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久々に寺島靖国さんの「PCMジャズ喫茶」の話題

衛星デジタルラジオ 「ミュージックバード」 の番組「PCMジャズ喫茶」、一時期細かくレポートしていましたが、最近はあまり興味が湧かなくなってしまいました。番組を何度も聴くうちに寺島さんや岩浪さんの考え方がわかってしまい、毎度同じことを言っているので、ツッコミを入れる気にならないのです。出会った頃は合うのが楽しくても、何度も合っているうちに興味が湧かなくなってしまうことってありますよね(笑)。

前回の番組ゲストは、EMIミュージックジャパンのジャズ・アンド・クラシック制作ディレクター花村路津子さんでした。ジャズに興味はあるけれどまだまだジャズ初心者という感じでした。話題はコンピレーション・アルバムや自分のレーベルのノラ・ジョーンズのことで、女性ジャズ・ファンのステレオ・タイプと感じました。日本のメジャー・ジャズ・レーベルの制作現場は、私なんかのようにジャズ・ファンを長くやってきた人と乖離していることがよくわかった次第。こういうことに色々言っても仕方がないので番組を聴いておしまい。

さて、今回のゲストは、「新宿DUG」オーナー&ジャズ・フォトグラファー中平穂積さんだったので、面白い話が聞けるんだろうと楽しみでした。

1961年ジャズ喫茶「DIG」を始めるにあたり、従来のジャズ喫茶の「コーヒーがまずい」「音量が大きいだけで音が悪い」「リクエストしても目当てのレコードが意外とない。」を改めようと思ったそうです。当時通っていたジャズ喫茶として「木馬」「ポニー」「ヨット」「ママ」などををあげていました。

レコードは新宿のレコード屋「マルミ」で買ったそうですが、店主の鈴木さんが商売上手だったなんて話もありました。コーヒー1杯が¥60、¥70の時代に輸入盤は¥4,000だったとか。今の感覚では数万円です。それでも高価な輸入盤が買えるくらい当時のジャズ喫茶は繁盛していたそうです。当時を知る人の口からはよく「マルミ」の話を聞きます。(以降ピンク字は私のコメントです。)

ある時期、ライブも始めたそうですが、「これからライブをやります。」と言うと、来店したお客さんの中には「じゃあまた今度。」という人が少なからずいたようで、ライブのお客さんとジャズ喫茶でレコードを聴くお客さんは客層が違うという話がありました。これは今でもあまり変わらないことですよね。

寺島さんから中平さんへのリクエスト。「これを聴いてジャズ・ファンになった。」という1枚は『ジェリー・マリガン・カルテット』でした。中平さんは和歌山のど田舎で生まれたそうで、中学生の頃はNHK第2(AMラジオ放送)の「リクエストアアワー」という番組をよく聴いていたそう。高校生になり「グレンミラー物語」を見てジャズを意識し、東京に出てきた時に出会ったのがジェリー・マリガンやチェット・ベイカー。

中平さんは昭和11年生まれなので、高校卒業後に東京へ出てきたとすると昭和30年(1955年)ですね。当時イースト・コーストのブルーノート、プレステッシ、ロリンズ、マイルスなどはまだ日本に入ってきていなくて、ウエスト・コーストの方が先に入ってきたとのことでした。そんな関係でジェリー・マリガンをかけることに、曲は《ララバイ・オブ・ザ・リーブス》。寺島さんもこの選曲には大満足のようでした。寺島さんによるとこのレコードのチェット・ベイカーのソロを聴いて「ジャズのソロは麗しい。」と思ったそうで、またこれを超えるようなものはめったにないことをその後知ったそうです。

私がマイルスの『パンゲア』を聴いてジャズは凄くスリリングな音楽だと思い、またそれを超えるものはめったにないことをその後知ったのと同じですね。対象は全く異なりますが、ジャズを聴き始めた頃の体験は鮮烈な印象を残すんでしょう。

フリー・ジャズの話へ。まずは植草甚一さんとの出会いから。ある時「ポニー」へ行ったら植草さんの隣の席しか空いてなくて(多分皆植草さんと知って隣に座りにくかったのだろうという話でした)、しょうがないので中平さんは植草さんの隣に座ったとのこと。その時リクエストしたのがセシル・テイラーで、植草さんから「これをリクエストしたのは君か?」と聞かれ、そこから交流が始まったんだとか。

植草さんからはジャズ喫茶を始めることをさんざん反対されたそうですが、中平さんはそれを押し切って始めたそうです。ある時期からお店で前衛ジャズをかけるようになり、最初は嫌がる客が2/3いたので、火曜日だけを前衛ジャズ専門にかける日としたそうです。ところが、半年もしたら火曜日が一番混む日になったとか。

