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爽快、痛快、現代バップ!

これは私としては比較的早い新譜紹介です。
これはいいなあ~。かなりオススメ盤!

P85 アントニオ・サンチェス『ライブ・イン・ニュー・ヨーク・アット・ジャズ・スタンダード』(2008年rec. CAM JAZZ)です。メンバーは、アントニオ・サンチェス(ds)、スコット・コリー(b)、ミゲル・セノーン(as)、ダヴィッド・サンチェス(ts)です。精鋭揃いのピアノレス・カルテット。NY「ジャズ・スタンダード」でのライブ録音盤2枚組。

爽快で痛快な現代バップがぎっしり詰め込まれています。フロントの2管がいいですね。セノーン、ダヴィッドともに何枚かリーダー作を出し、色々なグループで活躍する中堅どころの実力者。2人はどちらかと言えばオーソドックスな部類に属するので、誰が聴いてもわかりやすいところがいいです。

これがトニー・マラビー(ts他)やスティーヴ・リーマン(as)辺りになってくると、やっていることがちょっと難しくなってきて、さらに内省的な部分があったりするので、近寄りにくい。

このアルバムはフロントがわかりやすいということで万人にオススメできると思います。その上2人とも”バリバリ”(死後?笑)の熱演だからたまりません。特にセノーンはキレてますね。1枚目の1曲目《グレッディ・サイエンス》でのセノーンのアルト・ソロは圧巻です。ダヴィッドはもう少し落ち着いた感じで、ソロの緩急の妙と展開を聴かせてくれます。

曲は15分前後のもので、1枚目2枚目ともに4曲づつ収録されています。1曲をしっかり聴かせる構成ですね。サンチェスの曲が5曲、セノーンの曲が1曲、ダヴィッドの曲が1曲、なんとパット・メセニーの曲も1曲入っています。サンチェスはメセニー・グループのドラマーなので不思議はないですが。いずれもモーダルな曲です。

曲は基本的にはフロント2管のソロを聴かせるものですが、おざなりのテーマ・アレンジとソロ回しというのではなく、テーマの合奏が凝っていたり、ベースから入ったり、ドラムから入ったり、リスムやテンポのチェンジがあったり、物語性のあるバラード曲があったりと、曲構成そのものがよくできているので飽きません。

ここでちょっと内ジャケの写真を公開。なかなかカッコいいでしょ。

P86

フロントの2管が熱演し好演しているのは前述のとおりですが、この2人を包み込むようにサンチェスがドラミングで演奏をまとめあげていくのが聴きどころです。緩急の妙、ここ一発のキメ、フレキシブルでパーカッション的なドラミングは現代屈指の技です。そしてスコット・コリーは中央に陣取り、ブッとい音で大地のごとく演奏の基盤をなしつつ絡んでいきます。

前述のようになかなか凝った構成の曲なのに、ライブ演奏なのに、非常にスムーズに演奏が展開していくところに、このグループの凄さを感じます。かなりリハーサルしたり、ライブでの演奏を重ねているんでしょうね。生でライブを見てみたいです。

話がちょっと横道にそれますが、1枚目と2枚目のラストの曲で、サンチェスが小型木魚?(笑)を左足で演奏していますが、これ今結構流行っていますね。私が最初に見たのは2年前、神保彰の「ドラムからくり」ツアーでした。YouTubeの映像では「シンクロナイズドDNA(神保彰、則竹裕之のツイン・ドラム・ユニット)」で、則竹も使っていました。皆さん見事に木魚でリズムを刻んでくれます。

録音も素晴らしいです。ライブ録音と思えないほど楽器間の音のかぶりがなくクリアに捉えられています。音像定位は向かって左がセノーン、右がダヴィッド、中央に太く鳴るベース、その背後にドラムが左右目いっぱい広く定位しています。ドラムが背後に広がっているので、前述のようにドラムが演奏を包み込むように感じられるのかもしれませんね。

面白いのは、演奏中は会場の雰囲気は希薄で、演奏が終わった後の拍手で会場の広さが分かる雰囲気になるところです。多分会場の音は曲のラスト辺りからミックスされているのでしょう。

これ、ちゃんとしたオーディオ装置で音量上げ気味で聴くと良いですよ。目の前で生々しく演奏が展開します。こうい時にオーディオの良さを感じますね。自分のためにだけ演奏してくれるわけですから(笑)。

それも、こんなメンバーのライブはNYへ行かなきゃ聴けないわけですし、ライブハウスでは隅の席になるかもしれないし、横の人がノイズを発するかもしれないし、暑かったり寒かったりするかもしれない(笑)。そこへいくと自宅オーディオでは安心して演奏に浸れます。とは言っても、やっぱり生ライブの迫力には絶対勝てませんけどね。

と言うわけで、このアルバム、現代バップ・ファンは必聴です。

アルバム名:『LIVE IN NEW YORK AT JAZZ STANDARD』
メンバー:
Antonio Sanchez(ds)
Scott Colley(b)
Miguel Zenon(as)
David Sanchez(ts)

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コメント

CD2枚組のライヴで、Blogに書きたい内容がけっこういっぱいあったのですが、ホームページでも掲載する関係上、自分のBlogの本文に字数制限があって、このアルバムのこと、書く方は不完全燃焼で終わってしまいました(笑)。

でも、周りの方たちが、思うことも書いてくれているので、うん、うん、そうだよね、なんて思いながら、何度も聴いています。今年のアルバムの中では個人的にかなりいい方だったです。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2010年10月 1日 (金) 17時45分

910さん

TBありがとうございます。
私からもTB&コメントさせていただきます。

このアルバムは私もかなりお気に入りです。

>今年のアルバムの中では個人的にかなりいい方だったです。

同感です。

投稿: いっき | 2010年10月 1日 (金) 20時05分

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