エンヤ・レーベルから新譜が出ました。
レズ・アバシズ・インヴォケイションの『SUNO SUNO』(2010年rec. ENJA RECORDS)です。メンバーは、レズ・アバシ(g)、ルドレシュ・マハンサッパ(as)、ヴィジェイ・アイヤ(p)、ヨハネス・ウェイデンミューラー(b)、ダン・ワイス(ds)です。前作はサニーサイド・レーベルというニューヨークの今を録音しているレーベルからアルバムを出しましたが、今回はなんとメジャー・レーベルのエンヤから出ました。この人達もいよいよメジャーから声がかかるようになったんですね。ジャケットはエンヤらしいものです。
前作についてはこちらをご覧下さい。今日もいきます。ニューヨークのジャズ(笑)!
アバシはパキスタン出身ですが、活動はニューヨークで行っています。今回のアルバムにはインド系のマハンサッパとアイヤが参加して、ニューヨークのインド・コネクションによるアルバムです。実はこのメンバー、前作『シングス・トゥ・カム』と同じメンバーなのです。ただし前回数曲に参加していたインディアン・ヴォーカルは不参加。そのせいでインド色は薄まっています。このあたりの処置はエンヤらしいと思います。おそらく広いジャズ層に違和感がないようにとの配慮でしょう。
全曲をアバシが作曲。馴染みやすいメロディーだとは思いませんが、かといって無機的でもなく、どことなく情緒があるのはインド系メロディーセンスなのだろうと思います。抽象的で独特なフィーリングがあることは確かです。現代ニューヨークと言えばユダヤ哀愁メロディーが結構多いのですが、彼らのインド系メロディーも悪くはないです。リズムは変拍子&ファンク系、ということでこの人達はM-BASEの進化系なのです。
M-BASE本家スティーヴ・コールマンも相変わらずやっていますが、私はこのアイヤ一派がやるM-BASE進化系のほうに面白みを感じます。コールマンは最近主流の複雑な変拍子についていききれていないような感じがしますし、色気がない感じがするんですよね。
アバシのギターはカート・ローゼンウィンケルをダークにした感じだと思います。でもジョン・スコフィールドのようなブルージーさやビル・フリゼールのような浮遊感もあったりと、今時の人らしく色々な要素を含んでいます。バカテクで速弾きするというよりは独特なフレーズをしっかり聴かせるタイプ。
ピアノのアイヤは最近かなり落ち着いた演奏を聴かせてくれます。ソロを聴くとマシュー・シップに似ているようにも聴こえます。アイヤ、シップともにヒップホップ感覚も取り入れたりする新感覚派のピアニストであることには間違いありません。こういう人達がニューヨークで活躍して場を活性化させているのでしょう。アイヤのピアノは全編でしっかり演奏の芯をなしています。
マハンサッパはダウンビート誌アルト・サックス部門1位だけあって、張りと勢いのあるアルト・サックスをここでも吹いています。アイヤ、アバシとも相性が良いです。ウネウネなフレーズではあるんだけれどメカニカルというだけではなく情緒も漂うところがこの人の良さなのかもしれません。こういう人がちゃんと評価されているアメリカは凄いですよね。
ベースのウェイデンミューラーは派手さはないけれど堅実なプレー。ギター、アルト、ピアノが個性的なのでベースはどっしりと構えていることが必要なのでしょう。ワイスのドラムは複雑なリズムを難なくこなし、パワーよりはスピード感を重視。柔軟なビートで心地よくプッシュしつつ包んでいます。
イントロ曲以外は10分前後の曲が6曲。各人のソロをきちんと聴かせるアルバムになっているのは老舗ジャズレーベルのエンヤならではのことでしょう。キャッチーなものはあまりないですが、きちんとジャズを聴かせてくれるアルバムです。同じようなトーンが続くのでちょっと地味かも?現代先端ニューヨークを聴いてみたい人にお薦めします。エンヤのお墨付きをもらったジャズ。
アルバム名:『SUNO SUNO』
メンバー:
Rez Abbasi(g)
Rudresh Mahanthappa(as)
Vijay Iyer(p)
Johannes Weidenmueller(b)
DanWeiss(ds)
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コメント
自分の文章を書いて、ikkiさんの文章を読んで、自分の言いたいことを見事に書き表していて。。ていうかなんか似た文章のような感じも。。(汗)
この盤は、聴けば聴くほど引き込まれていくようなスルメ感のあるアルバムだと感じています。
奥深く、じっくり楽しめる作品でした。
TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2011年12月23日 (金) 08時26分
oza。さん
こんいちは。
oza。さんのレビューを読ませていただきました。
おっしゃるとおり、内容はかなり近いですね。
同じ視点で聴かれていらっしゃるのがよく分かります。
>この盤は、聴けば聴くほど引き込まれていくようなスルメ感のあるアルバムだと感じています。
何かに特化してそこを中心にして聴かせるようなアルバムではないので、良さのポイントさえ分かれば聴くほどに良さが深まっていくのでしょう。
>奥深く、じっくり楽しめる作品でした。
確かにそうだと思います。
TBありがとうございました。
私からもTBさせていただきます。
投稿: いっき | 2011年12月23日 (金) 14時55分