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こういう唯一無二の音も聴きたくなる。

ディスクユニオン新宿ジャズ館のフリー・ジャズ・コーナー試聴機で聴いて気に入った1枚。昨年末頃に発売されたみたいです。

P111_2 ルシアン・バン&ジョン・エイベア『エネスコ・リ・イマジンド』(2010年、SUNNYSIDE)です。メンバーは、ラルフ・アレッシ(tp)、トニー・マラビー(ts)、マット・マネリ(viola)、アルブレヒト・マウラー(vl)、ルシアン・バン(p,re-orchestrations)、ジョン・エイベア(b,re-orchestrations)、ジェラルド・クリーバー(ds)、バダル・ロイ(tablas,per)です。ニューヨーク・ダウンタウンの精鋭揃い。パダル・ロイのタブラが異色ですね。

全く予備知識はなかったのですが試聴したら面白いサウンドでした。メンバーを見たら上記のとおりです。これは面白いということで、「買い!」となりました。実はこれを試聴していたら店内のB.G.M.がクリス・ポッターの新譜(ブログで紹介済み)になって、それも気になったという面白いシチュエーションがありました。

買って帰って聴きながらジャケット内の文章を読むと、「有名な作曲家、更に有名なバイオリニスト、指揮者、ピアニストのジョルジュ・エネスコは、20世紀の最もユニークな音楽家。・・・・・」と書かれていました。エネスコ(1881年~1955年)はルーマニア人、ルシアン・バンもルーマニア人ということで、同郷の音楽家へのオマージュ作品ということなのでしょう。エネスコの曲をバン(5曲)とエイベア(2曲)が編曲しています。全7曲。

現代音楽的な内容ですが、メンバーがメンバーですからジャズ的展開が多分にあり、アレッシやマラビーのジャジーな熱いソロ演奏が入っています。タブラが入っていたので、試聴した時にはエスニックなフリー・ジャズに聴こえました。演奏はなかなかの緊張度を保って進行していきます。

P112バンとエイベアがエネスコ作品集を演奏するコンサートを催し、それをライブ録音したのがこのアルバムなのでしょう。ジャケット内側にはそのコンサート風景の写真が使われています。録音はホールの響きを多めに収録したクラシック的なもの。ドラムの音量は控え目になっています。

1曲目《アリア・エト・シャジノ》はマラビーのテナーのむせび泣きから始まります。物語の始まりを感じさせる展開です。続くマウラーのバイオリンが哀愁をたたえ、エイベアのベースが深く沈むと何とも言えない郷愁感が溢れます。サウンドはチャーリー・ヘイデンの『ノクターン』に通じます。染みます。

2曲目《オクテット》は哀愁から一転。タブラの躍動的なビートに乗って、いきなりアレッシのトランペットが熱く高らかにソロをとります。この緊張度が素敵です。曲は東欧エスニック調。クラシック曲のはずなのにタブラと見事に融合。彼らにしかできない唯一無二の世界になっていると思います。中盤合奏でテーマを演奏した後、バンのピアノが躍動的な美を見せ、抽象的なビオラ、バイオリンのソロが続きます。基盤をなす躍動的なビートにより、楽しいジャズになっています。

3曲目《ソナタ》はピアノが先導してヴィオラとバイオリンが絡むフリーな展開から。その後メロディーとリズムが”フワッ”と姿をあらわします。しばらく合奏した後、アレッシのトランペット・ソロはここでもドラマティックで素敵です。続くマラビーのテナー・ソロはスケールが大きいですね。バックではピアノが切れの良いカウンターを当て、ドラムも躍動的に煽っていきます。いろいろな音が混じりあいながらフリーな要素を見せつつ合奏でエンディングへ。

4曲目《ソナタ》もタブラが活躍するミステリアスなエスニック曲。ロイ?の合いの手が面白い雰囲気を醸し出します。バンの間を生かしたピアノ・ソロが美しくも力強いです。ヴィオラの短いソロを挟んでマラビーのテナーが爆発。イエィッ~(笑)。回りではピアノ、バイオリン、ビオラがはやしたてます。ベースは始終太く構えて揺らぎません。エイベアのベースは逞しいです。バイオリンの短いソロからバイオリンとビオラの自由な語らいで終了。

5曲目《オーケストラル組曲》は静かに幕を開ける舞踏曲。タブラも交えた軽やかなビートの上で色々な音が交錯します。ミニマルなフレーズを引き続けるピアノが印象的。途中からのトランペットを主体としたフリーな咆哮などは印象的ですがけたたましさはないです。軽い合いの手も入りながら静かにエンディング。

6曲目《ピアノ組曲》はエネスコのナレーション(1951年パリ)から始まります。哀愁バラード。アレッシが中心となり優しくメロディーを奏でる展開。アレッシのトランペットはとても美しいですね。包まれます。テナー、バイオリン、ビオラもそれに寄り添って気分も高まっていきます。エネスコのナレーションが戻ってきて終了。

ラスト《シンフォニー》は変拍子の落ち着いた感じに始まります。私には現代ニューヨーク系のジャズに聴こえます。マラビーがテナー・ソロを取り始めると4ビートになります。アルバム中唯一の4ビート曲。クリーバーのドラムがここぞとばかりに躍動。その上でマラビーのテナーが迫ってきます。途中フリーなリズムも挟み、全員が自由に咆哮し始めるあたりはなかなか圧巻。怒涛のメンバーやりたい放題の展開となります。テーマを合奏し、最後の最後はクリバーのドラム・ソロ。これがサポートから解き放たれての大爆発!時間は短めです。演奏が終わると会場は拍手喝さい!これですよ。これ。ジャズっていいなぁ~(笑)。

現代音楽的な内容と書きましたが、これはジャズです。この人達がやると深みがあるんですよね。そしてこの人達にしかできないサウンド。クラシック曲を演奏する企画ものですが、企画ものの未消化感はなく、クラシックの堅苦しさもないです。ジャズの生々しさを持ちつつ構成美も聴かせる優れもの演奏。知性と肉体のバランス。アートしてます。フォーマットとしてのジャズに拘らない人には、かなりおススメなアルバム!

ディスクユニオンで買うよりAmazonで買うほうが安いですね。

アルバム名:『Enesco Re -Imagined』
メンバー:
Ralph Alessi(tp)
Tony Malaby(ts)
Mat Maneri(viola)
Albrecht Maurer(vl)
Lucian Ban(p, re-orchestrations)
Jhon Hebert(b, re-orchestrations)
Gerald Cleaver(ds)
Badal Roy(tablas, per)

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