誰も知らないかもしれないけれど、ベースがいいのだ!
今日はまずオーディオの話から。
私が愛読している雑誌「Analog」に、オーディオ評論家の大御所菅野沖彦さんのコラムが連載されています。それを読んでいたらオーディオ界も大変な状況だといのがわかりました。若い人のオーディオ離れが進んでいると書いてあります。”オーディオを趣味にできない時代”とも書かれていました。でも、この雑誌の記事の読者はわかっているだろうからということで、ウェブマガジンにも掲載するということです。
ウェブの記事はこちら : http://www.phileweb.com/magazine/sugano/
バックナンバー : http://www.phileweb.com/magazine/sugano/archives/2010/07/14.html
1ヶ所訂正要。
「自動車の件もその時間いたわけです。」×:ウェブのミス
「自動車の件もその時聞いたわけです。」○:雑誌は正しく記載
オーディオファンの私としては納得できる内容です。「古臭い。小難しい。」とかおっしゃる方もいらっしゃるでしょうね。オーディオ文化の変化。時代とともに変化して当然だと思います。でも、失ってはいけないものもあるのではないでしょうか?新しい考え方を良しとする人、古い考え方を良しとする人、それぞれの言い分もあるでしょうけれど、私はどちらも大切にすべきで、両立は可能だと思いたいです。
さて、アルバム紹介。「日本で何人が買ったんでしょう?」シリーズ(笑)。
ジョナサン・ロビンソンの『スペシャル・ステイシス』(2006年rec. itm)です。メンバーは、ジョナサン・ロビンソン(b)、グレック・バーク(p)、イグナツ・ディーネ(as,ss)、ジャン-オラフ・ロット(g)、ジョンB.・アーノルド(ds)です。ディスクユニオンの輸入盤をチェックしているような方なら、ピアニストのバークやアルトのディーネの名前は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?私はアルトのディーネ買い。
実はいつものディスクユニオン通販特価(円高還元セール)で買った1枚です(笑)。ディスクユニオン・ジャズ館のサイトで4曲試聴できます。
1曲目《ウィズアウト・ア・ネット》の冒頭を聴いた瞬間思わずニンマリ。ベースの音が”ゴリゴリ”強靭!快感です。ドラムとベースでしばらく自由な掛け合いが続くのですが、このベース音の逞しさにはウットリです。録音もちょぴりベース強調で弦の音が良く録れています。ベースの音だけで気持ち良くなれるCDに久々遭遇。途中から現れるディーネのアルトも”グリグリ”とエグイですし、ギターもなかなか不穏にウネウネやってくれます。ピアノもアルトとギターのバックで鋭いキレをみせてくれています。この曲はモーダルでちょっとエスニックなメロディーがいい感じ。
《DERNZ》《スペシャル・ステイシス》など、ベース、ギター、ピアノ、アルトなどが音を自由に重ね合うような自由度の高い曲もあります。この手の曲ではメンバーもよく心得ていて、自由度を上手く活かしてサウンドを構築していきます。空間への音の散りばめられ加減がいい塩梅。その真中にはいつも”ゴリゴリ”ベースがふてぶてしく居座っているのが◎。《バット・ゼン・アゲイン》のような美しいバラードもあります。アルトを中心にギターとピアノが自由に絡む展開が妖しくも美しい。
《ニュース》はモーダルでやっぱりちょっとエスニックな雰囲気が漂うメロディー。この曲は比較的オーソドックスにソロを回します。アルトのソロ、ピアノのソロともに硬派でありつつ美しさが薫るもので、私的にはビター/スイートさがちょうどいい塩梅。ベース・ソロが小細工はかまさずに”ゴリゴリ”歌わせて気持ち良いことこの上なし。《ボトムレス・ボックス》はちょっとフュージョン風でありつつ捻りも効いた曲で、ディーネのソプラノ・サックスが爽やかに気持ち良く歌います。ピアノも美しくて力強いです。
全曲ロビンソンが作曲。どの曲も作曲とアドリブが有機的に絡み合っている展開が多いです。曲によってアドリブをとる人も変わります。硬派ジャズですがしなやかさを兼ね備えていて解放感があるのが良いと思います。
私的にはかなりオススメ度が高いのですが・・・、とにかくマイナー盤(涙)。
良いオーディオで音量を上げて聴けばベース音の快感はかなりのもの!
