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今日は新譜紹介。プリズムです。

今日は新譜紹介です。新譜といってもいつもの如く出てからだいぶ経過してしまいました。昨日がロリンズで今日がプリズム。全く脈絡がないところが私らしくていい(笑)。

P177 プリズム『ファイブ』(2009年rec. PULS LOIN MUSIC)です。メンバーは、プリズム:ピエール・ド・ベスマン(p,rhodes)、クリストフ・ウォーレム(b)、ベンジャミン・エノック(ds)、ゲスト:ロザリオ・ジュリアーニ(as)、マヌ・コジャ(g)です。フランスのピアノ・トリオ「プリズム」がゲスト2人を迎えて演奏したライブ録音盤。

私が「プリズム」を知ったのは杉田宏樹さん著「ヨーロッパのJAZZレーベル」です。フランスの新感覚派のカッコいいピアノ・トリオのようだったので、中古CDを見つけて買ったのが最初です。サード・アルバム『タイム』でした。その後中古CDはあまりみかけることはなく、一昨年セカンド・アルバム『セカンド・プリズム』を見つけて即ゲット。私が持っているのは2枚のみです。ファースト・アルバム『プリズム』と4作目『オン・ツアー』は廃盤みたいで中古市場でも高値のようです。

4枚のアルバムを出した後は活動休止状態だったみたいで、しばらくぶりにこのアルバムが出ました。このアルバムもAmzonでは再入荷見込みが立っていないという表記になってしまっています。日本で上手く売り込めば売れると思うんですけどね~、これ。ちなみにベスマンもウォーレムも個人名義でアルバムを出しています。ベスマンは「ムタン・リユニオン・カルテット』のピアニスト。エノックはロザリオ・ジュリアーニのアルバムに参加したりしています。

ゲストの2人について。アルトのジュリアーニは自分のアルバムでエノックを起用している繋がりからゲストとして呼ばれたのでしょう。ギターのコジャは私の知っているところではトランペットのエリック・トラファズのアルバムに参加していました。多分フランス人で、コンテンポラリー系のジャズをやっています。2人とも音楽性はプリズムにマッチしています。全8曲中、3曲にジュリアーニ、2曲にコジャが加わります。2人同時参加している曲はありません。

1曲目《リフレクション》からハード・ドライビングな曲でぶっ飛ばします。特にジュリアーニの熱いブローが凄いです。ジュリアーニのアルバムに『トリオ・オスティコ』というハード・フュージョン系サックス・トリオ(ドラムはエノック)のアルバムがありますが、それの再来ですね。この曲の冒頭しばらくはサックス・トリオになっています。こういうブローは痛快。ドラムのエノックが煽る煽る、叩く叩く、この人のドラミングのキレとパワーは大したものです。

ゴンゴン弾くベース。途中からベスマンがバックでコードをぶつけてきます。ベスマンのピアノ・ソロはテクニカルだけれどメロディアス。途中からはエレピに変えたりして熱く迫ってきます。エレピの最後の方はフレージングが70年代ハンコック似。感覚としては現代最先端というよりもう少しレトロな方に足を置いて立っていると思います。そこが逆に誰にでもなじみやすいと思います。

2曲目《シークレット・ワールド》はタイトルどおりちょっとダークで神秘的な感じのメロディー。ちょっぴりエスニック風味もあります。スローナンバーでベスマンはエレピに専念。じっくりじわじわ盛り上がるジュリアーニのソロがここでも秀逸。エノックはマレットで”ドロドロ”と煽ります。ベスマンのエレピ・ソロは尖がりつつもやっぱりメロディアス。サウンドは意外と70~80年代だと思います。70~80年代フュージョン・ファンなら絶対気に入ると思うのですがどうでしょう。

3曲目《デンプス・デンス》はプリズムのみ。ピアノ・トリオです。上記2曲が8ビートだったのに対して、ここでは4ビート。こいうトリオ演奏ではベスマンは現代先端系演奏。地に足をしっかり付け現代的なちょっと捻ったフレーズで迫ってきます。ベースとドラムも現代的な4ビートを遺憾なく繰り出しています。エノックのドラム・ソロが強烈。アントニオ・サンチェスなんかと似た傾向ですが、アートよりパワーに的をおいています。エノック、凄いドラマーです。プリズムは良いトリオだと思います。

4曲目《X-レイ・イントロ》は、アーティスティックでロマンティシズム漂うピアノ・ソロ。ここからメカニカルな曲《X-レイ》に入る流れはカッコいいです。私は『タイム』に入っていたこの曲が好きです。コジャのロック系フュージョン・ギターがこのメカニカルな曲に華を添えます。こういう尖がり度が高い曲いいですよね。ベスマンはエレピでサウンド・エフェクト効果を上げています。エノックも叩きまくってますね。ウォーレムはアコースティック・ベースで通していますが、存在感を失わないパワフルさが素敵です。

