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スガダイローさんのパワーみなぎる1枚!

今日は新譜紹介です。これにはすっかりやられてしまった私。

P122 『スガダイローの肖像 弐』(2011年rec. ポニーキャニオン)です。メンバーは、スガダイロー(ピアノ)、東俣光(ベース)、服部マサツグ(ドラム)、tony chanty(ヴォーカル)、石井千鶴(鼓)です。スガさんってポニーキャニオンに移籍してたんですね。メジャー移籍おめでとうございます。嬉しい。

これは最初に聴いた時ビックリしました。勢いとパワーに溢れているからです。「今勢いがある人って、こういうことなんだろうな。」と思いました。ピアノが発する音に自信とパワーがみなぎっています。痛快としか言いようがありません。落ち込んだ時にこれを聴いてパワーをもらって下さいませ。フリージャズ・ピアニストと言われると世間では難解というイメージになるのでしょうが、ところがどっこい!これは分かりやすいです。楽しいです!

で、まずはCDケース/ジャケットの話です。これ、最初に手に取った時、「なんだこれ、上下逆さまにスリーブが入ってるじゃん。」と思いました。でも裏返すと裏も上下逆。はは~ん、なるほどね。右開き! めちゃくちゃ違和感あり(笑)。蓋が開けづらいのです。人間の慣れって恐ろしいですね。左開きに慣れているから右開きは上手く開けられません(涙)。縦書き和書と同じ右開き。”和”に拘るスガさんならではの配慮(笑)?

CD裏面がEPレコードを模している遊び心にも感心してしまいます。2,500円という値段も、我々世代には懐かし過ぎる30年くらい前のLPレコードの値段ですよね。今時3,000円が当り前のご時世に ”2,500円” を持ってくるその心意気と拘り。嬉しいじゃありませんか!どこまで ”違いがわかる男” なんでしょ。スガさん恐るべし。

1曲目《乱 Ral Rides Again》。ピアノ・ソロだと思ったら、途中から背後の影が徐々にずれてもう一人影武者が出てくるような感じの多重録音による演奏でした。不穏度を増すシンセもいい具合。面白い。ピアノが凄く鳴っているのがわかります。力強いけれどしなやかなで潤いある感じは甲府「桜座」で観たそのまんまという感じですね。良い録音だと思います。スガさんからはダラー・ブランド的アフリカの大地の匂いを感じるから不思議です。

2曲目《蒸気機関の発明 Voyage》の最初の部分もアフリカの匂いがあり、途中からは日本的な感じになります。”アフリカ”と”和”とが融合をみせているのが何とも不思議なのです。モンク的なものも入っていますね。今回はスガさんの”和”的美意識に支えられたメロディーもさることながら、特にリズムへのアプローチに面白さを感じます。テーマのリズム処理はポリリズミックです。ベースの弓弾きの際の三者のポリリズミックな展開もいいし、途中からフリー状態へ突入するピアノ・ソロも痛快。ラストは弾けるドラム・ソロで終了。

ほとんど曲間なく《山下洋輔》へ。スガさんが尊敬するピアニスト山下さんの名前をタイトルにしちゃうのがユニーク。これ、テーマ部は複雑なリズムを持っています。サビ?がキャッチーなメロディーというのが面白いです。ピアノ・ソロは低音を徘徊する出だしから、フリーな展開も匂わせつつ、複雑なリズムを三位一体となってモザイクのように構築していく様は、このトリオの成熟ぶりを示しているように思います。だんだん盛り上がって混沌状態に突入するにも関わらず一体感は失われません。この塊感は最高。

4曲目スタンダードの《BLUE SKIES》はゆっくり演奏されるのですが、それゆえリズムへのポリリズミックなアプローチがはっきり分かります。特にドラムのブラシとの絡み具合は最高に面白いと思います。リズムだけでもかなり面白いのですが、そこに”和”的ブルースとでもいうような素敵なメロディーがからみ、その美しさはかなりのものだと思います。似ているとかではなく、パウエルやモンクを感じるんですよね~、この演奏。ジャズがここにあります。

5曲目岡田規絵(tony chanty)さんの《さやか雨 Pure Rain》は本人のヴォーカルが入ります。フォーク/ニュー・ミュージック曲。けだるい感じのヴォーカルと、とにかく美しいとしか言いようがないスガさんのピアノが絶妙に絡み、日本人の心にある郷愁感がじわじわと込み上げてきます。

6曲目《春風 Spring Rain》は美しいのですがちょっとメカニカルな感じを受けます。タイトル”春風”とのギャップを感じますね。春風の新しいイメージ。これもリズムへのアプローチが面白いです。メカニカルな感じを強調するたどたどしいリズム。メロディーとリズムの両面から攻め、スガダイローの世界としか言いようがないものを構築しています。

