ジョンスコ流哀愁泣かせ技
東日本大震災から3ヶ月経ちました。
時はどんどん過ぎ去ります。
前を向いて行きましょう。
最近聴きたい新譜がわんさか出てきて困っています(笑)。
別に困らなくてもいいんですが、全部買って聴く程のお金も時間もないので、選択しなければならないのが困ると言えば困るわけです。
で、紹介したい新譜もたくさんあるのでブログには順次UPしていきます。
今日はジョン・スコフィールドの『ア・モーメンツ・ピース』(2011年rec. Emarcy)です。メンバーは、ジョン・スコフィールド(g)、ラリー・ゴールディングス(p,org)、スコット・コリー(b)、ブライアン・ブレイド(ds)です。メトロポール・オーケストラと共演した前作も良かったけれど今回は如何に?
これはジョンスコの哀愁アメリカン・ソング集という感じのアルバムです。スロー、ミディアム・テンポで曲を愛でながら弾くジョンスコがいい感じなのです。決してソロ(アドリブ)の技を聴かせるのではなくて、曲(メロディー)を聴かせてくれます。メロディーを聴かせるとは言いますが、皆さんご存知のとおりジョンスコ節なわけですからひと癖あります。ただ今回癖は控えめのように思うのですがどうでしょう?
ジョンスコのオリジナル曲他、レノン/マッカートニー、カーラ・ブレイ、アビー・リンカーンの曲や、スタンダードの《アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー》《アイ・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ》《アイ・ラブズ・ユーポーギー》などをやっています。このスタンダードの選曲だけを見れば哀愁ラブ・ソング集みたいです(笑)。ジョンスコが哀愁ラブソング?実は結構泣かせてくれる演奏です。独特ではありますが、ジョンスコは聴く人の胸にグッとくるような演奏もできる人です。ジャム・バンド・ギタリストとしてのジョンスコも悪くはないのですが、私はこういうジョンスコが好き。
ジョンスコのオリジナルは全12曲中の5曲。みんないい曲だと思います。昔の話で申し訳ないのですが、アルバム『スティル・ウォーム』に入っていた《ピックス・アンド・パンズ》なんか私は大好きです。今回のアルバムでは《ジョアン》、《プレイン・ソング》など、ちょっぴりベタな哀愁メロディーが気に入りました。
各メンバーについて。ますピアノとオルガンのゴールディングスは、ジョンスコの癖に対してあくまで素直で品の良いプレイをしています。ジョンスコの癖とゴールディングスの品、対照的でありながら今回は実に上手くブレンドしているように思います。ジョンスコがコテコテ気味にソロをとったあとにゴールディングスがさらりとソロをとっているのは、ステーキの後に出てくるデザートみたい。オルガンの”ショワショワ”が哀愁を掻き立てる場面もあって素敵です。
ベースのコリー、私が買うコンテンポラリー系のアルバムに最近やたらとこの人の名前があります。ドラムのアントニオ・サンチェスとのコンビも多いような気がします。私が聴いた感じでは特徴があまりないベースなのですが、これだけ色々なところに起用されるということは、その安定したセンスの良いプレイが評価されているということなのでしょう。
ドラムのブレイド、文句はありません。やっぱりこの人はアーティスティックなのです。単にリズムをキープするだけでなく、サウンドにアートを感じさせてくれます。手数は少なめですが必要にして十分。”ガシガシ”煽ったりしませんが、包み込むように”ジワジワ”と盛り上げてくれます。今回のようにミディアム/スローの8ビートをやらせたらこの人に勝る人はなかなかいないでしょう。
ラストの《アイ・ラブズ・ユーポーギー》は必調。ほぼオルガンとギターのデュオ。ドラムはほんのちょっと入っています。これぞジョンスコ流哀愁泣かせ技なのだと思います。ワン・アンド・オンリーの世界。郷愁感タップリのギターと近未来を感じさせる機械音的オルガンのブレンド。面白いと思います。
じっくり味わえるアルバムになっていると思います。
アルバム名:『A MOMENT'S PEACE』
メンバー:
JOHN SCOFIELD(g)
