桜座5周年記念イベントへ行ってきました。レポート編
それでは 桜座 5周年記念イベントがどんな感じだったのか?レポートです。
昨日も書きましたが、私はジャズ系のアーティストがここに来る時は出来るだけ行くようにしています。結構話題の方がやってくるのです。去年は浅川マキさんが来たのに観に行かなかったのは失敗。今年の初めに浅川さんが亡くなられたのを知り、本当に残念でした。一度はその歌に生で触れておきたかったです。話が横道にそれてしまいました。昨日は記念イベントの2日目。初日は舞踊家:田中泯 さんと俳優の小沢昭一さんの対談でした。
昨日は桜座についたのが開演15分くらい前だったので、中に入ると1階のひな壇席はほぼ満席でした。そうか今回は5周年記念イベントだし土曜なのでお客さんの入りは良かったんですね。私は2階へ行き、真ん中に設置されたビデオの横に座りました。ステージからは少々離れますが見晴らしはいいです。
舞台はこんな感じ。桜座の売りは舞台が土間ということです。冒頭、「龍馬伝」からのスペシャル・ゲストはどうしても都合がつかなかったという謝罪から。
最初に桜座プロジェクトチームリーダーの田中泯さんから挨拶がありました。進行も務めます。厳しい時もあったそうですがそれを乗り越えたので、これからはより繁栄を目指すというような内容の挨拶でした。私もここに4年通っていますが、ライブを観るだけなので状況は必ずしもよくわかりません。たぶんここを中心したコミュニティーがいろいろ展開してきているということなのだと思います
続いて田中さんの舞踊です。私はNHK大河ドラマ「龍馬伝」の吉田東洋役でしか見たことがなく、勝手に田中さんのイメージを頭の中に作っていました。でも今回の舞踊でそのイメージが覆されました。大河ドラマは今回演出過多なので(笑)、そのイメージが固着していたのです。あのなんか異様なオーラ(笑)。舞台に現れた田中さんを見てこれがあの田中さんなのか?と思いました。異様なオーラがないのです。
衣装は黒のYシャツとパンツ(ズボン)、頭には黒の人民帽子?、足には下駄をはいていました。B.G.M.は最初と最後と途中ちょっとが欧州/日本系フリー・ジャズ、中間は北欧ジャズランド・レーベルのニルス・ペッター・モルヴェルのようなビートの効いた今時のエレクトリック・ジャズでした。以降は田中さんの舞踊に初めて接した私の、今回の舞踊に対する素直な感想です。
田中さんの踊りからは作為があまり感じられませんでした。次の展開がわからないのですが、だからと言って突拍子もない展開があるわけではなく、一連の連なりや流れは感じられるようなものでした。私の”踊り”のイメージはミュージカルやジャズダンスのようなビートに合わせてビシビシ踊るものなので、それらと全く対極にあるような今回の踊りに正直戸惑いました。最初は踊りに心が反応しないんです。
動きは流れるような感じで太極拳的とでも言いましょうか?そして不安定です。昔流行った言葉で言うと”ファジー(曖昧)”。踊りから”俺の言いたいことはこれこれだー”と強く訴えかけてこないとてもうつろなものに感じました。でもだんだん見ていくうちに私の中にはあるイメージが浮かんできました。
街にいる酔いどれの浮浪者(失礼)。動きに意図はないのでしょうが、人間としての本能で倒れないように2足歩行しています。そしてうつろですが正に生きています。そこに今の社会情勢/現代の空気を見ました。もうこれは私の勝手な解釈なのでご容赦。でもそれでいいはず。踊り手と観る人の間で何かが交わされればいいんだろうと思います。
楽しい体験でした。一部終了時に田中さんは「5分踊るつもりが15分踊ってしまいました。」と言っていましたが、私は15分で良かったと思いました。たぶん5分だけではわけがわからないまま踊りが終わってしまっていたと思うからです。
次がお目当てだったヴォイス・パフォーマンスの「NEO VOICE」。東京四谷のジャズ喫茶「いーぐる」のマスター後藤雅洋さんが、ジャズサイト com-post のライブレビューに書いているのを読んで是非観たかったのです。後藤さんのライブレビューも読んで下さいね。
パフォーマーは吉田アミさん。さがゆきさん。巻上公一さん。蜂谷真紀さん。天鼓さんの5人。実は私、巻上公一さん以外は見たことがありませんでした。だから誰が誰だかわからないままライブに突入、誰が誰かはラストの挨拶で知りました。
最初は吉田アミさん。声帯を締めるようにして出す声はサウンドというかノイズの世界。ガラスを爪で引っかくような音?まっ、声なのでそこまで不快なものではなく、時には鳥のさえずりにも聴こえます(笑)?聴いていると咳払いして喉の詰まりを解消したくなってきます。会場の何人かが咳払いしていたので「わかるな~その気持ち。」と思いました(笑)。年齢もたぶん一番若いので、これが今時のノイズ系の人達の志向するサウンドなのだろうと思いました。音も小さく繊細なものです。
