もう少しECM系NY現代サウンドをやってほしかった。
最近ECMレーベルのアルバムを結構買っています。以前、最近のECMはいまいちと書いたんですが、発言を撤回します(笑)。やっぱりECMはポリシーも一貫しているし、ず~っと一定のクオリティーを確保したジャズを出し続けているし、素晴らしいレーベルだと思います。まっ、そうは言ってもECMレーベルにはあまり拘りはないですけどね。
マイケル・フォーマネクの『ザ・ラブ・アンド・スペアー・チェンジ』(2009年rec. ECM)です。メンバーは、マイケル・フォーマネク(b)、ティム・バーン(as)、クレイグ・テイボーン(p)、ジェラルド・クリーバー(ds)です。最初に気になったのはジャケット写真。この色具合に夜景の吊り橋と言えば、ジャズ喫茶「いーぐる」の壁に飾られたアルバムの勘違い事件(笑)。
これらのアルバムの夜景の色調が好きな私です。
味わい深くモダンなサックス・トリオ
ジャケットを勘違いしたアルバム
このアルバムを買った一番の理由はメンバー。ティム・バーンが参加しているし、テイボーンにクリーバーとくれば現代ニューヨークのジャズを追いかけているなら買わずにいられないですよね。それにこのメンバーでECMレーベルというのも珍しい感じです。ついでにミュージックバードの「ブランニューCD」で2曲聴いたらなかなか良い感じでした。フォーマネク12年ぶりのリーダー・アルバムなんだそうです。全7曲フォーマネクのオリジナル。
1曲目《トゥエンティー・スリー・ネオ》が始まった瞬間、ピアノのリフとベースのアルコから不穏な感じと郷愁が漂ってきます。更にエスニックな鳴きのアルトにドラムの不穏なパルス。このメンバーならではの独特な美的サウンドです。どことなく気品を感じさせるのはECMレーベル故か?短いピアノ・ソロを挟んで後半は少しテンポ・アップ。アドリブ・ソロというよりは音を少しずつずらして塗り進めていく感じが面白いです。この曲は私のお気に入り。
2曲目《ザ・ラン・アンド・スペアー・チェンジ》はヨーロッパ・エスニック・サウンド。そして変拍子炸裂。このメンバーにしてヨーロッパ的というのが面白いところです。バーンのアルト・ソロを主体にした曲で、静かに始まり徐々に盛り上がる展開なれど爆発しないで寸止めなのが今時。バックのピアノ、ベース、ドラムは曲イメージとリズムを維持しつつかなり自由。後半のテイボーンのピアノ・ソロはクラシック基調のフリー。リズムとテンポも柔軟に変化。キラキラと転がるピアノがとても美しいです。燃え上がらず内に熱気を秘めつつ慎重に進む感じも今時のもの。始終美しさを感じさせるところがECMレーベルのなせる技か?
次の《インサイド・ザ・ボックス》は無機的でメカニカルなテーマの現代ニューヨーク・サウンド。変拍子で途中から4ビートも交える展開。あれっ、早くもECM効果はなくなってしまったのでしょうか?このメンバーらしい現代フリー/モード・ジャズを展開しています。《ジャックズ・ラスト・コール》はピアノ・トリオによるフリー・ジャズ。テイボーンのピアノが美しくダイナミックでスピリチュアル。それほど無茶苦茶はやっていないので安心して聴けます。個人の集中力や技は良いのですが、ありがちな演奏なのがちょっぴり残念かも?
《トーナル・スイート》は17分の大曲。《トーナル組曲》というだけあって、一定のサウンド・トーンを維持しつつ、いくつかのパートに分かれて(切れ目はなし)演奏が進んでいきます。このメンバーお得意のフリー/モード・ジャズだと思います。テイボーンのピアノはソフトなセシル・テイラーという感じで、そうなるとバーンはセシルの盟友ジミー・ライオンズか?質の高い演奏ですが今更な感じもしなくはありません。ラストの《トゥ・ビッグ・トゥ・フェイル》は変拍子の現代ニューヨーク・モード/フリー・ジャズ。私にとっては面白さ不足かも?バーンがかなり激しく吹いてくれるのが救いです。
結局最初の2曲は新鮮で面白かったのですけれど、3曲目からは普通の現代ニューヨーク・ジャズになっちゃったのが少々残念。ECMレーベル効果は中途半端に終わってしまったみたいです。演奏の質は高いので気になる方は是非聴いてみて下さい。
アルバム名:『THE RUB AND SPARE CHANGE』
メンバー:
Michael Formanek(b)
Tim Berne(as)
Craig Taborn(p)
Gerald Cleaver(ds)
| 固定リンク
「ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事
- 今日はこんなの聴きました。(2022.01.01)
- 追悼、チック・コリア。(2021.02.14)
- このアルバムのこの曲が好き!(2021.02.07)
- こんなの聴いています。(2021.01.03)
- 新年明けましておめでとうございます。(2018.01.01)
コメント
マンフレート・アイヒャーの単独プロデュースではなくて、マイケル・フォーマネクとの共同プロデュースになっているので、アイヒャーはあまり口をはさまなかった可能性がありますね。聴いた感じ、ECMのサウンド(というのがあるのかどうかわかりませんが)から外れた部分が目立っていたような気がします。
ただ、このメンバーならどんな演奏でも好きなクチなので、楽しんで(智が勝るような感じもありますけど)聴けました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年10月29日 (金) 12時56分
こんばんは。
TBありがとうございました。
>マイケル・フォーマネクとの共同プロデュースになっているので、アイヒャーはあまり口をはさまなかった可能性がありますね。
そうかもしれませんね。この手のジャズはアイヒャーの得意分野ではないでしょうから。
>ECMのサウンド(というのがあるのかどうかわかりませんが)から外れた部分が目立っていたような気がします。
私はECMから外れていつつ全体としてはやっぱりECMのアルバムだなと思いました。
このメンバーの演奏は私も面白いと思っています。智が勝る演奏もなかなか良いですよね。
投稿: いっき | 2010年10月29日 (金) 19時27分