7曲目《無宿鉄蔵毒団子で死なず Poison No Effect》。なんちゅうタイトルじゃ(笑)。これもテーマはメカニカルですよね。で、やっぱりリズムが面白いです。テーマが終わると変拍子ファンク・リズムに突入。ピアノ・ソロが盛り上がってくるに従いリズムも複雑化していきます。こういうリズム・アプローチは私の好きなニューヨーク・ダウンタウンに繋がっています。カッコイイです。

8曲目《寿限無》は山下洋輔さんの十八番曲ですが、それのスガダイロー・バージョン。1フレーズだけ山下洋輔版から借りてきているそうです。この演奏の良さは《寿限無》をchantyさんが歌ってくれているところです。なるほどこういうふうにメロディーとリズムがつけられているのかというのが良く分かります。鼓(つづみ)が加わって”和”の情緒を盛り上げてくれているのも素敵。山下版《寿限無》は、私にはいまいちよく分らなかったのですが、こういう風にプレゼンされてその良さを実感しました。

9曲目《戦国 The Emperor》は《フリーダム・ジャズ・ダンス》に似たテーマです。4ビートを基調にした揺らぐリズムの中でガッツとスリル溢れる演奏が繰り広げられます。正に”戦国”!

10曲目《時計遊戯 Game Watch》。これは「桜座」でも聴いたし、スガさんのホームグラウンド「荻窪ベルベットサン」のUstream中継で何度か観ました。複雑なリズムですよね。この複雑なリズムが”時計遊戯”なのでしょう。変拍子の上で低音を徘徊するピアノ・ソロは迫力満点。スガさんの場合はフリーになって”ガシガシ”弾いても、その”ガシガシ”が目的ではなく、全体の美学の中でのコントラストとして作用しているところが良いです。

11曲目《最後のニュース》。故筑紫哲也さんがキャスターだった頃の「ニュース23」のエンディング曲にもなりました。井上陽水さんの曲。歌はchantyさん。東日本大震災と原発事故を経た今この時期にこの歌を持ってくるメッセージ性に共感できます。この歌の醸し出す雰囲気をストレートに訴える演奏。

ラストは《オール・ザ・シングス・ユー・アー》。ピアノ・ソロです。スロー・テンポでメロディーを慈しみながら弾いていきます。派手に”ガンガン”弾くだけではなく、メロディー・メイカーとしてのスガさんの真骨頂がここにあらわれていると思います。美しくも力強い。スガさんはその言動に反し、実は意外と女性的しなやかさを持っているんですよね。

全12曲、とにかく楽しく聴けます。
私が聴いたアルバムの中ではこれが一番イイ。
諸君、スガダイローを聴け!

12月18日(日)、甲府「桜座」酒井俊さんとスガダイローさんのデュオが来ます。
観に行かなきゃね。

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コメント

全曲紹介、レコ発で西南ツアーに3回行ってたので、
より楽しく読ませてもらいました。

ちなみに今回行ったライブは
(1)対バン
(2)対バン、ゲスト:tony chanty
(3)トリオで2セット
と3回とも編成も含めて違うライブになり、
それぞれのライブでいろんな魅力を魅せてくれました。

全曲紹介読みながら思い出してしまいました。

キートス!(ありがとう)

投稿: ナカジマタカシ | 2011年11月20日 (日) 06時52分

ナカジマタカシさん

おはようございます。

>より楽しく読ませてもらいました。

ありがとうございます。

>3回とも編成も含めて違うライブになり、
>それぞれのライブでいろんな魅力を魅せてくれました。

3回もスガさんのライブに行ったなんて羨ましい。
いろんな魅力がありますよね。
このCDもいろいろ楽しめました。

私も荻窪ベルベットサンに見に行けば良いのですが、なかなか行けないでいます。
なので甲府に来る時は行くようにしたいと思ってます。

>より楽しく読ませてもらいました。
>全曲紹介読みながら思い出してしまいました。

楽しく読んでいただけたなら嬉しいです。

>キートス!(ありがとう)

いえいえどういたしまして。
どんどん盛り上げていきましょう!

投稿: いっき | 2011年11月20日 (日) 08時20分

もうご覧にならてるかもしれませんが、「さやか雨」のライブversionとてもステキな映像です。大阪でtony chantyのヴォーカル曲も聴けたのはラッキーでした。当日までゲストのことに気付いてなくて。

スガダイロー・十三晩勝負!しろぜめっ! 第四話 トニー・チャンティ
http://www.youtube.com/watch?v=bGIoILWWt2c

投稿: ナカジマタカシ | 2011年11月20日 (日) 09時26分

ナカジマタカシさん

こんにちは。
素敵な映像ですね。
知りませんでした。
ご紹介いただきありがとうございます。
他の「スガダイロー・十三晩勝負!しろぜめっ!」映像もカッコイイ!

投稿: いっき | 2011年11月20日 (日) 15時00分

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