ファンク視線でウェザー・リポートを見る。
中山康樹さんの「かんちがい音楽評論」には感謝しなければなりません。
早い時期にこの本のレビューもどきを書いたため、Google「かんちがい音楽評論」検索の1ページ目に私のブログが表示されることになり、おかげでアクセス数が異常にUPしました。ココログランキングでも今までで最高位を獲得。アクセス数が増えれば私のブログを知る方が増えるわけで、書いている内容がより多くの人に届くんですから嬉しいじゃありませんか。
アクセス数から言ってこの本の注目度の高さが分かります。菊地成孔さんとからめたワードで検索してくることが多いので、菊地効果を痛感。菊地さんをメインディッシュに据える中山さんのしたたかさ、私は評価します。
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さて、今日もまたまたファンク視線!m(_ _)m
私のプチ・マイブームなんでご容赦願います。
今日はウェザー・リポートで行ってみよう!ウェザー・リポートはマイルスと並んで、私がジャズを聴き始めてすぐからのジャズ・アイドルでした。どちらかと言えば当時はウェザー・リポートのほうに肩入れしていたくらいです。
なんでマイルス、ウェザーなのかというと、ジャズのレコードを買った時(買ったレコード屋さんは明日閉店になるミュージックショップ・サンリン)にもらった、「ビッグ・ジャズ・フュージョン23}という廉価レコードの企画もののチラシなのです。ここからマイルス、ウェザーを聴き始めたことによるのです。(このネタはもう何度かブログに書いています。)
最初に買ったのは、マイルス『パンゲア』、ウェザー・リポート『スイートナイター』、ハービー・ハンコック『マン・チャイルド』の3枚。企画がマイルス、ウェザー、ハービーの70年代前半のアルバムを廉価で再発するものだったので、23枚のアルバムの短い宣伝文を何度も何度も読み返して熟慮して、3人の各1枚を選んだ結果だったのです。
今考えると、私にとってこの3枚はジャズ/ファンクに開眼するきっかけでした。そしてそれは”黒耳”の始まりだったのです。それまでの私の中の黒人音楽というとアース・ウィンド&ファイアーくらいだったので、そこから一挙にここに到達してしまったことになります。
で、ウェザー・リポートの話。キーボードのジョー・ザビヌル、サックスのウェイン・ショーター、ベースのミロスラフ・ビトウスの3人が主要メンバーとなり、そこにドラムとパーカッションが加わって1971年に結成しました。ショーターとザビヌルがマイルスのグループにいたので、マイルス・スクールから出たグループとされます。その手のグループとしては、ハービー・ハンコックのヘッド・ハンタース、チック・コリアのリターン・トゥ・フォー・エバーもあります。
当初はそのグループ名”天気予報”から分かるように自然志向のサウンドを展開しました。重要なコンセプトはファースト・アルバムのジャケ裏に書いてあるザビヌルが言ったという言葉”We Alwsys Solo and We Never Solo”。小山紀芳さんがそれを「ソロ/非ソロ」の原理と訳したそうです。要は集団即興のようなものだけれど、テーマ(メロディー)はもっとはっきりしていると思います。つまりアドリブ(即興)に拘っていて、この部分で非常にジャズ的なグループだったと思います。
その路線からファンク寄りになったのは、上記の『スイートナイター』(1973年録音)。マイルスがその頃やっていたファンク路線を取り入れたものであることは明白です。ファンク・リズムをやるためにもう一人のエレクトリック・ベース奏者(アンドリュー・ホワイト)を入れたり、ビトウスにエレクトリック・ベースを弾かせたりしています。アンドリュー・ホワイトがベースを弾いている《ブギ・ウギ・ワルツ》と《125丁目の出来事》はファンキーで私は大好きです。
結局、ビトウスはファンキーなベースが弾けないということで離脱してしまいました。代わって加入したのがアルフォンソ・ジョンソン。ファンク・ベースを弾ける人です。ファンクってエレクトリック・ベースが重要なんですよね。マイルス・グループではマイケル・ヘンダーソンがその重責を負っていました。ヘッド・ハンターズではポール・ジャクソンがいい仕事をしていました。
そういう流れの中でジャコ・パストリアスが起用されます。ジャコの場合はファンクというよりR&Bの人ですが、ファンキーなテイストを持った人です。そしてそのファンキーさがそれまでにない斬新さでした。もうジャコ・サウンドとしか言いようがないベースを弾くのはご存知の通りで、エレクトリック・ベースの革命児としてその名を知られる人です。更にジャコは類まれなるインプロバイザーでもあるわけで、その即興ベース・ソロを一度でも耳にしたことがある人なら、インプロバイザーとしての才能が並はずれていたことは疑わないでしょう。
このインプロバイザーというのが即興を重視するウェザー・リポートというグループに正にピタリと嵌ったわけで、ザビヌル、ショーター、ジャコによってウェザー・リポートが黄金期を迎えるわけです。
ジャコの凄さを知るにはますは『ヘヴィー・ウェザー』(1976年録音)でしょうね。グループに入ってそれ程経っていないのに、ザビヌルとジャコのコラボは既に凄いことになっています。《バードランド》という曲はキャッチーなメロディーのポップ曲というイメージになっていますが、その実、ザビヌルとジャコが代わる代わる前になり後ろになりメロディーを推進させ、軽快なグルーヴを維持させ、表情を刻々と変化させ、更に至る所に過激な音が突っ込まれているという代物です。
間に入っている、ベースの”グアーン”や、ザビヌルのアコースティックピアノ”ガン”弾き、刺激的なシンセ音、ショーターの咆哮、”ガーンッ”と入るブレイクなどなど、あなたは《バードランド》をきちんと聴いたことがありますか?そういう過激なものをメロディアスなポップ曲として聴かせてしまっている凄さに脱帽します。
そして、インプロバイザーとしての実力を知るにはライブを聴けば良いわけです。そうです。その魅力が詰まったアルバムが『8:30』(1978、9年録音)です。最高のパフォーマンスです。電車の通過音や花火の音を効果音として使い、それが全く浮いていないというスケール。基本4人でやってますから。しかも楽しい。エンターテインメントとしても一流です。会場の盛り上がりぶりは凄いことになってます。ジャコのベース・ソロ、ショーターのテナー・サックス・ソロ、ジャズです!即興あってのジャズでしょっ!
新しいファンクと新しい即興、それを最高のメンバーでやって黄金期を築いたグループがウェザー・リポートです。ジャコがメンバー入りした時、既にマイルスは一時引退状態。だからその時ウェザー・リポートはジャズ界の期待を一身に背負っていたのです。う~ん、だんだん大袈裟になってきってます。ほどほどに解釈していただきたく(笑)。
ジャコが抜けてやっぱりパワー・ダウンしましたよね。私がジャズを聴き始めたのは正にそんな時で、ある意味時代の転換期でした。マイルスの復帰、ウイントン・マルサリスの台頭、今のような閉塞感はなく、面白かったな~。
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