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2011年7月

こいつも凄い快感です!

ロッケンロールなジャズならこれもあります。
お待たせ致しました。ジョン・ゾーンです。

P194 エレクトリック・マサダ『アット・ザ・マウンテンズ・オブ・マッドネス』(2004年rec. TZADIK)です。メンバーは、ジョン・ゾーン(as)、マーク・リボー(g)、ジェイミー・サフト(key)、イクエ・モリ(electronics)、トレヴァー・ダン(b)、ジョーイ・バロン(ds)、ケニー・ウォルスン(ds)、シロ・バプティスタ(per)です。凄い面子です。モスクワ(ロシア)とリュブリャナ(スロベニア)でのライブ録音。こんなバンドのヨーロッパ・ツアーが録音されているというのがスゴイ。カバージャケットがカッコイイ!

こんなのがCDとして出せるのはジョン・ゾーンが自身のレーベル(ツァディック)を持っているからでしょう。ディスクユニオンの新譜情報を見て買ったのですが、こういうのをちゃんと日本で売ってくれるところがディスクユニオンの素晴らしさです。タワーレコードにツァディックは置いてありません。(益子さんからコメントをいただきました。ツァディック・レーベルのCDはタワーレコードの現代音楽コーナーに置いてあるそうです。タワーレコードもやりますね。情報ありがとうございました。)少数だとは思いますがこの手のジャズには根強いファンがいて、そこには大衆ファンにはないマイノリティーのパワーがあります。

「マサダ」というゾーンのグループがあります。ジューイッシュなメロディーを生かしたオリジナル曲をアコースティックな2管(相棒はトランペットのデイヴ・ダグラス)カルテットでやるグループです。そのエレクトリック・バージョンが「エレクトリック・マサダ」。哀愁ジューイッシュ・メロディーを基調とした曲をやっています。でもこの楽器編成ですから、もうそれはそれはロッケンロール!ヘビー・メタル・ジャズなのでした。

”ギンギン”ロック・ギターのリボー。唸りをあげるダンのエレクトリック・ベース。左右から捲くし立てるバロンにウォルセンのツイン・ドラム。色彩と躍動感を添えるバプティスタのパーカッション。異音をねじ込むモリのエレクトロニクス。厚みや深さを与えるサフトのキーボード。その上で、”ギヨギヨ””ギョエギョエ””ブヒョブヒョ”とゾーンが暴れまくれば、これはもう至福の空間としか言いようがありません。こういうサウンドにはエレクトリック・マイルスからの影響があると思います。パワー溢れるジャズ。いいですね~。

ここにあるのは全編ロッケンロールというわけではありません。間にはジューイッシュ・メロディーを活かした落ち着いた曲調の懐かしいサウンドもあります。それはアメリカ西部の長閑な雰囲気にも繋がっていてカントリーみたいなサウンドです。ゾーンの落ち着いたソロが聴けます。こういう曲でのゾーンって意外と正統派アルトを吹きます。ジャズの伝統はきちんと継承している人なのです。

メタル・ロックとジューイッシュとアメリカのフォークが融合したジャズ。こういうサウンドはゾーンにしか出せないものです。そしてアメリカならではのジャズだと思います。ジャズは決して黒人だけのものではありません。白人(ユダヤ人)もジャズの中に大きな影を落としています。それを継承している人達も聴いていきたいと思う私。

まあ、色々言ってますが、最終的には理屈抜きでカッコイイ!ということです(笑)。微細で神経質なところにおちいらず、あっけらかんとしたエンターテインメント性があるところもいいと思います。聴いていて楽しい!

CD2枚組。ヴォリュームたっぷり。
さすがに2枚続けて聴くと今の私は疲れます(笑)。

アルバム名:『At the Mountain of Madness』
メンバー:
John Zorn(as)
Marc Ribot(g)
Jamie Saft(kb)
Ikue Mori(electronics)
Trevor Dunn(b)
Joey Baron(ds)
Kenny Wollesen(ds)
Cyro Baptista(per)

今ならAmazonに2点在庫あり。急ぐべし!

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このジャズはロッケンロール?

今日はビール飲んで酔った勢いで書きま~す(笑)。
新譜紹介。
ジャズはロッケンロールだぜ??そこんとこ夜露死苦。シェケナベイベー!

P193 ティム・バーン、ジム・ブラック、ネルス・クライン(bb&e)『ザ・ヴェイル』(2009年rec. Cryptogramophon)です。メンバーは、ティム・バーン(as)、ジム・ブラック(ds,laptop)、ネルス・クライン(g,effects)です。ニューヨークのライブハウス「ストーン」でのライブ録音。このメンバーを見て”ピンッ”ときたなら買いでしょ!

ロッケンローなフリー・ジャズです。この人達らしいサウンドです。大音量で聴けば最高ですがな。寺島靖国さんをして”不協和音”と言わしめたティム・バーンがいます。上げ足とれば、バーンはアルト・サックスなんで和音を吹いていませんけどね(笑)。要はそれくらい不快な音ということなのです。イエ~ィ!!

ということでいきなりこのグループのライブ映像を見せちゃいます。
YouTubeにはなんでもありますよね。

ハハハッ。最高!これは1/5なんで5/5まで見ちゃって下さい。

バーンの痛快な咆哮、クラインのワイルドなギター、ブラックの変幻自在のドラミング。これをカッコイイと言わずして何をカッコイイというのか?保守的なジャズ・ファンにこの良さは分かるまい。それで結構毛だらけ猫灰だらけ。

バーンは知る人ぞ知るアバンギャルドなサックス奏者。もうベテランの域です。ブラックは現代ドラミングを語る上で欠くことができない最重要ドラマー。私は初めて知ったのですが、クラインはWilco(ウィルコ)というロックバンドのギタリストとのこと。そっち筋ではかなり注目されているギタリストのようです。

フリー・ジャズ~パンク・ロック(メタル・ロック)です。ジャズ・ロックとかじゃなくて、こういうアメリカのロックと直結しているジャズも語られていいと思うのですが、この方面を語れるジャズサイドの方はあまりお見かけしません。そもそもティム・バーンとかって、極一般的なジャズ・ファンから無視されてますよね。でも、こっち方面のフリー・ジャズを聴く人からは絶大な支持がある人です。いい仕事をしているのです。

私は特にドラマーのジム・ブラックに注目しています。この人の時間軸を自在に歪ませるドラミングは凄いです。ジャズ喫茶「いーぐる」の連続講演「21世紀のジャズ~」(講演者:益子博之さん)で、初めてブラック(トム・レイニーも)を聴いた時、変拍子を自在に操るドラミングにどうのったら良いのか分からず戸惑ったものです。気持ち悪かったのです。その後この人をたくさん聴くうちに、今ではこのリズムが快感に(笑)。感覚なんて変化するものなのです。

クラインのギターもカッコいいですね。ロック~フリーを自由に行き来しています。ノイジーでうるさいだけのギターではありません。ちゃんとニュアンスも聴かせてくれています。テクニックもありますし、エフェクターも自在に使いこなしています。バーンとの壮絶な応酬もカッコいいです。ところで、時々ベースの音が聴こえるんですけど、誰が出しているんでしょう??

益子さんの「いーぐる」講演には何度も足を運んだので、こっち方面にもそれなりに明るくなった今の私です。そんなわけで世間が注目しようがしまいが、この人達の名を見ると買いたくなってしまいます。宣伝文に”メタル・・・”とかって出ているともう堪りません(笑)。

全編ロック・リズムで飛ばすわけではなく、途中にリズム希薄で音響的なフリー演奏が挟まっています。疾走する部分と停滞する部分の緩急で聴かせていきます。9曲入っていますが、曲の区切り目ははっきりせず続けて演奏しています。こういうところはマイルスの『アガルタ』『パンゲア』にも繋がりますね。作曲とアドリブの境もはっきりしません。聴きだしたらノンストップ。60分弱一気に聴きましょう!録音はかなり優秀です。ライブにしてはとてもいい音。

黙って聴いて下さいませ! 激プッシュ。
ニューヨークへ行ってこの人達のライブが観たいっす。

昔のジャズを聴いてノスタルジックになるのもいいのですが、
現代ジャズをフォローすることも忘れてもらっては困ります。

ブログ:JAZZとAUDIOが出会うと。。。の oza。さんがこのアルバムをご購入されたそうで、その記事がUPされています。
http://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/60857201.html#60857201
とても適切な解説をされていますのでご一読を。

アルバム名:『The Veil』
メンバー:
Tim Berne(as)
Jim Black(ds, laptop)
Nels Cline(g, effects)

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「SWITCH」のジャズ特集とマイルス本

雑誌「SWITCH」がジャズ特集をやっていたので買いました。
お目当ては上原ひろみの記事です。
特集のタイトルが「新訳ジャズ」なのですが、
別に新訳というほどの記事ではありませんでした(涙)。

「上原ひろみが聴いてきたジャズの名盤12選」は面白かったです。
実はうちはで「上原ひろみ選ジャズ」みたいなことをやったら面白いんじゃない?
という話をちょっとしたことがあったからです。
12枚選んでなぜ選んだのか書いてあります。
なるほどと思いつつ、言っていることは納得できるものでした。
私が聴いたことがないアルバムが数枚あり、聴いてみたいとも思いました。
ジャケット写とタイトルが列記してあるところに付けてある番号と
本文中の番号がズレているのがご愛敬。
ずさんというかジャズを知らない人がチェックしているんでしょうね(笑)。

「上原さんってどんな人?」なんてどうでもいいような記事もありました(笑)。
「上原ひろみが案内するニューヨーク・ジャズクラブ巡り」は興味深かったです。
こういう環境にいるからこそ、ああいうジャズができるんでしょう。
やっぱりジャズはニューヨークだと私は思います。

インタヴュー記事の「ジョシュア・レッドマン×平野啓一郎」はトホホ。
最後に弁明が書いてあること自体がダメダメ記事を物語っています。
20分足らずのメールで質問を準備したインタビューでは結果はしれています。
相手に迫れるはずがありません(涙)。
こういう特集の限界を物語る記事でした。
こんな企画を用意するなんて、質問した平野さんかわいそうです。

ブルーノート・ニューヨークのスタッフが注目する人に、
アンブローズ・アキンムシーレとロバート・ウラスパーが出ていました。
でしょうね。注目すべき人達です。

「ジャズ/ボサノヴァの愛憎史」菊池成孔×naomi&goroは、”らしい”内容。
菊池さんって結局半分以上うんちく話になっちゃうのがどうも・・・。
うんちく好きには面白いと思います。

「ぼくらに未来はあるのか--若手ジャズミュージシャン座談会」が面白い。
ジャズの現状がよく表れていていますね。
皆さん問題意識を持って今後の抱負を語っているのですが、
これが皆さんそれぞれベクトル(方向性)が違っていて、
とても一丸となって進まないことがよくわかります。
価値観が多様化する中、盛り上げていくのは大変です。

今時雑誌の特集らしく、こんなものかなっ、という感じでした。

「マイルス・デイヴィス『アガルタ』『パンゲア』の真実」もやっと読み終えました。
著者はもちろん中山康樹さんです。
あまりの遅読ぶりに我ながら呆れます。

映画「卒業」が”アガ・パン”に繋がるとは!
CBSソニーの人の話がなかなか面白かったです。
当時の裏舞台や世の中の雰囲気がよく分かりました。
まあ、色々なご意見はあろうかと思いますが、私はとても楽しく読みましたよ。
中山さんの”マイルス愛”、素晴らしいじゃありませんか?

