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「ヒップホップ・プロデューサーを聴く」③

ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた連続講演「ヒップホップ・プロデューサーを聴く」の詳細レポートの続きです。講演者は原雅明さんとDJアズーロさんです。

今回のレポート、私はヒップホップ初心者なので、誤解している可能性があることはご了承下さい。また、名前や用語の聞き間違えなどもあるかもしれませんのでご容赦願います。

今回はかけた曲と解説、私が聴いた感想や意見を分けて併記していきます。
そしてやっぱり音がないとジャズ・ファンには分からないので、YouTubeにあった音源を貼り付けます。なおここに貼った音源と当日かけたものとはバージョンが違う可能性がありますのでご了承下さい。

2.ニュー・スクール~90年代
  ボブ・パワー(ATCQ)/エディ・サンチョ(プレミア)/DITC回り/RAWKUS/
  西海岸ニュー・スクール

⑧Organized Konfusionの《Releasing Hypnotical Gases》(1991)

時に外からの目というか白人が登場してきます。ラッパー2人組。デモを作るのをポール・Cが担当していて、亡くなってしまうそうです。自分達でトラックも作りラップもしています。途中で展開して全然違うビートになっていくところはアート性が高いです。リリック自体も発射される銃弾になった気持ちで作るなど、文学性の高いリリック。よく練られたビートにのっています。頭の音響が面白いエフェクトでコラージュ的。同じ速さのビートが変わるところなど、クリエイティブで面白いとのことでした。

水のあぶくの音が面白いです。ビートが速くてバスドラが突っ込み気味。けいれん系ビート。フルートが効果的。サビがかなりエレクトリック。これもハービーの『ディス・イズ・ダ・ドラム』の中にある曲のビートに似ていました。もちろんハービーは後追いでここまで尖ってはいません。3年後のアルバムです。これはかなり気に入りました。こういう凝ったサウンドはジャズ(フュージョン)好きには受けると思います。(ピンク字は私の感想や意見などです。)

⑨Gang Starrの《Take It Personal》(1992)

DJプレミアのプロデュース。元のビートは超有名なもの。音の粒立ちがはっきりしたファットな音ではなく、あえて遠い音でレベルを小さめにしています。ドラムをパーツごとに切り分けて打ち込み直すチョップという手法を使っています。これもミニマル感があり、元のビートを匂わせつつ別な世界を立ち上げています。フレーズだけでなく音響的に凄く変えています。ドラムが何で小さいのかと思うが、クラブで聴くとビートになるそうです。バラバラだけれど聴くとワンループ。元のブレイクを知っていて「こう変えてきたか?」と楽しむもの。

これはバスドラのビートが強力。これも『ディス・イス・ダ・ドラム』あたりのビートに近いです。発想が貧困な私(涙)。だってこれくらいしか知らないんです。

⑩INIの《Fakin' Jax》(1996)

プレミアと双頭をなすピート・ロックのプロデュース。これも③⑥と同様に《Impeach The President》のブレイクビーツ。「3回も登場するなんてどれくらい好きなんだ。」とおっしゃっていました(笑)。音にピート・ロックならではの特色があります。この頃のサンプラーはMPCになっていたがSPを使っています。レコードをサンプリングする時、レベルをオーバーさせて取り込むことで音にパンチが出ています。サンプリングでバラして組み変えるというピート・ロックの個性が出ています。頭にドロシー・アシュビーのハープの音が入っています。「ここでレコードで聴くと良い。」とお2人。

マイルスの『ドゥー・バップ』に似たサウンドでした。う~む、またしても貧困な感想(笑)。ハイハットが効いています。「このブログを書きながらではなく、「いーぐる」で聴いた時の感想ですよ。

⑪Ghostface Killahの《Daytona 500》(1996)

ボブ・ジェームスの《ノーチラス》をサンプリングしています。ヒップホップでよく使われるそうです。ミニマルな作りではなく、色々なネタを取ってくるそうで、映画やTVからもサンプルを取っているとのことでした。クラシック・ブレイクをアートフォームが複雑化していく中でモロにそのまま使っています。プロダクション的に洗練されてきて音が良くなってくる中で音の悪さがフレッシュに受けとられ、難しく考えなくて良いということになったそうです。考えていない身体感覚に忠実な作り方です。ここで聴いてボーカルがでかいことが分かったそうです。

ゴスペル調の歌で始まります。歌の後半の方でマイケル・ジャクソの何かの歌に似ている瞬間があるのですが・・・?拍手や歓声はデイトナ500レースの観客の音?途中のリズムの切れ目が凄いです。スクラッチも強いですね。ギターの音をつぶした感じでロックっぽい?(上記のとおり、ボブ・ジェームスでした。)ちょっとチープな感じが面白いです。ボブ・ジェームスの元ネタをYouTubeで聴きましたが、かなりイメージ・チェンジしてワイルドになっていますね。

