12月24日、クリスマスイブの夜は 「桜座」 でライブを観て楽しんできました。ライブのタイトルは「座 Cherry Chridtmas!~桜座のクリスマスイブ~」。なかなかいかしたタイトルです。
メンバーは、梅津和時(as,cl)、鬼怒無月(g)、太田恵資(vl)、坂出雅海(b)、佐藤正治(ds) + おおたか静流(vo)です。皆さん自分のバンドを持っているうえにサウンドクリエイターとして多彩な活動をされていますので、オールスター的な一夜限りのバンドです。
クリスマスイブのうえジャズということでお客さんの入りを心配したのですが、「桜座」に入るとカフェスペースは既にお客さんでいっぱい。スタッフの方に聴いたら、おおたかさんファンの方が多いとのことでした。なるほど、歌のほうがやっぱり人気がありますね。分かりやすいですから。
1stセット最初、おおたかさん抜きの5人が登場。リーダーは鬼怒さんだけれど、MCは梅津さんがするとのことでした。
リーダー鬼怒さんの曲から。オープニングにふさわしい8ビートの元気な曲(曲名失念)です。ここで目に飛び込んだのは派手なアクションでドラムを叩く佐藤さん。見た目はどことなくジャーナリストの鳥越俊太郎似でグレーのぼさぼさヘアーが魅力的な紳士なのですが、一旦ドラムを叩くとその激しいアクションに唖然。普段パーカッションらしいのですが今回はドラム。テクニックがないというわけではないけれど、普段ジャズの超絶技巧ドラミングを耳にすることが多い私には、佐藤さんの勢い任せのドラミングが新鮮に感じられました。パンキッシュとも言えるかもしれません。激しいリズムののって、太田さんの激しいバイオリン、梅津さんのパンキッシュなアルト、鬼怒さんのヘビーメタルなギターがソロを展開。会場はいきなり盛り上がりました。
2曲目、おおたかさんが静かに現れエスニックな歌が始まります。それに呼応して太田さんも歌を入れ、おおたかさんの歌を中心にソロも入れて演奏は続きます。梅津さん、太田さん、鬼怒さんもエスニックなサウンドは得意分野なので、まとまりのある曲のイメージを上手く膨らませた演奏でした。梅津さんはクラリネットを演奏。この曲はおおたかさんの曲で、どこかの街の名前(失念)でした。東ヨーロッパなのか、中近東なのか、アフリカなのか、中央アジアなのか?そんな感じのエスニックです。
3曲目はクリスマスを意識して《アベマリア》。おおたかさんのパワフルな歌が胸にきました。梅津さんもこういう染みるメロディーは得意なのでいい感じのソロをとっていました。
4曲目は坂出さんの《インフルエンザとともに》(だと思う)です。フリーインプロビゼーションを多めに取り入れていました。ある意味ボイスパフォーマンス。おおたかさんの歌とも朗読とも奇声とも取れる七色の声、太田さんの味のある歌とバイオリン、ドラマー佐藤さんの奇声(これが本当に面白く楽器的)、梅津さんの得意とするフリーな声とアルト、自由なボイシングの鬼怒さんの音響ギター、ベースだけでなく小物を使う坂出さん、自由にして息の合ったこのメンバーにしかできない音響空間は最高に面白かったです。
5曲目は鬼怒さんの新曲で自分のグループのために作ったインド・フュージョン(曲名失念)。インド的な旋律をロックなリズムで勢い良く演奏。こういうロック曲での鬼怒さんのギターソロはもう縦横無尽の暴れっぷり。聴いていてスカッとします。梅津さん、太田さんももちろん得意でして、ガンガンソロをとってるのが印象的でした。おおたかさんの声だって負けていませんでしたよ。佐藤さんのドラムも当然暴れまくってました。そういえばギターソロの時に梅津さんとおおたかさんがちょっとした踊りでステージを横切るパフォーマンスが受けていました。