巻末対談 原田和典×中山康樹 の中にこんなことが書いてありました。
「だから、『アガルタ』『パンゲア』を入門用に推薦することは不自然なことではなくて、2011年の今、ますます聴きやすくなっていると言えるかもしれない。」と。

そうなんですよ。
『パンゲア』からジャズ入門。
はいっ、それについては私もブログに書きました。
コレです↓
「tommyさんから夏休みの課題を出されてしまった!」
何かテンションが高い(笑)!
最近、この勢いはないですね(涙)。
無茶苦茶なことを言っていますので話半分くらいに受け取っていただきたく。
もう2年前のことです。
時が経つのは速いものですね。

さて、本の話に戻りますが、
ちょっと『アガルタ』『パンゲア』を称え過ぎているのが気になるところです。
あんまり祭り上げるのもいかがなものかと。
これでは聴く時に身構えちゃって、見えるものも見えてこないんじゃないかと。
もっと自然体で接するほうが見えてくると思うのです。
本の趣旨上こう書かざるを得ないのは分かります。
なので、もしこの本を先に読んじゃったのでしたら、
どうか身構えずに”アガ・パン”を聴いてほしいというのが私の願いです。

以上、本/雑誌を読んで思ったことでした。

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ショーターとモーガンの2管のこれも好き!

昨日の紹介したジャズ・メッセンジャーズは、フロントがショーターとモーガンの2菅でした。今日もショーター&モーガンで行きましょう。

P192 ウェイン・ショーター『ナイト・ドリーマー』(1964年rec. BLUE NOTE)です。メンバーは、ウェイン・ショーター(ts)、リー・モーガン(tp)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds)です。ピントをぶらした街を歩く人と車のヘッドライト?のジャケット写真は夜の雰囲気。ブルーノートにしては洒落たジャケット写真だと思いませんか?中身の音楽に合っていると思います。

私が持っているのはこれもオリジナル盤。でもステレオ盤なのでそれ程高価ではありません。ステレオ、NYC、溝ナシ、VAN GELDER刻印、盤質良。これはどこで買ったか覚えていません。ブルーノートのステレオ盤も結構持っています。ステレオ盤は厚い音にキレも加わります。

このアルバム、ショーターのブルーノートにおける第1作。ジャズ・メッセンジャーズからの独立直前らしいです。ジョン・コルトレーンのリズム隊を務めた人達がバックを固めているのがポイントです。まあ、バックが誰であれ、ここにあるのはまぎれもなくショーターの音楽です。このアルバムのサウンドはエキゾチックでオリエンタルなもので新鮮に響きます。《オリエンタル・フォーク・ソング》というタイトルの曲も入っているくらいですから想像はつきますよね。

最初の奥さんが日本人なので、その影響でオリエンタルなのかもしれません。2番目の奥さんはブラジル人のアナマリア。そうなると今度はブラジリアンな音楽をやってしまうあたりにショーターのカワイイ人柄が表れていると私は思っています。そして自分のアルバム(『スピーク・ノー・イーヴィル』『スーパー・ノヴァ』)のジャケットに奥さんの顔をのせちゃうんだから、それもちょっと不気味に、もうショーターったら(笑)。

全曲ショーターが作曲。この人の曲ってメロディーがちょっと変だったりするのですが、とても美しかったりして、なぜか心の琴線に触れるものがあります。A面1曲目《ナイト・ドリーマー》のピアノの導入部なんてかなり印象的です。ワルツのリズムで都会の夜を感じさせる曲。このフレッシュな響きは新主流派とも言われます。ショーターは高音をひきつるように吹いたり、低音を”ブォー”なんてやったり、もうショーターでなきゃカッコつかないソロです。2曲目《オリエンタル・フォーク・ソング》は優しい感じですよね。私の好きな曲です。でもソロに入ると結構気合入ってます。3曲目《ヴァーゴ》はちょっと沈み気味の美しいバラード。哀愁とかではないんですよね。野に咲く一輪の花?日本人奥さんの影響で”ワビサビ”の世界も感じさせるかも?

マッコイはこの人独自のマッコイ節。フレッシュで耳になじむ心地良さです。間に挟む畳み掛けるようなフレーズも気持ち良いですね。エルビンの粘りのあるリズムが黒さを演出。好きなんですよね~私、エルビンのリズムが。体の芯から揺さぶられるリズム。ワークマンはちょっと地味ですが手堅くサポート。モーガンは気持ち良さそうに吹いています。曲が良いからか?モーガンのソロのカッコ良さはいつもの3割増?ちょっと古さを引きずっているところがショーターと好バランスです。

B面1曲目《ブラック・ナイル》。この推進力に溢れかつ広々として伸びやかな曲が大好きです。大空を力強く羽ばたくショーター、伸びやかに歌うモーガン、大地を失踪するマッコイ、エルビンの怒涛のドラム・ソロもあります。く~ぅ、最高!2曲目《チャコール・ブルース》はちょっとユーモラスな曲。こういうちょっととぼけた味わいもショーターの良さですよね。マーチのリズムで闊歩します。3曲目は《アルマゲドン》ときました。タイトルみたいなおどろおどろしさみたいなものはなく、ダークでブルージーでちょっとエキゾチック。こういうトーンの曲が一番ショーターらしいと言えるかもしれません。

曲良し、演奏良し、メンバー良し、3拍子揃った大好きなアルバムです。
私はサックス奏者の中ではショーターが一番好きです。

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ジャズ・メッセンジャーズはこれが好き!

昨日のマイニエリとは全く繋がらないコレ!

P191_2 アート・プレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『ザ・ビッグ・ビート』(1960年rec. BLUE NOTE)です。メンバーは、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショター(ts)、ボビー・ティモンズ(b)、アート・ブレイキー(ds)です。61年の伝説的な初来日のメンバーと同じらしいです。ジャケット写真がカッコいいな~っ。タイトルもいいな~っ。ビッグ・ビート!

私が持っているのはオリジナル盤。モノラル、NYC、溝アリ、チョボ印アリ、RVG刻、コンディションはかなり良好。西新宿にあったオリジナル盤専門店「コレクターズ」で買いました。確か2度目に行った時に購入。オリジナル盤の何たるかも良く分からないのに、とにかくブルーノートのモノラル盤がほしくて、かなり背延びして買った1枚です。15年くらい前の話です。これ、私が持っているオリジナル盤で最高額の¥35,000!無茶しましたね(笑)。その後3万円以上出したものはありません。

これが世に言われるブルーノートのモノラル盤の音なのかと思いました。厚くてしっかりした音が刻み込まれています。この音にとりつかれる人がいるのも分かりました。まあ、音の話と自慢話はこれくらいにしておきましょう(笑)。

実は私が気に入っているのはこの演奏の方です。私が大好きなショーターがいます。ショーターはまだミステリアスな方向には行っておらず、とにかくスケールの大きいブローをしているのが最高なのです。この後、フレディ・ハバードのトランペットとカーティス・フラーのトロンボーンでフロントを3管にしてメッセンジャーズの音を刷新するわけですが、そこまで行っていない古さとの微妙な融合具合が良いのです。

ショーターの新しいニュアンスを感じさせつつも図太いブローに、いなせでやんちゃなモーガンのカッコいいトランペット。この2管がとても魅力的です。クールとホットの程よいブレンドはこの2人にしか出せないのです。そしてピアノが良いです。まっ黒けのボビー・ティモンズ。この人がいるからクールに行ってしまうかもしれないフロント2人をグイッと熱い領域に引きとめていられるのです。ティモンズの粘り気が2人をまったり絡め、混然一体となりいい味わい深さを出しているのです。ショーター、モーガン、ティモンズの三角関係がこの時のメッセンジャーズの肝だと思います。

御大ブレイキーはもうフロントが誰であろうと、「これぞジャズだっ!」という大きなグルーヴを繰り出し続け、隙あらば煽り立てます。前述のように3人が肝なのですが、もっと広く見れば、結局はブレイキーの手の平の上なんですよね(笑)。ブレイキーというお釈迦様の手の平の上からはやんちゃなモーガン、ショーターといえども外には出られないのです。

全曲いいんですが、私が好きなのはA面1曲目ショーター作の《ザ・チェス・プレイヤー》。歩くようなテンポのリズムの上で、ショーター、モーガン、ティモンズが肩で風を切って街を闊歩する様は聴いていて気分爽快になります。それからこれもショーター作のB面2曲目《レスター・レフト・タウン》。私はこの曲が好きです。哀愁漂うメローな曲がいいんです。ここでのショーターのソロはいかにもショーターらしいフレッシュなフレージング。モーガンの突き抜ける高音が冴えるソロもいいですね。ティモンズの音を転がすようなソロは”黒玉飴”の味わいか?

ジャズ・メッセンジャーズのアルバムの中でこれが一番好きかも?このメンバーで初来日、当時の日本が盛り上がったのも頷けます。

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私にとってのマイク・マイニエリというとコレ。

前回の続きで今日もマイク・マイニエリで行ってみましょう。

P190 マイク・マイニエリ『ワンダーラスト』(1982年、ワーナー・パイオニア)です。メンバーは、マイク・マイニエリ(vib,marimba)、マイケル・ブレッカー(saxes)、ウォーレン・バーンハート(p,syn)、ピーター・アースキン(ds)、ドン・グロルニック(key)、スティーヴ・カーン(g)、マーカズ・ミラー(b)、トニー・レヴィン1曲のみ(b)、ジェレミー・スタイグ1曲のみ(fl)、渡辺香津美1曲のみ(g)、マノロ・バドレーン(per,birembau)、サミー・フィゲロア(per)、ロジャー・スキテロ(per)、エド・ウォルシュ(programmer)1曲のみ、です。

どうです。このメンバー、当時のジャズ・フュージョン界の売れっ子勢ぞろいの凄さです。ウェザー・リポートのドラマーであるアースキンとマイルス・バンドのベーシストであるマーカス・ミラーの組み合わせ、マイケル、ドングロ、カーン、渡辺香津美、ウェザーにいたバドレーナ、マイルス・バンドをクビになった(当時そういわれていました。笑)フィゲロア。

このアルバムがなぜ私にとってのマイク・マイニエリなのかというと、初めて聴いたマイニエリがこのアルバムだからです。このアルバムが出た年に聴いたのではなく、数年後就職してから会社のジャズ好きの先輩に薦められレコードを貸してもらって聴きました。確かカセットテープにダビングしてその後何度も聴きました。今持っているのはだいぶ後になってから買った中古レコード。

このアルバムにはマイニエリ・サウンドが詰まっています。前回紹介したオーソドックスなジャズとは打って変わって、マイニエリならではのジャズ・フュージョンの世界が提示されています。ヴァィブラフォンのフレージングはこの人でしかあり得ません。個性的なのです。全曲をマイニエリが作曲。ゲイリー・バートンとは違った新しさを感じました。

A面1曲目《クロスト・ワイアース》はいかにもマイニエリの曲ですが、ウェザーの《バードランド》にどことなく似た曲でキャッチーです。アースキンがドラムを叩いているので余計そう感じるのかもしれませんね。ほとんどマイニエリのヴァイブ・ソロですが、これがカッコいいのですよ。壮大な広がりを感じさせるんですけれどしっかり地に足が付いているのがいいですね。

A面2曲目《サラズ・タッチ》はバラード。ステップスの相棒マイケルが大活躍。この優しい曲をスケール大きくかつクールに吹き上げます。このテナー、やっぱり凄いでしょ。単にメカニカルに速く吹くだけの人ではないことが分かります。この路線ってマイケル自身のバラード表現として定着します。続くマイニエリのソロもマイケルの世界を持続し、そこに優しさを加味して膨らませていくのが素敵。ジ~ンと胸にきます。

A面ラスト《ブリット・トレイン》はパーカッションが活躍する躍動的なフュージョン。マイニエリのソロはメローです。都会の夜、高速を流しながら聴けば最高でしょう。続いて登場するマイケルのテナー、出ました!お得意のメカニカル・フレーズ炸裂!この圧倒的なスピード感で飛ばすカッコ良さ。最後にテナーをすすり上げていくのがまたカッコイイ!アクセルを踏む足にも力が入ります。危ない危ない(笑)。

B面1曲目《フライング・カラーズ》はマイケルのソプラノがテーマを奏でます。出だしはちょっとグローバー・ワシントンJr.風。その後リズム・パターンがチェンジしてマイニエリのワンマンショーへ。16ビートのウォーキング・ベース。これ、マーカスがベースを弾いているのですが、フレージンクやピッキングはまるでジャコ・パストリアス。アースキンのパタパタ・ドラミングとガッチリ組み、カッコいいビートを繰り出します。このリズム・パターンってウェザーお得意のやつですがやっぱりいいです。その上でメロディーを口ずさみながらヴァイブを自由奔放に弾きまくるマイニエリ。う~む、こればっかりですが、カッコいいとしか言いようがありません。フェード・アウトが残念!

