ヒップホップ講座 パート3
1月28日(土) ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた「ヒップホップ講座」のレポートの続きです。
3回に分けてレポートする3回目です。
講演者の長谷川町蔵さんと大和田俊之さんの「文化系のためのヒップホップ入門」を読むんでおくと、以下の内容がより分かります。
ヒップホップを勉強してきましたが、まだまだ素人に毛が生えた程度です。聞き間違えや誤解があるかもしれませんのでご了承ください。
お2人の発言は基本的に区別しません。
貼っている音源は当日かかったものとバージョンが違う可能性がありますのであらかじめご了承ください。
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5.サウス
⑳ Jay Z feat. UGKの《Big Pimpin》 1999年
発想が貧困で申し訳ないのですが、これも祭りばやし、もしくはチンドン屋に聴こえてしまうという(涙)。”和”なんですよね。鐘やボンゴなどパーカッションが面白いです。ラップがフリーっぽくアウトしているところが格好いい。JAY-Zのアルバム『Vol.3... LIFE AND TIMES OF S.CARTER』をたまたま買ったのですが、こういうビートでなく普通のビートのほうが多かったです。
ティンバランドのトラック。インド風?ニューヨークではこのリズムに違和感がありました。JAY-Z(今スター・ラッパー)が、UGKと共演。最初JAY-Zがラップし、次に出てくるUGKのBun Bのラップに注目。上手いです。JAY-Zが乗れるか乗れないかという感じでラップ。英語で言う巻き舌でバウンスします。
㉑ Juvenileの《Ha》 1998年
ファットな太鼓が特徴だったはずなのですが、YouTubeではいまいち。三三七拍子に聴こえなくもないという(笑)。手拍子みたいな音も入っていますしね。面白いビートだと思います。
適当に何か言ってから”ハッ”と言って韻を踏んでいるように見せかけます。何を言っているのか分かりません。
㉒ Lil Jon & East Side Boyzの《What U Gon' DO》 2004年
さあ皆さん、”エンヤートットー、エンヤートットー”と歌って下さい。そして”マツッシーマ~ノッ ~”ということで、《大漁歌い込み》かと思いました(笑)。応援団なんて声もありました。その時は前のと同じで三三七拍子で手拍子して聴いて下さい(笑)。いずれにしても男の世界であることには変わりはないです。ファットな大太鼓に手拍子、横笛まで入ってます。サウスのリズムが日本の拍子に近いという気付き。面白いです。前ノリですよね。格好いいのかな~この曲。PVを見ると尖がっているんですけどね。
”「いーぐる」でかけて一番インパクトがある。これを「いーぐる」で聴きたいために今回講演をやった。”とのことでした。確かに上記のとおりインパクがトありました。
㉓ T-Pain feat. Ludacrisの《Chopped N Skrewed》 2008年
私の感覚はどんどんおかしくなり。これなんかはK-POPかも? この辺りで頭の中が”ウニウニ”状態に陥ってしまいました(笑)。低音は強烈でした。回転数を落とした声が確かに面白いです。もうポップスだと思います。
テキサスのリミックスのアレンジの手法。単純にレコードの回転数を落とします。酩酊感があります。ロボ声で歌うぶっ飛んだアレンジです。彼女に振られてボロボロになるという歌詞。いい曲です。ロボ声という共通点で、2008年は日本でパフュームがブレイクした年です。トラックに自分の名前を入れていて、それをシグネーチャーサウンドと言います。
「ヒップホップに嵌ってからモダンジャスがみなヒップホップに聴える。(ジャズの演奏が)”今度こういうルールでラップしてみよう。”(と同じように聴こえる)みたいな変化がある。」とおっしゃっていたと思いますが、私のメモがいまいち不明瞭でした。
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6.ヒップホップの現在
㉔ Kanye Westの《Runaway》 2010年
ピアノの単音から入る印象的な曲。歌は確かにロック。私はエアロミスの映画アルマゲドンの主題歌が浮かんできました。メロディーの雰囲気が似ているような?にしてもどんどんヒップホップと離れたイメージに結びつきます(笑)。この曲が入っているCDは買いました。結構気に入ってます。
