なかなか興味深いアルバムです。
新譜紹介です。とは言っても去年発売されたアルバム。
アルド・ロマーノの『コンプリート・コミュニオン・トゥ・ドン・チェリー』(2010年rec. DREYFUS JAZZ)です。メンバーは、アルド・ロマーノ(ds)、アンリ・テキシェ(b)、ジェラルディーン・ローラン(as)、ファブリッツィオ・ボッソ(tp)です。フランスのロマーノにテキシェ、う~ん、最強でしょう。この大御所2人にプッシュされるのが、女性サックス奏者のローランに今や若手トランペッター筆頭のボッソ。
先日紹介したミシェル・ポルタルのアルバム同様、ここでも新旧の組み合わせが実現されています。こうやってジャズが若手に受け継がれていくことを好ましく思う私なのでした。ローランはロマーノの秘蔵っ子らしいです。
このアルバムはドン・チェリー”コンプリート・コミュニオン”へのトリビュート・アルバムです。ロマーノはチェリーが『コンプリート・コミュニオン』をリリースした直後のツアーのメンバーだったとか。なぜ今トリビュートなのかは定かではありませんが、なかなか楽しいアルバムになっています。
チェリーのアルバムは少しフリーの要素が入っていましたが、本アルバムはフリー的なものはなく痛快バップに仕上がっています。アルトのローランもトランペットのボッソもバップの範疇から出ることはなく、リズムもあくまで4ビートなので比較的オーソドックス、誰にでもオススメできるのではないかと思います。
録音もなかなか良く、ドラムのシンバルの金属感やベースの重厚さが気持ち良いです。いつも思うのですが、ドレフュス・ジャズのジャズ録音はクリーンでありながらガッツもあり、私としてはオーディオ的に理想に近い録音です。ほんと、日本のレーベルの下品な録音とは隔世の感があります。思想の違いですね。
チェリーの曲が7曲、オーネット・コールマンの曲が4曲、ロマーノの曲が1曲収録されています。こうして聴いてみるとチェリーの曲とオーネットの曲って違和感なくつながりますね。チェリーとオーネットが似たような発想で曲をつくっていたことを改めて実感しました。2人の曲っておおらかです。自由なんですよ。聴いていて気分が軽くなってきます。だから好きです。
ロマーノの1曲もうまく溶け込んでいますが、かなりせわしい曲ですね。そういう意味では現代的かも?この曲にはドラム・ソロがフィーチャーされています。ロマーノも今年は70歳になりますが、まだまだ元気ですね(笑)。他にドラムを主体にした曲、ベースを主体にした曲が1曲ずつあります。
大御所2人がフロントの若手2人を煽りまくります。容赦ないです。2人のリズムは重量級なので4人でも密度感が高くて聴き応えがあります。女性のローランも頑張ってますね。音がちょっとかすれ気味でリー・コニッツみたい。なかなか渋いです。ボッソも頑張っていますよ。かなり気合い入ってます。改めてボッソのテクニックを痛感。ミュートもいくつか使い分けて彩を添えるあたりはなかなかのものです。
で、ボッソについてちょっと一言、テクニックはあるのですが、どうもまだテクニックを聴かせるようなところがある気がします。まだ若いのでこれからが楽しみということだと思います。良いものを持っているんだから、それに溺れずに音楽に真摯に向き合っていってほしいと思います。
曲も良く演奏も良く録音も良い。ちょっと優等生的で危なさには欠けますが、楽しいアルバムになっていると思います。ボッソのファンは必聴。
アルバム名:『COMPLETE COMMUNION TO DON CHERRY』
メンバー:
Fabrizio Bosso(tp)
Geraldine Laurent(sax)
Henri Texier(b)
Aldo Romano(ds)
| 固定リンク
「ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事
- 明けましておめでとうございます!(2023.01.01)
- 今日はこんなの聴きました。(2022.01.01)
- 追悼、チック・コリア。(2021.02.14)
- このアルバムのこの曲が好き!(2021.02.07)
- こんなの聴いています。(2021.01.03)
コメント
ドン・チェリーというと自分の場合、ECMの諸作で聴いていることが多かったのですが、彼のトランペット(ポケット・トランペットが多かったような)のつもりでいると、ファブリッツィオ・ボッソがけっこう好きにやっているようでいて端正で、言わば対極の吹き方かな、とも思いました。
ただ、アルバムとしてはけっこう面白くて、一気に聴いてしまいました。オーソドックスな4ビートの曲が多かったのも意外でしたが楽しめました。
実は元の「コンプリート・コミュニオン」は、まだ聴いたことがないんですよ。いずれ、と思います。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年1月24日 (月) 16時47分
910さん
こんばんは。
私はECMのドン・チェリー(コドナですよね。たぶん。)はほとんど聴いたことがないのですが、自由なフィーリングが好きです。
チェリーが天然だとすると、ボッソは人工的/技術的なので対極にあるのかもしれませんね。
おっしゃるとおり、ボッソは好きにやっている感じです。
私は凄いテクニシャンだと思いました。
これ、面白いアルバムだと思いますよ。
「コンプリート・コミュニオン」はチェリーらしいいいアルバムだと思います。
ガトー・バルビリも好演です。
是非聴いてみて下さい。
トラバありがとうございました。
後ほど私からもトラバさせていただきます。
投稿: いっき | 2011年1月24日 (月) 20時56分