「JaZZ JAPAN」編集長三森隆文さんゲストの「PCMジャズ喫茶」レポートの続きです。
「JaZZ JAPAN」の第2号でブルー・ミッチェルのことを書いているという話へ。この記事には寺島さんが投稿しています。いつものように面白い文章です。(ピンク字は私の意見)「『ブルース・ムーズ』を久々に聴いたらやっぱりいい。」と寺島さん。「《アイル・クローズ・マイ・アイズ》が有名だが、2曲目の《エイヴァース》もいい。ロッキー・ボイドが作曲したんですよ。」と言いつつボイドの演奏とミッチェルの演奏を比較することに。『ブルース・ムーズ』はいいですよね。私も好きなアルバムです。
その前に、岩浪さんが「同業者のオリジナルをやれ。」とミュージシャンに言っているという話をします。「他人の曲をやらないと、自分の曲も他の人にやってもらえない。」と岩浪さん。ジャズマンオリジナルを共有することでジャズ界の横のつながりを強めたりジャズ界を活性化できるという思いからの発言と私は受け取りました。
更にエキサイトして岩浪さんは「ジャズは本来黒人の反発の結束を強める側面があり、だから簡単なコードなどの制約で皆で演奏することに意義がある。」と言うのです。続けて「今のヨーロッパのジャズマンのように我が我がと自分のオリジナルばかりやるのは間違いで、我が我がというのならクラシックがそういう音楽だからクラシックをやればいい。今イタリアの(黒人文化に沿ったバップ)ジャズが良く、アメリカのジャズマンもイタリアに行けと言っている。」と続けます。
黒人音楽や文化を敬愛する岩浪さんらしいご意見だと思いました。私はクラシックについては何とも言えませんが、ロックでもポップスでも個人やグループの楽曲重視は言えるわけで、ジャズも同じなのだろうと思います。そしてジャズが特定のコミュニティーから外へ出て世界的な広がりを持ち、色々な音楽や考え方の影響を受けている以上、岩浪さんが言うようなジャズからはみ出すのは当然のことだとも思うわけです。さらにジャズの起源に由来するような黒人文化を伝えるのが、簡単なコード進行などによるアドリブ回しだとしても、それをやっていればいいのかということへの疑問もあります。まっ、岩浪さんの意見は意見として聞いておきましょう(笑)。
話は山中千尋さんへと変わります(笑)。寺島さんが「山中千尋は人には甘い曲ばかりを聴いてと言っておいて、(新譜で)自分は甘い曲を書いているじゃないか。」と言うのです(笑)。そして「今月の「JaZZ JAPAN」の文章は一度読んだらわかった。以前は3回読まないと何を言いたいかわからなかった。あれでは普通の人にはわからない。」と言っていました。山中さんに噛みつかないと気がすまない寺島さんです(笑)。寺島さんのいうような甘い曲?は後ほどかかります。
とうことでロッキー・ボイドとブルー・ミッチェルの《エイヴァース》比較。
人妻Aさんは、ブルー・ミッチェルの演奏を聴いて良い曲だと思ったそうです。そんなAさんの意見(演奏者によって曲の良し悪しの感じ方が変わる)を聞いて寺島さんは喜んでいました。それで終わらないのも寺島さん(笑)。「ボイドも良いよね。マイナーの極致で。」と言っていました。
人妻Aさんの選曲。トーマス・エンコ。人妻Aさんは「東京JAZZ」の屋外ステージで見たそうです。人妻Aさんは「またか」という感じでスタンダードを聴き飽きていたけれど、エンコの《イエスタデイズ》を聴いてスタンダードも(演奏次第で)良いと思ったそう。余談ですが、岩浪さんは「東京JAZZ」の担当者と伊藤八十八さんが知り合いなので、伊藤さんの息のかかった人がたくさん出ているんじゃないかと言っていました。《イエスタデイズ》をかけました。
人妻Aさんらしい、テクニカル系のピアノ・トリオでした。寺島さんは「前回の時に中平穂積さんがゲストに来て、”最近の若者は弾きすぎる”と言っていたが、その典型。」とお気に召さないようでした(笑)。人妻Aさんが「若いっていいですよね。」と言うと、寺島さんは「老いの良さをメインに考えることにしている。」と反論。そして「三森さんは51歳だけれど、今雑誌を立ち上げて燃えに燃えている。いいですよね~。」と言っていました。
ここで岩浪さんの若い頃の話へ。岩浪さんは植草甚一さんや久保田高司さんの弟子だったので、油井正一さんや野口久光さんのような正論派に反発があったそうです。なるほどジャズ評論家にもそういう派閥があったんですね。以前この番組で、岩浪さんが雑誌とかに間違ったことを書くと、すぐに油井さんから電話がかかってきて怒られたと言っていましたが、岩浪さんも若い時は色々苦労していたのです。
次は三森さんの選曲。三森さんは1983年にスイングジャーナル社に入ったとのこと。当時伝統的なジャズを見なおす動きがあり、ウィントン・マルサリスが注目されたりしたそうです。、私がジャズを聴き始めた翌年ですね。懐かしい。スイングジャーナル誌は大学図書館の雑誌棚にあったのを毎月読んでいました(笑)。当時のアルバムでビル・ラズウェル、マテリアルのお札のジャケット(『One Down』)から三森さんの愛聴曲《メモリーズ》。ホイットニー・ヒューストンとアーチー・シェップの共演です。
