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「ジャズ・ヒップホップ学習会 第5回」レポート(後編)

一昨日、ジャズ喫茶「いーぐる」 で開催された「ジャズ・ヒッポホップ学習会 第5回:とりあえずの総括」に参加してきました。昨日に続きこの講演のレポートの後編です。

今回のレポートは講演中にメモしたとをできるだけ網羅し、そこに私の意見を加えてあります。あくまで私の理解の範疇で書いてありますことをご了解いただければ幸いです。

●カヴァーにみるヒップホップ的感性

13.S.モス - クインシー・ジョーンズの『ジャズ・コーナー・オブ・ザ・ワールド』(2009年)
ビバップからヒップホップまでを音で表現。クインシーの作ったものには限界があって、それを聴いたピアニストのS.モスが再編したものだそうです。中山さんは音で表現されているこういう(ジャズ~ヒップホップの)世界を文章に書きたいとおっしゃていました。私の好きなウェザー・リポートの《バードランド》がサンプリングしてあったというだけで気に入りました(笑)。

14.ジェイ・アーの《リラックス・ユア・マインド》(2009年)
この講演の第1回の時、《ザ・リー・モーガン・ストーリー》をかけた人です。聴けばだれでも知っている曲を利用したことがわかるとのことでかけました。チック・コリアの《スペイン》でした。「こういうカヴァーの仕方があり、Us3の《カンタループ》よりおおらかで進化している。カヴァーの意味が更新されている。」と中山さん。ヒップホップもどこかに断層があったり派生したり消えたりしているそうです。そういえば前回の講演でゲストの原雅明さんがパブリック・エナミーのビートはその後に継承されていないと言っていましたね。私はりー・モーガンもこれもあまり面白いとは思えなかったです。

●ジャズ表現者としてのマッドリブ
ここまではジャズとの接点で選曲できました。マッドリブにその作業はいらず、いつ録音されたかにも意味はないそうです。マッドリブは変名でいくつものプロジェクトをやっています。めったにカヴァーはしないそとのこと。

15.オーティス・ジャクソンJr.・トリオ(マッドリブ)の《ビッチェズ・ブリュー》(2007年)
唯一のカヴァーかもしれないとのことでした。マッドリブの割にはシンプルで、いじれるのにいじっていないのが新しいそうです。ちなみにトリオと名乗るのは形骸化したトリオという言葉をパロディーとして使っているんだとか。リズムは複雑化していて、途中でズッコケそうなになるリズムの切れ目があるのは今時のリズム感だと思いました。後藤さんは「言われなければ《ビッチェズ・ブルリュー》と分からない。一つの表現者としてのマッドリブのオリジナリティーがある。」とおっしゃていました。マイルスの曲なので私はやっぱり気に入りました。

16.ザ・ジャハリ・マサンバ・ユニット&カリエン・トリオン(マッドリブ)の《ウモジャ》(2007年)
複数のビートが進行するノリが複雑な曲。B.P.M.はかろうじて維持されています。全体としては4ビート基調のリスムに聴こえました。後藤さんは「クラブで深夜酩酊しているような状態で聴けば最高のトリップミュージック。でもジャズ的な聴き方で中に入ると面白くない。距離感を持って(離れて)聴く分にはいいが(音楽の中に)入って聴くとスカスカ。」というご意見。意外と不評ですね~。私は”スカスカ”という言葉を、実体感が伴わない頭の中の音楽と捉えました。これについては最後の質問コーナーで後藤さんに確認しました

