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突然ですが『ブラック・マーケット』を斬る(笑)?

最近、ジャズtommy 友 さんがウェザー・リポート集中聴き&研究をしています。
私は昔さんざん聴いたので今更ウェザーでもないのですが、
tommyさんのブログを読んでいるとなかなか面白いのです。
で、今の耳でもう一度聴いてもいいかも?なんて思ったりして、
久々に棚から引っ張り出して聴いたりしています。

私はジャズを聴き始めた頃にウェザー・リポートにかなり惚れていたんですよ。
これまでブログに以下の3枚のアルバムを紹介しました。

『スウィートナイター』
『テール・スピニン(幻祭夜話)』
『8:30』

で、今日は『ブラック・マーケット』を斬ろうというわけ。
実はこれ、私にとっては好きか嫌いかよくわからないアルバムだったのです(笑)。
世間的には、タイトル曲がウェザー・リポートの顔みたいなところがあるし、
ジャコ・パストリアスが初参加ということもあって人気は高いですよね。
そしてこのアルバムからウェザー・リポートの人気がブレイクした感があります。
が、私的には中途半端な状態でした。
この辺で私の中のおとしまいを付ける必要がありそうです(笑)。

P24 『ブラック・マーケット』(1975年12月~76年1月rec. CBSソニー)。メンバーは、ザビヌル(ARP2600,el-p,p,synth)、ウェイン・ショーター(ss,ts,lyricon)、アルフォンソ・ジョンスン(el-b)、チェスター・トンプソン(ds)、アレハンドロ・ネシオスープ・アカーニャ(congas,per)、ジャコ・パストリアス(el-b)2曲、ナラダ・マイケル・ウォルデン(ds)2曲、ドン・アライアス(congas,per)2曲です。ショーターはリリコンも吹いていたんですね。ジョー・ザビヌルの表記は”ザビヌル”のみです。最早”ザビヌル”だけで通じてしまうとという強気な姿勢(笑)。ジャコは2曲のみの参加です。ジャケットの絵はなかなか良いと思います。

このアルバムが出る頃にはマイルスは休養に入ってしまうわけで、いよいよウェザー・リポートの時代になるわけです。ザビヌルがオーバーハイム・ポリフォニック・シンセサイザーという武器を手に入れ、天才ジャコをメンバーに入れた時期がマイルスの休養と重なるところが歴史の面白さですね。

ライナーノーツはいつもの岩浪さん(ウェザーのライナーノーツは『ライブ・イン・トーキョー』『アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック』『ウェザー・リポート(10年目)』『ディス・イズ・ディス』の4枚以外は全て岩浪さんが書いています)。これが出た頃、アメリカやヨーロッパでのウェザーの評価の高さに比べ、日本での評価は遅れをとっていると書かれています。その理由は2度目(1973年)の来日コンサートが過渡期で散漫だったからではないかとのこと。

ウェザーの特徴はリハーサルを重ねた上でのグループ表現であり、アドリブもあるがあくまでグループ表現の上に立ったものであると書かれています。つまりこの時期のウェザーは最早ロックバンド的なのです。そしてそれが躍進の秘訣なのではないかと思います。そのロック・バンドに不可欠な花形ギタリスト(ベース)がジャコだったのでしょう。

さて、ここでアルバムの曲解説をしましょう。私が持っているのはレコードです。

A面1曲目《ブラック・マーケット》。ザビヌル作のウェザーの十八番。これね~、私には曲が野暮ったく感じられます(笑)。それに拍車をかけるのがテンポの遅さであり、ウォルデンのダサいドラミングなのです。ザビヌルのユートピア思考を反映したアルバムの象徴的な曲なんですけどね~。でもご心配なく、この曲はその後カッコ良くリファインされます。ザビヌルはシンセやエレピを楽しそうに弾いています。ショーターの短いソプラノ・ソロは切れ味よし。

A面2曲目《キャノン・ボール》はザビヌル作。ジャコの登場です。フレッドレス・ベースによる高音が印象的。トレードマークであるハーモニクスも使っています。それは最初のほうだけで、途中からは完全なザビヌルペース。エスニックなメロディーはなかなかきれいです。ラストにジャコのベースが軽くリフレインして終了。

A面3曲目《ジブラルタル》はザビヌル作。エスニックなメロディーと躍動するリズムの組み合わせが私好みです。私は《ブラック・マーケット》よりこの曲の方が好きでした。ドラムもトンプソンに変わりシンプルではありますが良いグルーヴです。ジョンスンのベースもこのドラミングと合わさってこそ生きてくるというものです。ザビヌルのワイルドなエレピがカッコいいです。ラストへ向かっての同じメロディーの繰り返しがいいですね。この繰り返し手法による盛り上げの最たるものが《バードランド》。《ブギウギ・ワルツ》でもやっていました。ザビヌルお得意のリズミックなレパートリーがこの曲。ショーターのソプラノものびのびとやっています。

B面1曲目《優雅な人々》はショーター作。ショーターの曲は品がありますね。ザビヌルのベタな曲だけでなくてショーターの曲が入っているからウェザーの品格は保たれているのです(笑)?このちょっとミステリアスな哀愁漂う曲がザビヌルのキーボード・ワークによって映えます。ラテン・パーカッションも気持ちいいです。今の私の耳にはこの曲がとても素敵に響きます。ショーターの力強いテナーも堪らないものがありますよ。

B面2曲目《3人の道化役者》もショーター作。この曲の物悲しさと微妙な怪しさがいいな~。ザビヌルのピアノが美しい。キーボード・ワークもいい感じです。曲が短いのが残念。

