「PCMジャズ喫茶」に寺久保エレナさん登場!(後編)
衛星デジタルラジオ 「ミュージックバード」 の番組「PCMジャズ喫茶」の番組レポート後編です。ゲストは 寺久保エレナ さん。アルバムプロデューサーの伊藤八十八さんも来ていました。もちろんレギュラーゲストの岩浪洋三さんもいます。
番組を聴きながらメモをとり、メモを基に思い出しつつ書いていますので、誤解しているところがあるかもしれません。あらかじめご了承願います。
寺久保エレナさんが好きなジョー・ヘンダーソン(ジョーヘン)をかけることに。寺島さんと岩浪さんはジョーヘンがあまり好きではないので、寺島さんは「ジョーヘンかけるの?参ったな~。」なんて言ってました。寺島さんは「ジョーヘンはダメなんだよね。変にメロディーをすかして吹き、正しくメロディーの核心を取り出していないんですよ。」なんて言います。寺久保さんは「ジョーヘンはカッコいい。」と言います。寺島さんは「モダンでカッコいいけど、カッコいいのは聴かないんです。」と言います。『ザ・ステイト・オブ・ザ・テナー ライブ・アット・ザ・ビレッジ・バンガードVol.1』から《フライデー・ザ・13th》。
曲が終わると、「やっぱりジョーヘンはね~。」と寺島さん。寺久保さんは「これ、ジャズじゃないですか?」と言います。寺島さんは「ジャズだけどね。なるほど、カッコいいと思って聴けばいいんだ。私はカッコいいを尺度にしていない。楽しいものを聴きたいんですよ。楽しいはカッコいいとつながらない。いつもジャズを楽しみながら寛いで聴いているんです。」と返します。寺久保さんは「私はいつも真剣に聴いています。」と反論。寺島さんは「私も若い時はそうでしたよ。自分ができないことをやることに敬意も表して聴いていた。でも今は無理やりカッコいいのを聴こうと思わないんですよ。」なんて言ってました。私は寺久保さんの言うジョーヘンのカッコ良さはよく分かります。一方で寺島さんの言っていることも否定しません。で、私は寺久保さんと同じようにジョーヘンを聴いています。結構ジョーへンが好きです。寺島さんのようにジャズを寛いで聴くのが楽しみな年齢に至っているわではないですからね(笑)。もちろん寛いで聴く時もあります。一方で真剣にも聴きます(特にブログ記事を書く場合)。
ここでブラインド・・テストへ。きっと誰か分からないと思うし知らないと思うので、聴いて感想を聴かせてほしいということで、ボディル・ニスカの『ファースト・ソング』から《ダニー・ボーイ》。このアルバム、私も買いました。寺島さんに感化されていた10年くらい前の話です(笑)。で、今も持っているかっというと・・・、ディスクユニオンへ売られていきました(笑)。何度も聴くほど面白いものではなかったからです。私はこのアルバムのなかでは《オンリー・トラスト・ユア・ハート》が好きでした。要はこの曲が好きなんです。
「これは誰か寺久保さんが分からなくて当然。岩浪さんも伊藤さんも知らないと思います。ボディル・ニスカというテナー奏者です。2、3年前に銀座山野楽器でブームになって異常に売れたんですよ。この1曲のみを聴いて、ジャズもどきなんですが、ジャズファンもどきの人達がこれを夜な夜な聴いて随喜の涙を流したというやつなんですよ。」と寺島さん。これ、岩浪さんも知っているはずですね。色んな場面で登場してますから。ジャズもどき。ジャズファンもどき。言っちゃっいました。開き直り。「もどきで結構!」なのでしょう(笑)。「どうでしたか?寺久保さん。」と寺島さん。寺久保さんは「わざとらしい。サブトーン”フフフ~”とか、誰が聴いても美しいを思う演奏。私は遊びが必要だと思います。」と答えます。寺島さんが「でもこういう風に吹くほうが実は難しいんですよ。コルトレーンのように”ピロピロ”吹くほうが簡単なんですよ。」と言います。私はコルトレーンのように吹くのは簡単だとは思えません。比較するなら尺度が違うと思います。まっ、いつもの寺島論なのでいいでしょう(笑)。寺久保さんは「メロディーをそのとおりに吹くのは難しいです。これは歌っている感じがします。」と返します。寺島さんは「そうなんですよ。歌だよね。歌だから”ピロピロ”しないんだよね。」と満足そう。寺久保さんは「ジョーヘンだって歌っていますよ。」と反論。ここも歌っているということの捉え方にお二人のズレがあるんでしょうね。寺島さんは「こういうのを聴いて、よくサム・テイラーとかシル・オースチンとかムード・ミュージッカという人がいる。」なんて言ってました。そういう偏見で聴いてはダメということなのでしょうが、私は単純にムードミュージックとして堂々と聴けばいいんじゃないかと思います。他のジャズファンの目線を気にするところが、ジャズファンの変なプライドなのだろうと思います。
