アメリカ音楽が好きな人に。
今日は新譜紹介です。これはそれほど売れるとは思えませんね。私は気に入っています。読んで興味が湧いた方は聴いて下さいまっせ。
スティーヴン・バーンスタインズ・ミレニアル・テリトリー・オーケストラの『MTO・プレイズ・スライ』(2011年、Royal Potato Family)です。メンバーは、MTO:スティーヴン・バーンスタイン(tp,slide-tp)、カーティス・フォークス(tb)、チャーリー・バーマン(vl)、ダグ・ワイスルマン(cl,ts)、ピーター・アフェルバウム(ts,ss)、エリック・ローレンス(bs,ss)、マット・ムイステリ(g,banjo)、ベン・アリソン(ac-b)、ベン・ペロウスキー(ds)、スペシャル・ゲスト:ベニー・ウォレル(org)、ヴァーノン・リード(g)、ビル・ラズウェル(el-b)、サンドラ・セントヴィクター(vo)、アンソニー・ヘガティ(vo)、マーサ・ワインライト(vo)、ディーン・ボウマン(vo)、シルパ・レイ(vo)です。
MTOにゲストが加わりスライ&ザ・ファミリー・ストーンの曲を演奏するという企画。MTOはトランペッターのスティーヴン・バーンスタインがリーダーの、9人編成ブラス重視のバンドといった感じのもの。今回はスライを取り上げていますが、コンセプトはアメリカの良き音楽を今時の自分達の解釈で再演していこうというものではないかと思います。バーンスタインがジャズマンなのでディスクユニオンではジャズ扱いですが、ジャズというよりはアメリカン・ポップスといったほうが良いかもしれません。
少し前にブログで紹介した「ジャズ批評」誌の特集 ”トランペット最前線2005” で私はバーンスタインを知り、気に入ったのでフォローしています。スライもマイルスに影響を与えた人として私には気になる存在。バーンスタイン&スライの組み合わせならということで、今回は購入することにしました。
スライの《スタンド》で幕を開け、スライの9曲、バーンスタインの2曲、ウォレルのイントロ1曲、それらに、なぜか《ケ・セラ・セラ》の全13曲、違和感なく並んでいます。
スライについては聴きこんでいないので詳しくはないのですが、スライの持っている醒めた感触が ”ケ・セラ・セラ”(なるようになる) という意味に通じているのかな?ここに入っている意味は察することができます。この曲の演奏自体は、ゴスペル風でもありゆったりしたテンポで ”なるようになる” と力強く前向きに歌っているので、”前向きに生きようよ。” と励まされる感じです。テナー・ソロはジャジーでブルージーなグッド・テイスト。
バーンスタイン作曲の《スライ・ノーションズ》(スライの概念?)はインスト曲。タイトルらしいスライの雰囲気を持つ曲なのですが、クラリネットとバンジョウが主役を務めているので、ファンクというよりスイングや南部の雰囲気が濃厚です。オルガンがファンキーさを出していたりもしますが、これはもうアメリカ音楽としか言いようがないですね。
ほとんどの曲でボーカルをフィーチャ。歌もきちんと聴かせています。バーンスタイン作の《スライ・ノーションズ2》はスライの詩にバーンスタインが曲を付けているところが面白いです。バーンスタインはスライがかなり好きなのでしょう。2曲でフィーチャされるバーノン・リードのジミ・ヘンドリクスばりギターも聴きどころ。
ここにもいましたビル・ラズウェル!この人、色んなところに顔を出していてほんとに正体不明(笑)。《サンク・ユー・フォア・トーキン・トゥ・ミー・アフリカ》でラズウェルがフィーチャされています。他にも1曲リズム・マシーンを使っているのですが、ここでもリズム・マシーンを使って、ヘヴィー・ファンクと化した演奏を披露。ラズウェルもエレベを弾いてます。”ビル・ラズウェル・ミックス・トランスレーション” と書かれていますが、正にその雰囲気。このテイストも悪くはないです。
それに続くラスト曲《ライフ》はディキシーランド・ジャズになっています。面白いですね。今回のテーマーはスライなんですけれども、やっているのはファンクであり、カントリーであり、ジャズであり、東部であり、西部であり、南部であり、これはもう豊かなアメリカ音楽の上に成り立っているのです。
アメリカ音楽が好きな方は是非!
アルバム名:『MTO PLAYS SLY』
メンバー:
Steven Bernstein's Millennial Territory Orchestra
With Special Guests
Antony Hegarty, Bernie Worrell, Bill Laswell, Dean Bowman,
Martha Wainwright, Sandra St. Victor, Shilpa Ray and Vernon Reid
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