B面2曲目《リマージュ》はバラード。幻想的なマイニエリのソロがフワリと中に浮かびます。中盤はリズムがスピード・アップしてまたもやマイニエリのドライブ感溢れるヴァイブ・ソロが展開。アースキンのパタパタ・ドラミングが気持ちいいです。ラストはスローに戻り静かに消えていきます。

B面3曲目《バンブー》はエスニック風味。バンブー=竹ですから、イメージとしては東南アジアか?オリエンタルな雰囲気の曲です。この曲のみ加わるスタイグのフルートは神秘的です。尺八風にも聴こえます。マイニエリのマリンバは独特の風味をもたらしていますね。ここでのマーカスのベースもどちらかと言えばジャコ風。キーボードの厚みのあるアンサンブルが効果的に入っているのも聴きどころだと思います。

B面ラスト《ワンダーラスト》はヴァイブのソロ。エコーを強調した音作りは幻想的で面白いです。多重録音なのでしょうか?マイニエリにしかできないサウンド世界だと思います。

このアルバムを久しぶりに聴いたのですがやっぱりいいですね。テクニックの快感としてのフュージョンとは一線を画するものです。カッコイイです!マイケル大活躍の2曲とマイニエリが跳ねまわる《フライング・カラーズ》が私のお気に入り。

これ、CD化されたんでしょうかね~?されていても廃盤?

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マイク・マイニエリのデビュー・アルバム

マイク・マイニエリといえば、ジャズ/フュージョン・グループ「ステップス(アヘッド)」のヴァイブラフォ奏者として有名ですが、ご多聞に漏れずこの人も最初は普通のジャズをやっていました。そんなマイニエリをとらえた1枚。

P189 ザ・マイク・マイニエリ・カルテット『ブルース・オン・ジ・アザー・サイド』(1962年rec ARGO)です。メンバーは、マイク・マイニエリJr.(vib)、ブルース・マーチン(p)、ジュリエ・ルッジエロ(b)、ジョセフ・ポーカロJr.(ds)です。マイニエリのデビュー・アルバム。ジャケットのマイニエリが若い!ちなみに日本盤レコードは後の長髪で髭を生やした写真になっています。

今私が持っているのはオリジナル盤です。最初はディスクユニオンかどこかで日本盤中古LPを買ったのですが、川崎のディープなレコード屋 「中古レコード/CD TOPS」 でオリジナル盤をみつけたので買い直しました。これが至って普通のジャズ。フュージョンの”フュ”の字も出てきません。

A面1曲目《ブルース・オン・ジ・アザー・サイド》を聴くと、これがとてもブルージー。ブルース曲なので当たり前だと思われるかもしれませんが、フィーリングがブルージーなのです。黙って聴かせたらミルト・ジャクソンと間違えるかもしれませんよ。そのくらいブルージーで黒いんです。録音時の62年という時がそうさせるのかもしれませんね。

どこにでもあるブルージーでオーソドックスなジャズ。これではなかなか注目されることはないでしょう。ここからフュージョン路線に転向したから今のマイニエリがあるのです。でもルーツがこういうジャズだったというのを知るのは面白いです。マイニエリはゲイリー・バートンなどと同じ系統と捉えられていますが、ジャズに対する基本はかなり違うことがわかりました。私はこんなルーツを持つマイニエリが好きです。

このアルバムの中で一番気に入っているのが《イフ・アイ・ワー・ア・ベル》。私の好きなこの曲を、軽やかに、でも憂いを帯びて、スインギーに弾くマイニエリ。どうってことないんだけれどジャズの良さをきちんと表現しています。歴史の中に埋もれているこんなレコードが実は愛聴盤になったりすることもあるから面白いですよね。オリジナル盤なので余計愛着が湧きます。

ちなみにドラマーのジョセフ・ポーカロJr.は、あのTOTOのドラマーのジョー・ポーカロではありませんので念のため。

P89 川崎の「TOPS」、こんなレコードを売っているんですからディープです。そういえば最近行ってないです。2年前のゴールデンウィーク、ジャズ友tommyさんと一緒にレコードハントした時に行ったのが最後でした。あ~っ、無性に行きたくなってきました。

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スマートで大人のジャズ

聴きたい新譜ラッシュはほぼ終了。まだメセニーの新譜紹介を書いていないのですが、メセニーらしい仕上がりの1枚ということで終わってしまいそうです(笑)。で、今日は別の新譜を紹介。

P188 アーロン・ゴールドバーグギレルモ・クライン『BIENESTAN』(2010年rec. SUNNYSIDE)です。メンバーは、アーロン・ゴールドバーグ(p)、ギレルモ・クライン(fender rhodes)、マット・ペンマン(b)、エリック・ハーランド(ds)、ミゲル・セノーン(as)5曲、クリス・チーク(ts,ss)3曲、です。ピアノとエレピのコンビに、ペンマン&ハーランドの強力リズム(ジョシュアの『ジェイムス・ファーム』と同じ)、そこにセノーンとチークが華を添えるというなかなか興味深いメンバーになっています。

ゴールドバーグの演奏が前面に出て、クラインは作編曲主体で陰になり日向になりゴールドバーグをバックアップする作りになっています。クラインが演奏していない曲が何曲かあり、演奏していてもサウンド・エフェクト的。スタンダードなどとクラインのオリジナル曲が混ざり合っっていますが統一感はあります。スマートで大人の高品位ジャズという感じです。このサウンド・カラーはクラインが志向するものだと思います。

このメンバーですから尖ったこともできるのに、もっとしなやかで柔らかく包み込むような感じになっているのが私は好きです。どうも最近の私はいわゆるジャズ・フォーマットでソロを回してアドリブを競うものよりは、こういう感じのアルバムに惹かれる傾向にあるみたいです。その一方で尖りまくったものも無性に聴きたくなったりしますが(笑)。尖りアルバムではティム・バン、ジム・ブラック、ネルス・クラインの『ザ・ヴェイル』が良かったので近日中にUPします。

冒頭はベタな《オール・ザ・シングス・ユー・アー》ですが、これが変奏されていてなかなかカッコいいのです。微妙な捻り具合が大人を感じさせます。それもゴールドバーグのピアノ・ソロです。結構意表を突いていますよね。続くクライン作の《インプレイカブル》はゴールドバーグのピアノとクラインのエレピとのデュオ。メカニカルでクラシックの練習曲みたいです。これが無機的にならず親しみが湧くのが面白いです。

3曲目はパーカーの《ムース・ザ・ムーチ》。これがテンポやリズムをトリッキーに変えて演奏されています。セノーンのアルトをフィーチャしたワン・ホーン・カルテット。やっぱりこの人達、一筋縄ではいきません。トリッキーで技術を見せる演奏なのに、いやみなく聴かせるのが面白いです。ハーランドのドラミングは素晴らしいです。4曲目《ブリット》はクライン作の哀愁メロディー。ゴールドバーグのピアノが温かく美しいです。サウンド・エフェクト的に軽く化粧を加えるクラインのエレピが何ともお洒落。

5曲目はクライン作《ヒューマン・フィール》。カリブか南米かラテン系のエスニックサウンド。セノーンとチークが加わって、最初から最後までアンサンブルのみで通してしまいます。凝ったアンサンブルと折り重なるリズムを聴かせる曲です。6曲目もクライン作で《アニタ》。これはコンテンポラリーな美メロ曲。セノーンとチークの落ち着いたソロが聴けます。クラインはやっぱり隠し味程度にエレピを弾いています。

パーカーの《ブルース・フォー・アリス》をゴールドバーグの美しいピアノやセノーンの軽やかなアルトを生かしつつ微妙にテンポを揺らせてスマートに演奏したり、《黒いオルフェ》をここでも軽く変奏を混ぜてピアノ・トリオでしっとりアダルトに聴かせたり、クラインがエレピをバイブラフォンのように響かせてメルヘンチックに演奏したり、《黒いオルフェ》を変拍子の違うアレンジでやってハーランドのパーカッション的ドラム・ソロをフィーチャしたりと、色々な工夫や捻りが凝らされています。

その色々な工夫や捻りは決していやみには聴こえず、細かいところを気にしないで聴けば、1曲が短めであることもあって次から次へと場面が展開して物語が進むように聴こえます。トータルではスマートで大人の高品位ジャズなのです。このメンバーですから技を前面に出して聴かせられるのに、そうせずに技を隠し味的に使うセンスが私は気に入りました。これはやっぱりクラインのセンスによるものでしょう。

とても良い雰囲気のジャズです。「違いが分かる男の・・・」です(笑)。
かなりカッコイイ!