今何が起きているか?内省化があります。ロック最後の牙城(砦)である疎外感、孤独をヒップホップに取り入れようとしています。カニエ・ウェストがそれです。「ダメな僕」をテーマにしています。サウンド的には流行りのビート。私小説をラップ。プロモーションビデオはバレリーナのシュールな前衛映画(貼り付けた映像のとおり)。
㉕ Drake feat. Rihannaの《Black And Yellow》 2011年
(注)これはYouTubeに動画がありません。
普通のポップス/ロックに聴こえます。サウンドは暗く感じないです。歌詞がかなり暗いんでしょうか?スチールドラムのような音が寂しい感じと言えばそんな感じです。前ノリの4つ打ちビート。
昨年一番売れたアルバム。内にこもる暗さ。ヒップホップも遠い所へ来ました。最近はインディーものが増えています。
㉖ Lil Wayneの《6Foot 7Foot》 2010年
またきましたね。大太鼓のお祭り。バックで「ワッショイ、ワッショイ」て神輿を担いでませんか(笑)? クラーベのリズム。バナナボートの声が面白いと言えば面白いです。ラップは特徴があるちょっと変な声ですね。アンダーグラウンドで突き詰めていたらこういう弾けたものは出ないでしょうね。こういうものがメジャーの面白さなんでしょう。
リル・ウェインは㉕のドレイクの親分。その年に2番目くらいに売れたもの。ハリー・ベラフォンテの《バナナボート》をネタにしています。バングラデシュというプロデューサー。一押しです。このシングルはリル・ウェインが刑務所から出てきた最初の歌。これが売れているのは何のか?真剣に考えないといけないです。
㉗ Tyler, the Creatorの《She》 2011年
イルでドープな感じのシンセ音。退廃感もあります。遅いビート。歌とラップが交互に。これは従来のバックビート。このPVはなかなか面白いです。歌詞がそのまま映像になって、夢と現実を行き来します。
ネット上にフリー・ダウンロード曲をバンバン出した人です。ピッチフォーク・メディア(Pitchfork Media)で注目されます。タイラー・ザ・クリエイターはやんちゃなノリ。中学生のワルそのままです。アンファンテリブル(恐るべき子供たちの意)。YouTubeにたくさん映像がありますので見て下さい。ゴキブリを食べたりするそうで、アルバムを出さないままに、”ゴキブリ食ってるスゲーッ!”みたいなノリで白人のティーンが熱狂したとか。閉塞感みたいなものを出していて、今の状況の日本で流行っても良さそうな人。お仕着せでなく完全自作。屈折感の歌詞。タイラーは20才くらい。好きなのがステレオラブ。
私が気に入ったものを追加で貼ります。
いいなーこのサウンド。ジャズを引用するとかではなくてジャズを感じさせます。
歌詞はfuckだらけ(笑)。
㉘ Lil Bの《The Wilderness》 2011年
元ネタが何かあてて下さいとのことでしが分かりませんでした。答えを聞いてビックリ。これもだるい感じです。祭りの後の寂しさか?ディスコのチークタイムみたいな感じもします。ヒップホップはこんなことになっているんですね~。ブルーノートとかのオリジナル盤を聴いているジャズ・リスナーとは隔世の感があります。
元ネタは岡田有希子の《二人だけのセレモニー》のイントロです。無調な感じです。何が出てきてもいいんです。フリーのダウンロード・コンペティションで勝ち上がりました。ただ(無料)の音源を使っていましたが今は使っていません。こうなってくるとポップスの徒弟制がなくなってしまっています。
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講演は以上で終了。色々あって面白かったです。
長くなったので、講演後の質問や私の感想はパート4に書きます。
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日本の歌謡曲を使うところを面白がる感性がないと、メジャーのヒップホップは楽しめないのかもしれませんね。ということで《二人だけのセレモニー》を貼って今日は終わります。
この曲はいいですね。ときめきとせつなさの狭間を揺れ動きます。
さすが尾崎亜美!
会社に就職してすぐ、研修中にあの悲劇が起きました。合掌。
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