この人達にしか出せない音がある。
今日は新譜紹介です。最近作用買いしたい新譜だらけで嬉しい悲鳴。順次紹介しているのですが、今日紹介するものを除いてもまだ4枚控えています。
リー・コニッツ、ブラッド・メルドー、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンの『ライブ・アット・バードランド』(2009年rec. ECM)です。改めてメンバーと楽器は、リー・コニッツ(as)、ブラッド・メルドー(p)、チャーリー・ヘイデン(b)、ポール・モチアン(ds)です。凄いメンバーが集結。それぞれ独特の美意識を持った人達です。
これはAmazonで輸入盤を予約注文していたら、ノイズがあるとかでメーカー回収になっていまい一旦キャンセル。その後購入可能になってから買ったので、入手にだいぶ手間取ってしまいました。そんなこともあり今更の紹介ということになります。
トリスターの派ならではのクールな美意識だけじゃなくウォームな面も持つアルトの巨匠コニッツ。ガット弦を張ったベースから太く低く深い音を奏で1音に郷愁を感んじさせるヘイデン。間を生かし無駄をそぎ落としたビートで音の存在する空間を浮き立たせるモチアン。きれいなだけじゃなく独特のアクを持った音を配置し聴く者を深みへと導くメルドー。それぞれが各楽器の個性派であり、演奏の芯を持った人達なので期待して聴きました。
コニッツ、ヘイデン、モチアンという大御所3人に比較的若いメルドーが入っているのはちょっと異色な感じがしますが、この人達に合うピアニストというと年齢とかは問題でなく、私にはメルドーが最適だと思えます。
この人達を聴いたことがある方は分かる思いますが、深みを持った美を奏でるという意味では共通した感性を持っている人達なので共演は上手くいっています。そしてこのメンバーでは明るく楽しく元気よくという風にならないのはご想像のとおりです。ここでは抑制の美学とでもいうものが魅力となってきます。
情報によると、この時のライブはあらかじめセットリストを決めずリハーサルもせずに臨んだそうです。なので、メンバーのオリジナルではなくやっているのはスタンダードなど良く知られた曲。《ラバー・マン》《バードランドの子守唄》《ソーラー》《アイ・フォール・イン・ラブ・トゥー・イージリー》《ユー・ステップド・アウト・オブ・ア・ドリーム》《オレオ》の6曲が収録されています。
ヘイデンとモチアンは上記の技がもはや完ぺきの域です。そこに最早達観の域に到達し飄々とアルトを吹くコニッツ、今が旬の充実ぶりとこれぞアートとしか言いようがないピアノを弾くメルドーが加わり、じっくり聴くほど味が出るような演奏を展開しています。比較的メロディーそのものを味わうものになっていますが、ラストの《オレオ》だけはソロの途中からフリーな展開があり、メルドー・トリオの場面における緊張感が私はかなり好きです。
このアルバムを聴いて誰の演奏に一番心惹かれたかと問われれば、私は迷わすメルドーと答えます。大御所の中でキラリと光るメルドー、さすがであります。ライブでろくに曲も決めずに臨んでこの一体感のある演奏は凄いです。そしてここにある音はこの人達にしか出せないものです。こんなライブを一度くらい観てみたいものです。
アルバム名:『Live At Birdland』
メンバー:
Lee Konitz(as)
Brad Mehldau(p)
Charlie Haden(b)
Paul Motian(ds)
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コメント
こんばんは。
>ここでは抑制の美学とでもいうものが魅力
ですよねぇ。
で、変形もしてますです。
と、メルドー買いです。
メルドーやっぱり半端ないですよねぇ。
買って、よかった、って、思いましたよ。
でも、最後はコニッツだった、、と、わたしは思っています。(笑)
トラバしますね。
と、、エレナさまが新潟に来るんですよ。
でも、新潟市から来るまで高速使って2時間なんですよ。
と、、根性もあって、フレンドリーな素敵なお嬢さんなんですねぇ。
もう、会話のあちこちに、、えらい!としか、、いいようがありません。。
でも、わたし、マクリーンのキィーーってのも、好きです。
マクリーンだから好きです。かな。
投稿: Suzuck | 2011年6月23日 (木) 19時36分
Suzuckさま
こんばんは。
トラバありがとうございました。
後ほど私からもトラバします。
この人達ならではの抑制であり変形がいいですよね。
この手のおとなしいやつは買わないでおこうかとも思ったのですが、
結果的には私も買って良かったです。
コニッツの枯れた味わいも当然分かります。
エレナさん来ますか新潟に。
高速使って2時間はきついですね。
私の所なら東京まで行けます。
私は飛ばし屋なので混まなければ八王子まで1時間くらいです(笑)。
エレナさん、やっぱり出てくるだけのことはありますね。
根性があります。それと向上心もあります。
素の彼女を引き出せたのは、寺島さんの功績も大きいです。
言いたいことを言いますが、ちゃんとゲストの魅力を引き出すよう考えています。
>でも、わたし、マクリーンのキィーーってのも、好きです。
>マクリーンだから好きです。かな。
分かります。私も好きです。
まあ、吹いている本人は聴いている人より心地悪い状況なのでかもしれません?
投稿: いっき | 2011年6月23日 (木) 20時45分
おはようございます。
このアルバム、周りでも聴いた方が多く、大絶賛の嵐だったんですが、Amazonのレビューでは、ビミョーな評価で書いている人がいて、やはりこのアルバムも聴く人を選ぶのかな、と思ってしまいました。
最初はスタンダード集か、と思ったんですけど、これだけゆったりしつつも緊張感のあるサウンドを出せるのは、やはりこのメンバーだからだなあ、と思います。メルドー、本当にいい仕事をしています。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年6月24日 (金) 07時32分
910さん
こんばんは。
TBありがとうございました。
Amazonのレビューはこの手のサウンドが嫌いで、聴きどころが分かっていない結果だと思います。
結局、聴きどころが分からないとトンチンカンなレビューになってしまうんじゃないでしょうか?
このメンバーなのでスタンダードをやっても完全にこの人達のサウンドですね。
メルドーいいですよね。
投稿: いっき | 2011年6月24日 (金) 19時52分