アルバム名:『BIENESTAN』
メンバー:
Aaron Goldberg(p)
Guillermio Klein(fender rhodes)
Matt Penman(b)
Eric Harland(ds)
Miguel Zenon(as, M-3,5,6,7,11)
Chris Cheek(ts=M-5,6, ss=M11)

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美しくも逞しいピアノです。

昨日の早朝は大興奮でした。
なでしこJAPANやりました。
ワールドカップで優勝です。世界一です!
おめでとう!!
サッカーファンとしては誠に嬉しい。
前半のアメリカ、圧倒的な強さでした。でも決められなかった。
運が良かったとも言えますが、運も実力のうちです。
”叩けよ さらば開かれん”
先制されても取り返す。驚異のねばり。
宮間、澤、あそこで決めるかー!凄すぎます。
延長を引き分けた時点で日本の方に勝機はありました。
PK戦。キーパー海堀が最初の一人を止めたことで一挙に流れは日本へ。
この流れ、もう誰にも止められません。
そして日本の優勝は決まったわけです。
勝利の女神が微笑んでくれたのです。
バンザーイ!バンザーイ!
今の日本を勇気づけ元気づけてくれたなでしこJAPAN。
ありがとう。

以上時事ネタ。

今日紹介するのはピアノ・トリオ。

P186 ジョージ・コリガン『パスト・プレゼント・フューチャー』(2003年rec. Criss Cross)です。メンバーは、ジョージ・コリガン(p)、ヴィセンテ・アーチャー(b)、ビル・スチュアート(ds)です。普通のピアノ・トリオです。タイトルは“過去、現在、未来”。なでしこJAPAN、苦闘の歴史がワールドカップ優勝となって報われ未来に繋がる。う~む、強引(笑)。

このピアノ・トリオ、美しくも逞しいコリガンのピアノが主役です。1曲目《ソフィストケイテッド・レディー》はリ・ハーモナイズしたメロディーを間に入れて洗練度を増しています。単純にメロディーを弾かず、リフレインしながら重ねるようにテーマを綴っていくのが素敵です。バラード演奏ではなく、ドラムがガッツリ煽っているのもいいですね。

美しくも逞しい!なでしこJAPANみたいじゃないか。って、また出ました。m(_ _)m ピアノ・ソロに入ってもピアノをしっかり鳴らして行きます。メガネのインテリ風貌とは裏腹に、かなりピアノを叩いていて特に左手が強靭。ピアノ・ソロの前に入るベース・ソロも力強く迫ってきます。これは”哀愁とガッツ”です。

2曲目は何と《赤とんぼ》。日本の童謡が少しのリ・ハーモナイズが加えられて素敵なメロディーになっています。哀愁メロディーと洗練。日本の童謡侮り難し。美しくも逞しいピアノ、強靭なベース、キレの良いシンバルワークと張りのあるスネアとタムでガンガン煽るドラム。懐かしくも元気が出ます。

3曲目《イースト・オブ・ザ・サン》はワルツのリズムで軽やかにステップを踏むように3人が跳ね踊ります。単なる叙情的美メロ演奏にならないのが良いと思います。

5曲目のタイトル曲は、明るいメロディーの前半と雲行きが怪しくなる後半が良いコントラストをなしています。現代ピアノ・トリオなんですけれど、あんまり難しく考えずスインギーにやっているのが良い感じですね。スインギーとはいっても決して懐古的ではありません。

6曲目は私が大好きな曲、ジャコ・パストリアスの《スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット》。この曲が入っているだけで買いたくなっちゃいます。これはピアノ・ソロです。美しい曲なのでほとんどいじらず、緩急を付けることでドラマチックに弾いて行くのが素敵です。この曲は左手の低音弦の響きが素晴らしいです。オーディオ的にもかなりイケてます。ハンマーが弦を叩きその後減衰して行くのが見えるような音です。ブラボーッ!

7曲目《シネマ・パラダイス》はバラード。これはそのまんま弾くとベタな甘いメロディーなのですが、ガッツも込められているので凛とした部分が感じられます。芯が一本通っています。

8曲目《ホリデイ・フォー・ストリングス》には、コルトレーンの《カウントダウン》のラストのフレーズの一部分が挟まれているのですが、これってコリガンのアレンジですよね?スインギーに飛ばす飛ばす。イエ~ィ!

ラスト(10曲目)は《インビテーション》。私、この曲も好きなのですが、最初に聴いたのはジャコのビッグバンド。この曲は私の中ではジャコに直結しています。これもガッツ溢れる演奏。ビルスチュのシンバル&スネア&タムが飛び跳ね回ります。背後で唸るベースも素敵。ドラム・ソロもカッコいいですね。

実はこのアルバムを久々に聴いたのですが、すっかり見直してしまいました。
美しくも逞しい、哀愁とガッツのピアノ・トリオ。いかがですか?

アルバム名:『PAST - PRESENT - FUTURE』
メンバー:
GEORGE COLLIGAN(p)
VICENTE ARCHER(b)
BILL STEWART(ds)

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寺久保エレナカルテットのライブを聴く。

誰かが日曜夜11時からNHK-FMでジャズ番組をやっていると言っていることを
急に思い出しました。
で、昨日と言っても先程ですが、チューナーのスイッチをオン。
久しぶりにチューナーの電源を入れました。
アンテナはTV用の卓上アンテナ(笑)。
音質は期待していないのでこれで十分。

オンした時間は11時15分くらいだったので、いきなり演奏が聴こえてきました。
どこかで聴いたことがあるような~っ、ひょっとして・・・。
慌ててインターネットで番組表をチェック。
番組は「セッション2011」
出演は寺久保エレナカルテット!やっぱり。
先週火曜のライブを観た記憶がよみがえってきました。
ちょうどやっていたのが《オリエンタル・フォークソング》。
ショーターのこの曲が私は好きなんですよ。
こうやって改めてラジオで聴くと、この人やっぱり凄いのです。
とてもこの春高校を卒業したばかりとは思えません。
自分らしいアドリブをこころがけている姿勢がいいです。
アドリブをよく聴くと色々工夫をこらしていてなかなか渋いのです。
う~む、こりゃほんとに将来が楽しみですね~。

ピアノは片倉真由子さん、ベースは井上陽介さん、ドラムは大坂昌彦さん。
片倉さんのピアノを聴けたのも良かったです。
収録場所はNHKふれあいホール、収録日は2011年6月9日。
ツアー直前のライブだったんですね。
ライブを観るのと聴くのとでは音への集中度が変わるので、
今夜は落ち着いて演奏に浸れました。
エレナさんオリジナルの《ザッツ・ザ・トゥルース》。
いい曲ですよね。聴いていて心に染みてきました。
ラストは《デル・サッサー》で明るく楽しく元気よく!
アドリブの展開も「なるほど~」という感じでした。
パチパチパチパチ!楽しく聴きました。

1週間に2度もエレナさんのライブを聴けるなんてラッキー。

話は変わりましてオーディオ。

先日交換した真空管7581Aのアンプ。
前段球は同じメーカー(フィリップスECG)の6SN7WGTAにしてみました。
これは手持ちしていた真空管です。
P183

う~む、同じような形状の真空管ばかりズラリ。
面白みはないですね。
でも同じメーカーなので音は統一感がでたみたいです。
というのは多分気のせい(笑)。
7581Aのきれいな薄青色のグロー放電はこんな感じです。
P184

どうです。きれいでしょ。

そして、こんなことも計画中。6V6GTアンプの再製作。
P185

前のアンプは既に解体してしまい、シャーシも買ってしまいました。
シャーシはタカチ(旧鈴蘭堂)のSL-8。
真空管アンプ作りの定番品です。
「こんな感じのレイアウトでいこうかな~。」と、
シャーシの上に部品を載せて思案中。
思案している時が一番楽しい。
さて、いかがなりますことやら。

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店内B.G.M.で思い出した1枚

前々回上京した時に、新宿ディスクユニオンジャズ館2階で聴いてなかなか良いと思った1枚。実は持っていました。

P182 ジェシ・ヴァン・ルーラー『ヨーロピアン・クインテット』(1996年rec. bluemusic/ユニバーサル)です。メンバーは、ジェシ・ヴァン・ルーラー(g)、ジュリアン・ジョセフ(p)、ニコラス・サイス(b)、ピーター・ヴェニガー(sax)、マーク・モンデサー(ds)です。私が持っているのは2000年に出た国内盤。3年くらい経ってからユニバーサルが出したんですね。このタイムラグが情けない(涙)。

輸入盤の売れ行きが良いものをピックアップして、ジャズファンの間の話題度とかをじっくり判断してから国内盤化しているのでしょう。だからタイムラグが起きてしまうのです。もう11年経ちますが、この頃から日本の大手ジャズレーベルは後手後手。ディスクユニオンやタワーなどのバイヤーがお店に並べる輸入盤にやられてしまうのでした。当時はまだ輸入盤が安かったので、国内盤はかなり苦戦を強いられていたはずです。

話が横道にそれてしましました。新宿ディスクユニオンの2階で中古CDを漁っていたら店内にカッコいいギターが流れてきたのです。「おっ、なかなかいいじゃない。」と思って立てかけてあったCDを見るとこれでした。これ持っていました。最近全然聴いていなかったので内容もすっかり忘れて、初めて聴いたような気がしたのです。

ルーラーはセロニアス・モンク・コンペティションのギター部門第1回目(1995年度)の優勝者でオランダ出身。さすがにギターのテクニックはしっかりしています。ライナーノーツには彼の経歴が書いてあり、15歳の時に聴いたジョン・スコフィールドの『スティル・ウォーム』に大きなショックを受けたなんて書いてありました。15歳とは凄い。私も好きなアルバムなので親近感が湧きましたよ(笑)。私は社会人になった年に聴きました。

ジャケット裏には「私がかつて聴いた若手プレーヤーのベストの一人です。」というメセニーの推薦文とジム・ホール、ジョン・スコフィールドの推薦文が書かれています。メセニーが最初に書かれているあたりはメセニーの人気度を物語っていますね。まっ、宣伝文は「最も価値がある」とか「信じられない」とかいかにもな文書です(笑)。

また話がちょっとそれちゃいました。ルーラーはとても粒立ちの良いクリーンな音でギターを奏でます。キレがあるのにコクもあります。懐かしい表現(笑)。オーソドックスなスタイルですが、時々現代風クールネスが顔を覗かせます。スインギーでドライブ感溢れるギターはかなりの気持ち良さ。安心してギターを楽しめます。サックスのヴェニガーはルーラーを立てつつしっかり自分のプレーをしていますね。

ピアノ、ベース、ドラムは軽快にルーラーをバックアップ。気分がウキウキするようなビートを提供しています。ピアノのジョセフは抜群にスインギーなソロを聴かせてくれていますよ。アルバムタイトルどおりヨーロッパの人達が集まっているのですが、黙って聴かせたらノリ自体は本場アメリカと何ら遜色ありません。それが現代の状況なのです。で、メンバーの写真と紹介文を見たら、ピアノとドラムはロンドン生まれの黒人なのでした。現代(とはいえもう15年前の録音ですが)ならではです。

今日も楽しく聴きながらブログを書きました。実は私、ルーラーのアルバムはこれ1枚しか持っていません。m(_ _)m いいのにね~。何でその後フォローしなかたんだろう?

アルバム名:『EUROPEAN GUINTET』
メンバー:
Jesse Van Ruller(g)
Julian Joseph(p)
Nicoras Thys(b)
Peter Weniger(sax)
Mark Mondesir(ds)

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ジャケットがカッコイイ!

先日紹介した「プリズム」繋がりでベーシストのアルバム。

P181 クリストフ・ウォーレム『タイム・ゾーン』(2003年rec. Nocturne)です。メンバーは、ステファン・ギラウム(sax,cl,palmas)、デヴィッドヴェニツッチ(acc)、ネルソン・ヴェラス(g)、ステファン・ウシャール(ds,cajon)、ミニノ・ガレイ(per,cajon,palmas)、クリストフ・ウォーレム(b)、デヴィッド・リンクス(vo)4,8、ダニエル・ミラー(bangonion,acc)4,11 です。

これは私がプリズムを知ってしばらく経った頃に出たアルバム。ディスクユニオンのチラシを見て買った記憶があります。プリズムのベーシストのリーダー・アルバムということで興味が湧いたわけです。そしてこのジャケットを見て下さい。ハンサム・ボーイがでっかいベースを軽々とかかえている図。涼しげな笑顔を浮かべるウォーレム。ベースがこっちへ迫りくるアングル。カッコいいですよね。

内容はメンバーの楽器編成を見てもらえれば分かるとおりフランス・エスニック・サウンド。全編に渡ってアコーディオンとギターが活躍しています。フランスのシャンソンみたいな歌ものも1曲入っています。1曲を除いて全曲ウォーレムが作曲。ベース・ソロもあまりやらず曲を聴かせる構成です。コンポーザーとしてのウォーレムを聴く1枚。メンバー表記は上記の順番どおりで6番目に紹介されていることからも察することはできると思います。

アルコ(弓弾き)なしでピチカートに徹しています。ヨーロッパの常でベース・コントロールは長けていますね。このアルバムでは力で押すようなところはなく。しなやかにベースを奏でて演奏を推進させているのが聴きどころです。録音が良いのでファットでクリアなベース弦の音が楽しめます。弦の音はオーディオ的に聴いても十分楽しめるんじゃないでしょうか。

クラリネット/サックス、アコーディオン、ギターのソロはなかなか優れていて、ジャズとしても十分楽しめます。メロディーは哀愁系ですが、リズムはパーカッションが活躍したりして弾むものが多いので陽性の聴き心地。アコーディオンとギターの響きが爽やかなので、暑い日に清涼感を得たい時なんかにこれを聴くと良いかもです。

ヨーロッパ(フランス)文化に溶け込んだジャズ。なかなかいいですよ。

アルバム名:『TIME ZONE』
メンバー:
STEPHANE GUILLAUME(saxs, cl, palmas)
DAVID VENITUCCI(acc)
NELSON VELAS(g)
STEPHANE HUCHARD(ds, cajon)
MININO GARAY(per, cajon, palmas)
CRISTOPHE WHALLEMME(b)
DAVID LINX(vo)
DANIEL MILLE(bandonion, acc)

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寺久保エレナさんのライブを観ました!

