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現代の新主流派サウンド?

先週末吉祥寺ディスクユニオンで見つけた新譜の中古CDです。やっぱりこの手のサウンドはダメな人がいるんでしょうね。現代ニューヨークサウンド。新入荷の棚にあったのですが、すぐ近くにはOAMトリオ&マーク・ターナーの『ナウ&ヒア』もありました。多分同じ人が売ったんじゃないかな?

P142 ということで今日紹介するのは、ウィル・ヴィンソン『ストックホルム・シンドローム』(2010年rec. CrissCross)です。メンバーは、ウィル・ビンソン(as,ss)、ラーゲ・ルンド(g)、アーロン・パークス(p)、オラーンド・ルフレミング(b)、ケンドリック・スコット(ds)です。私はリーダーのヴィンソンではなく、ピアニストのアーロン・パークス買いです。

メンバーから想像したとおり現代ニューヨークサウンドでした。この現代ニューヨークサウンドが曲者なのでしょう。浮遊感のあるクールなメロディーはダメな人がいるんでしょうね。浮遊感というのは落とし所がはっきりしないからで、オーネット・コールマンやウェイン・ショーターのメロディーに通じると思います。オーネットやショーターは天然なんですが(笑)、現代ニューヨーカーは多分に意図的。

更に近寄りがたいのがリスム。変拍子ですね。乗りにくいというだけでダメな人がいるんでしょう。浮遊感のあるクールなメロディーと変拍子を特徴とするのが現代ニューヨークサウンド、私は現代の新主流派サウンドと名付けていいのではないかと思っています。私も最初は何か落ち着かなかったのですが、今はこのサウンドにすっかり馴染んでいます。

こういうサウンドを得意とするのが脇を固めるラーゲ・ルンドでありアーロン・パークスです。私はこの人達のサウンドに注目しているわけです。特にパークスは陰影感のあるクールビューティーを感じさせるところが好きです。ギターのルンドも良いプレーをしていますね。ちょっぴり地味で職人的なのがルンド。変拍子から4ビートまでフレキシブルにこなすケンドリック・スコットは正に現代ドラマー。ベースのオラーンド・ルフレミングは初めて聴きましたが可もなし不可もなしかな?

さて、リーダーのヴィンソンですが、私見ではアルトのデヴィッド・ビニーを少しオーソドックスにした感じだと思いました。堅実なプレーですがはっきり言ってちょっと地味。今後この人を追いかけるかどうかは?決して悪くはないです。ただこの人でなければというものはまだ足りない気がします。

ヴィンソンのオリジナル4曲とルンドのオリジナル1曲は今時ニュウーヨークサウンド。曲はそれぞれなかなか落ち着いた感じの良い曲だと私は思います。ヴィンソンのもろにニューヨークな曲が《ディア・オールド・ストックホルム・シンドローム》なんて有名曲をもじったタイトルになっているのがユニーク。

面白いのはスタンダードとジャズマンオリジナルを何曲か取り上げているところ。ポール・デスモンドの《レイト・ラメント》を聴くと、ヴィンソンがデスモンドを好きなんだろうなと感じさせます。バラード曲でしっとり可憐に歌うヴィンソンのアルトからはなかなかの哀感が漂っています。ルンドのソロもジム・ホール的美しさです。ルフレミングのベースソロも素敵ですが、ノスタルジーを感じるこういう曲はチャーリー・ヘイデンがベースを弾いていたらもっと深みを増すだろうと思います。

《ユー・ウォーント・フォーゲット・ミー》はギターとのデュオ。マヌーシュ・スイング調?落ち着いたバラード演奏がじんわり染みます。コール・ポーターの《エブリシング・アイ・ラブ》はなぜここに入っているのか?ですが普通のバップ演奏。パークスのピアノがメカニカルなんだけど無機的にならずいい塩梅の美。ヴィンソンのアルトはストレートにバップしてますね。趣味の良さはやはりデスモンドか?

