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「いーぐる」連続講演「ヒップ・ホップ前夜」(後編)

先週土曜日に ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた連続講演:鷲巣功さんによる「ヒップ・ホップ前夜」の後編です。

YouTubeに上がっている動画を貼っておきますが、当日かけたものとは違うバージョンがあるかもしれないのでご了承ください。

12.Fab Five Freddyの《Change The Beat》 ’82

機械が導入されると楽曲がいらなくなり、高度な音質が作れるようになります。DJはターンテーブルからサンプリングマシーンを使うようになりサンプリングループを作るようになっていきます。日本の楽器メーカー:ローランドやコルグやヤマハなどの機械が人気で、サンプリングマシーンなど違う使われ方がされていきます。私はここにY.M.O.のテクノとメイド・イン・ジャパンの安くて高性能という時代背景があると感じます(ピンク字は私の意見/感想/注釈など)。これは新しいサウンドを聴いてほしいとのことでした。ハービー・ハンコックの《ロック・イット》のビートとサウンドにかなり近いです。セルロイド・レコードから出たもので、初のフランス語ラップ(フランス人女性ラッパーBesideによる)とのことでした。セルロイドと言えばビル・ラズウェルの自主レーベルです。ネットでこれについて調べたら、プロデュースは”マテリアル”で、その”マテリアル”のバインホーンがシンセとドラムマシーン、ラズウェルがベースで参加していました。どうりで《ロック・イット》に近いわけです。

講演後の質問コーナーで、「これはここまでにかかったものとだいぶビートが違って聴こえたのですが、こういうものは当時他にも多く出てきたのですか?」と鷲巣さんに質問しました。鷲巣さんの答えは、機械が広まり、その中で人間がやらないようなビートが自然に出てきたのではないかというようなものでした。

今思ったことは、こういうビートに”マテリアル”が深く関わっていたとなると、翌83年に出たアルバム『フューチャー・ショック』(《ロック・イット》収録、ハービー・ハンコックとマテリアルが組んで出したもの)はラップ抜きのインストなわけで、こういうビートとサウンドがヒップホップ界に与えた影響は少なくないのではないかと想像しました。

13.West Street Mobの《Break Dance》 ’83

サブ・タイトルの”エレクトリック・ブギー”は、ロボット・ダンスのための音楽とのことでした。そういえばその後ブレイクダンスが日本でも大ブレイクしましたね。懐かしいです。ファンキーなサウンドをひきずりつつ、スクラッチの感じは《ロック・イット》と同じです。私にとってはこんな感じがヒップホップのビートのイメージに直結しています。ボコーダーはテクノの懐かしイメージ。コンガも活躍。

14.Grand Mixer DSTの《Home Of Hip Hop》 84’

《ロック・イット》で有名になったDJ。割りとポップな感じです。ロックなギターが出てきたので、Run-DMC(私にとってはエアロ・スミスとの《ウォーク・ディス・ウェイ》ですが)と似た感じに聴こえました。音のネタはロックからとっているとのこと。なるほどだからなんですね。

ここで鷲巣さんの講演のプログラムになかったものを挿入します。
鷲巣さんの講演にたいして失礼になるとは思いますがお許し下さい。
これを入れるとしっくりくるのです。

ハービー・ハンコックの《ロック・イット》 ’83

見ていて当時の記憶がよみがえってきました。これを見た20歳の私はここに映っているカルチャーにショックを受けたのでした。私にとっての”フューチャー・ショック”は”カルチャー・ショック”でもあったのでした(笑)。それにしても後追いでありながらヒップホップの最先端に合流し、これを世界的にヒットさせたハービーってなかなか凄いですよね。そしてジャズ界で無視されているようなこれが、ヒップホップ界だけでなくアメリカ音楽界に一定の影響を与えたであろうことは想像に難くないのです。

15.Duke Booteeの《Bust Me Out》 ’84

80年中等は録音技術や電子技術の実験的な場がヒップホップだったそうです。超高域/超低域サウンドが広がり、ハリウッド映画にも影響を与えているなんて話がありました。この時期の最高傑作の一つ。当時ヒップホップの人がフルアルバムを作るのは難しかったそうです。それはアルバム1枚分聴かせるだけの曲を作れなかったからで、この曲が収録されているアルバムは、この時代の唯一通して聴けるものとのことでした。いや~っ、これは最初のほうを少し聴いただけでヤバイと思いました。凝ったサウンドですし、音に刺激があり尖っているのです。ですよね?ジャズ耳でもGoog!昨日書いた9番目の《The Massage》に参加していた人がこちらにも参加しているとかで(この音のカッコ良さに浸っていて、肝心なところを聴き逃しました)、鷲巣さんは今日聴いてサウンドが《The Massage》に似ていることに改めて気づいたそうです。なるほど、私がカッコイイと感じる匂いみたいなものの共通性が裏付けられてちょっとビックリ。

16.Malcolm Xの《No Sell Out》 ’83

メッセージ性を含むということでの選曲。マルコムXの演説を使っています。普通にカッコいいでしょ。私はこのビートがカッコいいと思うのです。これって《ロック・イット》とつながっていますよね。’83のリズム・トレンドということなのかしら?