その頃「スイングジャーナル」誌上でフリージャズの対談があり、油井さん、岩浪さん、中平さん、野口さんが参加。ジャズ喫茶店主の中平さんと野口さんが参加していたので、寺島さんはジャズ喫茶店主としてそれを羨ましく見ていたとか。フリー・ジャズ擁護の油井さんと中平さん、フリー・ジャズ反対の岩浪さんと野口さんという構図だったそうで、寺島さんは岩浪さんと野口さんを応援したそうです(笑)。

寺島さんから「セシル・テイラーはどこが面白いのか?」という質問があり、まず中平さんはフリー・ジャズはでたらめにやっているわけではないという話をしていました。山下洋輔さんから聞いた話とのことでしたが、セシル・テイラーと山下洋輔がデュオのライブをするというので、セシルの家に行ったら、当時セシルは具合が悪かったにもかかわらず、家にあった2台のピアノで山下さんと一緒に6時間も練習したとのことです。これには山下さんも驚いたらしいです。

ライブの当日も夜7時開演なのに、セシルは12時に会場へ来て、その後5時間くらいリハーサルをしたらしいです。リハーサルを重ねて段取りは確認するということですね。中平さんは「バド・パウエルと同じ。」とも言っていましたが、残念ながらその意味するところは番組できちんと語られないまま雰囲気で進んでしまいました。

かけたのは中平さんの愛聴盤『ザ・ワールド・オブ・セシル・テイラー』から《エアー》。聴き終わった寺島さんは「50年ぶりくらいに聴いたけど、思ったほど過激でないね。」とのことでした。岩浪さんは「キラキラしているけど、カワイイところもある。」なんて言っていました。寺島さんは「今、耳は慣れちゃったが当時は凄かった。嫌悪感はない。」「当時『クール・ストラッティン』とかに聴き飽きてこっちへ行ったという側面もあるよね。」と言っていました。中平さんも確かにそういう面はある。」と言っていました。

たくさんジャズを聴いてからこういうのを聴くと意外と聴き易いものです。名前でジャズを聴くのも良くないけれど、名前でジャズを聴かないのもまた良くないと思う私。

中平さんはセロニアス・モンクも好きだそうです。ヴォーグ盤『ソロ・モンク』から聴き始めたとのこと。寺島さんはいつものモンク批判。ミュージシャンはモンクをやると博が付くと思ってやりがちだが、何々集の中ではモンク集が一番売れないらしといういつもの話を展開していました。

続いて中平さんのお店で録音したレコードの話へ。最初に録音したのは「ジャーマン・オール・スターズ(アルバート・マンゲルスドルフなど)」だったとか。その後バリー・ハリスとかを録音したらしいです。中平さんはバリー・ハリスも好きで、『アット・ザ・ジャズ・ワークショップ』が最高で、ピアノ・トリオ・アルバムの3本指に入ると言っていました。寺島さんは10本指だとか。中平さんはベースのサム・ジョーンズが特に素晴らしいと言っていました。私もバリー・ハリスは好きで、このアルバムも結構よく聴いていた時期があります。サム・ジョーンズのピアノがズンズンと気持ち良いです。

寺島さんから中平さんに捧げるとのことでかけたのは『イン・スペイン』から《スウィート・ピー》。寺島レコード・インポートの第2弾です。日本のものが売れないから輸入盤に寺島さんが解説を書いて売ることになったんだそうです。寺島さん自身から宣伝も兼ねてとの言葉がありました(笑)。これはいいアルバムですよね。私も認めます。

曲が終わると、「若手の速弾きの連中に聴かせたい。」と中平さん、寺島さん、岩浪さんで意気投合していました(笑)。中平さんは「最近の人はライブを観ても格闘技みたい。音楽だからね~。」なんて言っていました。その意見にも一理あります。

そこからニューヨークに良いドラマーがいなくて困るという話へ。秋吉敏子さんがNYでトリオのライブをやろうとしたら、お店からドラムは連れてこなくていいと言われたとか。ドラムにガンガンやられるとお客さんが話もできないということらしいです。中平さんは周りに合わせ静かに叩けるドラマーがいないのは残念と言っていました。

バリー・ハリスはアドリブ・ソロを教える時に歌って教えるという話もありました。歌ったフレーズをピアノで弾けというそうです。つまり歌えるようなソロをとっているバリー・ハリスだからいいという話です。