ブラインド・テストの2曲目。『M.J.Q.&フレンズ 40thアニバーサリ・セレブレイション』からフィル・ウッズをフィーチャした曲で《オール・ザ・シングス・ユー・アー》。
これを聴いた寺久保さん。最初はこのアルトが誰か分からず、「聴いたことがあるけれど誰だったかな~。」と苦しんで、ソロに入るあたりでウッズと分かったそうです。「分かった時は嬉しかった。」なんて寺久保さんは喜んでいました。この前日本にウッズが来たそうで、寺久保さんは観に行ったとのことでした。ヨボヨボ出てきたけれど吹き始めたら凄かったそうです。今年80歳。ここで寺島さんは最近9万円の自転車を買い、自転車に乗っているんでじゃなくてやっているとか、そのおかげで低体温症が治ったなんて余談がありました。
岩浪さんから寺久保さんへプレゼントする曲。当てなくても良いですということで、チャーリー・パーカーの『スウェディッシュ・シュナップス+4』から《オウ・プリヴァーヴ》。
「パーカーと寺久保エレナのつながりを教えて下さい。」と寺島さん。寺久保さんは小6で最初に聴いたそうです。当時はサンボーンやT-スクエアーとか聴いていたそうですが、習っていた先生からパーカーの楽譜集(有名な本らしい)をもらって、「カッコいい。」となったそうです。今はサンボーンやT-スクエアーよりパーカーがカッコいいと思う時代なんですね~。ここで寺島さんが「ジャズファンはアドリブと言うけれど、ニュージシャンはソロと言いますが、ソロはどう練習するんですか?」と質問。寺久保さんは「最初はコピーでしたが、ソロの練習はしません。スケール練習をしてカッコいいと思ったらソロで吹きます。デュオなんかでは相手の音を良く聴いています。相手についていくとかついていかないとか。こっちがやってもついてこないみたいな。細かいことが色々あります。」と回答。寺島さんは「いきなりソロはできないでしょう。ソロを譜面に書いてから練習する方法もありますよね。」と更に質問。寺久保さんは「ソロにできるできないはないです。私はどんな音でも良いから吹けばいいと思います。以前ビッグ・バンドにいた時はソロを楽譜で見て吹いていたけれど、目立ちたいから”ブヒャー”とか”ピロピロピロ”とか吹くようになって、それが私のソロの起源です。」と回答。寺久保さんの性格が分かって面白かったです。妙に納得しました。「でもコード進行とかあるよね。」と寺島さん。「コードはただの決まりです。コード進行でソロができるのは当たり前です。」と寺久保さん。「コードからわざと外す人もいるでしょう。アメリカなんかではよくどんどん転調してソロをとったりしますよね。」と岩浪さん。「そういうのもありますね。」と寺久保さん。「ジャズ教室の発表会などの時、先生がフレーズを楽譜に書いて、それを覚えるお勉強とかありますよね。」と寺島さん。「私はソロは勉強するものではないと思います。」と寺久保さん。「クラシックでは楽譜に書いたりしますね。」と伊藤さん。「自分で自分のフレーズを書くのは良いと思います。」と寺久保さん。「ジャズファンはソロを神秘的なものと捉えるところがあるんですよ。それでミュージシャンに聞いてみると、ミュージシャン自身もどうやってできるようになったか説明できないんですよ。皆変なことを聞くと言い、満足した答えは得られないんだよね。」と寺島さん。ソロは自分がやらないと分からないんでしょうね。どうやると自転車に乗れるのか聞かれても説明できないようなものではないかと私は考えます。そして勉強して自転車に乗れるようになるわけではなく実践あるのみです。
寺久保さんは今度バークリーへ入るそうです。寺島さんはオーディオベーシック誌に今度の寺久保さんの新譜はいいと書いて、最後に今の天然でいいのにバークリーに入ってアカデミック的になると困ると書いたそうです。岩浪さんも同様のことを考えたとか。「どうして今更バークリーへ入るの?」と寺島さん。「バークリーへ行くのはアメリカで生活したいからです。向こうのミュージシャンとも色々やってみたいんです。」と寺久保さん。「それならいい。」と寺島さんと岩浪さん。バークリーのスカラーシップをもらえた(6000人中外国人3人に選ばれた)ので、お金の心配もいらないから行くことにしたそうです。バークリーへ行き、古くは小曽根さんのCBSとの契約や新しくは上原さんのテラークとの契約みたいに、向こうのメジャー・レーベルと契約できれば面白いんじゃないかと思う私です。寺久保さんがどう考えているかは分かりませんが。そうなると今契約している日本のレコード会社が困っちゃうか(笑)。
