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「ジャズ・ヒップホップ学習会」第2回のレポート

お待たせ致しました。えっ、待っていないって、まあいいじゃありませんか(笑)。

ジャズ喫茶「いーぐる」 で先週土曜日に開催された中山康樹さんの「ジャズ・ヒップホップ学習会」第2回の模様をレポートします。サブタイトルが「ジャズとヒップホップはなぜ仲良しなのか~その親和性を探る」、大谷能生さんがゲストでした。

P37 開演10分前くらいにお店にイン。やっぱり、今回もたくさんのお客さんが来ていて満席まであとわずかという感じでした。その時かかっていたのはジョー・ザビヌルの『マイ・ピープル』。ザビヌルいいよね~。ジャズを継承し放出していたザビヌルはいい。お店はどんどん混み、いよいよ満席。次にかかったのはフェラ・クティの『ファンキスト・グルーヴズVol.1』。う~む、今度はアフリカンの黒さとパワーで来ましたか~。ヒップホップへの序曲としていい感じですね。このフェラ・クティが気に入ってしまった私は、早速Amazonで中古CDを注文してしまいました。節操がない私(笑)。

前置きが長くなってしまいました。今回は中山さんと大谷さんが前の中央に座って対談形式で進めました。大谷さんはCDJを持ちこんでいて、曲を途中で切ってかけていくスタイルで進めるとのこと。普段の「いーぐる」スタイル(曲は途中で切らない)とは違うのでご容赦というような大谷さんの前置きがありました。

前半は 「ビバップとは?ビバップ登場時における、複数の黒人音楽を確認する」 という内容でした。いきなりチャーリー・パーカーを聴きましょうという展開(途中カットなし)。「良いのでもう1曲かけましょう。」なんてことに(笑)。中盤ではSPからダイレクトに起こしたLPもかけました。大谷さんは「いいですね~。」を連発していました。大谷さんは、「いーぐる」オーディオで大音量で聴くパーカーがかなり良かったみたいでした。ほんと、私も「いーぐる」で聴くパーカーのアルトの音の抜けの良さは最高だと思って聴いていました。

最初は結構適当に進んでいくように見えたので、「大丈夫かな~。」なんて思いながら聞いていたのですが、的確にCDJで音源を参照して適切にコメントしながら進むので、要点は分かりやすかったです。重要なところは何度も繰り返して時間内に散在させる手法も「やるな~」と思いました。適当にいい加減な手順は、大学の講義をたくさんされている大谷さんならではの、学生を飽きさせない手法とみました。私としては『東京大学のアルバート・アイラー』の雰囲気を味わえた気分になり嬉しかったです。

そうそう、内容でしたよね。ミュージシャン目線で楽理も入れながらビバップの特徴を鋭く抽出していました。内容は濃かったので適当にピックアップします。

スイングのアンチとしてビバップが誕生し、ビバップの第一世代はダンス・ミュージックだったということでした、そこから先鋭化していってダンスから離れたとか。スイングのメジャーに対するビバップのアンダーグラウンド性も重要。ビバップはアメリカンポップの中の特殊中の特殊で、アメリカンポップの中に薄く広くダシみたいに入っていたものを抽象化して定着化させたとのこと。ブルース性は、ループで延々と続く、バトルがある、過去のものを使うなどであり、それはビバップに入っていて、それはヒップホップにも繋がるとのことでした。ダンスにもバトルがあるなんて話も了解。黒人音楽全体がBPM(Beats Per Minute)が一定というのも言われて見ればなるほどでした。

スイング・ミュージック、ビバップ、ジャンプ・ジャイブ、パーカー、カントリー・ブルースとかけながら、上記の説明をしていました。で、5分休憩。

後半は 「ヒップホップに聴き取れる、ビバップ的想像力」 という内容でした。途中からはCDJを使ってトラックの作り方を実演しながらその魅力を語るとても分かりやすいものでした。やっぱりミュージシャンの解説って説得力がありますね。

ヒップホップはダンス/パーティ・ミュージックとして始まったとのことで、ヒップホップが初めてメジャー・アクションにのったものとして、ザ・シュガーヒル・ギャングの曲(1979年)をかけました。シックのディスコヒットを編集した2小節に歌がのるもの。派手に展開していかないのは前術のブルース性でもあるわけです。ダンスのBGMとしてのDJと繋ぐMC。このDJ+MCの音響だけが分離して進化するのがヒップホップとのことでした。