アルバム名:『Spatial Stasis』
メンバー:
JONATHAN ROBINSON(b)
GREG BURK(p),
IGNAZ DINNE(as,ss)
JAN-OLAF RODT(g)
JOHN B.ARNOLD(ds)
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コメント
いっきさん、こんばんは。
御大菅野沖彦さんが、嘆いておられますね。
分かります。分かります・・・慰めようがないほどに!(泣)。
きっとジャズよりも厳しいでしょうね、オーディオの世界。
喜びや嬉しさの触角が変わってしまったのだから仕方がないのですが、
車、オーディオ、ジャズは高度成長期に必要なものだったのでは?
一生懸命働けば手に入るもののシンボルだったのですよ。
現に中国が、同じ現象を起こしていると思っています。
「モノを手に入れても幸せにはなれない」と気づいたら、
手に入れる努力はしなくなるものです。
今は、その過度気なのだと思います。またきっと同じような状況は訪れるでしょうが、菅野さんは見ることはないでしょう。
ソニーがトランジスタラジオを流行らせた1950年代の状況と似ているような気がします。
iPodに我慢ができなくなる若者が出てくるのは近いです。
そうやって歴史は繰り返されて行くのではないでしょうか?
オイラの問題は、「今をどうするか?」だけなんです。
投稿: tommy | 2010年9月26日 (日) 00時31分
tommyさん
こんばんは。
「モノを手に入れても幸せにはなれない」というのは、全てがそうではないと思います。
モノを手に入れておしまいだからダメなんですよ。
菅野さんも言ってますが、オーディオは使いこなしてはじめてオーディオ趣味になるんですよ。
私、オーディオは使いこなしにかなり気を配っていますし、結局は良い音で音楽を楽しむことに使うわけです。
私、クルマも移動手段に使うだけじゃなくて、走りを磨くために、夜な夜な峠を攻めに行きました(笑)。乗りこなしてクルマの挙動を感じ取って初めてクルマが趣味ということになるのです。
ジャズだって同じことです。ジャズを聴き流す(BGM)のではなく、味わう(観賞)するから趣味になるわけです。
趣味とはそういうものです。「喜びや嬉しさの触角が変わってしまった」というより、”趣味”とは何たるかすらわからなくなってしまったことに嘆いているのです。
趣味という文化的な行動がなくなりつつあることを、時代の流れだからしょうがない、では済まされないと私は思います。
私の問題も「今をどうするか?」ですが、それは時代に乗るということではありません。トレンドやブームに流されて右往左往するのは、私の”趣味”ではありません(笑)。
投稿: いっき | 2010年9月26日 (日) 00時57分
オイラは、趣味だけでは済まないからなぁ〜(笑)。
起こっている現実は仕事に直結しているので、
それをどう消化するかに迫られるんですよ。
自分の趣味だけでは済まなくなる部分を抱えている。
どこかで、割り切らないとならないんですよ。
純粋に趣味でいられるいっきさんが羨ましい(笑)。
投稿: tommy | 2010年9月26日 (日) 01時23分
tommyさん
こんにちは。
>起こっている現実は仕事に直結しているので、
それをどう消化するかに迫られるんですよ。
なるほど、仕事に直結しているとなかなか大変ですよね。
>純粋に趣味でいられるいっきさんが羨ましい(笑)。
はいっ、純粋な趣味は気楽で楽しいです(笑)。
投稿: いっき | 2010年9月26日 (日) 12時25分