Miyaさんのデビューアルバム
先月フルーティストの Miya さんとお会いしてお話しする機会を得たのですが、現在は色々なプロジェクトを行っていることを知りました。一度ライブを観に行きたいのですがなかなか実現できないでいます。それでも先月は 「荻窪ベルベットサン」 で行われたTrancesitE(ピアニストのスガダイローさんとのユニット)のライブをUstreamで観ることができました。そのMiyaさんのデビューアルバムが急に聴きたくなって購入。
『グローブ・イン・モーション』(2004年rec. スタジオ・ウィー)です。メンバーは、Miya(fl)、松本治(tb)、ボブ・サング(as)、坂本剛(p)、今堀恒雄(g)、沖祥子(vln)、田島朗子(vln)、渡辺一雄(vla)、四家卯大(cel)、斉藤草平(b)、水谷浩章(b)、外山明(ds)です。プロデュースは水谷浩章。Miyaさんが活動していたグループ「シネマ」(ピアノ:坂本剛、ベース:斉藤草平)の楽曲を中心に収録しています。
曲は全てオリジナルで、Miyaさんの4曲、水谷さんの1曲、坂本さんの2曲、斉藤さんの1曲、Miyaさんと坂本さんの共作1曲の全9曲。デビューアルバムということもあり、ジャズを中心にして色々な曲が入っています。フュージョン風な曲、クラシック色が強い曲、即興性が強い曲などがあります。
ハツラツとしたMiyaさんのフルートが楽しめるアルバムです。曲によって色々な表情を見せるフルートなのですが、自由でおおらかに歌うフルートが素敵です。曲も良い曲揃いなので楽しく聴けます。バックは上記のとおりシネマのメンバーを中心にドラムの外山さんが加わっています。この外山さんのドラムが通常のジャズドラミングではなく、とても自由にパーカッション的に振る舞って、音楽に軽やかさと自由を与えています。それがMiyaさんのフルートの醸し出す雰囲気にマッチ。
アルバム最初は穏やかで優しいMiyaさんの曲《tri》から。シネマ+外谷さんのドラムによる演奏。
続くMiyaさん作曲&アレンジの《Globe》が白眉。最初はストリングスをバックにクラシカルに始まるのに、途中で一変してドラムとベースの躍動的なビートになります。自由なドラムと太いベースと今堀さんカッティングをバックに、ピチカートがアクセントを加えたりする中、ベタな美メロが流れたります。で、フルート・ソロになると一挙にジャジーに骨太に。ソロのあとはストリングスを生かしてジプシー調。テーマに戻った後は、今堀さんの一癖あるギター・ソロへ。ソロのバックでは外山さんの自由なドラムが跳ね回っています。そしてストリングスのテーマからドラム・ソロ。外山ドラミングとしか言いようがない個性的なものです。テーマに戻って終了。メンバーの個性やストリングスを生かし刻々と変化するこの曲が面白いですね。こういう曲とアレンジができるMiyaさんの才能が”キラリッ”と光ります。
Miyaさん作曲、水谷さん編曲《Mirage》は、パステルカラーのフュージョンサウンド。この曲では松本さんのおおらかなトロンボーン・ソロも素敵。
次の《脳、見捨ていく》(笑)は、坂本さん作曲の明るく楽しい曲。カルテットでジャジーな演奏です。4ビートにのって自由に舞い踊るMiyaさんのフルートが痛快。きっとMiyaさんはいつものように体を捻って楽しそうにフルートを吹いていることでしょう(笑)。途中に《ストレイト・ノー・チェイサー》のフレーズがチラッと。エバンスとジェレミ・スタイグ(Miyaさんが尊敬するフルーティスト)のアレかなっと思ったりしてニンマリ。続く坂本さんのピアノ・ソロも快調です。
Miyaさん作《Iron Acton》はイギリス滞在時に住んでいた田舎の村の名。ストリングスとベースだけをバックにした素朴な響きの穏やかな曲です。そんな曲なのにベースだけをバックにしたフルート・ソロは結構闊達。この辺の感覚が面白いですね。
Miyaさん作《Miyashin》はアルトも加わった2管ピアノ・レス・カルテットで演奏するストレート・アヘッドなジャズ。先発するサングのアルト、続くMiyaさんのフルート共に勢いに溢れています。見た目とは裏腹で男前なMiyaさんらいいソロです(笑)。外山さんのドラム・ソロ、バッキング、共に自由な振舞が素敵。
《Mind Reed》はMiyaさんとベースの斉藤さんのデュオ。フリー・インプロビゼーションです。《Globe》を作れる作編曲の才能を持っているのに、現在のMiyaさんはこういうフリー・インプロビゼーションをメインに活動しています。不穏な雰囲気を湛えつつ、重苦しくならない自由度が良い感じです。人を拒絶するようなところがなくオープンなところが◎。
坂本さん作《千夜一夜》はシネマ+外山さんのドラムで演奏。Miyaさんの解説「夜!という感じの曲です。」の通りです。私には穏やかなおぼろ月夜という風に聴こえます。
ラストはMiyaさん作《日が暮れてさよなら》。Miyaさんの小さい頃の思い出を曲にしているとか。最初はストリングスでドボルザークの《家路》風。フルートでのテーマは郷愁感がありつつ結構明るい雰囲気。優しさに溢れた美メロに参ってしまいます。ピアノ・ソロは美メロを生かしてストレートに。フルート・ソロはリズムを変えて楽しげに。ストリングスで”さよなら”、日が沈んでいき、家に帰ったら楽しい夕食の時間です。いい思い出なんだろうな~ぁ。
Miyaさんのハツラツとしたフルートが聴きたければ即ゲットです。
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