6曲目はおおたかさんのフリーボイスを中心にした曲。こういう独特なボイスを駆使して場をおおたかワールドに引き込んでしまうその技は、梅津さん、太田さん、鬼怒さんという個性的な面々と対等に渡り合えるものでした。
ここでちょっと休憩して2ndセット。グーパーじゃんけんで2組に分けて完全即興演奏をするとのことでした。ここでギター鬼怒さん、ベース坂出さんの組、ボーカルおおたかさん、サックス梅津さん、バイオリン太田さん、ドラム佐藤さんの組に分かれました。今思うとギター/ベースの弦楽器デュオ(ボイスは使わない)とボイスパフォーマー4人とに計画的に分かれたのではないかと勘ぐってしまうところがあります(笑)。
最初はギター/ベースデュオ。鬼怒さんはアコースティック・ギターを使用。基本的なラインは鬼怒さんが主導して、坂出さんはオカリナみたいな楽器を吹いて始まりました。途中ベースを持ちその上にそろばんを乗せたりそろばんで弾いたりしてからベース演奏へ。鬼怒さんは始終ギターで呼応。そろばんのところでは会場の一部からは笑も出ましたが、演奏は至って真面目でアート性の高いデュオでした。カッコ良かったです。
続いて問題の4人(笑)。控室にあったというほうきやくまでや木片とか持って演奏しながら自由に歌って登場。会場大笑いです。この4人にかかったらこんな変なことでも音楽になってしまいます。この自由さこそがジャズの本質の一部だと私は思います。変幻自在、4人が阿吽の呼吸で声や楽器を駆使して即興。途中良く知られ曲が流れの中で出てきて、それに呼応してまた別な曲へ変化してく様は何とも愉快でした。こういうプリミティブな音楽空間が私は好きです。ポップスの究極的な人工性に対するものとしての魅力に溢れていました。エンターテインメントな部分も強かったですがこれもまたアート。
3曲目は佐藤(マッサ)さんの曲《ヘビアブラ》。佐藤さんらしい怒涛のファンク曲、ファンク~ロックビートにのって太田さん、鬼怒さん、梅津さん、おおたかさんのパワフルなソロがさく裂。最後にはドシャメシャなドラムソロで会場を興奮の坩堝へと陥れていました。痛快。
4曲目はおおたかさんの面白い歌詞の曲(曲名失念)。面白い歌詞の曲でこれまたおおたかワールド炸裂でした。こういう歌に魅力を感じておおたかさんのファンになる人が多いのというのは頷けるものがありました。
5曲目は東日本大震災のために梅津さんが書いた曲で、それにおおたかさんが歌詞をつけた曲《東北》。演奏がはじまってすぐに梅津さんが演奏を制止。何かと思ったらこの曲だけのために来てくれたテナーサックスの多田さんを呼び出すのを忘れたとのことでした。何ともらしいハプニング。心に訴えかける歌が響き渡りました。こいう曲での梅津さんのアルトサックスっていいんですよね。
ちなみに多田さんは梅津さんのバンド「こまっちゃクレズマ」に参加しています。それから「こまっちゃクレズマ」とおおたかさんは共作アルバムも出していて、そんな意味から梅津さんとおおたかさんはこの日も始終抜群の相性を見せていました。ベースの坂出さんとドラムの佐藤さんは翌日「ヒカシュー」のライブがあるのに手抜きがないと梅津さんが笑っていましたが、私はこの2人がリズムを固める「ヒカシュー」を観てみたくなりました。
アンコールは《きよしこの夜》。メリー・クリスマス!ということで終了。
個性的なミュージシャンが集まり、個々の個性を存分に発揮しつつも一体感溢れるステージは文句なく楽しかったです。良いクリスマスイブとなりました。
私の今年のライブはこれにて終了。
「桜座」には今年も大変お世話になりました。
皆様に感謝!
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