6曲目《ザ・ストーン・カッター・イントロ》はウォーレムの図太いベース・ソロ。”ゴリンゴリン”ですね。目の前に塊を築いていきます。続く《ザ・ストーン・カッター》はピアノ・ベースの短い語らいからギターとドラムが入って、ワルツの優美なテーマが奏でられます。こういう美メロバラード曲をクールにしっかり聴かせるのもこのグループの美点。コジャの浮遊系ギター・ソロも美しいですね。音を伸ばすところはヴァイオリン的にも聴こえます。後半徐々に燃え上がるギター。

ラスト《アン・デス・センス》は、ジュリアーニが再び現れて、高速4ビートのコンテンポラリー・バップ。このアルバムの中では一番オーソドックスなスタイルの演奏です。スピード感溢れるスリリングな演奏を展開しています。ジュリアーニはここでも快調そのもの。最近のこの人には勢いがありますね。バックでプリズムの面々が煽っていますが、煽れば煽るほどノリノリに。ジュリアーニの勢いを受けてベスマンも快調に飛ばします。ウォーレム、エノックのスピード感溢れつつ安定感抜群のリズムもいいです。終盤エノックのマシンガン・ドラム・ソロ炸裂の4バース交換もあります。

プリズム、サウンド的には最先端から敢えて一歩下がっているようで、それ故のなじみやすさが魅力だと思いました。かなりカッコいいし、聴いて楽しいです。ライブなのにこの一体感ある演奏。メンバー一致団結のもと演奏を炸裂させるのは凄いですね。

アルバム名:『FIVE』
マンバー:
Pierre de Bethmann(p, fender-rhodes)
Christophe Wallemme(b)
Benjamin Henocq(ds)
Guest: Rosario Giuliani(sax), Manu Codjia(g)

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コメント

おぉ。いっきさまも聴かれましたね。
これって、重さとか、、粘っこさとか、、そういうコテコテ関係はゼロに近いんですが、全速でぶっ飛ばしていく快感に、、めちゃ心臓がどきどきしました。面白かったです。
今後も楽しみですね。本人たちの納得の一枚を待っています。

と、、エレナさん。。
わたしも、聴いてみたいんですよ。CDでなくて、ライブを。
羨ましいなぁ・・。

投稿: Suzuck | 2011年7月15日 (金) 17時22分

Suzuckさま

こんばんは。

>おぉ。いっきさまも聴かれましたね。

はいっ、聴きました。
これは聴かないとまずいです。

>これって、重さとか、、粘っこさとか、、そういうコテコテ関係はゼロに近いんですが、全速でぶっ飛ばしていく快感に、、めちゃ心臓がどきどきしました。面白かったです。

同感です。
痛快な演奏ですよね。
私もとても面白く聴きました。

>今後も楽しみですね。本人たちの納得の一枚を待っています。

絶対出してほしいです。次作、楽しみですよね。

>と、、エレナさん。。
>わたしも、聴いてみたいんですよ。CDでなくて、ライブを。
>羨ましいなぁ・・。

甲府に来てくれたのでラッキーでした。
実は最初甲府に来ることは知らなくて、危うく見損ねるところでした。
エレナさん、侮れない存在でした。
今後がとても楽しみです。

トラバありがとうございました。
後ほど私からもトラバします。

投稿: いっき | 2011年7月15日 (金) 20時56分

皆さんが話題にされていた後の夏に入手しようとしたらできなくて、年末の皆さんのベストが出た頃にようやく注文しました。結果、見事にツボでした。

トリオの3人だけではなくて、ゲストのサックス、ギターもバッチリハマっていましたし、変拍子的アプローチやバリバリ演奏するところあたり、これを聴いて、やぱり燃えてしまいますね。初「Prysm」でしたが、皆さんのレビューに感謝です。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2012年1月 9日 (月) 07時47分

910さん

こんばんは。

「Prysm」は80年代ジャズ/フュージョン好きにはとても魅力的なグループだと思います。ちょっと懐かしめのアプローチがかえって分かりやすく、文句なく乗れるのが良いと思います。ギター、サックスとのコンビネーションもいいですよね。

こういうアルバムはタイミングを逸すると入手しづらくなるのですが、入手できて良かったですね。

TBありがとうございます。

投稿: いっき | 2012年1月 9日 (月) 17時49分

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