硬派ライブ演奏の中にメラの思いが見えてくる。
今日は関連聴きの1枚。しばらく前に紹介した新譜 『トゥリー・オブ・ライフ』 が良かったので以前のアルバムも聴いてみたくなって買いました。
フランシスコ・メラの『シリオ』(2007年rec. Half Note)です。メンバーは、フランシスコ・メラ(ds,vo)、ジェイソン・モラン(p)、ラリー・グレナディア(b)、マーク・ターナー(ts)、リオーネル・ルエケ(g,vo)です。錚々たるメンツが集合しています。ブルーノートNYでのライブ録音。ジャケットの絵はちょっと怖いのですが(笑)、メラが書いたシリオ(お父さん)の横顔のようです。
ライナーノーツによると、アルバム・タイトル曲《シリオ》はこのプロジェクトが始まる少し前に亡くなったフランシスコのお父さんの名前だそうで、アルバム中の曲《マリア》はお母さんの名前、《ウリク・メラ》の”ウリク”はフランシスコの最初の子供の名前だそうです。このアルバムはお父さんに捧げられていて、家族への愛などもテーマとして含まれているようです。
ライナーを読まない段階で聴いた感想は、正に現代ニューヨークの硬派な音だと思いました。テナーのターナー、ギターのルエケ、ピアノのモランがそのテクニックや現代風個性を生かした演奏を展開するライブが繰り広げられているからです。特に1曲目《ティエラ・アンド・フェーゴ(大地と炎)》は、6/8拍子のパーカッシブなラテン系ドラミング(リズム)の上で、ターナー独特のずり上がりつつ浮遊するテナーとルエケのシンセのようなエフェクト・ギターが全面に押し出されていてその感を強くしました。
お父さんの名前をつけた曲《シリオ》も自由度が高い展開の曲で結構尖っています。途中ちょっと優しい感じにもなりますがどちらかと言えばミステリアス。その後も不穏な展開が続きます。かなりアートな曲。お父さんがフランシスコにアートとミュージックを紹介してくれたそうで、この曲はメラの”アート(芸術)”を表現しているんだろうと思います。その内容は硬派。父の名前を冠して安易に情緒的な演奏をしないところがメラなのです。
続くお母さんの名前の曲《マリア》はさすがに優しくメロディアスなワルツ曲になっています。前曲との対比がいいです。この曲ではモランのピアノが大活躍、美しいんですが微妙に影みたいなものを含ませるのがモランらしいところ。この曲もそうですが、グレナディアのベースがなかなか強靭に響く演奏が多いです。このベースラインなどはマイルス黄金クインテット時代のロン・カーターを思わせます。グレナディアのベースは意外とそのあたりを参照しているのではないかと思います。
《Pequena Serenata de Urna》(シルビオ・ロドリゲスの曲)はメラの小粋なヴォーカルが軽く入り、ルエケのスパニッシュなギターがフィーチャされます。短い曲で次の曲へのイントロのような感じです。続く《べネス》はルエケの曲なのでルエケが大活躍。根っこはパット・メセニーに繋がるカントリー/フォークで、そこにスパニッシュなフレイバーが薫っているように思います。これもワルツ曲。ドラムソロは6/8拍子?このアルバムは3拍子系の曲が多いですが、メラのドラミングはこういうリズムで良さを発揮するように感じます。
息子の名前の曲《ウリク・メラ》は頭のルエケとメラのヴォーカルが面白い効果を出しています。自然志向の開放的な雰囲気の曲で、背後にはアフリカの大地と自然が見えてくるような感じがします。メラの息子への優しい眼差しと子供の力強い生命力を曲から感じとれますね。ラストの《アフロ・サン》は現代的な響きが戻ってNY。テクニカルな曲。これは現代NYに生きる”アフロの息子”である自分達の立ち位置を示しているのではないでしょうか。
上記で作曲者を示した2曲以外はメラが作曲しています。コンポーザーとしての才能はあるように感じます。ドラム・ソロもありますが、それは曲の流れの一部を越えるものではありません。メラはトータルな音楽を作っていくタイプのドラマーです。ドラミングそのものについて言えば、元気が良いのが基本で、繊細に追い込んでいくタイプではないように思います。
最初は単に現代NYのライブだと思って聴いていたんですが、ライナーノーツを読んでからはメラの思いが見えて来るようで楽しく聴けました。どことなく暗さがあるのは2007年だからでしょうか。新作『トゥリー・オブ・ライフ』はもっと明るい感じで多彩です。それは9.11から10年経とうとしているので、NYに住む人の心から暗さ減ってきた故ではないかと私は今考えつつあります。
このアルバムはメラの意図の下メンバーそれぞれがしっかり役割を果たしたなかなか良いライブを収めたアルバムだと思いました。
アルバム名:『cirio』
メンバー:
Francisco Mela(ds, vo)
Jason Moran(p)
Larry Grenadier(b)
Mark Turner(ts)
Lionel Loueke(g, vo)
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コメント
いっきさん、こんばんは。
メラの「tree of life」はなかなかヴァラエティに富んだアルバムでしたね。
僕は2曲目が気に入りました。演奏者ではメラも良いのですが、ギターのベン・モンダーのプレイが印象に残りました。
モンダーやメラの他の参加アルバムも聴いてみたいですが、金欠なので少しの間我慢します。
そういえばMilesの東京live如何でしたか、途中で地震速報のテロップが入ったのは残念でした。
投稿: kimt | 2011年10月 1日 (土) 23時43分
kimtさん
こんばんは。
>メラの「tree of life」はなかなかヴァラエティに富んだアルバムでしたね。
はい、そこが気に入ってます。
>僕は2曲目が気に入りました。演奏者ではメラも良いのですが、ギターのベン・モンダーのプレイが印象に残りました。
2曲目は変化に富んだ曲ですよね。
ベン・モンダーは私も好きです。
>モンダーやメラの他の参加アルバムも聴いてみたいですが、金欠なので少しの間我慢します。
古いアルバムですがモンダーが参加したマーク・ジョンソンの『ライト・ブレイン・パトロール』が好きです。
>そういえばMilesの東京live如何でしたか、途中で地震速報のテロップが入ったのは残念でした。
73年のマイルスは文句なくカッコイイ。
それに尽きます。
あのステージが当時ジャスを聴いていた若者に大きな衝撃を与えたというのがよく分かりました。
投稿: いっき | 2011年10月 2日 (日) 01時47分