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今年最初の新譜紹介

今年はのんびりブログをやることに決めたので、
まずは最低限1日おき更新を守ることにしようと思います。
2日連続更新はしないということです。
こういうルールでも決めないと結局たくさん更新してしまいそうなのです(笑)。

今日は新譜紹介。

P196 ミシェル・ポルタル『バイラドール』(2010年rec. Universal Music France)です。メンバーは、ミシェル・ポルタル(b-cl,ts,ss)、アンブローズ・アキンムシーレ(tp)ボヤンZ(p,key)、リオーネル・ルエケ(g)、スコット・コリー(b)、ジャック・ディジョネット(ds)です。ヨーロッパ/アメリカ新旧入り乱れたメンバーが素敵じゃありませんか。

ポルタル、ディジョネットの大御所、アキンムシーレ、ルエケ、コリーの若手、中堅のボヤンZ、プロデュースはその中堅ボヤンZが担当しています。現代ジャズの縮図みたいなものがここに現出しています。大御所と若手の交流がジャズを未来に伝えると思っている私としては嬉しい共演メンバーです。

曲はポルタルの6曲、フランスのオルガン奏者エディ・ルイスの1曲、ディジョネットの1曲です。曲はほとんどポルタルなのに、サウンドはプロデュースをしているバルカン生まれのボヤンZに影響されたのか?東欧/バルカンのエスニック系が主体。アレンジはポルタルとボヤンZの2人でやっているのでその傾向が強く感じられるのでしょう。スローテンポの曲はエスニックというよりはミステリアス系になっています。ルイスの曲はポルタルの曲に違和感なく混ざっています。ディジョネットの曲については後述。

アルバム全体としてはボヤンZのアルバムにポルタルがフィーチャされているとも言えなくもないです。ボヤンZがプロデュースしているし演奏でも結構頑張っているのでそう感じるのでしょう。ボヤンZは東欧系の哀愁メロディーセンスでありながら、繊細にやらず剛腕ぶりを聴かせるのが良さです。この人のライブを見ましたがレスラーなみの体格と腕の太さでした。それが演奏に表れていて躍動的でメロディアスな演奏を聴かせてくれます。

ルエケは半分の4曲に参加していますが、3曲ではソロもとらずアンサンブル要因でかつ控え目な起用。なんかもったいない気がします。1曲はポルタルとのデュオで、ルエケの美意識とポルタルの美意識のフュージョンがなかなか良い雰囲気を作り出しています。このデュオは全8曲中の4曲目にあり、アルバムの中の良いアクセントになっています。

アキンムシーレは冒頭の曲でこそソロをとっていませんが、他の曲では良いトランペットを聴かせてくれます。派手さはありませんが堅実なテクニックでフレーズを丁寧に歌わせるところが良いです。それでいてフリー系の演奏になればアバンギャルドもこなす柔軟性も持ち合わせています。音が少しくすんだ感じなのもジャジーで良いところですね。

コリーのベースは目立つ場面は少ないけれど、堅実にベーシストの責務をこなして演奏を支えます。この人は特に4ビートでのウォーキング・ベースのラインが素敵だと思います。ディジョネットは最近若手との演奏が増えているようで、どんどんやってほしいところです。ほとんどが8ビートと変拍子ですがさすがディジョネット、小気味よく軽やかなビートで演奏をグルーブさせています。

ディジョネットの曲《ワン・オン・ワン》を聴いて思わずニンマリしてしまいました。これってまんま昔ディジョネットがやっていたグループ「スペシャル・エディション」のサウンドです。懐かしいと同時に、ディジョネットには是非「スペシャル・エディション」を再結成してほしいと思いました。この曲は4ビート主体。緩急起伏に富む構成のしっかりした曲作りでありながら自由度も高いところが魅力です。ポルタルも水を得た魚の如く活き活きしていますよ。

肝心のポルタルのことが最後になってしまいました(笑)。上記のような魅力的なメンバーに囲まれて、昨年75歳のポルタルは相変わらずクリエイティブな姿勢でアグレッシブなアドリブを展開しています。パワフルでありながら美意識も忘れないのがポルタルの魅力ですね。《アルト・ブルース》はフリー系の曲ですが、ポルタルのバスクラがキレてます。続くアキンムシーレもいいですよー。カッコイイ曲です。

