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バップ演奏と即興演奏を交互に収録したピアノ・トリオ

今日は準新譜紹介。去年発売されたマイナー・ピアノ・トリオのアルバムで、私がフレッシュ・サウンド・ニュー・タレント・レーベルの新譜としては久々に買ったものです。ディスクユニオンジャズ館のホームページの「NEW RELEASE」で再入荷となっていたのを試聴して購入。そういえば、昨年末くらいから「新譜」より「再入荷」の方が多い気がするのですが、魅力的な新譜が少ないということなのでしょうか?

P6 ガブリエル・プエンテス『シンプル』(2008年rec. FSNT)です。メンバーは、ガブリエル・プエンテス(ds)、クリス・ライトキャップ(b)、レオ・ジェノベーゼ(P,electric harpsichord)です。リーダーのプエンテスは初めて聴きました。チリ生まれでメキシコを中心に活動しているとか。葉脈のジャケットはちょっとひどいかも(笑)?

私的には、リーダーより他の2人が気になりました。ベースのライトキャップは現代ニューヨーク・ダウンタウンで活躍するベーシスト。彼のリーダーアルバム『デラックス』はブログで紹介済み:「今日も新譜紹介ですよー。」 ピアノのジェノベーゼはベースのエスペランサのグループでピアノを弾いています。来月ブルーノートにエスペランサと共に来日しますね。この2人がピアノ・トリオでやるところが興味深いです。

このアルバムは、普通のバップ演奏と即興演奏(3人名義の曲)が交互に収録されているところが面白いです。バップ演奏で取り上げている曲は、頭とラストがオーネットの《ブルース・コノテーション》、ショーターの《ネフェルティティ》、モンクの《アンド・ミー・ナウ》、タッド・ダメロンの《アワ・デライト》、サム・リバースの《サイクリック・エピソード》などです。ちょっとひねりのきいた選曲。

これらのバップ演奏が意外とオーソドックス。4ビートでブルージーにやっています。ジェノベーゼのピアノはための効いた後乗りを基本にしていて、今時ニューヨークのピアニストとしては珍しいかも?まあ、ただそれだけではなく、鍵盤の上を指が徘徊するようなフレーズで音を敷き詰める展開もあるので、濃い目のテイストが特徴ということになるでしょうか。

ライトキャップは小細工なしにビッグ・トーンで演奏をドライブさせていきます。ソロもジャズの基本に忠実に演奏していますね。自身のアルバムでの新感覚ジャズとは違った面が見られて、私には興味深く感じられました。ドラムのプエンテスもオーソドックスです。そうは言ってもビートの細分化が感じられるところは現代的。

録音は低音が緩めに録音されていてモワッとしています。ピアノは芯がしっかりしつつ膨らみぎみの厚い音。高音はちょっと荒めでシンバルが重厚です。全体としては古いプレスティッジのヴァン・ゲルダー・サウンドのような中域重視のメリハリ感。これが意外と演奏にマッチしていてレトロで濃厚な雰囲気を醸し出しているのが私には好印象。モンクの曲が特にお似合いです。《ネフェルティティ》もネットリまとわりついてきます。

即興演奏はリズムを主体に聴かせる感じで、濃厚ネットリ・サウンドが効いてか、親近感をともなって聴こえてくるのが面白いところです。演奏時間も1分~3分くらいの短いものなのでちょうど良い気分転換になります。即興を全部飛ばし聴きするのも面白いかも?

ジェノベーゼは即興で1曲、収録された中で唯一のオリジナル曲《ララバイ》(プエンテス作)でエレクトリック・ハープシコードを弾いていますが、エスニックな感じと神秘的な感じを醸し出していて、良いアクセントになっていると思います。その《ララバイ》は神秘的、宇宙的な寂寥感を漂わせつつも、どこか懐かしさも感じられるユニークな曲です。

各演奏は長くても6分半程度ですが、全17曲約63分というのはちょっと詰め込み過ぎな感じもします。とは言え、通して聴いても次々と場面が展開していくのでそれほど飽きさせません。ユニークなピアノ・トリオ・アルバムとしてオススメです。

アルバム名:『simple』
メンバー:
Gabriel Puentes(ds)
Chris Lightcap(b)
Leo Genovese(p,e-harpsichord)

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