一昨日7月12日、甲府の「コットンクラブ」で 寺久保エレナ さんのライブを観てきました。9月にはバークリー音楽院に留学するので、今回は留学前国内ラストツアー。ならば「観ておかねばなるまい!」ということになりました。

P178_2 「コットンクラブ」で単独ライブを観るのは今回が初めてです。「甲府JAZZストリート」の時は何度か観にきています。ここは銀行だったところを改装してお店になっていて、天井が高く広々とした空間でライブを楽しめるのが良いです。適度な広さの空間なのでPAなしの生音が聴けます。ただしベースのみはアンプを通しています。

今回のツアーはアルバム『ニューヨーク・アティチュード』発売記念ライブです。メンバーは、寺久保エレナさん(as,ss)、大林武史さん(p)、井上陽介さん(b)、マーク・ホイットフィールドJr.さん(ds)です。さすがに寺久保エレナさんは注目度が高いですね。かなりお客さんが入っていました。

ライブ開始前、控室に入るエレナさんを見ましたが、高校を卒業したばかりのどこにでもいそうな普通の女の子という感じでした。結構背が低いです。さて、ライブが始まり演奏を開始したわけですが、エレナさんは飄々としていますね。最初の2曲はちょっと抑えめに入った感じに聴こえました。アルバム・タイトル曲(シダー・ウォルトン作)の《ニューヨーク・アティチュード》《ワン・フォー・ユー》(渡辺貞夫作)を2曲続けて演奏した後にMCが入りました。渡辺貞夫さんを尊敬しているそうです。

続いてエレナさんのオリジナルで《フェリス・ホイール(観覧車)》。都会的でモーダルな感じの曲です。そういえば岩浪洋三さんが「寺久保さんは新世代モード派といえるかもしれないが、・・・」と、ジャズ批評のデビュー・アルバムのレビューに書いていたのを思い出し、「なるほどこういう感じなのか。」と納得しました。エレナさんはソロ(アドリブ)に入った後しばらくは、平気で1小節前後吹かなかったりするので面白かったです。勢い任せにアドリブせず、フレーズが降りてくるのを待つ感じです。

いや~っ、意外と一筋縄でいかないんです、この人(笑)。アドリブをよく聴くと、ゆっくり入って徐々に自分なりの遊びを取り入れて展開し盛り上げていくという構成をしっかり考えている感じです。そういう意味で熱くブローしてもどこか醒めた感じは伴います。私はこの醒めた感じが今時のジャズ・ウーマンらしくて良いと思いました。ありきたりのバップフレーズを安易に並べるようなこともしません。私はアドリブと真摯に向かい合うエレナさんを感じました。結構ストイックな人だとも思いました。そこに初々しさも見ました。

次もエレナさんのオリジナル。バラードで《ザッツ・ザ・トゥルース》。なんとなく《イン・ア・センチメンタル・ムード》のような雰囲気を持つ都会的で洗練されたサウンドを聴かせてくれました。なかなか良い曲だと思います。新世代モード派的というのはここでも感じました。

ファースト・セットのラストはサム・ジョーンズの曲《デル・サッサー》。ここまでちょっと抑え気味に演奏していたように聴こえたんですが、これは楽しい曲に合わせてアドリブも遊び心を感じる勢いに溢れたもので一挙に場が盛り上がりました。う~む、ちゃんとラストに見せ場を持ってくるあたり、なかなかやりますな~。ここまで聴いてすっかりエレナさんに惹かれてしまいました。《フェリス・ホイール》以外は『ニューヨーク・アティチュード』収録曲でした。

寺久保さんのアルトの音は迫力があるというより、丁寧に楽器をフルトーンで鳴らす感じのものでした。金ピカのセルマーからは温かくてブライトな音が出ていましたよ。

ピアノの大林さんはバークリー卒業後アメリカで活動しているようです。周りの音を注意深く聴きながら演奏しているのが印象的でした。ソロもなかなか冴えていたと思います。ベースの井上さんはエレナさんとは親子関係ほどの年齢差。後ろから優しい眼差しで見守って演奏を支えつつ、ソロになると多彩な技でお客さんを魅了していました。ドラムのホイットフィールドさんは笑顔を絶やさず抜群のグルーヴで演奏を推進させていました。とても楽しそうなのが微笑ましかったです。メンバーが自分の個性を発揮しつつエレナさんを盛り上げる素敵なカルテット。

P179_2 笑ってしまったのがこれです。今回のライブツアー用に作ったという”エレナTシャツ”。背中には『ニューヨーク・アティチュード』に収録されている曲名が印刷されています。エレナさんはこれの黄色を着て演奏していました。ライブに来ていたオジサン団体がこのTシャツを買ってその場で来るという笑える光景もありました。

30分弱の休憩をはさんでセカンド・セット開始。最初の曲はウェイン・ショーターの《オリエンタル・フォークソング》。この曲を選ぶあたりがやっぱり新世代モード派的なのでした。おっ、これはソプラニーノ・サックスで演奏。ソプラニーノを吹く姿も含めかなりのカッコ良さなのでした。「PCMジャズ喫茶」にゲスト出演した時、ジョー・ヘンダーソンがカッコいいと言っていたエレナさんらしく、ウネウネ系のフレーズもいい感じなのです。これははっきり言って武器になりまっせ。ここぞという時にソプラニーノ一発!アルバム収録バージョンはドミニク・ファリナッチ(tp)とのクインテットなのですが、私はこのソプラニーノ・サックス・バージョンが気に入りました。ソプラニーノを吹いたのはこの曲だけです。

MCではアフリカに行った時にこの曲を演奏したなんて言ってました。アフリカへ行って良い体験ができたそうです。日本の何不自由ない便利な生活を再認識したとか。極軽くお笑いもいれつつ、MCは及第点(笑)。次はエレナさんのオリジナルで《ファッシネーション》。モーダルな美メロ曲。途中リズム・チェンジが入ったりするカッコいい曲です。なかなかクールなのです。ベースのロング・ソロをフィーチャ。井上さんのトリッキーな弾き方も含め見せ場になっていました。

次はピアノとアルトのデュオで《ボディ・アンド・ソウル》。最初はこの曲のメロディーをそのままやらずに入り、徐々にメロディーが現れるところがいい感じでした。甘さに流されずメロディーを大事に歌わせていく丁寧な演奏。ピアノの大林さんとはサウンド・センスがマッチしているように感じました。エレナさんのバラード演奏は情緒に流されず丁寧に歌わせるのが信条と見ました。

セカンド・セットのラストはアルバム『ノース・バード』に入っている《イッツ・ユー・オア・ノー・ワン》。高速4ビートで快調に飛ばし、大いに盛り上がって終了。こういう曲をやるとバップ的になりますね。私もエレナさんのアドリブの方向性が徐々に読めるようになってきて、なるほどね~っ、なんて思いながら聴いていました。

アンコールは《スター・アイズ》。ラテン・リスムの軽快な曲で楽しく演奏が進みます。これがアルト・ソロ、ピアノ・ソロともにかなり長く、ベース・ソロあり4バース交換ありと、アンコールにしてはガッツリ楽しめました。セカンド・セットからここまで《イッツ・ユー・オア・ノー・ワン》以外は『ニューヨーク・アティチュード』収録曲でした。アルバム発売記念ライブですから当然ですね。

P180_3 というわけで、サインももらってきました。寺久保エレナさん、自分をしっかり持っている方でした。安易にお客さんに媚びるようなことはせず、自分にできること、自分が考えていることをしっかりやることに徹しているように見えました。ミュージシャンはそれで良いと思います。ライブを観ないと分からないことってありますね。とても楽しかったです。バークリーへ留学したら色々吸収してほしいです。まっ、そんなことは私が言うまでもないことでしょうが(笑)。バークリー後の成長したエレナさんが今から楽しみです。

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寺久保エレナさんのライブを観てきました。

昨夜は話題の若手女性アルトサックス奏者 寺久保エレナ さんのライブを観てきました。エレナさんは9月からバークリー音楽院へ留学するので、その前にライブを観ておきたかったのです。初々しかったですよ~。ライブの模様は明日UPします。

P180_2

しっかり新譜にサインをしていただきました(笑)。

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今日は新譜紹介。プリズムです。

今日は新譜紹介です。新譜といってもいつもの如く出てからだいぶ経過してしまいました。昨日がロリンズで今日がプリズム。全く脈絡がないところが私らしくていい(笑)。

P177 プリズム『ファイブ』(2009年rec. PULS LOIN MUSIC)です。メンバーは、プリズム:ピエール・ド・ベスマン(p,rhodes)、クリストフ・ウォーレム(b)、ベンジャミン・エノック(ds)、ゲスト:ロザリオ・ジュリアーニ(as)、マヌ・コジャ(g)です。フランスのピアノ・トリオ「プリズム」がゲスト2人を迎えて演奏したライブ録音盤。

私が「プリズム」を知ったのは杉田宏樹さん著「ヨーロッパのJAZZレーベル」です。フランスの新感覚派のカッコいいピアノ・トリオのようだったので、中古CDを見つけて買ったのが最初です。サード・アルバム『タイム』でした。その後中古CDはあまりみかけることはなく、一昨年セカンド・アルバム『セカンド・プリズム』を見つけて即ゲット。私が持っているのは2枚のみです。ファースト・アルバム『プリズム』と4作目『オン・ツアー』は廃盤みたいで中古市場でも高値のようです。

4枚のアルバムを出した後は活動休止状態だったみたいで、しばらくぶりにこのアルバムが出ました。このアルバムもAmzonでは再入荷見込みが立っていないという表記になってしまっています。日本で上手く売り込めば売れると思うんですけどね~、これ。ちなみにベスマンもウォーレムも個人名義でアルバムを出しています。ベスマンは「ムタン・リユニオン・カルテット』のピアニスト。エノックはロザリオ・ジュリアーニのアルバムに参加したりしています。

ゲストの2人について。アルトのジュリアーニは自分のアルバムでエノックを起用している繋がりからゲストとして呼ばれたのでしょう。ギターのコジャは私の知っているところではトランペットのエリック・トラファズのアルバムに参加していました。多分フランス人で、コンテンポラリー系のジャズをやっています。2人とも音楽性はプリズムにマッチしています。全8曲中、3曲にジュリアーニ、2曲にコジャが加わります。2人同時参加している曲はありません。