LARRY GOLDINGES(p, org)
SCOTT COLLEY(b)
BRIAN BLADE(ds)
*
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コメント
このアルバムを聴いていた時、「どこを切ってもジョン・スコ」「どこを切ってもジョン・スコ」とその言葉のフレーズだけが頭の中をグルグルまわってしまい、アルバムのコメントを書くのに苦労したような気が(笑)。
ちょっと弾いただけでそれだけ個性的な音を出せるミュージシャンってそうは多くないので、こういうバラード集(?)でもなかなか印象の強い1枚となりました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年6月12日 (日) 15時45分
910さん
TBありがとうございました。
>、「どこを切ってもジョン・スコ」「どこを切ってもジョン・スコ」とその言葉のフレーズだけが頭の中をグルグルまわってしまい
確かに。それ以上でも以下でもないですよね。
このジョンスコらしさがファンには堪りません(笑)。
>ちょっと弾いただけでそれだけ個性的な音を出せるミュージシャンってそうは多くないので、
そういうミュージシャンは少ないですよね。
個性的でないと名を残せないとも思います。
>こういうバラード集(?)でもなかなか印象の強い1枚となりました。
印象に残るアルバムです。
こういうアルバムを作れる人が私は好きです。
投稿: いっき | 2011年6月12日 (日) 16時54分
こんばんは。
このアルバムは、夕陽にあいますよねぇ。
今月末に両親と富士山のみえる温泉にいくんですが、夕闇に浮かぶ富士山をみながらきいたら、最高だろうなぁ。
なんて、アルバムでっすね。
スコットコリーとビルスチュのコンビをみると、つい、ポチッとしたくなります。
なんでだろー。
トラバありがとうございました。
あとで、こちらからも、トラバしますね。
投稿: Suzuck | 2011年6月13日 (月) 18時42分
すずっくさま
こんばんは。
>このアルバムは、夕陽にあいますよねぇ。
そうですね。染みます。
>今月末に両親と富士山のみえる温泉にいくんですが、夕闇に浮かぶ富士山をみながらきいたら、最高だろうなぁ。
いいですね~。温泉。
富士山、夕闇、ジョンスコ、最高でしょう。
温泉はないですが、私の家からは富士山が見えます。
富士山周辺に雲がかかっていない限りほぼ毎日見てますよ(笑)。
次の記事に富士山写真追加しておきます。
>スコットコリーとビルスチュのコンビをみると、つい、ポチッとしたくなります。
なんでだろー。
美意識が高いアーティストだからでしょうかね?
>トラバありがとうございました。
こちらこそトラバありがとうございました。
投稿: いっき | 2011年6月13日 (月) 20時24分
いっきさん。
こんばんわ。ジョンスコはマイルスバンドでのプレイしか聴いた事ありません初心者です。今マイルスバンドでのプレイを聴いてますが、楽器をやらない自分はうまいか下手なのか判断しずらいです。自分が興味を持っているヒップホップの中のラップのもへたうまラップがあるとか!いっきさんの中にへたうまジャズミュージシャンはいますか?
投稿: ウッチー | 2011年6月13日 (月) 22時00分
ウッチーさん
毎度どうも。
私にとっての”ヘタウマ”は危なっかしい人です。”あ~っ、そっちへ行ちゃうの?戻ってこないよ~っ。”みたいな人(笑)。
ジャズを聴き始めて2、3年のうちに出会った私の中の最たるヘタウマ2人はウェイン・ショーター(VSOP)とオーネット・コールマン(プライム・タイム・バンド)。
最初はどうしてそんな無茶をするのか理解不能でしたが、しばらくして最高にカッコイイ人達だと思いました。天然な2人です(笑)。
他にはセロニアス・モンクとかかな。
ジョンスコはマイルス参加前のヒノテルの『メイ・ダンス』で初めて聴いて惚れました。変だとは思いましたが危なっかしさは感じなかったですね。
なのでジョンスコは私のなかではヘタウマでなく旨い人です(笑)。
投稿: いっき | 2011年6月13日 (月) 22時41分