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ニコラス・ペイトンがこんなの出しちゃった。

私にとってエレクトリック・マイルスというのは特別な音楽で、カッコ良さの頂点にあると言ってもいいと思っています。色々聴いてきましたけれどやっぱり超えるものはないわけです。そんなエレクトリック・マイルスを愛すミュージシャンのアルバムやエレクトリック・マイルスをコンセプトにしたアルバムが出ると、私は気になってしかたがないのです。今日紹介するのもそんな1枚?

P37ニコラス・ペイトン『ビッチェズ』(2009,2010年rec. IN+OUT Records)です。メンバーは、ニコラス・ペイトン(vo,tp,flh,syn,key,p,B-3 org,drum machine,b,ds,per)、ゲスト・ボーカル:カサンドラ・ウィルソン、チナ・ブラック、エスペランサ・スポルディング、N’ダンビ、サンダース・サーモンズです。ご覧のとおりのペイトン独り舞台。

タイトルの『ビッチェズ』はマイルスの『ビッチェズ・ブリュー』から取っているんでしょうね。ディスクユニオン・ジャズ館のホームページを見ていたら、ヒップホップ・ファンにもオススメのファンク・エレクトリック・サウンドなんて書いてあるものだから、気になって買ってしまいました。

はいっ、マイルスの『ビッチェズ・ブリュー』とは無関係でした。ファンク・エレクトリックというだけで『ビッチェズ』とタイトルをつけてしまうところに今時の感覚を感じます。ヒップホップのリズムを採用というかヒップホップのトラックを採用している曲もあるという点では、『ドゥー・バップ』を出したマイルスにもつながるわけですが、極めて今時なアルバムだと思います。

ピュアなジャズファンからは完全に無視される内容でしょうね(笑)。さて、一応分かりやすくするためにジャンル分けしますが、フュージョンかな。ヒップホップやアダルトなファンク・トラックの上で、ペイトンがAOR的なボーカルを披露したフュージョン・ボーカル・アルバムです。ペイトンのボーカルはなかなか上手いです。柔らかく甘い声も良い感じだと思います。

前作?『イントゥ・ザ・ブルー』は、パーカッション入りワン・ホーン・クインテットによるエレクトリックとファンクを取り入れたアルバムで、ボーカルを披露する曲もありました。それを発展させたのが今回のアルバムです。

昨年ヒップホップをそこそこ聴いてきた私ですが、ここでやっているヒップホップのトラックの出来はなかなかのものだと思います。サンプリングではなくドラム・マシーンの上にシンセを被せてトラックを作っているのですが、なかなか気持ち良いビートとサウンドに仕上がっていると思います。

1曲目『バイ・マイ・サイド』、8曲目『ザ・セカンド・ショット』、9曲目『フリップ・ザ・スクリプト』はヒップホップと言ってもいいくらいですが、これらの曲でトランペットを吹いていないというのが興味深いところ。ラップではなくてボーカルですが、黙ってこれらの曲をヒップホップだと言って聴かせれば、そうだと思ってしまう気がします。

あくまでも主役はボーカル。トランペットを吹いていても伴奏とソロ少々。トランペットを吹いている曲はファンク系で、大人のお洒落なムーディーなサウンドになっています。上記のヒップホップ系トラックと、ファンク系ムーディーサウンドの対比、そこでのトランペットの有無を考えてみるのは面白いところです。そしてヒップホップのビートとムーディーなトランペットが融合する曲もあったりするわけです。

ゲストボーカルが参加するのは各1曲ずつ。その中ではエスペランサが気に入りました。高音で伸びやかに柔らかく歌うエスペランサはかなり魅力的。特に突き抜けるような超高音が耳につかずに出てくるところに凄さを感じます。別にジャズなんかやらなくてもブラックミュージックの世界で歌手として十分食べていける実力です。

カサンドラ・ウィルソンは控えめに凄みのボーカルを聴かせていますが、ペイトンと声質が被ってしまっていることや、このアルバムの雰囲気にいまいちマッチしていないので残念な共演になってしまったと思います。

アルバムのラスト、タイトル曲の『ビッチェズ』が面白いです。ゴスペル風コール&レスポンスのコーラスが入り、リズムはセカンド・ライン。クラーベのパターンのようなパーカッション。前半はリズム楽器のみでジェームズ・ブラウンに聴こえなくもないようなボーカル。バックにはマイルス風ミュート・トランペットが被さりと、ブラック・ミュージックのあれやこれやが集約しています。中盤に少し入るキーボードはハービー・ハンコック風(笑)?

全曲をペイトンが作詞/作曲。作詞までペイトンがやっているところが凄いですよね。ジャズ、ヒップホップ、両面から見て文句はあると思いますが(笑)、私は現代のブラックミュージックとしてこれもアリかなと思います。聴きやすい軟弱サウンドですけれど(笑)、細部を考察していくと面白いアルバムです。

東洋を感じさせるジャケットの絵の雰囲気も好きです。

YouTubeに『バイ・マイ・サイド』がありましたので貼っておきます。
似たサウンドをどこかで聴いたことがあるような気がしなくもないのですが
思い出せません。

アルバム名:『BITCHES』
メンバー:
Nicholas Payton(tp,vo,ds,synthesizer,b,key,flh,castanets,shakers,tamb,B-3org),
Cassandra Wilson(vo)
Chinah Blac(vo)
Esperanza Spalding(vo)
N'dambi(vo)
Saunders Sermons(vo)

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