17.イエスタデイズ・ニュー・クインテット(マッドリブ)の《ジュラニ》(2001年)
5人全てをマッドリブがやています。最初にドラムを適当にやってそれらをまとめて曲にしているんだそうです。マッドリブはジャズから入ってヒップホップへ行った人。伯父さんがジョン・ファディス(tp)なんだそうです。これもリスム・フィギュアが複雑な曲。この手の現代リズムはニューヨーク・ダウンタウンの変拍子などのれないリズムの延長といて私は面白いと感じています。これを聴いた後藤さんは「リズムが合っていないのでいらつく。」と発言。私は意外でした。こういうリズム感は後藤さんの中で既に消化済みと思っていたからです。中山さんは「勘違いかもしれないがこれ(マッドリブ)がカッコいいジャズとして聴かれている。」と、後藤さんの意見に戸惑い気味のようでした。まあ、以前の講演でかけたマッドリブは後藤さんが良いというものもありましたので、トラック(曲)によって評価も変わるということなのでしょう。

●最後はやっぱりマイルスだ

18.フォーリーの《プリフェイス/7イヤーズ・アゴー》(1993年)
2人+マイルスの声の3人で演奏。マイルスが亡くなって7年後を想定。演奏というよりサウンドコラージュ。モータウンでの録音。フォーリーはマイルスの意思を継いだ最後の人。私は面白く聴きました。結構気に入りました。後藤さんは「よく分からない。ジャズから離れて言えば良い。」とのことでした。

19.マイルス・デイビスの《ジリ》(1988年)
P162 マイルスにヒップホップ的要素が入ったのはいつかという話では、『デコイ』の頭の3曲ということになるそうです。リズムボックスとか機械的なものを取り入れてサウンドを作っています。人的にヒップホップの人を呼んだのは《ジリ》。ギターのビリー・”スペースマン”・パターソンがヒップホップの人だそうで、説明してもそのように聴こえないのがマイルスとのことでした。これは人的とのことでしたが、サウンドは明らかにヒップホップに接近してますね。最近このアルバム『アマンドラ』なんか聴いたことがなかったので、改めて聴いてみて何か納得。面白かったです。これ、録音が爽やかで音が整理されていて、ヒップホップの混濁感とは対照的でした。この頃のマイルスって意外と見通しが良い音楽をやっていましたよね。今考えるとそれが物足りなさかもしれません。

ということで講演は終了。質問コーナーへ。
私はレポートの中に書いたことを質問してみました。珍屋の柳樂(なぎら)さんからは、マッドリブについてはヒップホップ以降の人がやることを否定したりしていて、パロディー的に聴けば良いのではないかというような意見がありました。中山さんは「マッドリブにあるのはサウンドだけ。アルバム単位では評価できない。曲によっては嫌いなものもある。」とおっしゃっていました。今日かけた曲だけではマッドリブを評価できないし、してほしくないということみたいです。

今回はジャズ喫茶オヤジとしての後藤さんの意見が面白かったです。中山さんとの対決場面が何度かありましたが、後藤さんの演出もあるのでしょう(笑)。5回の講演をとおして参加してみて、中山さんが意図していることもだいたい分かりました。ヒップホップ目線でジャズを見直すことも面白いと思います。私はと言えば、ヒップホップの面白さが少しは分かり、ジャズと無理に関係付けなくても楽しめると思いました。私は基本的にはジャズを聴いていますので、それの妨げにならないくらいにヒップホップは聴く感じになりそうです。何だかんだ言って私にはまだまだジャズは面白い音楽です。

中山さん、後藤さん、今回のi講演に関わった皆さん、楽しい勉強会でした。
どうもありがとうございました。m(_ _)m

中山さんは今後もヒップホップ関連の講演をしていくとのことでした。「いーぐる」でもこの講演にゲスト参加した原雅明さんの講演が予定されています。私は今後もヒップホップ関連の連続講演をフォローしていきたいと思っています。

次回の中山康樹さんの「いーぐる」講演は下記のとおりです。

8月20日(土)、今回に限り14時より
●大音量でロックを聴く会 その5
解説 村井康司 × 中山康樹

私は「大音量でロックを聴く会」に一度も参加したことがありませんでした(笑)。
次回は参加してみようかな~。この方面にはまったく疎い私。

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