Amazonのレビューによると、ホイットニー・ヒューストンのメジャー・デビュー前初録音らしいです。レコードは当然廃盤。CDも廃盤みたいです。今では忘れられてしまった「マテリアル」。ジャズの新しい動きとして当時はスイングジャーナル誌でもかなり取り上げていました。今私が持っているアルバムは『メモリー・サーブス』だけです。当時が懐かしいです。
「全然別な世界。」と寺島さん。「良質なポップス。」と岩浪さん。
人妻Aさんが「東京JAZZ」で観た山中千尋さんの話へ。テリ・リン・キャリントンのモザイク・プロジェクトにゲスト参加した山中千尋さんが苦痛に顔をゆがめて弾いていたというのです。山中さんのピアノ・ソロが終わった後に拍手が入れられないような雰囲気だったと。「北風と太陽」の話ではないが、風が強く吹くように”ビュービュー”弾くと人の心が閉ざされてしまうと思ったそうです。
私がTVで見たのは、《フォレスト・スター》という山中さん作のスピリチュアル/モーダルなカッコいい曲の演奏。ソプラノ・サックスのティネカ・ポスマさんがデイブ・リーブマンばり(フレージングも似ていました)の熱いソロをとった後、山中さんのソロとなるのですが、私には山中さんとドラムのキャリントンさんの真剣勝負に見えました。山中さんのこんなに気合が入った演奏を見たのは初めてです。背中丸見えの衣装が凄かった(笑)。背筋はアスリートのもの。2人の真中でクールにベースを弾くエスペランサ・スポルディングさんはちょっと引き気味(笑)?山中さんのソロのバックでエフェクト・トランペットでシンセ系効果音を入れるイングリッド・ジェンセンさんがカッコ良かったです(TVにはほとんど写っていませんので音を聴いての感想)。いい演奏でしたよ。他にも何曲かやったのかもしれないので、人妻Aさんがこの演奏のことを言ったのかどうかは不明です。
岩浪さん選曲で山中千尋さんの新譜から《ソー・ロング》。メロディーがわかりやすくシンプルとのこと。
山中さんらしい曲だと思いました。日本の古いフォークのような感じの曲です。澤野工房時代に「学生時代」や「やつらの足音のバラード」を演奏していましたが、山中さんはこういうメロディーが好きなんじゃないかと思いました。寺島さんは「なんか上っ調子。」とお得意フレーズ。人妻Aさんは「楽しそうでいいです。」と言っていました。三森さんは「文章に比べると懐の深さに欠ける。」と言っていました。
ここで、さっきの「東京JAZZ」の話題に戻ります。三森さんが「以前山中さんと群馬交響楽団との演奏を見た時には山中さんが楽団に負けずに演奏していた。」と言います。すると寺島さんは「山中さんは負けず嫌いなんですよ。「東京JAZZ」では女性バンドの中で、山中さんの負けず嫌いが出たんだ。」と得意げです。寺島さんは山中さんの話題になると生き生きとしますね(笑)。
三森さんは「「東京JAZZ」の時はノナ・ヘンドリックスなどがいて、方向性がちょっと違ったので、山中さんの時はピアノ・トリオ編成にしてやれば良かったのかもしれないですね。」と言っていました。私が見た演奏はクインテットだし、山中さんの曲だし、ピアノ・ソロを大きくフィーチャーしていたし、特に問題はないように思えたのですが・・・。三森さんも見ずに発言していたのでしょうか?
ラストも岩浪さんの選曲。ヘイリー・ローレンの《パーハップス・パーハップス・パーハップス》。以前寺島さんもヘイリー・ローレンをかけましたよね。好きだと言っていました。
「いいねー。岩浪さんもたまにはいい選曲をするねー。」と寺島さん。そう言われて嬉しそうな岩浪さんです。他愛ないジャズオヤジのトーク(笑)。
最後に三森さんから「JaZZ JAPAN」の抱負。「(番組最初に言った)コンセプト通りで、世代を越えてジャズを伝えていきたい。」とのことでした。
残念ながら「JaZZ JAPAN」の裏話はほぼありませんでした。まっ、いくらリスナーが少ないとはいえ公共の電波ですから、業界でやっていくのに支障をきたすような話はできませんよね。それより今回は山中千尋さん話が盛り上がって楽しかったです(笑)。
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本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバードの
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」を
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。
PCM放送は来年8月で終了なので、もうひとつのサービス「スペースディーヴァ」
のほうが良いかもしれません。
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