そしていつもの「最近のジャズ・ファンはピアノ・トリオしか買わないけれどどうしてかわかる?」という質問。「テナー、アルト、トランペットにいい人がいなくて管ものが売れないからですよ。」という耳タコ話(笑)。寺島さん好みの人がいないだけなんですけどね。それを一般ジャズ・ファンの総意と言われても困ります(笑)。

そしてこれまたいつもの「ピアノ・トリオはピアノ、ベース、ドラムの一体感で聴くから、ピアニストの個性はあまり気にならない。」という話。岩浪さんは「寺島さんはサウンドで聴いているんでしょ。オーディオの音も含めて。」と言っていました。そこでまたいつもの「ジャズは良いオーディオで聴いてほしい。せめて100万出してほしい。ミュージシャンはオーディオに拘らないからダメ。」という寺島論。今時オーディオに100万もかける人が一体何人いるとお考えなのでしょう?

岩浪さんおすすめの選曲。片倉真由子『FAITH』から《Mrs.Parker Of K.C.》。ジャッキー・バイアード作曲。片倉はバークリーだけじゃなくて、ジュリアードも卒業した才女です。寺島さんに言わせるとジュリアードを卒業したことがもうダメなんですよ(笑)。理屈ジャズになっちゃうというわけ。以前番組でかけた時はこういうお堅いジャズはだめだと言っていたはずです。

曲後、中平さんは「素晴らしい。無駄な音を弾いていない。バップ・アクセントが素晴らしい。」と誉めていました。寺島さんも「ジャズがちゃんとしたフレーズ。」と意見を合わせていました。その後「もうちょっと肩の力が抜けたら良くなるんだけどね。」と軽く文句も言っていましたが、ここは中平さんをたててあまり反論しなかったようです(笑)。

お次は管ものでトロンボーン。『片岡雄三カルテット(第2作)』から《アイム・ゲッティング・センチメンタル・オーバー・ユー》。寺島さんはいつものトロンボーン論を展開。テクニックで速いフレーズを吹くJ.J.ジョンソンではなく、アービー・グリーンのように音色でゆたり聴かせるのがトロンボーンの良さだと言っておりました。それもまた良し。こんな具合で耳タコ話ばかりので、この番組も飽きてしまいました。

そこから最近のビッグ・バンド話。アレンジに凝ったりしすぎで、大らかなアンサンブルを聴かせていないとご不満でした。これも何度か聞かされています。守屋純子さんがゲストに来た時には特に凄かったです。守屋さんも負けじと応戦していたのが面白かったです。

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中平さんから「ジャズ喫茶の良さは皆で聴いて色々言い合えるところ。」という話がありました。それはライブも同じで皆で観に行って色々言い合うのが面白いとのことでした。こういう考え方なので、中平さんのところに色々な方が集まるのでしょうね。

寺島さんは「メグをサロン風ジャズ喫茶にしたけれど、そうなると逆にお客さんは喋らないものだから、もっと喋るようにお客さんに促す。」と言っていました。お客さんは一人できているので喋れないと言ったりするそうですよ。寺島さんは「難しいよね。」と言っていました。

ラストは中平さんが大好きなジャッキー・マクリーン。『ジャッキーズ・バッグ』から《ブルース・イン》。ソニー・クラークのピアノがいいという話もありました。曲が終わったあと寺島さんは「モダンジャズを感じる。」と言っていました。かける前はもう少し後期のフリーがかったものと勘違いしていたらしく、そのような発言になりました。ジャズ喫茶のオヤジはなんで皆マクリーンが好きなんでしょうね?マクリーンが好きだと言えれば、あなたもれっきとしたジャズ・ファン(笑)?

私が面白いと思った部分だけをピックアップして書きました。
中平さんはジャズが好きな飾らない人で、私は好感が持てました。

本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバード
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。

PCM放送は来年8月で終了なので、もうひとつのサービス「スペースディーヴァ」
のほうが良いかもしれません。

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コメント

だははは。

>ピアノ・トリオはピアノ、ベース、ドラムの一体感で聴くから、ピアニストの個性はあまり気にならない。

>ミュージシャンはモンクをやると博が付くと思ってやりがちだが、何々集の中ではモンク集が一番売れない

いずれも、私がゲスト出演をしたときにも言われたお言葉。
相変わらず、です(笑)。

投稿: | 2010年10月27日 (水) 00時13分

雲さん

こんばんは。

そうでしたそうでした。
雲さんがゲストに出た時はその発言に”ムカッ”ときて、色々ツッコミを入れましたが、その後何度も同じセリフを聞いたので、さすがにもう今は何も言う気は起きません。
まっ、ブレないところを良しとしましょう(笑)。

投稿: いっき | 2010年10月27日 (水) 01時22分

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