パブリック・エナミーをかけ、2人のMCがいるのはジャズの2管と同じとのこと。2トップ体制による掛け合い/バトルというのは、前術のブルース性でもあるわけです。ビバップは、スイングの中からブルース性(ブラック性)を突出させ、少人数でバトルし、演奏は過去からの引用、その場での流用というもので、これらのことがヒップホップにも見られるとのことでした。私は「なるほどな~。」と思って聞いていました。

90年前後にヒップホップは音楽的に固まったそうです。2MC+DJというのも固まり、ラップをのせるトラック・メイキングの概念も出たとのこと。トラックはサンプラーやレコードを組み合わせ、コラージュを作ってビート化していきます。そこにリズムマシーンも利用。過去から引用して(引用はメインではない)何ができるかが問題。現場を自由にするための引用とのことでした。90年代のアート性の高いヒップホップも音楽の作り方はビートありきでギリギリ踊れるとのことです。引用する音質にも拘りがあるそうです。

このトラックメイキングをその場で実演して聴かせてくれました。優れたトラックもかけて聴かせてくれました。今まで漫然と聴いていた私は、耳をどこにフォーカスすれば良いか分かってとても有意義でした。それからダンスフロアーではDJがどのようなトラックを流すかが重要で、その場でテンポなどを変えていかにダンスに引き込むかがDJの腕の見せ所だとか。大谷さんはトラックメイキングには生々しさがあるとおっしゃっていました。

トラックメイキングにおいてはサウンドが重要になってきて、それはジャズのモードのサウンド重視に近いという話もありました。私は「なるほど。」と思うことしきりでした。

私は、ジャズではコード/モードという縛りで楽器でアドリブするということが、ヒップホップではダンスができるBPM(ビート)という縛りでサンプラー、レコード、リズムボックスでトラックメイキングする、と置き換えれば良いと理解しました。ジャズのメロディーがヒップホップのビートに置き換わったような感じですね。もちろんジャズにはメロディーに伴うビートがありますし、ヒップホップにはリズムに伴うメロディーがあります。どちらに重きを置くかという点で対称的。

「スイングのアンチとしてビバップが生まれたなら、ヒップホップは何のアンチか?」という質問に対して、大谷さんはディスコのアンチと答えていたのも興味深いところでした。

かなり簡略化していますが、後半は上記のような内容だったと思います。休憩をはさんで4時間弱、長かったのですが、大谷さんの大学講義術?が功を奏してか、私はそれほど長く感じなかったのです。皆さんはどう感じていたのでしょうか?

今回の講演を聞いて、ジャズとヒップホップに親和性があるということは、私のようなジャズ聴きも「ジャズ耳」のチューニング(フォーカス)を少し変えれば、「ヒップホップ耳」なんてわざわざ作らなくても結構聴けて楽しめてしまうのではないかと、私は思いました。それが分かっただけでも今回はかなり収穫がありました。とても面白かったです。

それから、DJをちょっと軽視していた私は考えを改めなければならないと思いましたし、ダンス・フロアー(クラブ)に一度行って場の状況も感じる必要があると思いました。

というわけで、私だけが納得した感じではありますが、レポートは終わります。
「ジャズ・ヒップホップ学習会」、私はかなり楽しんでいます。

ツイッターで薦められたア・トライブ・コールド・クエストの『ザ・ロー・エンド・セオリー』も買いました。ロン・カーター(ロンカー)のベースをサンプリングしていることで有名らしいです。講演でもかけましたが、中山さんが「今のお笑い(ヒップホップ)に落語(ロンカー)が参加しているみたいだ。」と言っていたのには思わず笑ってしまいました。

聴いていたら、《バター》にはウェザー・リポートの《ヤング・アンド・ファイン》のイントロの2小節がサンプリングされていて、ウェザー好きの私にはこちらの方がインパクトがありました。この曲でサンプリングされているサックスはたぶんウェイン・ショーターだと思います。私は引用の元ネタにあまり興味はなかったのですが、いざこうやって分かるとそれはそれで楽しい(笑)。

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コメント


いっきさん

詳細レポートありがとうございました。
ヒップホップは、ジャズを聴きだす前から親しんでいた音楽だったので、今回の講演を逃したのは、とっても痛かった!

