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現代ニューヨークの音です。

お待たせしました。今日は新譜紹介です。

P42 フランシスコ・メラ&キューバン・サファリ『トゥリー・オブ・ライフ』(2010年rec. HALFNOTE)です。メンバーは、フランシスコ・メラ(ds,vo)、エリオ・ヴィラフランカ(p)、レオ・ジェノベーゼ(p)、ユリ・ガーヴィッチ(sax)、ベン・モンダー(g)、ルキス・カーティス(b)、マウリシオ・ヘレーラ(per)、エスペランサ・スポルディング(vo)、ピーター・スラヴォフ(b)、アルトロ・ステブル(per)、ロウィー・オミシル(sax)です。メンバーと楽器のクレジットが簡略化されているので、曲によっては記載以外の楽器も出てきたりして、どこで誰が演奏しているのかはよく分りません。ライナーノーツにはもう少し詳しく記載されていますがこれも完璧ではありません。

メラはキューバ出身のドラマー、ジョー・ロバーノUs5の他、複数のプロジェクトで活動しているそうです。本作は3作目ですが、前2枚のアルバムは残念ながら未聴。このアルバムがなかなか良いので前のアルバムも聴いてみたくなりました。

共演者を見ても分かるとおり現代先端ニューヨーク・ジャズです。ただし内省的なものや難解さはあまり感じられません。もっと親しみやすさがあり、それがいいところだと思います。グループ名「キューバン・サファリ」らしく、アフロキューバン・リズムも取り入れ、そこにアフリカやその他地域のエスニック性を混合しています。こういうエスニック・サウンドというのは人種のルツボ、ニューヨークらしいと思います。

1曲目《レトログレード》はどことなく優雅な哀愁漂う曲。ピアニストのジェイソン・モランの曲です。変拍子がいかにも現代ニューヨーク。軽やかに気持ちいいアルト・サックスを吹くのはガーヴィッチ。ミゲル・セノーンやデヴィッド・ビニーに連なるアルト奏者とみました。バックのピアノのコンピングがなかなか美しいです。続くヴィラフランカのピアノ・ソロもアブストラクトな展開で気合いが入っていてよろしい。キャッチーな曲で掴みはO.K.!

2曲目《アフリカ・アン・ミス・ヴェナス》は上記のカルテットにギターのベン・モンダーが加わり、オープン・アンサンブルからファンキー系リズムのテーマを奏でます。モンダーのギター・ソロになると4ビートへ。4ビートにのって現代的バップ・ギターをかますモンダーがカッコイイ。テンポを落としてヴィアフランカのフリー系ピアノ・ソロ。ファンク系8ビートにも戻ってガーヴィッチが気持ち良さそうにソロをとるという展開はなかなかユニーク。各々のリスムを明るく叩くメラのドラムが良いです。

3曲目《トマ・デル・ポダー》はリズム・チェンジしながらの変拍子。スローな曲でほのかに暗さが漂います。これはM-BASE辺りの延長上ですね。誰が弾いているのか分りませんが尖ったエレピのソロがいかしてますね。

4曲目《ヤダン・メラ》はたぶんバンブー・フルートから始まるエスニック。エスペランサのスキャット・ボーカルは南米気分か。パーカッシブなドラムが気持ち良いです。後半はメラも一緒にスキャット。ベースはスポルディングではなくスラヴォフ。

5曲目《クラシコ・メラ》はいきなりドラム・ソロから。ファンク・ビートですね。これもM-BASE系の曲。M-BASE系の割には難解さが薄くちょっとポップでもあるのがいいところです。M-BASEがこういう感じでやっていたらもっと一般に受け入れられたと思います。ロックなモンダーのギターはやっぱりカッコイイですね。続く怪しいフェンダー・ローズはジェノヴェーゼ。この人もカッコイイです。2曲目から5曲目まではメラの曲です。

でいきなりですよ。6曲目がホギー・カーマイケルの《ザ・ニアネス・オブ・ユー》。このバラード曲をピアノのみをバックにメラがボーカル披露してしまうという展開。すごく上手いわけではありませんが、これはこれでいい味を出しています。メラの優しさが伝わってくるのです。