次は蜂谷真紀さん。実は開演直前に2階席にカッコいい女性が上がってきたので、「この人はミュージシャンなんだろうな~。」なんて思っていたら、吉田さんんが終わる頃にその女性が突然歌い出したんでビックリしました。蜂谷さんその人だったんですね。しばらく2階で歌ったあと歌いながらステージへ。蜂谷さんは声楽の勉強をされたんじゃないかな?時にオペラ歌手のような発生で歌います。歌と言っても何語とも言えないものですが。声もよく通ります。軽い踊りも含めてパフォーマンスとしての完成度も高く。現代音楽を聴いているイメージですね。衣装を”ビシッ”ときめているあたりにもパフォーマンスへの姿勢を感じました。
次はさがゆきさん。パフォーマンスとしては蜂谷さんに似ています。さがゆきさんもきちんとボイストレーニングしているんじゃないでしょうか?やっぱり何語なのかわからない発音で歌います。さがゆきさんにはビートを感じました。蜂谷さんよりジャズ的だと思いました。そういう意味でアドリブ・スキャットの発展系と見るのがいいんではないかと私は思います。衣装もラフな感じで、やっぱりジャズ的な匂いが漂っているから面白いですね。それと、何となく精神的に危うい匂いが漂っていました。
次は巻上公一さん。この人のパフォーマンスはユーモア含みです。のっけから会場から笑が多数出ていました。この姿勢は80年代初頭ヒカシューでデビューした頃から始終一貫していると思いました。エンターテインメントとしてのボイス・パフォーマンス。その表現の幅は広いです。声とジェスチャーで飽きさせません。
ラストは天鼓さん。パフォーマンスとしては呻き絶叫系。マイクを持ってのパフォーマンスはなんとなくプロレスのマイク・パフォーマンスも思わせます(笑)。舞台に伏せて呻いたりするのを観ていると、60~70年代のアングラ前衛の匂いが濃厚に漂ってきます。私は当時のアングラ状況は知りませんが、イメージとしあるそれに近いと思いました。年齢的にも一番年上ですよね。
最初の吉田アミさんの現代から天鼓さんの過去へと時間が流れていくようでした。
とても面白かったです。
最後に全員がステージに呼ばれ巻上さんが全員を紹介。
ここで休憩。
2部は映画監督の成島出さんと田中泯さんの対談です。成島さんは映画「孤高のメス」の監督さんです。今上映されています。この映画の主演堤真一さんと田中さんの交友関係の話も最初にありました。
成島さんは甲府のご出身だとか。「桜座」はいいと褒めていました。もし昔甲府に「桜座」があったら甲府を出ていかなかったかもしれないなんて話がありました。故金丸信さんの元、道路ばかりができ文化的なものがなくなっていく甲府が嫌で東京に出たそうです。成島さんは今49歳とのことなので私の二つ上。80年代バブルくらいに甲府を出たみたいですね。
成島さんが映画の道へ進むきっかけとなった新宿アルタでの飛び降り自殺の現場に遭遇した話には驚きました。それを客観的に語る成島さんに映画監督の”視線”のようなものを感じました。田中さんの人には見せない”個”が実はコミュニケーションの基本であり、人には見せない”個”をカッコ良く思う自分がいないとダメという話もとても面白く聴きました。その他にも映画人の話や映画「孤高のメス」の意図するところや劇場スタッフの話など、楽しい話が盛りだくさん。田中さんのともすると成島さんそっちのけ喋ってしまうところ(成島さんに謝っていました)にとても親しみを感じましたよ。1時間の対談がアッという間に過ぎてしまいました。
ここで桜座5周年記念でお神酒がふるまわれました。ごちそうさまです。
ラストはオオタスセリさんの弾き語り&コント。私はてっきりアマチュアの人かと思っていましたが太田プロ所属のお笑いタレントさんだったんですね。オオタさんのブログはコチラ⇒「私の観察日記」。桜座には何度も来ているそうです。
結婚式の友人スピーチ、夫の葬式での妻の挨拶、両コントは最高のブラックジョーク。面白かったです。この時会場にいた男性が少し減っていて後から来た女性客も含め、女性のお客さんには大ウケでした。その後の歌、自虐ネタ「負け犬女」や、ブラックジョーク「ママに歌ってはいけないと言われた歌」、社会風刺「キッチン・ドリンカー」などはとても面白かったです。アンコール(タイトル失念)も盛り上がりました。オオタさんのパワーには圧倒されました。
「NEO VOICE」も女性4人、ラストのオオタスセリさんといい、会場に来ていた子連れの母親、女性のほうが多い観客、最近は絶対女性のほうが元気とパワーがあると思いました。「男はもっとしっかりしなきゃいかんぜよ!」(笑)
今回は期待以上の面白さでした。
ジャズに慣れきった感性がかなりリフレッシュされました。
桜座の益々の発展を祈念して、レポートを終了します。
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