大西順子さんの新譜、なかなか良いと思いました。
大西順子の新譜は前から気になっていたのですが、日本盤に比べて輸入盤はかなり安いようだったので、輸入盤が買えるようになるまで待っていたら購入が遅くなってしまいました。HMVのマルチバイ特価で買ったら¥1,000以上安かったです(笑)。
大西順子の『バロック』(2010年rec. UNIVERSAL CLASICS)。メンバーは、大西順子(p)、ニコラス・ペイトン(tp)、ジェームス・カーター(ts,as,b-cl,flt)、ワイクリフ・ゴードン(tb)、レジナルド・ビール(b)、ロドニー・ウィテカー(b)4曲、ハーリン・ライリー(ds)ローランド・ゲレロ(cga)です。ニューヨークの中堅現代バッパー集合といった感じのメンバー。今回から所属レーベルが変更になり心機一転での本作ということになります。
この手のメンバーがやる現代バップとしてはなかなか良い出来だと思いました。大西のピアノの個性はなかなか掴めないというのが正直なところですが、大西”らしさ”は打ち出されていると思います。何となくふっ切れたものを感じます。ジャズ界の第一線への完全復帰をしっかりアピールできたのではないでしょうか?
ジャケット写真やタイトルについても話題になりますが、私から特に加えるべきことはありません。前半は大西のオリジナル曲、後半はジャズマン・オリジナルとスタンダード曲という構成で、各パートのラストにピアノ・ソロがあります。
1曲目《トゥッテイ》。コンガを加えたアフロキューバン的なリスムに乗って”ガラガラ”とピアノを弾き始める冒頭を聴いただけで、大西の意気込みは伝わってきました。カーターのテナー、ペイトンのトランペット、ゴードンのトロンボーン、各々のソロは快調。私的にはゴードンのソロが特に良かったです。大西はコンピング(伴奏)でもしっかり存在感をアピール。ピアノ・ソロもなかなかガッツ入ってます(笑)、1曲目にこういうクラブ・ジャズ受けも考慮したと思われるキャッチーな曲を持ってくる辺りにしたたかさを感じますね。
2曲目《ザ・マザーズ(ホエア・ジョニー・イズ)》は大西らしい曲だと思います。私は大西のアルバムをたくさん聴いたわけではありませんが、このメロディーには大西節を感じます。ゴードンのトロンボーン・ソロはかなり気合が入った良い演奏。続くピアノ・ソロもしっかり立ち位置は示していると思います。私はこの路線で突き進めばいいんじゃないかと思うのですが・・・。
3曲目《ザ・スリーペニー・オペラ》。20分弱の大作です。ツイン・ベースによる長いイントロから何やら思わせぶり(笑)。しばらく続いた後でピアノが入ってテーマーが始まります。このテーマのスロー部分は、ミンガスの《オレンジ・ワス・ザ・カラー・オブ・ハー・ドレス・・・》に似た雰囲気で、3管の自由な合奏はミンガス色濃厚。カーターの豪快なバスクラ・ソロ、ゴードンの大らかで力強いトローンボーン・ソロと続き、その後はピアノを主体に緩急つける展開。途中でカーターが何やら叫ぶ辺りもミンガス・バンドを意識してのことでしょう。ピアノのみで演奏するソロ部は、ジャッキー・バイアードの楽譜を元にしていて、ストライド・ピアノと格調高いクラシック調を交える演奏。このソロ、曲後半のアクセントとして面白いと思いました。冒頭以外ツイン・ベースの効果はあまりなし。ミンガス・ラブな曲ですが、色々工夫が凝らされていてなかなか良い出来だと思いました。
4曲目《スター・ダスト》。ピアノ・ソロはなかなか聴かせてくれます。ちゃんと大人の雰囲気を感じさせる辺りに成長を感じます。やっぱりジャズが好きなんだと思いますよ。何かを狙っているわけではないと思います。
私はここまでの前半4曲の流れが気に入っています。
5曲目ミンガスの《メディテーションズ・フォー・ア・ワイアー・カッタース》。テーマからモロにミンガス・バンドしてますね(笑)。トランペット・ソロからピアノ・ソロへ、こういうソロを弾かれると”個性はどこに?”ということになってしまうところがちょっと辛いところなのかも?しっかりしたソロではあるんですけどね~。
6曲目《フラミンゴ》。これもかなりミンガス・バンドを意識したバラード演奏。テーマ部のアンサンブル(短いトロンボーン、トランペット・ソロ含む)とピアノ・ソロを聴かせる曲になっています。テーマーのメロディーを美しく発展させていくピアノ・ソロの展開はなかなか良いと思います。
