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突然ですが、ソニー・ロリンズ

新譜紹介もあと2枚ほど残っていますがそれはまた後ほど。今日紹介するのは私が初めて買ったサックス・トリオのアルバムです。

P176_2 ソニー・ロリンズ『ウェイ・アウト・ウエスト』(1957年rec. CONTEMPORARY)です。メンバーは、ソニー・ロリンズ(ts)、レイ・ブラウン(b)、シェリー・マン(ds)です。カウボーイに扮したロリンズがサックスを持っってポーズをとるおとぼけジャケットで有名な1枚。ロリンズのサックス・トリオのアルバムとしては、東の『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』に対する西の『ウェイ・アウト・ウエスト』です。

私がジャズを聴き始めた30年ほど前、最初に買ったロリンズのアルバムは『リール・ライフ』でした。アルバムを聴いて、噂どおりの歌心で豪快にブローし、現代(80年代)を颯爽と歩んでいたロリンズに惚れました。余談ですが、ジャック・ディジョネトのドラミングに惚れたのもこのアルバムです。私にとっては現代を生きるジャズ・ジャイアントというのがロリンズの最初の認識。名盤『サキソフォン・コロッサス』の人ではありませんでした。現代からさかのぼって過去のアルバムを聴いていくというのが私のロリンズ体験です。

さて本題。過去のロリンズを聴こうと思って最初に買ったのが実はこの『ウェイ・アウト・ウエスト』なんです。何で『サキコロ』より先にこれを買ったのか?今となっては思い出せません。サックス・トリオと言えば名盤『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』だってあるのに、当時オーディオ趣味のほうが勝っていたので、意外と音質という点でこれを選んだのかもしれませんね。

ポップ・ロックからジャズに入った私は、当時ソロものとかデュオものとか音が少ないものは敬遠していました。だってポップスやロックってほとんどのものが音を詰め込みまくっていて、そういうのに慣れてしまっていて、そういうのが好きだった私は、音が少なくなるものをどう聴いていいのか?どう間を持たせればいいのか?分からなかったからです。だからこのアルバムもサックス・トリオという音の少ない編成にちょっとためらいがありました。でもロリンズの歌心がよく出ているなんて言われていたのでこれを買うことにしました。も一つ本音を言うと『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』はイメージが怖そうだったので避けました(笑)。

で、これを買って聴いて、冒頭の《おいらは老カウボーイ》を聴いて力が抜けたのは事実(笑)。シェリー・マンの馬の蹄の音を真似た”チャッカ、ポッコ、チャッカ、ポッコ”にはちょっと参りました。でもこれがロリンズの大らかなイメージにマッチしていると思って納得した覚えもあります。ほんと、大らかに楽しそうにテナーを吹いているロリンズ。こういうジャズもいいな~と、緊張感を強いられるだけがジャズじゃないんだと思いました。

音の少なさ、間の多さも悪くないと感じました。それはコンテンポラリーのリアルで明確な録音のせいもあるでしょう。”シャキッ”としたシンバルやスネア、粒立ちのよい”プリッ”としたベース、太くブリリアントなテナー、音そのものばかりでなく、それらの間に存在する空間を意識できるだけでも楽しめました。そういえば、コンテンポラリーの音の良さを私が最初に認識したのは、アート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』ではなくこのアルバムでしたね。私って意外と世間的な常識とズレながらジャズを体験してきました。

そういう音の少なさ、間の多さの中から浮かび上がってくるのはロリンズの歌心。いやっ、レイ・ブラウンとシェリー・マンの歌心も浮かび上がってきますね。「いいな~。」と思いましたよ。当時私にとってはマイナス要因アリアリのこのアルバム。というわけで、聴いてみれば結構好きなアルバムになってしまいました。どの曲が一番好きかと聞かれれば、タイトル曲《ウェイ・アウト・ウエスト》ですね。ロリンズだけじゃなくレイ・ブラウンもシェリー・マンも一番輝いているのがこの曲だと思います。そういえば、FM-NHKの「ゴールデン・ジャズ・フラッシュ」のロリンズ特集の時、この曲をかけたという記憶がしっかり残っています。

私の好きなロリンス盤。聴いていない方は是非!

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コメント

いっきさん
こんばんは、先ほどは拙ブログへの書き込みありがとうございました。

私の場合はいっきさんとは逆で、最初のピアノレスは『ヴィレッジ・ヴァンガード』でした。
たしかに、怖いイメージはありました。
でも、怖いもの見たさで聴いているうちに虜になってしまいました。

長い間、『ウェイ・アウト・ウェスト』は、ヴァンガードに比べるとスカスカな感じがして、同じ編成なのに、どうしてこうも音の密度が違うんだろうと思ってました。ま、片方はブルーノートですからね、迫力が違いますです。

でも、大学生のときの体育合宿で目覚めました(笑)。

体育の単位が足りなくて(一回も授業に出ていなかったので)、参加すれば単位をくれるという山梨にあるプール付きの旅館に体育合宿に行った際、現地集合だったの、私はデカいラジカセも持って行ったんですよ。各駅停車の電車の中で、車窓から山や川の風景を見ながら、ずっとラジカセを大ボリュームでかけていたのです。車掌さんに何度も注意されながら(笑)。

そのときかけ続けていたのが、ロリンズの『ウェイ・アウト・ウェスト』でして、同行したジャズ研仲間たちと(ジャズやってる連中はみんな怠惰なのか、私と同様、まったく授業出てなくて、単位が足りない人ばっかりだったのです)、日本はええ国だなぁ~なんていいながら、《ワゴン・ホイール》を聴いてました(笑)。

その時以来かな、なんだかスカスカにも感じるのだけれども、3つの楽器の距離感がとても心地よく感じるようになってきたのです。

このとき持っていった音源は、あとはバド・パウエルの『イン・パリ』や、ケニー・ドリューの『アンダー・カレント』なんかもありましたが、山梨県の山と川の夏の風景には『ウェイ・アウト・ウェスト』が一番しっくりときた。

『ウェイ・アウト・ウェスト』が好きになったのは山梨県の風景のお陰です(笑)。

余談ですが、合宿が終わると現地解散だったので、私の趣味で、武田勝頼が自刃したといわれる生害石のある「武田家終焉の地」天目山にもジャズ研連中と行きました。
そのときも、私が片手に持っているラジカセから『ウェイ・アウト・ウェスト』が流れていました。

天国の勝頼さんもロリンズを好きになってくれたかもしれません(笑)。

投稿: | 2011年7月12日 (火) 01時27分

雲さん

こんばんは。
今日は寺久保エレナさんのライブを観てきました。
初々しかったです。
すっかり返事が遅くなってしまいました。

長文コメントありがとうごさいます。
雲さんの『ウェイ・アウト・ウエスト』開眼体験、面白く読みました。
なるほど、聴く環境が違えば音楽の聴こえ方も違ってくるものなんですね。
ジャズを部屋で聴く私にいはない体験です。
山梨の長閑さが『ウェイ・アウト・ウエスト』にマッチするというのは、そのとおりな気がします。

投稿: いっき | 2011年7月12日 (火) 23時15分

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