1曲目《リフレクション》からハード・ドライビングな曲でぶっ飛ばします。特にジュリアーニの熱いブローが凄いです。ジュリアーニのアルバムに『トリオ・オスティコ』というハード・フュージョン系サックス・トリオ(ドラムはエノック)のアルバムがありますが、それの再来ですね。この曲の冒頭しばらくはサックス・トリオになっています。こういうブローは痛快。ドラムのエノックが煽る煽る、叩く叩く、この人のドラミングのキレとパワーは大したものです。

ゴンゴン弾くベース。途中からベスマンがバックでコードをぶつけてきます。ベスマンのピアノ・ソロはテクニカルだけれどメロディアス。途中からはエレピに変えたりして熱く迫ってきます。エレピの最後の方はフレージングが70年代ハンコック似。感覚としては現代最先端というよりもう少しレトロな方に足を置いて立っていると思います。そこが逆に誰にでもなじみやすいと思います。

2曲目《シークレット・ワールド》はタイトルどおりちょっとダークで神秘的な感じのメロディー。ちょっぴりエスニック風味もあります。スローナンバーでベスマンはエレピに専念。じっくりじわじわ盛り上がるジュリアーニのソロがここでも秀逸。エノックはマレットで”ドロドロ”と煽ります。ベスマンのエレピ・ソロは尖がりつつもやっぱりメロディアス。サウンドは意外と70~80年代だと思います。70~80年代フュージョン・ファンなら絶対気に入ると思うのですがどうでしょう。

3曲目《デンプス・デンス》はプリズムのみ。ピアノ・トリオです。上記2曲が8ビートだったのに対して、ここでは4ビート。こいうトリオ演奏ではベスマンは現代先端系演奏。地に足をしっかり付け現代的なちょっと捻ったフレーズで迫ってきます。ベースとドラムも現代的な4ビートを遺憾なく繰り出しています。エノックのドラム・ソロが強烈。アントニオ・サンチェスなんかと似た傾向ですが、アートよりパワーに的をおいています。エノック、凄いドラマーです。プリズムは良いトリオだと思います。

4曲目《X-レイ・イントロ》は、アーティスティックでロマンティシズム漂うピアノ・ソロ。ここからメカニカルな曲《X-レイ》に入る流れはカッコいいです。私は『タイム』に入っていたこの曲が好きです。コジャのロック系フュージョン・ギターがこのメカニカルな曲に華を添えます。こういう尖がり度が高い曲いいですよね。ベスマンはエレピでサウンド・エフェクト効果を上げています。エノックも叩きまくってますね。ウォーレムはアコースティック・ベースで通していますが、存在感を失わないパワフルさが素敵です。

6曲目《ザ・ストーン・カッター・イントロ》はウォーレムの図太いベース・ソロ。”ゴリンゴリン”ですね。目の前に塊を築いていきます。続く《ザ・ストーン・カッター》はピアノ・ベースの短い語らいからギターとドラムが入って、ワルツの優美なテーマが奏でられます。こういう美メロバラード曲をクールにしっかり聴かせるのもこのグループの美点。コジャの浮遊系ギター・ソロも美しいですね。音を伸ばすところはヴァイオリン的にも聴こえます。後半徐々に燃え上がるギター。

ラスト《アン・デス・センス》は、ジュリアーニが再び現れて、高速4ビートのコンテンポラリー・バップ。このアルバムの中では一番オーソドックスなスタイルの演奏です。スピード感溢れるスリリングな演奏を展開しています。ジュリアーニはここでも快調そのもの。最近のこの人には勢いがありますね。バックでプリズムの面々が煽っていますが、煽れば煽るほどノリノリに。ジュリアーニの勢いを受けてベスマンも快調に飛ばします。ウォーレム、エノックのスピード感溢れつつ安定感抜群のリズムもいいです。終盤エノックのマシンガン・ドラム・ソロ炸裂の4バース交換もあります。

プリズム、サウンド的には最先端から敢えて一歩下がっているようで、それ故のなじみやすさが魅力だと思いました。かなりカッコいいし、聴いて楽しいです。ライブなのにこの一体感ある演奏。メンバー一致団結のもと演奏を炸裂させるのは凄いですね。

アルバム名:『FIVE』
マンバー:
Pierre de Bethmann(p, fender-rhodes)
Christophe Wallemme(b)
Benjamin Henocq(ds)
Guest: Rosario Giuliani(sax), Manu Codjia(g)

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突然ですが、ソニー・ロリンズ

新譜紹介もあと2枚ほど残っていますがそれはまた後ほど。今日紹介するのは私が初めて買ったサックス・トリオのアルバムです。

P176_2 ソニー・ロリンズ『ウェイ・アウト・ウエスト』(1957年rec. CONTEMPORARY)です。メンバーは、ソニー・ロリンズ(ts)、レイ・ブラウン(b)、シェリー・マン(ds)です。カウボーイに扮したロリンズがサックスを持っってポーズをとるおとぼけジャケットで有名な1枚。ロリンズのサックス・トリオのアルバムとしては、東の『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』に対する西の『ウェイ・アウト・ウエスト』です。

私がジャズを聴き始めた30年ほど前、最初に買ったロリンズのアルバムは『リール・ライフ』でした。アルバムを聴いて、噂どおりの歌心で豪快にブローし、現代(80年代)を颯爽と歩んでいたロリンズに惚れました。余談ですが、ジャック・ディジョネトのドラミングに惚れたのもこのアルバムです。私にとっては現代を生きるジャズ・ジャイアントというのがロリンズの最初の認識。名盤『サキソフォン・コロッサス』の人ではありませんでした。現代からさかのぼって過去のアルバムを聴いていくというのが私のロリンズ体験です。

さて本題。過去のロリンズを聴こうと思って最初に買ったのが実はこの『ウェイ・アウト・ウエスト』なんです。何で『サキコロ』より先にこれを買ったのか?今となっては思い出せません。サックス・トリオと言えば名盤『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』だってあるのに、当時オーディオ趣味のほうが勝っていたので、意外と音質という点でこれを選んだのかもしれませんね。

ポップ・ロックからジャズに入った私は、当時ソロものとかデュオものとか音が少ないものは敬遠していました。だってポップスやロックってほとんどのものが音を詰め込みまくっていて、そういうのに慣れてしまっていて、そういうのが好きだった私は、音が少なくなるものをどう聴いていいのか?どう間を持たせればいいのか?分からなかったからです。だからこのアルバムもサックス・トリオという音の少ない編成にちょっとためらいがありました。でもロリンズの歌心がよく出ているなんて言われていたのでこれを買うことにしました。も一つ本音を言うと『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』はイメージが怖そうだったので避けました(笑)。

で、これを買って聴いて、冒頭の《おいらは老カウボーイ》を聴いて力が抜けたのは事実(笑)。シェリー・マンの馬の蹄の音を真似た”チャッカ、ポッコ、チャッカ、ポッコ”にはちょっと参りました。でもこれがロリンズの大らかなイメージにマッチしていると思って納得した覚えもあります。ほんと、大らかに楽しそうにテナーを吹いているロリンズ。こういうジャズもいいな~と、緊張感を強いられるだけがジャズじゃないんだと思いました。

音の少なさ、間の多さも悪くないと感じました。それはコンテンポラリーのリアルで明確な録音のせいもあるでしょう。”シャキッ”としたシンバルやスネア、粒立ちのよい”プリッ”としたベース、太くブリリアントなテナー、音そのものばかりでなく、それらの間に存在する空間を意識できるだけでも楽しめました。そういえば、コンテンポラリーの音の良さを私が最初に認識したのは、アート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』ではなくこのアルバムでしたね。私って意外と世間的な常識とズレながらジャズを体験してきました。

そういう音の少なさ、間の多さの中から浮かび上がってくるのはロリンズの歌心。いやっ、レイ・ブラウンとシェリー・マンの歌心も浮かび上がってきますね。「いいな~。」と思いましたよ。当時私にとってはマイナス要因アリアリのこのアルバム。というわけで、聴いてみれば結構好きなアルバムになってしまいました。どの曲が一番好きかと聞かれれば、タイトル曲《ウェイ・アウト・ウエスト》ですね。ロリンズだけじゃなくレイ・ブラウンもシェリー・マンも一番輝いているのがこの曲だと思います。そういえば、FM-NHKの「ゴールデン・ジャズ・フラッシュ」のロリンズ特集の時、この曲をかけたという記憶がしっかり残っています。

私の好きなロリンス盤。聴いていない方は是非!

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今日はオーディオの話題。久々です。

最近の私のオーディオは安定してしまってほとんど変化がありません。オーディオファンにとってはこの安定が一番ダメなことなんですけどね。何かを求めて機器を交換し続けるのがオーディオファン本来の姿です?まあそれでも時々”オーディオの虫”がうずいてうずいてしょうがなくなります(笑)。今回も前からうずいていたその”虫”によってもたらされた変化です。

P71_4 昨年秋に6L6GC真空管アンプを作りました。作ったというより改造ですね。元々はR120というフランスのヴィンテージ管のアンプだったのですが、1本壊れてしまったため、この高価な真空管を使うのをやめて、出力管を変えて作り直しました。6L6GCはエレクトロハーモニクス(EH)のかなり安いものです。爽やかな音のアンプに仕上がったのですが、中域が薄い感じでした。「もう少し濃い音がほしい。」というわけで”オーディオ虫”がうずいたのです。

ヴィンテージ管を使いたいところですが、6L6GCも最近は結構高いのです。真空管アンプブームも今は一段落した感があるけれど、ヴィンテージ管はどんどん希少化してしまうので値上がりは避けられません。ここ数年、庶民的な真空管である6L6GCや6V6GT辺りも値上がりしてしまいました。さて、どうしましょうか。

色々悩みました。この悩んでいる時が一番楽しいんですけどね。上京した時は秋葉原の真空管屋を巡ったり、ネットで通販を調べたりして数カ月を過ごしてきました。そしてとうとう決着しましたよ。”7581A”です。6L6GCの上位互換球。プレート損失が大きくなっています。この7581Aをネットで検索するとやたらと評判がいいんです。普通は賛否あるものなのですが、ほとんど否がないんです。これは試してみるしかありませんよねっ。

秋葉原価格はやっぱりそれなりに高いのですが、ネットを調べていたらこの真空管の入手先を書いている人がいました。「バンテック エレクトロニクス」という通販会社です。早速アプローチ。簡潔にしてスムーズな買い物ができました。値段は秋葉原価格よりだいぶ安めです。1本単位の販売ですが、複数本買うと簡易測定で特性の揃ったものを送ってくれます。実際に私のアンプに挿してみたら揃った特性でした。

この真空管は1980年代中頃に製造されたもののようで、NOS(ニュー・オールド・ストック)です。軍箱に入っていいました。フィリップスECGのものですが、シルバニアが製造したメイド・イン・USA。ロシアとか東欧とか中国製も最近のものは問題ないのですが、やっぱりUSA製がいいんですよ(笑)。

P174_2 写真は左側がこれまで使っていたEHの6L6GC、右側が今回入手した7581Aです。管の大きさはほぼ同じくらいですが、プレートの形状はかなり違います。7581Aは全体的にずんぐりした感じで丸っこく可愛げがありますよね。6L6GCはハカマの段付きが特徴なんですけれど、これが私にはどうも気に入らなかったのです。7581Aの表面の緑色の印字はこすると取れやすいので、最初から薄くなってしまっているものもあります。私はあまり気にしません。

P175 アンプに実装するとこんな感じです。手前のヨーロッパ製6SN7GTYの方が目立ってますね。前に使っていた出力管がフランス製R120だったので、ヨーロッパ製に統一していたのです。EHの6L6GCはこの6SN7GTYより安かったので、どうもアンバランスで気分的によろしくありませんでした。今度はそれより少し高いので良しとしましょう(笑)。今回はヨーロッパとアメリカの連合。7581Aはあたりを暗くすると薄紫色のグロー放電がきれいです。