B面3曲目《バーバリ海岸》はジャコ作。昔聴いた時はもっさりした曲だな~くらいにしか思っていなかったのですが・・・、今聴けばここにジャコのファンク・グルーヴが凝集されていたんですね。ベース弾き雲さんとお付き合いするうちに得た私の俄か知識によれば、この16分音符に細分化されたノリと空ピッキングを入れた独特な弾き方にこそ、ジャコのベース奏法の斬新さがあるのです。そしてこの曲は比較的ゆっくりですが、この奏法をとんでもない速弾きとスピード感でこなしてしまうのがジャコの凄さであり、カッコ良さなのだと私は思います。

B面4曲目《ヘランドヌ》はジョンスン作。ウェザーにマッチした良い曲だと思います。でもちょっと弱いかな?この曲は躍動するリズムが主役です。《ジブラルタル》にも通じるグルーヴは好きです。ここではザビヌルがキーボード・ショーを展開します。色んな音を駆使してザビヌルが弾くこと弾くこと(笑)。まるでギターのような音まで入っています(ジョンスンのベースでした)。ザビヌルは楽しそう。ショーターのテナーは最初と最後だけ(涙)。まっ。それでもショーターは強烈な存在感を示しています。

結論。《ブラック・マーケット》はダメですが、ショーターの曲は素晴らしく、私好みのリズミックな曲があり、たった2曲しか参加していないのに見事にその個性を発揮したジャコがいるということで、色々あって面白いアルバムになっているということにしましょう。この後のウェザーの方向性を決定づけたという点ではウェザー史の中では重要なアルバムです。

カッコ良くリファインされた後の《ブラック・マーケット》はこちら。

1978年、ウェザー絶頂期のライブです。このくらいテンポを速くしないとダメです。ジャコの16ビートノリとアースキンの”パタパタ”ドラミングのスピード感で、曲の野暮ったさをカバー。中盤にはショーターのテナー・ソロを入れて中だるみを解消します。それにしてもショーターの存在感は素晴らしい。ザビヌルのキーボード・ワークにも注目。これは『8:30』に入っているものとほぼ同じ演奏です。

ついでに同日ライブの《バードランド》。

ジャコとアースキンは上半身裸かよっ(笑)。注目はザビヌルのキーボード・ワーク。両手を駆使して5台のキーボードを弾き分けています。この両手バラバラ弾きにはブラッド・メルドーもビックリでしょう。

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コメント

いっきさん、こんばんは。

いや〜、面白い。
オイラ、今までウェザーって、チックやハービーのバンドよりもコマーシャルなことを排して、もう少し崇高なバンドだと思っていたのですが、"今聴ウェザー"で完全に壊れましたね。
殆どいっしょです。ただ、ザヴィヌルが不器用過ぎたことと、
マイルスの呪いから抜けるのに時間がかかった(笑)。

>私的には中途半端な状態でした。
>この辺で私の中のおとしまいを付ける必要がありそうです(笑)。

あはっ、気合い入りすぎです(笑)。

>アメリカやヨーロッパでのウェザーの評価の高さに比べ、
>日本での評価は遅れをとっていると書かれています。

これがポイントです。オイラが思うにウェザーのアルバムって、曲のコンセプトの提示なんですよ。いわばレストランのメニューのようなもので、実はアルバムではない(笑)。
まぁ、試聴、予告編みたいなもんです。
続きはライブで、本編をお楽しみくださいツー感じがするんだよね。
すごく丁寧につくってはあるけど、面白そうだけど、あくまでもダイジェスト・・・。

んで、ライブはエキサイティングだったと思います。本来がツアーバンドなんですよウェザーは。
それを聴く機会が多かった米本国やザヴィヌルの故郷のヨーロッパでは、ライブが多かったで評価も早かった。
まだまだ、シンセはライブで使うには高価過ぎたし、セッティングも安定していなかったのでは?その分、省略していて荒いけどリアルな音楽でったのでは?

なぜかそんな感じがするんだよね。

投稿: tommy | 2010年7月22日 (木) 01時17分

tommyさん

こんばんは。

>もう少し崇高なバンドだと思っていたのですが

そう思わせたところがウェザーの凄いところだと思います(笑)。

>殆どいっしょです。

でもその微妙な差が上記のような感じ方をさせたんだと思います。
実際は微妙な差でも、結果的に大きい差に感じられることってありますよね。

>いわばレストランのメニューのようなもので、実はアルバムではない(笑)。

アルバムについては色々な考え方がありますから、これもアルバムなのだと思います。
揚げ足取りな意見ご容赦。

>続きはライブで、本編をお楽しみくださいツー感じがするんだよね。

それは私も感じます。

>すごく丁寧につくってはあるけど、面白そうだけど、あくまでもダイジェスト・・・。

確かにそんな感じがします。

>んで、ライブはエキサイティングだったと思います。本来がツアーバンドなんですよウェザーは。

それもわかります。
つまりツアー重視のロック・バンドと同じことなんですよ。
小さなクラブでジャムをやっているジャズ・ミュージシャンとは発想が違ったんです。
だから世界的にヒットしたんだろうと思います。

>まだまだ、シンセはライブで使うには高価過ぎたし、セッティングも安定していなかったのでは?

ザビヌルのことだからきっとこの手の問題は克服してライブをやっていたのではないかと、私は思います。

投稿: いっき | 2010年7月22日 (木) 20時30分

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