ビル・エバンスの《ショー・タイプ・チューン》は、ピアノとのデュオでスローに始まり、途中からドラムが入ってミディアム・テンポになる展開。ベースレスです。エバンスの曲が美しいところがまずは◎。ヴィンソンは曲の美しさを大事にしつつ進んでいきます。パークスがピアノで程よく尖がったツッコミも交えるところが私は好き。パークスのソロも聴かせますよ。ポスト・ブラッド・メルドーだと思いますが、ところどころにキース・ジャレットも感じさせます。スコットのブラシは現代版シェリー・マン?ドラムで歌ってます。

現代新主流派とオーソドックスな演奏が混在しているのはクリスクロス・レーベルならではなんでしょうか?今年出たデヴィッド・ビニーのアルバムもそういう構成でしたね。通して聴くと落ち着いたサウンドで統一されているのが良いと思います。そしてメンバーが誰から影響を受けているか何となくわかるところが面白いですね。

アルバム名:『STOCKHOLM SYNDROME』
メンバー:
Will Vinson(as,ss)
Lage Lund(g)
Aaron Parks(p)
Orlando LeFleming(b)
Kendrick Scott(ds)

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コメント

やはり現代ニューヨークサウンドのジャズをお感じになりましたですね。今回、アルバムコメントを書くにあたって、同じような傾向のアルバムでも普段なら書けてしまうのに、なかなか書けなくて苦労しました。従来のジャズの傾向も、ど真ん中ではないですが、入ってますものね。しかし、こちらではやっと入手したというのに、もう中古で出ていたというのもビックリです。

メンバーの人選は、けっこういいですね、このアルバムのためにあるような、という感じもしました。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2010年11月14日 (日) 18時36分

910さん

>やはり現代ニューヨークサウンドのジャズをお感じになりましたですね。

はい。

>今回、アルバムコメントを書くにあたって、同じような傾向のアルバムでも普段なら書けてしまうのに、なかなか書けなくて苦労しました。

書き易いものと書き難いものはありますよね。
私的には何かキーワードがあると書き易いです。

>従来のジャズの傾向も、ど真ん中ではないですが、入ってますものね。

私はそれが面白かったので、そちらばかり書いてしまいました。

>しかし、こちらではやっと入手したというのに、もう中古で出ていたというのもビックリです。

そうなんですよ。私も見てビックリしました。
でも何となくこういうのがダメな気持ちもわかりました。

>メンバーの人選は、けっこういいですね、

メンバーにフィットしたジャズをやっていますよね。

TBありがとうございました。

投稿: いっき | 2010年11月14日 (日) 19時00分

はじめまして。Grass_hopperと申します。最近ジャズブログを始めまして、いつも参考にさせて頂いております。おっしゃる通り、こういう無機的なコンテンポラリー系のジャズはハッキリ好き嫌いが分かれますね。私の場合、本作はリリース当時に店頭で聴いた瞬間、電流に打たれたようなショックを受けて即買いしました。

冷たい質感とナーバスな音使い、パークスとルンドの計算されたバッキングが印象に残りました。不躾ながらTB送らせて頂きました。もしご迷惑でなければご掲載下さい。よろしくお願い致します。

投稿: Grass_hopper | 2012年2月23日 (木) 11時41分

Grass_hopperさん

はじめまして。
コメントとトラックバックありがとうございます。
また拙ブログをお読みいただきありがとうございます。

>おっしゃる通り、こういう無機的なコンテンポラリー系のジャズはハッキリ好き嫌いが分かれますね。

私は無機的とまでは思わないですが、クールな雰囲気は現代ニューヨークの特徴で、きちんと聴けば良さが分かると思います。

>私の場合、本作はリリース当時に店頭で聴いた瞬間、電流に打たれたようなショックを受けて即買いしました。

それはかなり衝撃的な出会いですね。

>冷たい質感とナーバスな音使い、パークスとルンドの計算されたバッキングが印象に残りました。

パークスとルンドは現代ジャズの注目株だと思います。計算もあるのでしょうが、そういう演奏姿勢も含めたところが現代感覚なのだろうと思います。

>不躾ながらTB送らせて頂きました。もしご迷惑でなければご掲載下さい。

トラックバック&コメント大歓迎です。

投稿: いっき | 2012年2月23日 (木) 20時29分

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