ジャズとヒップホップの共通点、なるほどな、です。

あとは、「道具が作られた本来の目的とは違う使い方、もしくはアレンジがなされている」というのもジャズとヒップホップの共通点だと思っています。

たとえば、ドラムセットの発明。
単独で用いられていたシンバル、大太鼓(バスドラ)、スネアドラムが、合体して使われはじめたのはジャズですよね。

たとえば、ベースのピチカート奏法。
本来、クラシックでの使われ方はアルコ奏法で通奏低音を奏でるのが主流でしたが、ジャズではビートを刻むピチカートの使われ方がメインです。
クラシックでは、たまにアクセント的にピチカートが使われるが、ジャズではたまに、曲のエンディングなどで、たまにアルコが使われることが多い。
奏法の比率が逆転しています。

あと、ピアノの奏法もバド・パウエルの登場以来、パウエル的奏法は、メロディを奏でるというピアノが持つ機能の一部分に特化した用いられ方をしている。

ヒップホップでいえば、たとえば、ターンテーブル。
本来は、レコードの上に針をのっけて音楽を鑑賞する道具でしたが、ヒップホップでは例の♪しゅび・しゅび といったスクラッチや、曲と曲をつないだり編集したりするSE、もしくは編集装置に変化している。

また、既製のサウンドの自覚的かつ確信犯的引用もジャズもヒップホップも共通していますね。
ジャズでは、デクスター・ゴードンが得意としたクォンテーションがそうですし、ヒップホップの場合は、たとえばグランド・マスター・フラッシュの《オン・ザ・ホイール・スチール》は、シックの《グッド・タイムズ》のリズムが元ネタとなっています。

おそらくは、原曲よりも俺たちの演奏のほうがカッコいいぜという原曲へのリスペクトと同時に、原曲越えをしてやるぜ的なマインドの発露も、ジャズとヒップホップの共通した精神とカッコ良さなのかもしれません。

そういえば、ビ・バップの原曲のコード進行を元に、まったく別なメロディでテーマとアドリブを奏でてしまうところも(ハウ・ハイ・ザ・ムーン→オーニソロジーなど)、「原曲よりも~」的発想かもしれませんね。

などなど、いくつか例を挙げてみましたが、黒人の自由な感性で「~は、~でなければいけない」という既成概念の破壊と、よりクリエイティブな発想の提示、そしてこのマインドが音のどこかしらに宿っているカッコ良さが、ジャズとヒップホップの似たところだと私は思っています。


ちなみに、私はYMO方面の音のフリークだということは、いっきさんもよくご存知だと思いますが、私が小学生の時に聴いて衝撃を受け、今でも好きなアルバムの5本指に入る坂本龍一の『B-2 unit』の《ライオット・イン・ラゴス》が、アフリカ・バンバータによってDJプレイされ、ヒップホップの元祖曲とされているのは嬉しい限りです。

だから、高校時代はすっとヒップ・ホップ方面の音楽にもはいってゆけたのかもしれません。

ところで、《ライオット・イン・ラゴス》はワンコードで演奏されている曲です。ある意味、モード?
メロディには、いちおう起伏というか起承転結的なものがありますが、コード進行のある曲よりは、メリハリが希薄なところもあり、ゆえに編集しやすいところも、ヒップホップ的なのかもしれません。

投稿: | 2011年3月11日 (金) 01時12分

雲さん

ロングコメントありがとうございます。

>詳細レポートありがとうございました。

いえいえどういたしまして。
とても楽しかったですよ。

>あとは、「道具が作られた本来の目的とは違う使い方、もしくはアレンジがなされている」というのもジャズとヒップホップの共通点だと思っています。

なるほど、それもありますね。

>おそらくは、原曲よりも俺たちの演奏のほうがカッコいいぜという原曲へのリスペクトと同時に、原曲越えをしてやるぜ的なマインドの発露も、ジャズとヒップホップの共通した精神とカッコ良さなのかもしれません。

それもありますね。

>などなど、いくつか例を挙げてみましたが、黒人の自由な感性で「~は、~でなければいけない」という既成概念の破壊と、よりクリエイティブな発想の提示、そしてこのマインドが音のどこかしらに宿っているカッコ良さが、ジャズとヒップホップの似たところだと私は思っています。

この辺りのところは、中山康樹さんが言うところの「ジャズのある面がヒップホップに行ってしまった。」ということなのかもしれません?

>坂本龍一の『B-2 unit』の《ライオット・イン・ラゴス》が、アフリカ・バンバータによってDJプレイされ、ヒップホップの元祖曲とされているのは嬉しい限りです。

そんなのもあるんですか。
知っている曲が引用されていると嬉しいですよね。

ジャズとヒップホップの繋がり、なかなか興味深いです。

投稿: いっき | 2011年3月11日 (金) 23時10分

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