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「ヒップホップ・プロデューサーを聴く」②

昨日は ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた連続講演「ヒップホップ・プロデューサーを聴く」に行ってきました。概要と私の感想については前回のブログをご覧下さい。今回は内容の詳細レポートです。講演者は原雅明さんとDJアズーロさんです。

原さんは下記の本の著者、興味深い音楽評論をされています。
DJアズーロさんはDJだけでなく色々多岐にわたる活動されている方で、本の編集とかもされているそうです。

今回のレポート、私はヒップホップ初心者なので、誤解している可能性があることはご了承下さい。また、名前や用語の聞き間違えなどもあるかもしれませんのでご容赦願います。

今回はかけた曲と解説、私が聴いた感想や意見を分けて併記していきます。
そしてやっぱり音がないとジャズ・ファンには分からないので、YouTubeにあった音源を貼り付けます。なおここに貼った音源と当日かけたものとはバージョンが違う可能性がありますのでご了承下さい。

最初に原さんから、今回の講演は後藤さんからの依頼であるとともに、ここでアナログ盤を聴いて良かったことと、サウンド面からヒップホップを聴くと発見があるということでやることになったという説明がありました。

前回中山さんの「ジャズ・ヒップホップ学習会第4回」にゲストとして講演した時には《ロック・イット》やオールド・スクールやエレクトロっぽいものをたくさんかけたので、今回はそれ以降のサンプラーが出てきてからの音をかけるとのことでした。

1.オールド・スクール~ミドル・スクール
  マントロニクス/マーリー・マール/セッド・ジー/ポール・C/トニー・Cほか

①Just-Iceの《Cold Gettin' Dumb》(1986)

まずはマントロニクスがプロデュースしたものということでかけました。ローランド(TR-)909というドラムマシーンや、ミュー(E-MU)SP12のサンプラー(シーケンサー、ドラムマシーン一体型)を使っているとのことでした。これらの機械は80年代に出てきて使われたのは80年代後半。サンプラー主体のヒップホップは80年代半ばのこと。ドラムマシーンやエレクトロはその後テクノへ行ってしまったそうです。デトロイト・テクノとかブラックミュージックです。サンプリングのメモリー容量が少ないからできないということもあるが、ミニマル・ミュージックの流れもくんでいるとのことでした。サンプラーの限定的な使い方です。

鐘の音が特徴。かなり尖って聴こえました。リズムは比較的シンプル(上記解説のとおり)。かなりカッコイイと思いました。(ピンク字は私の感想や意見などです。)

②Ultramagnetic MC'sの《Ego Tripping》(1985)

サンプリングできる時間が増え、数小節単位をサンプリングしてループするようになります。セッド・ジーのプロダクション。この人はサンプリングを極めた人です。曲名は聞きもらしましたが、その曲の1小節(ブレイク)。この頃珍しいブレイクビーツを探し、サンプリングしてレコードを作るというのが主流になります。レコードを2枚使ってDJがやっていたことを、サンプリングでできるようになります。このアルバムの音作りの全体を影で支えたいるのがポール・C。1曲のみこの人がプロデュースしたことになっているが、アルバム全体の監修をしているそうです。ポール・CはNYにいたアイルランド系白人で、NYブルックリンでは伝説的な人。リスペクトされているとのことでした。

リズムは複雑になってドラム(バスドラ)のビート主体。何とも簡単な感想(涙)。こうしてYouTubeで改めて聴いてもかなりカッコイイですね。

③Super Lover Cee & Casanovaの《Do the James》(1987)

アズーロさん的最高傑作。この曲は講演の質問コーナーでアンコールになりました(笑)。曲を聴き終わった後、「(「いーぐる」のオーディオで)これが聴けただけでもいい。最高!」とアズーロさん(笑)。プロデューサーのポール・Cは24才くらいで亡くなったそうです。スタジオに勤めてエンジニアとして働いていた人。サンプラーを使ってスタジオに入ってやるパターン。マニピュレーター的やり方。サンプラーの使い方を教えたり教えられたりしながらやっていたとのことです。音の出し方とか後のヒップホッププロダクションの基本。キック(ドラム)の出方とかはここで完成してしまったそう。フェードアウトしていく時のダブ的処理など、音響的センスに溢れていた人だそうです。

