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実に個性的で知性的

どんどん新譜を紹介していきましょう。これはあんまり他で取り上げられないアルバムだと思います。

P91 『フローラトーンⅡ』(2012年、SAVOY JAZZ)です。メンバーは、ビル・フリゼール(g)、マット・チェンバレン(ds,per)、リー・タウンゼント(production)、タッカー・マーティン(production)、スペシャル・ゲスト:マイク・エリゾンド(b)、ジョン・ブリオン(key)、ロン・マイルス(tp)、アイヴィン・カング(vl)です。「フローラトーン」はビル・フリゼールのプロジェクトで本作が2作目。

私は前作『フローラトーン』が気に入ったのでこれも買いました。これはもうフリゼール独特の世界。カントリー/フォークを基調にしたルーズで撚れた音で溢れています。そこにチェンバレンの緩く大きなグルーヴが実にマッチ。ゆったりほんわかしたサウンドが展開していきます。今日はかなり暖かかったですが、こんな春のポカポカ陽気に似合いそうな音楽です。

タウンゼントとマーティンはポスト・プロダクションということで編集をしているんだろうと思います。全曲がフリゼール/チェンバレン/タウンゼント/マーティンの共同名義になっていますので、ポスト・プロダクションも含めて作曲ということなのでしょう。

フリゼールとチェンバレンが基本となり、曲によってスペシャル・ゲストが加わってセッションしたものに編集が施されているのだろうと思います。詳細は記載されていないので、どこをどれくらい編集しているのかは不明。あからさまな編集という感じではありません。

聴き流しているとフリゼールのギターとチェンバレンのドラム、ベース、トランペットが流れていくのですが、注意して聴くと色々な仕掛けが見えてきます。この仕掛けは控えめでありながら見えてくるととてもイマジネーションを刺激してくれます。、このバランス具合がとても知性的。

凝ったことをしているんだろうけれどひけらかさないポスト・プロダクションぶりが私には大人でカッコいいものに映ります。”とりあえず今時なボーカロイドを入れてみました。”みたいな安直さがありません(笑)。これもフリゼールという確固とした個性があるから成り立っているのです。個性がないままポスト・プロダクションで個性を出そうとしてもそれは砂上の楼閣。

なんて、難しいこと言ってますが(笑)、このアルバムは全然難しくもないですし、かしこまったところもありません。ゆったりしてほんわか開放的。そんな中に時々現れるエッジの立ったロックがまたカッコ良かったりして、なかなかいかしてます。13曲、短めの曲が物語のように流れていきます。

前作はブルーノートから出て今回はサボイ・ジャズからこういうマニアックなものが出るんですからアメリカも大したものです。

アルバム名:『FLORATONEⅡ』
メンバー:
BILL FRISELL(g)
MATT CHAMBERLAIN(ds, per)
LEE TOWNSEND(production)
TUCKER MARTINE(production)
special guest
MIKE ELIZONDO(b)
JON BRISON(key)
RON MILES(cornet)
EYVIND KANG(viola)

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コメント

ビル・フリゼール買いしました。数年前に出た「Floratone」がけっこう気に入って、しかも、共同名義でも、ビル・フリ色がやっぱり強い感じもして、プロダクション(エレクトロニクスや編集でしょうか)があまり目立ってなくて割と自然に聴けるところが好きです。

ジャズかそうではないかはさておき(あまり気にはなりませんが、自ブログのジャンル分けの時迷いました)、ビル・フリ追っかけにはけっこう満足なアルバムでした。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2012年4月 9日 (月) 17時52分

910さん

こんばんは。
前の「Floratone」良かったですよね。
ビルフリの音楽に露骨ではない加工を施し、渋く聴かせるのが良さなのではないかと思います。
私はこれ、ジャズで良いと思いますけど。
ビルフリの良さが分かる人にはこのアルバムの良さが割と素直に伝わるんじゃないかと思いました。
TBありがとうございました。
私も後程TBさせていただきます。

投稿: いっき | 2012年4月 9日 (月) 20時30分

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う~ん、このアルバムのカテゴリー分けが難しいです。基本的にはビル・フリゼールのい [続きを読む]

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