音はというと、まだエージング段階ですが中域の濃さはあるように思います。どこかを強調するとかではなくバランスがとれたクリーンな音の真空管だと感じました。これから聴き込んでいけば味も出てくるかもしれません。ということで、今回の変更は成功だったと思います。このアンプは当分いじらないことになるでしょう。

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早坂紗知さんのライブを観てきました。

昨日は甲府「桜座」 早坂紗知 さんのライブを観てきました。

P172 昨日は七夕、甲府の銀座通りには屋台が出て、大勢の人で賑わっていました。甲府の街がこんなに賑わう日もあったんですね!驚きました。いつも人通りが少なくガラガラなのに。夏祭り気分を味わいたい人っているんですよね。ライブを観る前に通りを10分ほどブラブラしてみました。せめて毎週末、この1/4くらいの人が甲府の街に来てくれればいいのに・・・。

P170 さて、本題に戻りましょう。早坂紗知さんの今回のライブはアルバム『アルディエンテ!』発売記念ツアーです。この『アルディエンテ!』は昨年のライブツアーから録音したライブ盤。昨年のライブツアー初日は甲府「桜座」で、私も観に行ったのですが、それは残念ながらこのアルバムに収録されていません。去年のライブが凄く楽しかったので今回も楽しみにしていました。

メンバーは、早坂紗知さん(as,ss)、吉田桂一さん(p)、永田利樹さん(b)、コスマス・カピッツァさん(per)です。グループ名は「minga4(ミンガ・カルテット)」です。ピアノの吉田さんは去年からメンバー入りしました。今回のライブツアーもここ甲府「桜座」が初日です。

P173_4 舞台に登場して演奏開始。最初はバラード。”ガッツリ”アルトを歌わせて、私の耳をしっかり惹きつけてくれました。続けてラテン系の陽気な曲、今度はノリノリな演奏が繰り広げられます。もう細かいことをどうこう言う世界ではないのです。聴いているとドンドン元気が出てくる演奏。メンバー一丸となって音楽をヴィヴィットに推進させます。ラテンリズムの曲は特にもう文句なく楽しいです。3曲目は新アルバムにも入っているイバン・リンスの《Acaso》。いい曲なんですよ。ソプラノでバラードを朗々と。胸にグワ~ッと迫ってきます。永田さんのベース・ソロの途中に出てきたマイルスの《ジャン・ピエール》のフレーズには思わすニンマリ。元気な4曲目を挟んで、ファースト・セットのラスト《EXILES》は途中フリーな展開も交えて濃い演奏を聴かせてくれました。う~む、素晴らしい!

セカンド・セットは早坂さんが去年作ったオリジナル《旅の目的》から。本当はスペイン語のタイトルです。モーダルなカッコいい曲。ソプラノ・サックスで”ウネウネ”ソロをとるのを聴いていたら、思い出したのはデイブ・リーブマン(ss,ts,fl)とリッチー・バイラーク(p)の双頭コンボ「クエスト」。こういうの好きだな~。2曲目は永田さんがバリトン・サックス奏者の息子さんとの2管のために作ったという《東京ギガンテ》。ブルージーな曲でした。こういう曲もいいですね~。そしてカーラ・ブレイの《ハレルヤ》。こういう曲を持ってくるセンスが好きです。ゴスペル調の曲で、アルトを朗々と泣かせます。この曲は久々に聴いたけれどいい曲です。こういう曲をスケール大きく聴かせるのも早坂さんの良さ。ラストはブラジルの曲《トンボ》。これがサンバのリズムに乗っての大盛り上がり。ブラボー!

さて、アンコールは?キッターッ、《カイ・デントロ》。やっぱり〆はこれですよね。この明るいけれど哀愁を含んだメロディーは私の美メロのツボにピタリと嵌ってしまっているのです。大好きな曲。サンバのリズムにのって陽気に元気よく。最高っす!あ~っ、幸せ(笑)。あっ、そういえばサックス2本吹きがなかったな~、残念!まっいいか。

P171 というわけで、私は幸せな気分でライブを満喫したのでした。ライブの後、サインをいただきました。今度のアルバムに入っているライナーノーツです。この中央の写真。去年「桜座」で撮ったものでした。そなんですよ。この衣装に見覚えがありました。吉田さんのサインだけ水性ペンだったようで、ご覧の通り薄くなってしまいました(涙)。こうなったら来年甲府にきたらもう一度サインしなおしてもらうぞっ!にしても凄く楽しいライブなのに、もうちょっとお客さん来てくれてもいいんじゃないの?甲府のジャズファンとして情けないです(涙)。

あ~っ、楽しかった!来年も来て下さい。よろしくお願いします。m(_ _)m

なお、ライブを疑似体験したい人は、新アルバムを買って聴くべしっ!

今回のツアースケジュールは以下のとおりです。
http://www.ne.jp/asahi/stir/up/schedule/sche.html
お近くの方は是非観に行って下さいませ!

こんなのがありました。
昨年のツアーの写真とアルバム紹介。

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久々にコートニー・パインを聴いてみた。

もう全然新譜ではなくなってしまったけれど、それでも新譜紹介ということで。ミュージックバードで聴いて気に入ったので買いました。

P169 コートニー・パイン『ヨーロッパ』(2010年rec. Destin-E Records)です。メンバーは、コートニー・パイン(b-cl,syn,harmonium)、ゾー・ラーマン(p)、アレック・ダンクワース(b)、マーク・モンデシー(ds)。ここまでが主要メンバー。曲によって、アマンダ・ドラモンド(viola)、ロバート・フォージャー(ds,dub,per)、シャバカ・ハッチンス(cl)、オマー・プエンテ(el-vl)、キャメロン・ピエール(mondolin,g)、ドミニク・グラント(g)が参加します。

昔はアシッド・ジャズでかなり人気があったコートニー・パイン。最近私の眼中からはすっかり外れ、忘れ去りかけていた過去の人なのですが、突然こんな形で浮かび上がってきたのでビックリ。まあ、このアルバムが日本でそんなに売れるとは思えないですね。面白いんですけれど、要はマニアックなアルバムということになるのでしょう。

タイトルからだいたい想像がつきますが、「自分史の中におけるヨーロッパを紐解く」というコンセプトに則って制作されたアルバムだそうです。面白いのはパインが全編バスクラリネットを通して吹いていることですね。この人、バスクラもなかなか上手です。アルバムのエスニック色にバスクラの音色がマッチし、独特のエスニックムードを盛り上げています。

HMVの宣伝文を読んだら、「この20年で訪れたハンガリーの首都ブダペスト、ロシア連邦モスクワ「赤の広場」、トルコ~バルカン半島周辺国といった土地でコートニーが直接肌で感じとったメロディ、楽器の音色、言葉、さらには文化、風土・・・そうした様々な要素とそのイメージを投影した、つまりはケルティック、スカンジナヴィアン、地中海周辺のマルチ要素が結び付いた1枚に仕上がっている。」と書かれていました。ザックリ言ってしまうと私には東欧エスニック・サウンドに聴こえました。

パインが全曲を作曲してアレンジしています。パインは単にバスクラ奏者ということでなく、ここではコンポーザーとしてアルバムをしっかり作っていることが分かります。だからといってバスクラ演奏を疎かにするようなこともなく、しっかりバスクラという楽器を操って自分の言いたいことを言っていると思います。しっとりした語り口のバラードも聴きどころではないかと思います。

基本ビートが躍動的な8ビートというのはこの人らしいところ。多くの曲で躍動的なビートが音楽を楽しく推進させていくのでクラシック的な匂いはあまりしません。躍動的なビートに東欧系哀愁メロディーが乗るという組み合わせは、意外と王道フュージョンのビート&メロディーを踏襲していたりするんですよ。だから楽しく聴けます。ところで、10曲目の出だしを聴くと、”窓に西日が~”のテレサ・テンを思い出すのは私だけでしょうか(笑)?

このアルバムの良さは全体から漂う大人の落ち着いた香。パインも歳を重ね、こういう大人のジャズをやるようになっていたんですね。いい感じだと思います。

アルバム名:『EUROPA』
メンバー:
Courtney Pine(b-cl. syn, harmonium)
Zoe Rahman(p)
Alec Dankworth(b)
Mrak Mondesir(ds)
Amanda Drummond(viola)
Robert Forjour(ds)
Shabaka Hutchins(cl)
Omar Puente(el-vl)
Cameron Pierre(mandlin, g)
Dominic Grant(g)

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この音には参りました!

先月いつものように 「discland JARO」 から通販リストが届きました。ボーナス時期ということで、この時期は多めにリストアップされています。通販リストには”お買い得品が盛り沢山”と書かれていました。リストをチェックすると確かに分かるひとには分かるお買い得品がいくつもありました。そんな中から買ったのが今日のこれ。

P168 ウェス・モンゴメリー・トリオ『ア・ダイナミック・ニュー・サウンド』(1959年rec. REVERSIDE)です。メンバーは、ウェス・モンゴメリー(g)、メルヴィン・ライン(org)、ポール・パーカー(ds)です。このアルバムは「高野雲の快楽ジャズ通信」の「ウェス・モンゴメリー特集」で聴いて気に入って買おうと思っていたものです。

今回「discland JARO」で買ったのはオリジナル盤。モノラル、スモールラベル、溝アリ、盤質N-、ジャケットA-/-。日本盤の中古レコードよりはもちろん高いのですが、オリジナル盤としてはかなり安めの価格だったので買うことにしました。4桁でした。JAROの店主によると、1ヶ所気になるプチッがあるとのことだったのですが、安かったのでそれでも良いということにしました。完全オリジナル盤とのこと。

手元に届いたレコードはジャケットの上がかなり裂けていたのですが、私はジャケットよりレコードが大事。レコードを見るとスレが多めだったので、ちょっと不安になりましたが、それは杞憂に終わりました。1ヶ所気になると言っていたのはどこか分からず、ノイズもかなり少なめ。これはいい感じです。

そして、聴いてビックリしました。まずオルガンの低音がふっくら厚く盛大に入っています! 続いてウェスのギターのブ厚い音にビックリ! 普段静かめに叩いているドラムですが、張りきって叩くと”ドッシャンバッシャン”リアルっす。とにかく音がコッテリ、濃密に迫ってきます。リバーサイドの音ってもっとスッキリしている印象なのですが、これは突然変異か? タイトルに偽りなしの”ダイナミック・サウンド”。「安すく売りすぎじゃないんですか?えっ、JAROさん!」。かなり得した気分。こういうのがあるからオリジナル盤って堪らないのですよ。

このアルバムではウェスがスタンダードなどを大らかに演奏しています。後のCTIなどからでたイージー・リスニング路線の核となるものがあります。『フル・ハウス』のようにバップをギンギンに演奏するウェスは最高なのですが、それとはまた違ったウェスの良さに溢れています。こんな気楽そうな演奏なのに、スケールがデッカイところがウェス。それをレコードの音質が見事に後押し。スピーカーの真ん中にドッカリ姿を現すウェスのギター。これぞヴァーチャル・リアリティーと言わずして何と言うのか?

演奏良し、音良し、ジャズ・オーディオの醍醐味ここに極まれり。このレコードを聴きながらブログを書いているのですが、どんどんハイテンションになっていく~うぅ、たまらん!ジャケットの絵もいい味出しているよね~。

これ以上続けるとアホ丸出しになりそうなのでもうやめます(笑)。
一人でいい思いをしてしまい、どーもすいませーん!

