ポスト・エレクトリック・マイルスが気になる。
新宿ディスクユニオンジャズ館のアウトレットの箱の中にあるのを見て3度目にして買ってしまった1枚。先月は3度くらい上京しましたからね。
エリック・トラファズの『イン・ビトウィン』(2010年rec. EMI Music France)です。メンバーは、ベノア・カーボス(hammond,fender rhodes,p)、マルチェロ・ジュリアーニ(b,contre bass)、マーク・エルベッタ(ds,per,vo)、エリック・トラファズ(tp,vo)、ソフィー・ハンガー(vo)2曲のみ、です。エリック・トラファズはフランスのトランペッターでポスト・エレクトリック・マイルスと呼べる人です。
この人を知ったのは杉田宏樹さん著「ヨーロッパのJAZZレーベル」を読んだからです。2000年頃は人力ドラムンベースやボイスなどを取り入れた演奏をしていました。その路線は変化しつつ今も継承しています。上記の本には「ジャズ・サイドから発信するクラブ・ミュージック」と書かれています。最近のジャズ・ヒップホップを学習した私には、ヒップホップ的要素もある音楽のように聴こえます。
その後2005年の『saloua』(これもアウトレットで購入)では、インド~イスラム的なエスニックを加えていました。実はその後ず~っと放ったらかしにしていました(笑)。それが最近のジャズヒップホップ学習会以来、この人の存在が気になってしまい、「アウトレットなので安いからいいや。」ということで購入に至ったというわけです。¥800也(笑)。
このアルバムは昨年出たアルバムなので、あれから5年後のトラファズということになります。今回もテイストが変化していました。その大きな特徴はシンガー・ソングライターであるソフィー・ハンガーの参加。2曲で歌っているのですが、これが70年代ロックのテイストが”プンプン”。当時のロックに詳しいわけではないので誰似とは言えませんが、当時の匂いだと思います。バックのオルガンはプログレ調です。
そのオルガンのテイストは他の曲でも聴かれ、そういう意味では”プログレ”が今回のキーワードだと思います。打ち込みは今回やっていないので、クラブ~ヒップホップの要素は希薄。エレクトリック・ピアノが活躍するファンク曲は70年代フュージョン的です。このアルバムは70年代プログレ~フュージョン・サウンドの上でトラファズがいつものようにトランペットを悠々と吹いているものになっています。
トラファズのトランペットはしゃかりきになって強奏するのではなく、マイルスでいえば『イン・ア・サイレント・ウェイ』のような感じです。抑制の効いた叙情的なトランペットを奏でます。この奏法は2000年の頃から一貫していて、この人もマイルス同様、バックのサウンドが変化しても本人はあまり変わらないタイプです。数曲ではエフェクターをかけた攻撃的な演奏もみせます。
私はこのアルバムが気に入りました。なので、2007年に出したアルバム『アルハンゲリスク』もAmazonに注文してしまいました。私の界隈ではほとんど注目されていない人ですが、気になる方は是非お聴きいただきたく。
アルバム名:『IN BETWEEN』
メンバー:
Benoit Corboz (Hammond, Fender Rhodes, Piano)
Marcello Giuliani (bass, double bass)
Marc Ervetta (drums, vocals)
Erik Truffaz (trumpet, vocals)
Sophie Hunger (on Tracks 3 & 6, vocals)
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