17.Gil Scott Heronの《Re-Ron》 ’84

Gilは音楽詩人とでもいう人でかなりのインテリだそうです。ジャズの世界でも詩の朗読をする人はいましたがもう少し音楽的。ソウルだけれどちょっとジャズっぽいものです。詩の内容はアメリカに住んでいないと分からないもので、ロナルド・レイガンの再選を歌っているのではないかとのことでした。政治的なものにラップ・ミュージックが利用されたりしたそうです。ひとつ前のマルコムXに似ています。途中のサビみたいなのが俗っぽく、いい声で朗読しているのもちょっと、朗読ってそういうものでしょうけどね。カッコ悪いとは思いませんが私には微妙なところ。

この曲だと思うのですが、最初CDのトラッキング不良があって、音が飛び飛びで進みませんでした。でもそれを聴いた私(皆さんも)、とても尖ったヒップホップだと思って聴いていたようで、これがトラッキング不良だと分かった時はどよめきが起きるというハプニングがありました(笑)。その後CDを掃除して無事これを聴くことができました。私は「グリッチ」と呼ばれるこういう効果の音のカッコ良さを認識(笑)。

18.Afrika Bambaataa & James Brownの《Unity》 ’84

アフリカ・バンバータはビル・ラズウェルと組んでアルバム(セルロイド・レコード)を作ったりしています。この頃絶頂期だったバンバータ。黒人の地位向上を訴えたそうです。「一緒になろう(Unity)」と明るく楽しく歌っています。これはJBなんでソウル入ってます。ベースがマーカス・ミラーみたいですね。ヒップホップとかどうこうではなく楽しい!

19.Chaka Kahnの《I Feel For You》 ’84

84年以降ヒップホップが普通の音楽になります。ラップが普通の世界へ顔を出すようになります。その上手くいった例。高度な内容です。《The massage》のG.M.F.& F5のメンバーのメリー・メルが頭とラストでラップしています。これは当時ヒットしましたね。冒頭の部分は強く記憶に残っています。ポップな音です。私にとってはバブリーな音としても記憶に残っています(笑)。「ゴージャスな音。」と鷲巣さん。こういう豪華な作りの最後の頃のものだろうとのことでした。

20.Run-DMCの《Rock Box》 ’84

ヒップホップが一般的になってから登場。鷲巣さんは「ちょっと違う。違うな~、これは何だろう?」と思ったそうで、この頃からヒップホップから離れたそうです。ファンキーなヒップホップの人がいなくなったんだとか。鷲巣さんは、「ヒップホップは頂点を極めるのも速いがいなくなるのも速い。練習とかではなく才能であり、そのため時代に対応していけなくなる人も多い。それはヒップホップらしい。」とおっしゃっていました。サウンドがなじめないし、短いフレーズのラップが好きではないとういうようなお話でした。サウンドがロックなんで意外でした。まっタイトルが《Rock Box》ですからね。エアロ・スミスと共演するのもうなずけました。鷲巣さんがヒップホップと決別した気持は、私には今のところ残念ながら実感が湧きません。

ヒップホップの4要素は、ラップ、スクラッチ、ブレイクダンス、グラフィティとのことでした。「最近の日本ではルーズな服と生意気な態度だけれど。」と鷲巣さんは苦笑していました。

ということで講演終了。

質問コーナーでは質問するとCDをプレゼントしてくれるということで、私は上記の質問をしてCDをいただいてしまいました。鷲巣さん、粋な計らいありがとうございました。

鷲巣さんは「いーぐる」のオーディオの音がいいとしきりにおっしゃていました。アナログは音が悪いと思っていたのに凄くいい音だったと感動されていました。それで講演後にマイケル・ジャクソンの《ビート・イット》の12インチ盤をかけるということに(笑)。これも気持ち良い音で鳴っていましたよ。私はもう「いーぐる」の良い音には慣れちゃっているので、いつもどおりだと思っていたのですが、鷲巣さんはかなり参ってしまったようです。「ジャズ・ヒップホップ学習会」にゲストで来た原雅明さんも同様なことをおっしゃっていましたね。クラブで聴いた時にはマスクされていた細かい音が見えてきて発見もあったというようなことを雑誌に書いていました。

今回の講演は79年から84年までというわずか6年間のものです。この時期にヒップホップが急速に進化していく様子が分かりました。私にとってのヒップホップ=『フューチャー・ショック』の位置づけがほぼはっきりしました。とても楽しい講演でした。

鷲巣さん、後藤さん、皆さん、ありがとうございました。

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コメント

こんばんは。
チャカ・カ-ン 懐かしいです。彼女の歌唱力も凄いですよね。

ブレイク・ダンスも懐かしい〜
映画 『フット・ル-ス』でも流行りましたね。
頭でグルグル(笑)
ヒップ・ホップ、 最近では スケ-トの高橋選手が 白鳥の湖をヒップホップで滑って好評だったのが思い出されます。

楽しい記事を読ませていただきました。

投稿: マ-リン | 2011年8月 9日 (火) 00時06分

マーリンさん

こんばんは。

>チャカ・カ-ン 懐かしいです。

ですよね~。

>彼女の歌唱力も凄いですよね。

はい、凄いです。かっこいいです。

>ブレイク・ダンスも懐かしい〜

これまたですよね~。

>映画 『フット・ル-ス』でも流行りましたね。
>頭でグルグル(笑)

ケビン・ベーコン主演ですね。
”フッ、ル~ス、フッ、ル~ス、ホニャラララ~”(笑)
主題歌も流行りました。

>ヒップ・ホップ、 最近では スケ-トの高橋選手が 白鳥の湖をヒップホップで滑って好評だったのが思い出されます。

そうなんですか。

>楽しい記事を読ませていただきました。

お読みいただきありがとうございました。

投稿: いっき | 2011年8月 9日 (火) 00時25分

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