⑫Artifactsの《Art of Facts》(1997)

ショーン・J・ピリオドがプロデュース。この時期、QティップやJDからの影響があり、ショーン・J・ピリオドもその影響を受けています。凄くビートが立ってタイトになっています。ある時期からサンプリングしないで、自分で弾いて自分で録るようになります。この時期、JD的なものが一気に出てきました。トライブ・コールド・クエストの4枚目などの音作りの方向性。これまでビートが太いファットなものがヒップホップの音像のスタンダードだったが、そこからずれてきています。スネアが”スカーン”と鳴りリバーブの余韻がファットさになっていたのが、ここではスネアが”カッカッ”とリムショットみたいになり耳に痛いものになっています。低域フィルターで音が切りきれず”モワモワ”しているのがヒップホップのファットさだったが、この頃はもっと低い所でベースが動いています。これは変な感じで最初は受け入れられなかったそうです。クラブで聴くと気持ち悪いそうです。ここから1、2年で新しい傾向になり、エリカ・バドゥがこういう音でやったりして当たり前になっていきます。

これはディープな重いビートでどこかで聴いたことがあると思いました。解説を聞いて分かりました。エリカ・バドゥの『バドゥイズム』でした。私のお気に入りアルバム。このアルバムはオーディオ・チェックCDとしてオーディオ方面で一時期使われました。低音のチェックです。スピーカーの低域が伸びていないと低音が音になりません。途中の音切れが大胆。スクラッチがアクセント。

⑬Company Flowの《Bad Touch Example》(1997)

この時期、NYのアンダーグラウンドにヒップホップがたくさん出てきてメインに対抗します。このカンパニー・フロウは白人。めっちゃ暗くて病的。突然変異的にシーンにあらわれました。カンパニー・フロウによってアンダーグラウンドが暗黒化。ボビー・ハッチャーソンのヴァイブラフォンをサンプリングしています。サンプラーの良い意味でのロー・ファイです。メンバーの人(名前を聴きもらしました)がサースティ・イヤー(ジャズのフリー系レーベル)からソロ・アルバムを出しています。サンプリングからジャズとかの文脈が見えてきた頃です。

タイトな低音、締まったアコースティック・ベースが凄い。ジャズの匂いが強いです。ヴァイブのような音(ボビー・ハッチャーソン)が幻想的。トランペットの音も入っています。これがめっちゃ暗いと言われ、それほど暗く感じなかった私の”耳の暗さ偏差値”が分かって面白かったです。これは私が好きなNYアングラの雰囲気で、その病的なところとかが私好のみ。ヒップホップとジャズのオーバーラップとしてこれなんかはカッコいいです。そういえばサースティ・イヤーから出たマシュー・シップの『ヌー・バップ』(2002年)とかヒップホップ系のビートも使っていますね。

⑭Aceyaloneの《Human Language》(1998)

オーネット・コールマンの《ロンリー・ウーマン》をそのまま使っています。マンブルズという西海岸の白人トラックメイカーが作っています。マンブルズはシャメク・ファラー(だったと思う)の息子。ヒップホップにはジャズマンを親に持つ人が結構いるそうです。東海岸ではマリオン・ブラウンの息子がヒップホプのプロデュースをしてきたそうです。マンブルズはスクラッチの考え方にコルトレーンの即興性を引き合いに出したりしています。西海岸ではフリー・ジャズとかに対して東海岸よりもっと自由。西海岸では過度に商業化されずアート性が残っています。大きなビジネスになると(著作権の問題で)サンプラーが使えないなどがあり、アートとしてダメになっていきます。ヒップホップがNYから西海岸に移ることになっていきます。

ロック的ドラムの8ビートでスネアがメインとなるビート。このあたりのヒップホップは中山さんが考えているストーリーに乗るものなんでしょう。中山さんが注目する西海岸ヒップホップ。商業性はあまりなくアート性が高いとか、フリー・ジャズへの接近とか、なるほどと思いました。マイルスが見た未来はここら辺にあるのでしょうか?⑬⑭は中山さんのジャズ・ヒップホップがらみの選曲ですよね?

⑮Gravityの《Back To The Essence》(1998)

これまでとは別な文脈。スウェーデンのレーベルから出たもの。クラッシュのミックス・アルバムに入っていて日本で小ヒットしました。どこでかけても良い音がするので、アズーロさんが聴きたかっただけだとか(笑)。インストゥルメンタルなビートで当時ヨーロッパのロンドン以外の場所で出てきたものの一つです。

かなりサイケな雰囲気の入り。重いビートでかなり下の下まで出ています。上ものは浮遊系。インストでアブストラクトな感じはDJクラッシャらしい選曲だと思いました。

今日はここまでにします。次回は最終レポート「~現代」です。

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