います。

>位置づけ的には自分の中ではジョン・デイヴィスに近いかも(笑)。

これはまたマニアックな(笑)。

投稿: いっき | 2012年3月10日 (土) 15時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本の耳年寄りジャズファンには届かない音だと思いますが・・・:

« とうとうPCオーディオに足を突っ込んじゃいました。 | トップページ | DAC&PCオーディオ »