7曲目《ザ・ストリート・ビート~52丁目のテーマ》はストレートなバップ演奏。古いスタイルのサウンドです。ストレートなトランペット・ソロ、奔放で豪快なテナー・ソロ、冒頭ミュートを上手く使った後豪快に吹き切るトローンボーン・ソロと続き、ピアノ・ソロへ。左手の強い低音を基調としつつ剛腕を聴かせるピアノ・ソロはなかなか痛快。3管&ピアノが短いソロを回した後、3管入り乱れての自由な咆哮は楽しいです。この曲ではツイン・ベース効果も少し感じられます。
ラスト《メモリーズ・オブ・ユー》。これもピアノ・ソロです。過去のジャズ・ピアノからクラシック的なものまでいろんな要素が混じり合っているのが、この人のピアノ・スタイルなんでしょうね。もう一皮剥ければ何か見えてくるのかもしれません。と言いましたが、なかなか聴かせてくれていますよ。
個々の曲について詳しく書いてみると、頭のクラブ・ジャズ系バップ、続く大西節(ミンガスかな~?)、”ミンガス・バンド愛”な3曲、ラストの古いスタイルのバップ、それにピアノ・ソロ2曲と盛りだくさんであり、色々楽しめる半面、一貫性に欠けるきらいが無きにしもあらず。それでも大西順子バンドとしてはメンバーの一体感を感じますし、大西のリーダー・シップも発揮されていると思います。
総括すれば、現代バップとしてはなかなか良い出来であろうと思います。
大西順子は完全復帰し、いよいよこれからなのだろうと感じます。
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コメント
いろいろと盛りだくさんですけど、それを効果的に利用しているようなアルバムでした。
今なら彼女しかできないアルバム作りだと思います。Com-postのクロスレビューでは賛否両論あるようですけど、曲によっては誰風か、というのもありますが、私は聴いてぶっ飛んだことは確かです(笑)。重いですけれども何度も聴きました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年9月21日 (火) 08時07分
いっきさま、、
連休は、ゆっくりお過ごしになったようですね。
わたしは、正直に言うと、大西さまのピアノが好みか?って、言うと、、、ちょっと、違うのですが、、
これは、もの凄い吸引力だあると思ったし、かなりわかりやすいのに、安易でもない、って、思って、すげぇ、って、思いました。
姐御肌、、すごいよねぇ。
だから、ホールコンサート、、行きたいです。
トラバ、ありがと。届きましたか?
投稿: すずっく | 2010年9月21日 (火) 18時33分
910さん
>いろいろと盛りだくさんですけど、それを効果的に利用しているようなアルバムでした。
私は基本的には楽しく聴きました。
>今なら彼女しかできないアルバム作りだと思います。
大西順子らしさは出ていると、私も思います。
>Com-postのクロスレビューでは賛否両論あるようですけど、曲によっては誰風か、というのもありますが
元ネタが分かっちゃう場合、それをどう受け取るか悩ましいところではありますね。
>重いですけれども何度も聴きました。
私はその重さが良いと思いました。こういうバップ演奏で軽くやられると、それこそ凡作になってしまうと思います。
TBありがとうございます。
投稿: いっき | 2010年9月21日 (火) 19時23分
すずっくさま
>連休は、ゆっくりお過ごしになったようですね。
はい、のんびりでした。
>わたしは、正直に言うと、大西さまのピアノが好みか?って、言うと、、、ちょっと、違うのですが、、
好みから外れるのは、堅くてガンガン弾くところですか?そういうのも分かります。
>これは、もの凄い吸引力だあると思ったし
確かにそう思います。
>かなりわかりやすいのに、安易でもない、って、思って、すげぇ、って、思いました。
「かなりわかりやすいのに、安易でもない」それがこのアルバムの重要なポイントなのだと思います。
ブログには書いていないですが、そこが良さだと感じました。
>姐御肌、、すごいよねぇ。
NYの面々を軽く従えているわけですからね。
そういうところ、結構好きです(笑)。
>だから、ホールコンサート、、行きたいです。
どんな具合にメンバーを従えているか観たいですよね。
9/30ですよね。
私は1年半前にトリオは観ましたが、凛々しさに惚れました(笑)。
トラバ届いていますよ。
ありがとうございます。
投稿: いっき | 2010年9月21日 (火) 19時44分