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これが気に入ってしまったのだ。

最近はヒップホップも聴いたりしているのですが、とは言えヒップホップのアルバムはまだ10数枚しか持っていません。昨年から先月までにジャズ喫茶「いーぐる」で行われたヒップホップ関連講座のおかげで、だいぶ聴き方も分かってきました。

今思うとヒップホップがブレイクビーツというループ構造のサンプリングビートで構成されているということさえ知らずに聴いていました。単にリズムフィギュアがヒップホップっぽい電子楽器によるものだと思っていたのです。今ブレイクビーツという視点でリズムを見直すと違った快感が湧いてくるというものです。初心者って漫然と聴いていただけでは聴きどころが掴めないものだということを痛感。

最近これが気に入ってます。

P61 ブギー・ダウン・プロダクションズ『クリミナル・マインデッド』(1987年、B Boy Records)です。

私が参考にしている本から紹介文をここに書きます。

「文化系のためのヒップホップ入門」には「サウス・ブロンクス出身の三人組によるデビュー・アルバム。銃を手にしたKRSワンとスコット・ラ・ロックのジャケットが象徴するように、しばしばハードコア・ラップの先駆といわれる。クイーンズ出身のラッパー、MCシャンとのヒップホップ発祥の地を巡る「ブリッジ・バトル」は②と⑧に収録されている。本作発表後、ラ・ロックはギャングの抗争に巻き込まれて射殺された。」

「ブラック・ミュージック入門」には「DJスコット・ラ・ロックが参加した唯一のアルバムという点で希少価値が高い作品。1986年から2年間に渡ってマーリー・マール率いるジュース・クルーとの間で繰り広げられた「ヒップホップ発祥の地はどこか」論争のアンサー・ソング「ザ・ブリッジ・イズ・オーヴァー」と「サウス・ブロンクス」、ラガマフィンの先駆け的ナンバー「リミックス・フォー・P・イズ・フリー」の3曲が収録されている点が何より重要。オールド・スクール以降の世代を担うひとりとして何をなすべきかを、KRS-ワンは熟知していた。なお、玄人受けするアルバムであることも付記しておく。」

ということです。ジャズ・ファンには分からないことだらけかもしれませんね(笑)。私は一応この辺りの背景を上記ヒップホップ関連講座で知ることができました。銃を持っているとかバトルとかギャングに射殺とか平和な日本のジャズ・ファンにはおよそ理解不能な事情が横たわっていたりするのがヒップホップという音楽なのです(笑)。

私はこの辺りの事情うんぬんではなくサウンドが気に入っています。英語が苦手な私にはハードコア・ラップって言ったって何だかよくわかりませんからね。トラックは必要にして十分な技巧によるブレイクビーツ。そこにクールなラップが乗って、全体としてはかなり落ち着いた感じなのです。テンポが遅めなのがその要因かもしれませんね。どっしりしたグルーヴとクールなラップの組み合わせがカッコイイのですよ。

このトラック、サンプラーSP1200の名手(極めた)セッド・ジーが大きく関与しているとか。実はこのセッド・ジーというトラック・メイカー(プロデューサー)が参加した「ウルトラ・マグネティックMCズ」というアルバムも持っていて、サウンドが両方とも気に入ったことから、私はセッド・ジーが作るサンプリングのブレイクビーツが好きなのだと分かりました。

トラックも色々なタイプがあって、よく聴くと細かい細工がされていて私のツボをプッシュしてくれます。怪しげなファットビートの《サン・ゴーズ・バン》、ファンクをサンプリングしたサビとシンプルなドラムをサンプリングした部分の間に入る太鼓のリズムが生かした《ワールド・フロム・アワ・スポンサー》、バウンスするビートと”ボンボン”太鼓が気持ちいい《エレメンタリー》、ロックギターをサンプリングしたシンプル・ファンキー・ビートの《ドープ・ビート》、CDがトレース不良を起こしているようなビートで始まる《リミックス・フォー・P・イズ・フリー》、スネアドラムを極度にイコライズしダークで素朴なピアノの低音を被せた《ザ・ブリッジ・イズ・オーヴァー》、電話の呼び鈴と女性のコーラスがかわいい《スーパー・ホー》など面白いトラックだらけです。

「ブリッジ・バトル」の2曲のラップって、基本「おまえのかーちゃんでべそ。」な雰囲気ですよね(笑)。それはそれとして、上記のトラックに英語のイントネーションがからみつき、気持ち良いグルーヴが次々と流れていきます。これがなぜか何度聴いても飽きないから不思議です。

2曲ほどYouTubeから貼りつけます。

《エレメンタリー》

《ドープ・ビート》

格好いいですよね。

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コメント

いっきさん、こんにちは。

Dope Beatを聴いたらいきなりAC/DCの「Back in Black」のリフが出てきたので吃驚しました。
AC/DCのヴォーカルのBrian Johnsonもメロディを歌い上げるタイプではなく、金切り声でシャウトするタイプなので、この曲をラップでやっても違和感が有りませんね。

ご存知かも知れませんが、そうでなかったら一度AC/DCもぜひ聴いてみて下さいな。

投稿: kimt | 2012年2月24日 (金) 13時00分

>>この曲をラップでやっても

失礼しました。「Back in Black」のギターのリフをサンプリングしただけで、カヴァーしたわけではありませんね。間違えました。

投稿: kimt | 2012年2月24日 (金) 13時09分

kimtさん

こんばんは。

>Dope Beatを聴いたらいきなりAC/DCの「Back in Black」のリフが出てきたので吃驚しました。

AC/DCの曲をサンプリングしていたんですね。

>この曲をラップでやっても違和感が有りませんね。
>「Back in Black」のギターのリフをサンプリングしただけで、カヴァーしたわけではありませんね。

カヴァーではないでしょうけど、曲のイメージはまんまなので、ほとんどカカヴァー状態だと思います。
いい感じでラップが乗っていますよね。

>ご存知かも知れませんが、そうでなかったら一度AC/DCもぜひ聴いてみて下さいな。

ロックには疎いので知りませんでした。
YouTubeで早速「Back in Black」を聴いてみました。
カッコいいロックですね。
こういうの結構好きです。

投稿: いっき | 2012年2月24日 (金) 21時09分

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