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ヒップホップ系ジャズ

先々週、ジャズ喫茶「いーぐる」での「ジャズ耳の鍛え方」発刊イベントで、中山康樹さんが今ヒップホップに興味を持っていて、それはジャズのブラックミュージックとしてのカッコ良さや発展性がヒップホップに行ってしまったからとのことでした。

で、私はその手の音楽をどう見ていたかというと、直接ヒップホップには行かず、ジャズ界で未だに脈々と受け継がれているポスト・エレクトリック・マイルスとして捉えています。時々ブログでも紹介しています。例えばこれっ ポスト・エレクトリック・マイルス系をついつい買ってしまう。北欧ですが、ジャズランド・レーベルからはこのアイヴィン・オールセットやニルス・ペッター・モルヴェルとかですね。

これなんかもそのくくりでしょう。こちらは本家アメリカ。

P185 ジェイソン・リンドナー『ナウ・バーサス・ナウ』(2008年rec. ANZIC records)です。メンバーは、ジェイソン・リンドナー(p.key,melodica)、パナギオティス・アンドレオ?(b,vo)、マーク・グイリアナ(ds)、ゲスト:ダニエル・ネグロン(vo)、ババ・イスラエル(poetry&rhymes)、アヴィシャイ・コーエン(tp)、ヨスバン・テリー(chekere)、クラウディア・アカーニャ(vo)、ペドロ・マルティネス(congas,vo)、フランシス・ベラスケス・ゲバラ(poetry)、ミシェル・ンデゲオチェロ(b,vo)、アナ・コーエン(ts,pandeiro)、アヴィシャイ・コーエン(tp)、カート・ローゼン・ウィンケル(g)です。基本はキーボード(ピアノ)、エレクトリックベース、ドラムのトリオで、曲によって1名~数名のゲストが参加します。トリオだけの曲もあります。

このアルバム、ジャズ喫茶「いーぐる」の「ニューヨークダウンタウンを中心とした2009年新譜特集」でも選曲されていました。私はその回に参加しなかったのですが、後日「いーぐる」のホームページに掲載されたリストをチェックして買いました。講演者の益子博之さんは、こういうものもきちんとフォローしていますよね。

完全にヒップホップというわけではありませんが、ポエトリー・リーディングなんか交えたりして、エレクトリックなファンクを繰り広げています。面白いのは打ち込みをやっていないことです。この手のサウンドは打ち込みが主流なのですが、今時はそれを人力でやるところが面白いのです。ドラムなんか機械的な感じを見事にフィードバックして叩いていますよ。

リズム・ボックスやリズム・マシーンのリズム感覚を経た上での、人力打ち込み(ドラムンベース)系グルーヴが今時のエレクトリック・ファンクなのです。先程取り上げたアイヴィン・オールセットも打ち込みではなく人力でやっています。人力ならではの揺らぎがリズムを活き活きとさせる効果につながっているような気がします。私の思い込みかな~?

マイルス役のトランペッターはアヴィシャイ・コーエン。『ザ・トランペット・プレイヤー』という名盤で熱く尖がったトランペットを披露している知る人ぞ知る人です。残念ながら3曲にしか参加していません。エレクトリック・ファンク・ミーツ・中近東エスニックな曲(笑)もあります。ついでにブラックのルーツであるアフリカンなファンクもあります。

ヒップホップへ行く前に、ジャズにもまだまだこういうカッコ良さや発展性を持つものをやっている人達がいることは認識しておいても良いのではないでしょうか?メインストリーム回帰もいいのですが、その陰になってしまうものも多々あります。本来、ジャズ評論界がこの辺りをフォロー&ケアしておくべきだと思うのですが、残念ながら今そういう仕事をしている人は表に見えてこないという現状があるように思います。

アルバム名:『NOW VS NOW』
メンバー:
JASON LINDNER(p,el-p,synth,vo)
DANIELE NEGRON(vo)
BABA ISRAEL(spoken word, poetry&rhyme)
PANAGIOTIS ANDREOU(b)
MARK GUILIANA(ds)
YOSVANY TERRY(chekere)
MESHELL NDEGEOCELLO(b)
AVISHAI COHEN(tp)
ANAT COHEN(ts,pandeiro)
KURT ROSENWINKEL(g)

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