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どマイナーなアルバムでしょうけどいいです。

とうとう今年は東京JAZZへ行くことにしました。だって上原ひろみのトリオが観たいんだもん。アンソニー・ジャクソンとサイモン・フィリップスとの豪華最強トリオ。これは見逃せないでしょ。昨日チケットを予約したらもうA席しかありませんでした。

今は便利ですね。パソコン予約してすぐに近所のセブンイレブンでチケットを買えるんですから。2階席の25列目って、ステージからどれだけ遠いんじゃ~っ(涙)。しょうがないですな。生で会場の雰囲気が味わえれば良しということにしておきましょう。いや~っ、9月3日(土)が今から待ち遠しいです。

P167 さて、今日紹介するのはロス・グアチョス『FILTROS』(2007年rec. Sunnyside)です。メンバーは、リチャード・ナント(per)、ベン・モンダー(g)、ミゲル・セノーン(as,flt)、サンドロ・トマシ(tb)、テイラー・ハスキンス(tp)、クリス・チーク(ss,ts,bs)、ジェフ・バラード(ds)、フェルナンド・ウェルゴ(el-b)、ギレルモ・クライン(p,vo)、ビル・マケンリー(ts,ss)、ディエゴ・ウルコラ(tp,valve-tb)です。NYダウンタウン系のサックス陣は強力。ベン・モンダーにジェフ・バラードもいます。

このバンドのリーダーはアルゼンチン出身のアレンジャー&ピアニストのギレルモ・クライン。アレンジャーとしてはマリア・シュナイダー(ギルエバンスの弟子)に継ぐ世代のホープらしいです。どうなんでしょ。日本ではそれほど知られていないですよね。5年くらい前、「ヴィレッジ・ヴァンガード」などにレギュラー出演して盛況だったとか。

このアルバムを知ったのはジャズ喫茶「いーぐる」の連続講演。数年前の益子博之さんの「ニューヨーク・ダウンタウンを中心とした新譜特集」でした。この特集はなかなか日本に入ってこない当地の状況を伝えてくれるもので、私はこの特集を通して新しいものに触れていくことになりました。この手の情報源としては原田和典さんの”JAZZ徒然草”もおすすめです。

特集で聴いた時、優秀メンバーの良いソロとアンサンブルが融合していて、あまり難解なことをやっていないのが気に入りました。その後買う機会を逸し、結局買ったのは昨年暮れ頃。紹介は更に遅れ、今年も半年が過ぎてしまいました。

全10曲中の7曲をクラインが作曲。2曲はメンバー他が作曲し、1曲はアルゼンチンの民謡です。一応ラテン系なんでしょうけれど、モロにラテンという感じではなく、ニューヨーク・ダウンタウン系のコンテンポラリー・サウンドにラテンの哀愁フレーバーをまぶしたものになっています。ラテンの下世話な感じとは違う都会のサウンド。

クールになりがちな人達が集まっていますが、ラテン風味がまぶされることによって、ちょっとレイジーさをともなう熱さを帯びていて、聴き進むうちにその熱さがじわじわとこちらに浸透してくるところが良いです。セノーンのアルト、チークのバリトンやテナーは熱いソロを展開。全体に効いているのがベン・モンダーのギターですね。バッキングでは独特な味を加えていて、時には熱いソロも聴かせてくれます。

メンバーのソロを盛り立てる厚くて洒落た都会的なアンサンブルも聴きどころです。数曲でクラインがスペイン語のボーカルを聴かせてくれますが、ちょっと気だるさを伴っていて適度にテンションを下げてくれるのが良いです。緊張一辺倒でないサウンドも好きです。この手の人達ってちょっと高踏的な部分が目立つ場合もありますが、ここではラテン哀愁フレーバーがそれを包んで緩和してくれているところがおすすめポイント。

多分初めてこの名を耳にする人が多いと思います。なかなか面白いので、興味がある方は聴いてみてください。

アルバム名:『FILTROS』
メンバー:
RICHARD NANT(perc)
BEN MONDER(g)
MIGUEL ZENON(as, fl)
SANDRO TOMASI(tb)
TAYLOR HASKINS(tp)
CHRIS CHEEK(ss, ts, bs)
JEFF BALLARD(ds)
FERNANDO HUERGO(el-b)
GUILLERMO KLEIN(p, vo)
BILL MCHENRY(ts, ss)
DIEGO URCOLA(tp, tb)

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今日は松岡直也の話でも

昨日は松岡直也の話がチラッと出たので、その話をちょっと書いてみましょう。

松岡直也に直結したイメージは「ハートカクテル」です。
わたせせいぞうの漫画をもとにしたTV番組の方です。
日テレで金曜日の深夜にやっていました。
今から25年くらい前の話です。
当時残業ばかりしていた私は会社から帰って寮で夕飯を食べて部屋に帰ると
この番組をやっているという感じでした。
週末なので明日は会社が休みという気分でこの番組を見ていました。
とはいえ、実際のところは土曜の休日出勤も多かったのですが。

当時、同じ部にいた2年上の先輩がジャズ好きだったので意気投合しました。
このブログにも何度か登場しています。
一緒に「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」も観に行きました。
その先輩が好きだった番組がこの「ハートカクテル」です。
そういえばその先輩はカクテルにも興味があり、
寮の先輩の部屋でカクテルを作って友達何人かとしこたま飲んで、
翌日は遅刻寸前、二日酔いで会社に行ったら部長に呼びつけられ、
仕事のことで色々問いただされ、すっかり二日酔いが覚めたなんて記憶も(笑)。
いい思い出です。
バーにカクテルを飲みに行ったりしないのが地方の会社員らしいですよね。
当時バブルまっさかり、バーに行くとひたすらカラオケでした(笑)。

「ハートカクテル」、今だから言っちゃますが私は特に好きでもなく。
この手の小洒落たものは硬派なジャズ聴きとしてはちょっとね。
心の底で拒否していました(笑)。
この「ハートカクテル」の音楽を担当していたのが松岡直也です。
松岡のラテン・フュージョンがお洒落なB.G.M.になっていました。
まっ、それにも大して興味はありませんでした。

私にとっての松岡直也はと言うと、このレコード1枚です。
『見知らぬ街で』
P165_3 
このレコードの思い出はこちらに
「従兄に貸してもらったレコードのつづき」
この従兄は1年上。
私にとってのジャズ友の元祖がこの2人なのです。
この2人に出会っていなければジャズを聴き続けたかどうか・・・。
私にとってはかけがえのない2人です。
私が好きな曲《見果てぬ夢(MIRAGE)》。

いい感じでしょ。
う~む、今気付いたのですが、
ピアノ・ソロはジャカタクの《ナイト・バーズ》と似たようなフレーズ散見。
コード進行がちょっと似ているのかも??
ということは私好みの哀愁メロディー(笑)。

増尾好秋、ジノ・バネリ、今も好きです。
ジノ・バネリは『ナイト・ウォーカー』もしっかり入手。
今のほうがその良さがよく分かるようになったと思います。

アール・クルーはこの1枚。
『ワン・オン・ワン』
P166_2 
このレコードの思い出はこちらに
「もろフュージョン!」
ボブ・ジェームスとの共作ですが、このアール・クルーが良いのです。
フュージョンとしてはしっかりしたアルバムになっています。
クルーのギターも良いのですが、
ハービー・メイソンのフロアータム1発”ズンッ”の快感!

フュージョン。いいじゃないですか?
今日は懐古趣味な話でした。

おやまあっ!30万アクセスを突破していました。
読者の皆様、どうもありがとうございます。
m(_ _)m

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今日はラテン・フュージョン!

新譜紹介ですが今回もかなり遅くなってしまいました。ギタリストのアルバムが続きます。衛星デジタルラジオ:ミュージックバードで聴いて気に入ったので買いました。

P164 スティーヴ・カーン『パーティング・ショット』(2010年rec. TONE CENTER)です。メンバーは、スティーヴ・カーン(g)、アンソニー・ジャクソン(el-b)、デニス・チェンバース(ds)、マノロ・バドレーナ(per,voice)、マーク・キニョーネス(timbal,bongo,per)、ボビー・アジェンデ(conga)、ゲスト:ロブ・マウンジー(key,orchestrations)、タティアナ・パラー(vo)、アンドレス・ベエウサエルト(vo)です。

私が買ったのは輸入盤。日本盤も出ていますがジャケットはかなり違います。まっ、ジャケットを聴くわけではないので、安い輸入盤を買いました(笑)。う~む、今は輸入盤の方がAmazon定価は若干高いですね。マルチバイ割引を使えば安く買えるかな。向こうの業者から買えば安く買えます。日本盤ジャケットのほうがお洒落かもしれませんが、よく見れば輸入盤のほうがサウンドにはあっているように思います。

スティーヴ・カーンという人は私がジャズ/フュージョンを聴き始めた80年代にはかなり人気がありました。私はというと、マイク・スターンやジョン・スコフィールドが好きで、というのも両者マイルス・バンドに居たからですが、その2人を聴いていたら、カーンとはすっかり疎遠になってしまいました(笑)。ここ数年気になる存在になていて、数年前に出た『ザ・グリーン・フィールド』の中古CDを買ったけれど、どうも今一つ惹かれないままの今日この頃。

このアルバム、最初は買わないでいようと思ったのですが、上記のとおりミュージックバードで聴いて気に入ってしまたのです。今回はラテン・フュージョン。と言えば思い出すのは松岡直也。でもほとんど関係ないのでこれ以上触れません(笑)。

私はアンソニー、デニチェンの鉄壁コンビがまずお気に入り。抜群の安定感でラテン・リスムを繰り出しています。それに花を添えるのがバドレーナ他のパーカッション群。バドレーナもカーンに昔から起用されていますよね。相性はいいです。そんな快適なラテン・リスムにのって、カーンが気負うことなく悠々とギターを弾いているのがいいです。ほとんどギター・ソロばかり、数曲でドラムとパーカションのソロがあります。でもこれで良いのです。カーンのギターを聴くアルバムです。

カーンはジョンスコのような捻った音もチラッと出ますが灰汁はほとんどないです。そういう意味でちょっと地味かな?でもこのアルバムではそんなカーンの職人的ギターが説得力を持って響いてきます。ラテン・リスムに乗って気持ち良さそうにギターを弾くカーン。繰り出されるクリーンな音に身を委ねていると知らず知らずのうちに染みてきます。ミディアム・テンポ~スロー・テンポの演奏ばかりでマッタリした感じが漂っているのも素敵。

カーンのオリジナル曲の中に紛れてオーネット・コールマンの《クロノロジー》《ブルース・コノテーション》、セロニアズ・モンクの《バイ・ヤ》が入っているのですが、違和感なく溶け込んでいるのが面白いです。オーネットやモンクの曲って色んなアレンジで新たな魅力を見せてくれますよね。そこが凄いところです。

5曲目の《マリア・ムランボ》はカーンとバドレーナの曲で、これだけはアフリカン・リズム。全10曲の真ん中辺りでちょっと気分チェンジかも?カーンの曲《インフルーエンス・ペドラ》の出だしのフレーズが《ソー・ホワット》にクリソツ(笑)?

この暑い夏にラテン・フュージョンでマッタリ。結構嵌りますよ。

アルバム名:『PARTING SHOT』
メンバー:
Steve Khan (g)
Anthony Jackson (contra guitar)
Dennis Chambers (ds)
Manolo Badrena (per,voice)
Marc Quinones (tinber, bongos, per)
Bobby Allende (conga)
etc.

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