7曲目《ヨー・ミー》はソプラノ・サックスを吹くオミシルとの共作。頭とラストはバス・クラリネットがテーマを奏でます。バックのシンセは都会的。フュージョン系ファンキー曲ですね。ライナーノーツには”ポスト・マーカス・ミラー・エレクトリック・マイルスの範疇”なんて解説されています。確かにマーカス系のミドル・テンポ・ファンクかも?バスクラを吹いていますしね。そう思うと、シンセがハービー・ハンコックに聴こたりして(笑)。

8曲目《ジャスト・ナウ》は、ラリー・カールトン系フュージョン?モンダーのギターがいかにもフュージョンしています。今回のアルバムでは、モンダーがジャズ、ロック、フュージョン・ギターを弾き分け、それぞれに上手さを見せてくれています。2分少々のメラの曲。

9曲目《フィエスタ・コンガ》はパーカッションから。アフロキューバン・リズムの上にインド・エスニックなシンセが乗ります。こういうエスニックってニューヨークのサウンドだと思います。途中からメラが加わりリズムは一挙にエキサイト。パーカッションとドラムの共演がしばらく続きます。この元気の良いスネア弾けるドラミングこそがメラの真骨頂。

ラスト《グラッシャス・ア・ラ・ヴィダ》は静かなピアノ・ソロから。ここでまたメラのブラジル?アルゼンチン?系ボーカルが披露されます。途中にラテン・パーカッションを挟み込みつつ進行。ラテンのけだるさを感じさせます。この曲はヴィオレッタ・パラの曲。ラテン・パーカッションのパートでのヴィアフランカのアブストラクトなピアノ・ソロがキレていてイイです。この曲なんかはキップ・ハンラハンにつながりますね。

という具合でニューヨークならではの色々なテイストの曲(ラスト以外は5分台前後の短めの曲)が入っているのですが、聴き終えると統一感があるように感じます。その中心にあるのは明るく開放的なメラのドラミング。メラのコンポーザーとしての才能も感じさせるアルバムになっています。

現代ニューヨークだけれどアンダーグラウンド性は薄く、伝統的なものへの回帰もさほどなく、メラのそのバランス感覚が私にはとても好ましく感じられます。

アルバム名:『tree of life』
メンバー:
Francisco Mela(ds, vo)
Elio Villafranca (p)
Uri Gurvich (sax)
Ben Monder (g)
Luques Curtis (b)
Mauricio Herrera (per)
Esperanza Spalding (vo)
Petwr Slavov (b)
Arturo Stable (per)
Jowee Omicil (sax)

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コメント

こんにちは。
いろいろと楽しめそうなアルバムですね。

お値段も これくらいなら 聴いてみたいかもです。

このジャケットの笑顔が 曲の親しみやすさを物語っているのかな。

今後 購入予定 候補です。
いつも みなさんより すごく遅れるのですが…(笑)

投稿: マ-リン | 2011年9月12日 (月) 11時35分

いっきさん、こんにちは。

僕もこのアルバムを購入しました。
You TubeでMelaの映像を見て面白そうだと思いました。
聴くのが楽しみです。

投稿: kimt | 2011年9月12日 (月) 15時59分

マーリンさん

こんばんは。

>いろいろと楽しめそうなアルバムですね。

はいっ、楽しめると思います。

>このジャケットの笑顔が 曲の親しみやすさを物語っているのかな。

そんな感じかもしれませんね。

>今後 購入予定 候補です。
>いつも みなさんより すごく遅れるのですが…(笑)

あせらずにごゆっくりどうぞ(笑)。

投稿: いっき | 2011年9月12日 (月) 20時25分

kimtさん

こんばんは。

>僕もこのアルバムを購入しました。

いいですね~。

>You TubeでMelaの映像を見て面白そうだと思いました。

私もいつか見ました。
それが購入動機の一つでもあります。

>聴くのが楽しみです。

なかなかいいですよ。

投稿: いっき | 2011年9月12日 (月) 20時28分

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