ブラインド・テストの3曲目。ケニー・ドーハム&ジャッキー・マクリーンの『インタ・サムシン』から《レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス》。(注)下記のアフィリは『マタドール』と『インタ・サムシン』のカップリング盤です。
「ジャッキー・マクリーン。カッコいい。」と寺久保さん。「このカッコ良さは分かるんだよね。これは素晴らしい。ジョーヘンはやっぱりすかしているよな~。」と寺島さん。「ジョーヘンがかわいそう。」と寺久保さん(笑)。「これは真っすぐ。ジャズは真っすぐ行かなきゃ。」と寺島さん。マクリーンはもちろん良いのですが、ジョーヘンだって良いですよ(笑)。
寺久保さんは人と会うと1回見て「こんにちは。」となった時点で、「私のことを思ってくれる人、この人はダメ。」と分かるそうです。伊藤さんは「ミュージシャンは皆そうですよ。」と言ってました。寺久保さんは「ジャズを好きか嫌いかで判断しているんだろうと思います。本当にジャズが好きか嫌いか分かっちゃうです。ラジオに出演したりしても、曲を聴いて「これいいですね~。」と言っても本当にそう思っているのか分かっちゃいます。」と言っていました。「私はどうでしたか?岩浪さんは?」と寺島さん。「寺島さんは全然ダメじゃないですよ。岩浪さんは凄く優しいです。」と寺久保さん。
寺久保さんの第1作『ノース・バード』から《ティム・タム・タイム》。高校生の時、友達とお菓子を食べながら楽しいメロディーが浮かんできたんだそうです。これは家の中で作ったそうです。すぐに歌って録音するんだとか。なぜかというと書いてるうちに忘れてしまうからだそう。寺島さんが「ちょっとメロディーを歌ってみて下さいよ。スキャットでいいから。」と強引にお願い(笑)。寺久保さんは「やですよ~。」なんて言いながら、ほんの少しさわりをスキャットしてくれました。このやりとりの寺久保さんはかわいかったです(笑)。この曲、私はNHKのJ-MEROに出演したのを見ました。
これは楽しそうで屈託なく明るいのがいいです。寺久保さんの今日のやりとりを聴いていたら、やりたいことが何となく分かる気がしました。ベースのマクブライドのチェンバースばりのアルコ・ソロがうまい具合に嵌っていました。私はこの演奏が好きです。
「楽しい感じですね。」と皆さん。伊藤さんが「どこかで聴いた感じがする曲ですよね。」と言うと、寺久保さんが「そうですか~。」なんて不満そう。伊藤さんは「ジャズの曲って皆そうですよね。親しみのもてる曲ですよ。」と説明。私も伊藤さんと同じことを思いました。
ラストはもう一度寺久保さんの新譜『ニューヨーク・アティチュード』から《スター・アイズ》。寺島さんが聴きたいと思った曲(笑)。
これはアドリブでトライしているところが数か所あると思いました。寺久保さんの遊び心が出ているんだろうなと思いました。話を聞いた後で聴くと聴こえ方が違ってきますね。冒頭聴いた時よりかなり好印象になりました。リラックスした演奏をしたかったとのことなので、それが良い方向に出ているんだろうと感じました。今作は1作目よりアルトが控えめに録音されているように感じられてるのですが気のせいかな?
「これは自分なりのイントロとかエンディングを付けようと思わなかったの?」と寺島さん。寺久保さんと伊藤さんによると「スタンダードで皆でリラックスしてやりたかったのでいじっていないです。」とのことでした。「そうでしたか。聴いたら何か言ってみたくなるものなんですよ。」と寺島さん。質問は不発でした(笑)。
ということで、番組は終了。
最後までお読み下さった皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。
色々興味深い議論があってとても楽しかったです。私的には特にソロ(アドリブ)の話が面白かったです。寺久保さんはストレートで飾らない今時の女の娘でした。私は凄く好感が持てました。私が好きなピアニストの松本茜さんとはまた違ったかわいさがありました。そういえば同じアルト吹きの纐纈雅代さんもかわいかったな~。って、出た浮気性(笑)!
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