今日もヒップホップの話です。
前回はブギー・ダウン・プロダクションズのアルバムを紹介したのですが、YouTubeからUPしたロック・ギターをサンプリングした曲《ドープ・ビート》のネタがわかりました。何度もコメントをいただいているkimtさんからの情報です。
元ネタはオーストラリアのロックバンドAC/DCの《バック・イン・ブラック》でした。私はロックにも疎いほうなので全然分かりませんでした。こういう情報をいただけるのは嬉しいことです。ブログをやっている面白さです。情報を発信すると情報が得られるという好例。こういうところがブログの良さだったりするわけです。双方向性ですよね。書籍ではこうはいきません。
さて、面白いので両方を比較して見て下さい。
まずはヒップホップの《ドープ・ビート》。
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続いて元ネタ、ロックの《バック・イン・ブラック》。
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サンプリングしたとは言え、サウンドはほとんどまんまな感じもしますよね。ギターだけでなくドラムもサンプリングしてますね。まず最初に言っておくと、私はこういうロックが結構好きです。だから《ドープ・ビート》も気に入ったというわけ。
さて、よく似ているからこそヒップホップとロックの違いが見えてくるのではないでしょうか。
ボーカルはラップとシャウトの違いですね。どちらも怒りや反体制的感情を秘めているのですが、ラップのほうが抑制されているように聴こえます。意外とラップはスタイル的に制限事項が多いからだと思います。韻を踏んだり歌い回しとか型があるのです。ラップには抑圧された中での表現という、黒人の歴史みたいなものが生きている気がします。
サウンドトラックはサンプリングと生演奏の違いですね。ここでもやっぱりサンプリングという制限事項がかかっています。限られたものしかサンプリングできない中で如何に気持ち良いグループを抽出するかが肝です。お聴き比べのとおりグルーヴを見事に抽出していて、ボ~ッと聴き流せばまんまパクッているようにも聴こえます。
この”制限された中で如何にカッコ良く聴かせるか。”がヒップホップの肝なのでしょうね。そしてこれがヒップホップとジャズのバップとの親和性だと改めて思いました。ヒップホップのブレイクビーツはバップの4ビートであり、ラップの型はバップのコード進行に基づいたアドリブなのです。ヒップホップもバップもここから色々取り入れて変化していくことに変わりはありません。
初心者の私が誰のラップが区別しにくいのは特定の型の中ラップされているからで、コード進行という型の中で行うアドリブが似たものに聴こえて分からないのと同じようなものだと思えるのです。
更に、制限事項の中で技を競のはゲームというよりはスポーツと私は言いたいです。野球しかりサッカーしかりバレーしかりテニスしかり、制限事項(ルール)の中で技を競うのです。体育会系ですね。まずはこの視点に立つことがヒップホップを楽しむコツなのだろうと思います。批評性とかメッセージ性とか文化系(白耳?)的なものはその次に来ることなのだろうと思います。
ブギー・ダウン・プロダクションズのサウンドはヒップホップの芯みたいなものをシンプルに出していて、そこが渋くてストイックに聴こえるのが私の気に入った理由なのだろうと思います。「ブラック・ミュージック入門」に”玄人受けするアルバム”と書かれていましたが、マニアックな私の趣向が正にそれなのではないかと思いました。
kimtさんのコメントには感謝ですね。色々見えてきましたから。
<補足>2012.2.25
ヒップホップとロックの違いについて補足しておきます。
ロックは広く世界に向かってメッセージを発しているのに対し、ヒップホップは自分達の近隣(コミュニティー)や仲間に対してメッセージを発しているようです。ロックは開かれていますが、ヒップホップは閉じているように思います。ヒップホップは相手にする世界が狭いのです。そして身近な世界。私はそれを黒人のストリート性なのだと解釈することにしました。
<更に補足>2012.2.28
ブギー・ダウン・プロダクションズは、犯罪にまみれたストリートで生きることを初めて本格的なラップのテーマとして打ち出したハードコア・ラップが特徴です。ここには批評性が感じられ、批評性は二の次とは言ったものの、このグループの音楽の強度を増している基には批評性の存在が不可欠なのかなとも思います。
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コメント
いっきさん、こんにちは。
>>kimtさんのコメントには感謝ですね。色々見えてきましたから。
ブログ本文に僕の名前を出して頂き光栄です。
実は「Dope Beat」と「Back in Black」を聴いてある事を思い出したのです。
それはTone Locというアメリカ人のラッパーが大ヒットさせた「Funky Cold Medina」です。
この曲で使われているギターリフが僕が大好きなバンドForeignerの「Hot Blooded」のリフが使われていたのです。
そこでWIKIPEDIAで調べてみました。
Funky Cold Medina(89年全米3位)は
1.Foreigner/Hot Blooded
2.Kiss/Christine Sixteen
3.Free/All Right Now
4.Bachman-Turner Overdrive/You Ain't Seen Nothing Yet
5.The Rolling Stones/Honky Tonk Women
6.Van Halen/Jamie's Cryin'
7.Funkadelic/Get Off Your Ass and Jam
以上の7曲をサンプリングしているらしいです。
(実際に曲を聴いてみると1~4のギターリフと5~7のパーカッション?をサンプリングしている様子)
ちなみにTone Locはその前年にも大ヒット曲を飛ばしています。
Wild Thing(88年全米2位)は
先に記した6.Van Halen/Jamie's Cryin'のギターリフをサンプリングしています。
この2曲恐らくいっきさんの好みには合わないだろうと想像しますが、お暇な時にでも1度聴いてみて下さい。
長文大変失礼致しました。
投稿: kimt | 2012年2月27日 (月) 12時07分
kimtさん
こんばんは。
>ブログ本文に僕の名前を出して頂き光栄です。
いえいえどういたしまして。
音楽トークが膨らむのは楽しい限りです。
>「Funky Cold Medina」
タイトルどおりファンキーなサウンドがいいですね。
>「Wild Thing」
これもなかなかポップで良いと思いますが・・・。
このサウンドは私の中ではMCハマーに直結します。
MCハマーになるとちょっとポップ路線過ぎて私の好みからすると微妙だというのが聴いていて判明。
>この2曲恐らくいっきさんの好みには合わないだろうと想像しますが、
鋭いご推察。なかなか難しいですね。好みって。
>Van Halen/Jamie's Cryin'
はこの”カラッ”と晴れ晴れ感がかなり好きです。
投稿: いっき | 2012年2月27日 (月) 20時42分