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独特の美意識に貫かれたアルバム

今日は現代ニューヨーク・ジャズです。去年発売されましたが買いそびれていたものをいつものディスクユニオン通販限定特価で買いました。私が買おうと思っていたものがたくさん特価で販売されるのってどうなんでしょうね~。売れないアルバムばかり聴いているってことではないと思うのですが・・・(笑)。

P112 ナシート・ウェイツ『イクウォリティ』(2008年rec. fresh sound new talent)です。メンバーは、ローガン・リチャードソン(as)、ジェイソン・モラン(p)、タラス・マティーン(b)、ナシート・ウェイツ(ds)です。リチャードソンはグレッグ・オズビーが注目するアルト奏者ということで、オズビーのレーベル:インナー・サークル・ミュージックからリーダー・アルバムを出しています。ピアノのモランは自身のトリオの他、チャールス・ロイドやポール・モチアンとやったりして活躍の幅を広げています。

かれらをまとめ上げるのがドラマーのウェイツ。この人もNYの色々な人達のグルーヴでドラムを叩いています。今時のドラマーなので変拍子を自在に操りバンドをグルーヴさせます。決してパワーだけで押すのではなく、しなやかかつ繊細に、けれどパワーを失わないドラムが魅力です。

ウェイツの曲を2曲、リチャードソンの曲を1曲、モランの曲を2曲、マティーンの曲を1曲、他にジャズマン・オリジナルを3曲収録。アンドリュー・ヒル、ジャッキー・バイアード、スタンリー・カウエルなんて名前が並んでいます。ひと癖あるピアニストばかりですよね。独特の美意識を持った人達。メンバー・オリジナルとジャズマン・オリジナルが違和感なく並んでいます。

アルバム全体のサウンドは正に独特の美意識に溢れています。スイートではないビターでクールな”美”。そこにダークネスが香辛料としてまぶされています。ダークネスの主はモラン。モラン独特のハーモニー感がダークな感じを醸し出しているのです。でも意外と爽やかな面も感じられます。爽やかさの主はリチャードソン。アルトの音やフレーズが爽やかなのです。

ダークネスと爽やかさは同居できない感じがしますが、同居しているから面白いです。私にはそれほど内省的な響きは感じられないのですが、この手のサウンドに慣れていない方には内省的に聴こえるかもしれません。そして、リチャードソンの曲とウェイツの曲が優しさを持っているのが私には特に魅力的に感じられます。

この手のサウンドで冷たくされると聴き進むうちにだんだん心が離れて行ってしまうものですが、時々優しさを見せられると”おっ”となりますよね。冷たい彼や彼女が時々見せる優しさに惹かれたりするでしょ。それと同じことです(笑)。モランの2曲は一筋縄ではいかないひと癖ふた癖ある”らしい”曲。捻じれています。

バイアードの曲とマティーンの曲は元気が良いほうですが、他は落ち着いたクールビューティー、ダークで爽やかなサウンド。現代新主流派と言っていいかもしれません。この人達ですから決して軽薄にならないところも魅力。

アルバム名:『EQUALITY』
メンバー:
LOGAN RICHARDSON(as)
JASON MORAN(p)
ARUS MATEEN(b)
NASHEET WAITS(ds)

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