叫びとか少しエフェクト系の音が面白いです。バスドラの刻みは確かにカッコイイ。YouTubeの音がしょぼいのが残念。「いーぐる」で聴くと別次元でしたよ。

④Eric.B & Rakimの《Paid In Full (Seven Minutes of Madness - The Coldcut Remix)》(1987)

毛色が少し変わって、UKのアーティストがアメリカのものをリミックス。リミックスするものがかなりとんでもないもので、アメリカのヒップホップに影響を与えました。イスラエルの歌手を勝手にのせています。ビートも加えて1曲で聴かせる構造になっています。アメリカのネタ堀とイギリスのブレイクビーツがリンクしていた頃で、世界中の人がブレイクビーツを探していた時期です。当時ビートにフォーカスする空気があったそう。ネットでつながっていないのに同じ事をやっていたのが面白いとのことでした。サンプラーが高かったのでカセットの4トラックとかで作っていたそうです。

ハイハットがアクセント。コンガが入っています。インド系女性ボーカル?(イスラエルでした)がUKらしいかも?ベース・ラインがカッコイイ。

⑤Jungle Brothersの《Stright Out The Jungle》(1988)

ビートがありつつネタ使いに関して更に深いところへ入って行きます。90年代ニュー・スクール。ここまでJBだったりファンクビートを使っていたところから、ネタの幅を広げた「そうなるか。」という過渡期のものです。こんなベースが入っているのはここで聴いて分かったとのことでした。ジャングル・ブラザーズ、デ・ラ・ソウル、ア・トライブ・コールド・クエストなどが80年代後半に出てきたそうで、これまでとちょっと毛色が違います。大学生がやっていて、ちょっとインテリジェントなものです。ラップがアッパーな感じではなくもっと自然体。ビートだけじゃなく、ギターやホーンなども元ネタから音を抽出。フィルターという音を抽出する手法を使っています。ビートだけでなく上物も探すようになり、ここからヒップホップが成熟していくそうです。この曲は、空間があり、ちょっとダブに通じる隙間感があります。ダブが必ず入っているのは、サウンドシステムあっての表現で、後の音響派に通じます。ミニマルで空間があってディレイというのは基本となると思って選曲したそうです。

いくつかのパーツの組み合わせ。ビートが単調でなくベースが効いています。コンガも入っています。途中で色々変化。

⑥EPMDの《So Whatcha Sayin'》(1989)

曲を聴いた後、「気持ち良すぎ。本当にいい曲。」とアスーロさん。3曲前位に聴いた《Do The James》同様、《Impeach The President》のブレイクビーツと同じものを使っているそうです。コンプレッサーでスレッショルド(しきい値)を下げて音をつぶしています。クラブで聴くとモコモコしているが、ここで聴くといいとのことでした。ある種のミニマル。そぎ落としたビートにラップがのります。サビはDJのスクラッチのみ。

これはファットな低音が凄かったです。トリップ感がありました。ベース音を加工?途中でスクラッチ系の音が多用されていました。なかなかカッコイイです。

⑦Poor Righteous Teachersの《Shakiyla》(1991)

トニー・Dが聴きたいということで選曲。サンプルの下にキックの”ブーン”というサブ・ベースが入っていてセンスがいいそうです。トニー・Dはイタリア系白人で数年前に亡くなりました。ヒップホップのプロデューサーは意外と白人がいるそうで、最初に出たマントロニクスはジャマイカ系。

どこかで聴いたことがあると思ったのです。ハービーの《ロック・イット》かと思ったら、ハービーの『ディス・イズ・ダ・ドラム』(1994年)の1曲目《コール・イット95》(タイトルが笑える)に似ていたのでした。家で聴いたらピアノのフレーズとかはこれのパクリにみたいです(笑)。かなり似ていますよ。しかもその上で、マイルスみたいなウォレス・ルーニーがトランペットを吹いています(笑)。『ドゥ・バップ』の先をハービーがやったのかも?

ということで、今日はこれにておしまい。次回は「ニュー・スクール~90年代」。

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