ラストはポルタルとアキンムシーレのデュオを主体にした小品。おじいさんと孫の優しくも濃密な語らいです。途中からピアノ、ベース、ドラムが加わり、代わりにフロント2人が抜けピアノ・トリオになる場面も。ラストにこんな曲をもってきたあたりに遊び心を感じます。

このメンバーですから期待通りの出来を示すアルバムでした。

アルバム名:『BAILADOR』
メンバー:
Michel Portal (bcl,ts,ss)
Bojan Z (p,key)
Scott Colley (b)
Jack DeJohnette (ds)
Ambrose Akinmusire (tp)
Lionel Loueke (g)

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ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

いっきさん、こんばんは。

>まずは最低限1日おき更新を守ることにしようと思います。
>2日連続更新はしないということです。
>こういうルールでも決めないと〜

いいね!!
オイラも昨年一時期そうしていたのですが、崩れてしまいました。
ヨシッ!オイラもそうしたいと思います。
1ヶ月15日以上更新しない!ことにします(笑)。
んで、夏には1ヶ月10日に持って行ければいいなぁ〜。

今年も新譜紹介ヨロシクです!!
「これ、いっきさんが紹介していたよなぁ〜」が大切。

投稿: tommy | 2011年1月 3日 (月) 20時08分

tommyさん

こんばんは。

やっぱり何がしかルールを決めないとダメですよね。

>オイラも昨年一時期そうしていたのですが、崩れてしまいました。

そうだったんですか。
私も気をつけないと崩れそうです(笑)。

>1ヶ月15日以上更新しない!ことにします(笑)。
>んで、夏には1ヶ月10日に持って行ければいいなぁ〜。

そうですね。
1ヶ月10日更新は私も目標にしたいところです。

>今年も新譜紹介ヨロシクです!!

そこそこ頑張らせていただきます(笑)。

投稿: いっき | 2011年1月 3日 (月) 20時41分

こんばんは。雪丸です。

とても参考になりました。ありがとうございます
やっぱりDrが誰かというのは大きいですよね。BOJAN.Zも参加してるし、やっぱりこれ買おうと思います。
また色々教えて下さい。
それでは失礼します。

投稿: 雪丸 | 2011年1月 3日 (月) 22時04分

雪丸さん

こんばんは。
参考にしていただけたなら幸いです。
ディジョネットとボヤンZは肝ですよ。
聴いてみてください。

私、今日オマー・アヴィタルとアリ・ホニックのスモールズ・ライブ盤をAmazonで予約してしまいました。
日本盤ではない安いほうのやつです。
楽しみです。

投稿: いっき | 2011年1月 3日 (月) 23時29分

>アルバム全体としてはボヤンZのアルバムにポルタルがフィーチャされているとも言えなくもないです

なるほど。そういう見方もありですよね。
でも、幸か不幸か、、ディジョネトすばらしすぎました。
他のメンバーも楽しみにしてたんですが、もう、いきなりディジョネットにやられちゃった感じです。はい。

トラバ、ありがとうございました。

お休みなさい。

投稿: すずっく | 2011年1月 4日 (火) 00時42分

すずっくさま

>でも、幸か不幸か、、ディジョネトすばらしすぎました。

はい、いいですよね。
幸ですよ(笑)。

ボヤンZも自分らしいプレーをしていますし、
アキンムシーレもかなり良いと思います。

こちらこそトラバありがとうございました。

投稿: いっき | 2011年1月 4日 (火) 07時54分

このアルバム、良かったです!

皆さんがもうすでにブログにあげてらっしゃるので、重複になっちゃいますが、メンバーも良ければ、曲調やサウンドも素晴らしかったです。メインで使っているバス・クラリネットがまるで麻薬のようですね。

TBさせていただきます(今、ちょっと入らないようなので、時間をおいてまた挑戦します。)

投稿: 910 | 2011年1月26日 (水) 17時14分

910さん

こんばんは。
TBありがとうございました。
入っていました。

なかなか良い出来ですよね。
おっしゃるとおりバスクラがいい味出しています。
ジャズブロガーに受ける要素が多々あるアルバムだと思いました。

投稿: いっき | 2011年1月26日 (水) 21時07分

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