黒いエレクトリックなフリー・ファンク
昨年出たアルバムを紹介します。
ハリエット・タブマンの『アセンション』(2000年rec. SUNNYSIDE COMUNICATIONS)です。メンバーは、ブランドン・ロス(g)、メルヴィン・ギブス(b)、JT・ルイス(ds)、ロン・マイルス(tp)、DJ・ロジック(turntables)、DJ・シンジ(turntables)です。ハリエット・タブマンは黒人女性の奴隷解放家で、このグループ名。
昨年出たティム・バーンの 『ザ・ヴェイル』 をAmazonで買った時、本アルバムが”よく一緒に購入されている商品”になっていたので、気にはなっていたのですが買わずじまい。結局ディスクユニオンの通販限定セールで¥1,000だったので購入しました(笑)。
ハリエット・タブマンはロス、ギブス、ルイスによって98年に結成されたグループです。ロス、ギブス、ルイスはM-BASE系譜であったりNYアンダーグラウンドで活躍する人達。そしてこのアルバムがニッティング・ファクトリーでのライブということになれば、分かる人には分かるマニアックな音が聴こえてきそうです。さらにタブマンが奴隷解放家、タイトルの『アセンション』はもちろんコルトレーンの『アセンション』ということで、黒い音も聴こえてきますよね。
1曲目《アセンション》を除きあとの9曲は全員の共作ということなのでフリー・インプロビゼーションなのでしょう。サウンドはギブスのうねる重いベースを中心においたファンク。そこにロスのフリー/アバンギャルド・ギターがからみつき、ドラムはヘビーなロック・ビートを刻み、マイルス(ロンね)が浮遊するという展開。更に左右2人のDJがサウンド・エフェクトを被せ、随所にパトカーのサイレンを想起させる怪しげな世界を構築していきます。
メロディーもリズムもあるのでフリーだからといって聴きづらいようなものではありません。オーネット・コールマンのプライム・タイム・バンド周辺の人達がやっていたサウンドを思い出す部分が多々あります。そこにマイルス(ロンね)がクールなトランペットを鳴らせばエレクトリック・マイルスにも通じます。DJがらみではヒップホップにまでつながるかも?サウンド的にはフリー・ファンクでありヒップホップではありませんけど。
オーネットのプライム・タイム、エレクトリック・マイルスが好きな私のような人にはたまらないものがあります。ニッティング・ファクトリーってこういうサウンドがゴロゴロしていたんでしょうね。素晴らしい!2000年にこういうサウンドがあったというのはいいな~ぁ。そこから11年経って昨年このアルバムが出たという、意味があるよなないような?NYのジャズには頑張っていただきたいです。
黒くてアバンギャルドでジャズ。カッコイイじゃありませんか!
アルバム名:『Ascension』
メンバー:
Harriet Tubman Double Trio
Brandon Ross (g)
Melvin Gibbs(b)
JT Lewis(ds)
Ron
Miles(tp)
DJ Logic(turntables)
DJ Singe(turntables)
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