テナー吹き2人の旧作がなかなか良かった。
先週土曜、ディスクユニオン吉祥寺ジャズ・クラシック館で買った中古CDを紹介します。吉祥寺と言えば寺島靖国さんのお膝元ということで、寺島さんが過去に書いた本で推薦していたものです。
まずはエリック・アレキサンダーの『アップ,オーバー&アウト』(1993年rec. DELMARK)です。メンバーは、エリック・アレキサンダー(ts)、ハロルド・メイバーン(p)、ジョン・オレ(b)、ジョー・ファンズワース(ds)です。
なぜこれを買ったかというと、前に寺島さんの本で見たことがあったこと、シカゴのデルマーク・レーベルが私のお気に入りレーベルなこと、ジャケット写真のアングルと大きく写るマイクがカッコいいと思ったこと、エリックの初期の演奏が聴いてみたかったことなどからです。
寺島さんの「JAZZの聴き方」で取り上げていました。読んでみると、寺島さんはデクスター・ゴドンの影響がちらほら出て残念だと言いつつ、エリックのことは推薦していました。初期のリーダーアルバムなのでそういうところが見られるのでしょう。録音されてからもう17年経ちます。私が聴いたところ、確かにゴードンの影響はあるにしても、なかなか男気溢れるストレートな良い演奏をしていると思いました。その後開花するエリック節の片鱗も垣間見ることができてますよ。
80年代メインストリーム回帰ブームが一段落した後に出てきたメインストリーム路線ということで、若手の正当派ジャズ継承を歓迎した当時の寺島さんの気持ちもわかります。この頃のいいところはジャズにどっぷり浸かってきた先輩と共演していることです。ハロルド・メイバーンがその人ですね。その後エリックのアルバムではいつもピアノを弾いて、エリックの後ろ盾となり成長を見守ります。そんなメイバーンがいることで演奏が締まっているんですよ。
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もう1枚紹介します。
ハリー・アレンの『夢見る頃を過ぎても』(1999年rec. BMGファンハウス)です。メンバーは、ハリー・アレン(ts)、レイ・ブラウン(b)、ジェフ・ハミルトン(ds)、ハーブ・エリス(g、4曲のみ参加)です。
これは寺島さんの「JAZZはこの1曲から聴け!」で取り上げられています。ハリーは寺島さんによればテナーらしい音を出す奏者としてよく推薦されています。私もそれは了解しているものの、寺島さんの場合はジョン・コルトレーンやマイケル・ブレッカー批判としてのハリー・アレンなので、私には大いに不服があるわけです(笑)。
でも私にとってハリーも気になる存在ではあるわけで、「寺島テナー論憎し=ハリー・アレン憎し」ではかわいそうだということで、今回はかなり安かったこともあり入手(笑)。これ、ほとんどの演奏がサックス・トリオ(コードレス・トリオ)での演奏でした。エリスのギターは13曲中の4曲しか参加していません。このサックス・トリオがかなりいいです。
ハリーのテナーの音、サブトーンも聴かせつつ確かに気持ち良い音で鳴っています。このアルバムではそんなテナー音を生かしたバラードだけでなく、バリバリと吹いている曲が結構あり、それが良いのです。中にはベースのレイ・ブラウンとのデュオもあり、なかなか聴かせてくれています。ハリーの場合もスタン・ゲッツの影響は感じられますが、それでもこのアルバムがかなり気に入ってしまいました。
このアルバムは日本企画ですね。でもこれなら許せます。ライナーノーツは寺島さんが書いていました。いつもの調子でアルバムの聴きどころを紹介(笑)。ハリーのテナーの音色、レイ・ブラウンの逞しいベース、かなりの弾けっぷりでスイングするジェフ・ハミルトンのドラムと、寺島さんが好きなものがここぞとばかりに結集しています。
オーディオ的にも、テナー、ベース、ドラムがコントラストクッキリで録られていますので、この音も寺島さん好みだとわかります。ベースは強調し過ぎていないので、これなら私にも気持ちよく聴くことができます。寺島さん批判する私ですが(笑)、寺島さんが魅力を感じていることを全否定するものではありません。私にもわかります。ただ度が過ぎている場合はバランスを重んじる私なのでツッコミを入れざるを得ないだけです。
こちらのアルバムにも大御所レイ・ブラウンがいることで、やっぱり締まった演奏になっています。ジャズって先輩から後輩へ共演を通じてこそ伝わるものがあるんと思うんですよね。形だけが継承されたりするとおかしくなってしまう気がします。
そんなことも考えながら楽しく聴いています。ただし今度の新譜『007ソングス』は勘弁してほしい。007の曲をジャズにしてほしくないです(笑)。
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それから、別に私はニューヨーク最先端ジャズしか認めないというわけではありませんのでお間違いなきよう(笑)。
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