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このアルバムには言いたいことがある。

アルバムとの出会いには色々な物語があります。

最近 tommy さんのブログにこのアルバムが掲載されていました。
このアルバムを見たら書かねばならないことがあります。

P84 ジョー・ザビヌル『マネー・インザ・ポケット』(1966年、Atlantic)。メンバーは、ジョー・ザブヌル(p)、ブルー・ミッチェル(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、クリフォード・ジョーダン(ts)、ペッパー・アダムス(bs)、サム・ジョーンズ(b)、ボブ・クランショウ(b)、ルイス・ヘイズ(ds)、ロイ・マッカーディ(ds)です。メンバーからは黒さとB級感が匂ってきます(笑)。

全員一緒にやっているわけではなく、ザビヌル、ミッチェル、ジョーヘン、アダムス、ジョーンズ、ヘイズというセクステットで4曲、ザビヌル、ミッチェル、ジョーダン、クランショウ、マッカーディというクインテットで1曲、ザビヌル、ジョーンズ、ヘイズというトリオで2曲、ザビヌルのピアノ・ソロで1曲。全8曲が収録されています。

私が持っているのはステレオのオリジナル盤。上京した時に時々寄るジャズ喫茶 「マイルストーン」 で買いました。ここは店内で古本を売っているし、レコードも200枚くらい売っているんですよ。本は店内で自由に読むことができて、気に入れば買うことができます。売っているレコードもマスターにお願いすれば聴かせてくれます。

さて、このアルバムをなぜ買ったかと言えば、《ミッドナイト・ムード》という曲が入っていたからです。この曲、後期ビル・エバンスが好んで弾いていた曲で、私が初めて買ったエバンスのレコード『シンス・ウィ・メット』( マイナー盤。次に買ったのが有名な『ワルツ・フォー・デビー』 )に収録されていて、一番気に入った曲なのです。で、作曲者をみたらザビヌルだったので、当時ウェザー・リポートが好きだった私の中にザビヌルの名曲として深く刻み込まれたのでした。タイトル通り”真夜中の雰囲気”をたたえた哀愁のワルツ曲です。

数年前にジャズ喫茶「マイルストーン」でこのアルバムをみつけた時、感激したことは言うまでもなく、オリジナルの演奏がどんなものなのかどうしても聴いてみたくなって買いました。

《ミッドナイト・ムード》、このアルバムではセクステットで演奏しています。ミッチェルのトランペットがテーマを吹いていますが、”セツネ~”です。ジョーヘン、ミッチェル、アダムスとソロを回します。それぞれがいい味を出しています。この3管渋すぎますよね(笑)。ザビヌルのピアノ・ソロも”せつね~”です。ベースがtommyさんの好きなサム・ジョーンズ。B級グルメの味(笑)。この曲をエバンスが演奏すると格調が上がるんですよ。

A面1曲目のザビヌル作タイトル曲はダサいです(笑)。この曲だけがジャズ・ロック。頭にこの曲を持ってくる辺りが当時の売れ線なんでしょうね。ミッチェル&ジョーダンのクインテット演奏はこの1曲だけです。たぶん8ビートということでベースにボブ・クランショウを起用。このメンバーのB級度は際立っていますよ(笑)。キャノンボール・アダレイ・グループで鍛えたザビヌルのファンキーなピアノが聴けます。

ピアノ・ソロの《マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ》を聴くと、当時のザビヌルがオーソドックスなジャズピアニストであったことがよくわかります。メロディーの歌わせ方は素直でありつつちょっぴりドラマチックな展開も見せるところがいいと思います。

B面1曲目《サム・モア・オブ・ダット》はサム・ジョーンズの小粋なワルツ曲で、結構キャッチーないい曲だと思います。私はA面1曲目のダサいザビヌルの曲よりはこの曲のほうが好きですね。程よい粘りと黒さを見せるザビヌルのピアノがいいです。サム・ジョーンスの曲はもう1曲《デル・サッサー》もあります。これがなかなかいい曲で、私は好きな曲です。サム・ジョーンズはなかなか作曲センスがあります。

ジョー・ヘンダーソンの《イフ》もやっているし、結局ザビヌルのオリジナルは3曲だけです。前述のタイトル曲、《ミッドナイト・ムード》ともう1曲が《リヴァーベッド》。この曲は可もなし不可もなしといった感じです。ザビヌルって結構曲の当たり外れがあると思います。

ピアノ・トリオで2曲やっていますが、《シャドウズ・ワルツ》からは何となくエバンス的な香りがします。やっぱりザビヌルはエバンスからも影響を受けていたんですね。テンションはエバンスほど高くなく、代わりにエンターテインメント性が加わっているのがザビヌル的。もう1曲のトリオ演奏は前述の《デル・サッサー》。アップ・テンポでスインギーに演奏しています。突出した特徴とかはないですが楽しい演奏。

まあ色々な演奏(ザビヌルのピアノ自体も)が混在していて、とっちらかり気味のこのアルバムですが、それでもB級アルバムとして”萌えポイント”は多々あると思います(笑)。

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コメント

いっきさん、こんばんは。

なぜこんなアルバムになったのか意味不明ですよね。
1曲目のダサダサジャズロックはAtlanticだからあり(笑)。やはりロック系のレーベルです。

コンピレーションアルバムのような作りですね。
全然まとまりがないけど、気分のいいアルバムなんだよなぁ〜。

こんなB級は楽しい。

投稿: tommy | 2010年9月30日 (木) 18時45分

tommyさん

こんばんは。

>なぜこんなアルバムになったのか意味不明ですよね。
>1曲目のダサダサジャズロックはAtlanticだからあり(笑)。やはりロック系のレーベルです。

アトランティック・レーベルらしいいい加減さだと思います(笑)。

>全然まとまりがないけど、気分のいいアルバムなんだよなぁ〜。
>こんなB級は楽しい。

はい同感です。

投稿: いっき | 2010年9月30日 (木) 19時58分

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