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ブルーノートからの移籍第一弾

新譜紹介行ってみよう!

P82 アンブローズ・アキンムシーレ『ホエン・ザ・ハート・イマージズ・グリスニング(うちなる閃光)』(2010年rec. BLUENOTE)です。メンバーは、アンブロース・アキンムシーレ(tp,Celeste,voice)、ジェイソン・モラン(Rhodes)、ジャスティン・ブラウン(ds)、ジェラルド・クレイトン(p)、ハリシュ・ラガバン(b)、ウォルター・スミスⅢ(ts)です。プロデュースはアキンムシーレとモラン。モランは同レーベルの先輩。1曲のみに参加してローズを弾いています。

アキンムシーレの名はジャズ喫茶「いーぐる」の新譜特集で耳にしました。現代注目トランペッターとのことだったので、私はこの人が参加するアルバムを何枚か聴いてきました。なかなかしっかりした演奏をする人だと思っていたのですが、とうとうメジャー・レーベル・デビューですね。ちなみにアキンムシーレはセロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティションで2007年に優勝しています。

全13曲、2曲以外はアキンムシーレが作曲しています。曲数が多いのは1分前後の短い曲(ベース・ソロ、ピアノとチェレスタのデュオなどあり)が4曲あるからです。最長曲が冒頭の8分36秒の曲なので、短めの曲を密度濃くやっているとも言えます。クインテットでソロを回す曲だけでなく、トランペット・トリオやピアノとのデュオなどがありますから、レーベル・デビューということもあり多彩な面を見せようとする意図が感じられます。

プロデュースし過ぎるのもよくありませんが、ここではプロデュースが上手くいっていると思います。曲者モランが共同プロデュースしているのが功を奏しているのかもしれませんね。《マイ・ネーム・イズ・オスカー》なんて、アキンムシーレのナレーションとドラムのデュオですから面白い。でもこれがストリート性とブラックネスを感じさせて違和感なく溶け込んでいる辺りに巧さを感じます。

アルバムを通しての雰囲気はダークで落ち着いたもの。イタリアンがやるようなノーテンキな軽いものも悪くはないのですが、最近の私はこのアルバムのような雰囲気のほうが好きです。ニューヨーク・ダウンタウンの感じが流れていますが、メジャー・レーベルらしい王道感を持っているところが良いです。

1曲目《コンフェッション》と続く《ヤヤ》はオーソドックスなクインテット演奏。ユダヤのメロディーと哀愁が感じられます。で、イスラエル人ベーシストのオマー・アヴィタルなんかがやりそうな曲です。で、かなりの熱量をはらんでいます。アキンムシーレのトランペットはストレートで重厚。派手さはないけれどじっくり聴かせます。

トランペット・トリオでは白熱の演奏を聴かせ、ピアノとのデュオでは深みを聴かせるなど、色々な表情を見せるあたりに表現力の高さを感じますね。メジャー・デビューには納得。

相棒のテナー、スミスⅢとはこれまで何度も共演しています。スミスⅢのアルバムに何枚も参加しています。スミスⅢはコルトレーン系でスピリチュアル度高めなのがポイント。フレッシュ・サウンド・ニュー・タレントからサム・リバースの『フューシャ・スイング・ソング』似のジャケットのアルバムを出したこともあるので、60年代のスピリチュアル系ジャズが好みなのでしょうね。6曲に参加。

ピアノのクレイトンは、ベーシストのジョン・クレイトンの息子。私はこの人はもっと保守的な演奏をする人だと思い込んでいたのですが違いました。なかなか現代的鋭さを持った人でした。歌伴が上手いという話も聴いたことがありますが、それはアキンムシーレとのデュオ曲(《ホワッツ・ニュー》など)にあらわれていました。トランペットで歌うアキンムシーレをとても巧くサポートしているからです。デュオのバラード演奏はかなり染みます。

ベースのラガバンは堅実で逞しく、ドラムのブラウンは現代的なパルシブ・ビートを叩くなかなか良いドラマーであると思いました。メンバーの技量が揃っていて、かつアキンムシーレの実力を上手く魅せるような作りがなかなか巧みです。

アキンムシーレの魅力が詰まった良いアルバムだと思います。
日本盤も出るみたいですが、輸入盤が安いのでお得です。

アルバム名:『When The Heart Emerges Glistening』
メンバー:
Ambrose Akinmusire(tp,celeste,voice)
Justin Brown(ds)
Gerald Clayton(p)
Harish Raghavan(b)
Walter Smith III(ts)
Jason Moran(rhodes)

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