まずはお詫びから。
本日の「高野雲の快楽ジャズ通信」のレポートはお休みします。
木曜日の再放送を聴いてレポートしますのでお楽しみに。
レポートばかりだと文字が多くて疲れますよね(笑)。
ということで、昨日の「PCMジャズ喫茶」レポートの続きです。
「ジャズ喫茶論」を書くのに調査も含めると3年くらいかかったそうです。調査というのは全国のジャズ喫茶取材です。その費用は一部は自費で、一部はモラスキーさんが研究員として所属していた国際日本文化研究センターから出たそうです。寺島さんが「税金で書いたんですね。」と言うと、モラスキーさんは「申し訳ない。でも天下りよりましでしょ。」と笑って答えていました。寺島さんの「ジャズ喫茶店主はどんな人達ですか?」という質問には、「変人の集まり。楽しい人。凝り性。儲かるわけないのにお店をやって、利益はレコードにつぎ込んでしまう。」との答えでした。寺島さんが「井の中の蛙。社会に適合しない人。」と言うと、モラスキーさんは「ミュージシャンも同じ。ジャス喫茶の店主は大きく分類できて、井戸から出ない人と、色々な人と話したり、ジャズ喫茶とは別の世界を持つ人もいる。」と言っていました。私も何人かのジャズ喫茶店主を知っていますが、皆さん魅力的な方です。
「ベイシー」の菅原さんとは、取材で初めて合ったのに盛り上がって4時間の大宴会になったそうです。「いーぐる」の後藤さんとは前の本の時に取材協力してもらっていて、”いいケンカ友達”とのことでした。議論しながら知識を分かち合い教えてもらう仲だそうです。後藤さんが書いた「ジャズ喫茶リアルヒストリー」の冒頭部分は「戦後日本のジャズ文化」を叩き台にしていて、競争心がいい刺激になっているとのことでした。一番いやなのは無視されることとも言っていました。
次もモラスキーさんの選曲で、最近聴くようになったというビックス・バイダーベック。ビ・バップ以前はストライド・ピアノくらいしか聴かなかったが、ジャズ社会史を教える中でこれを聴いて良くなったそう。「泣けてきますよ。」と言っていました。それを聞いた寺島さんは「今の言い方はいいね。”ジャズをわかっている”ではない。」と喜んでいました。モラスキーさんによると、ニューオリンズはこれまで一応聴いていたが、今は心を開いて聴くようになったとのことでした。モラスキーさんが「いいものはいい。」と言うと、寺島さんは「知識をひけらかさないと認められる。」とまた喜んでいました。「いいものはいい。自分独りで決めることで、色々なものを聴いた上で自分で決めれば良い。」とモラスキーさんは言っていました。
突然寺島さんが岩浪さんと居酒屋でもめたという話へ。岩浪さんが「君は何もないね。」と寺島さんに言ったらしく、「じゃあ岩浪さんは何があるんですか?」と言う話になったとか。その答えが思い出せずに曲を聴くことに(笑)。《シンギン’・ザ・ブルース》。
私はまだこの良さがわかる境地に至っていません(笑)。
岩浪さんによると、ニューオリンズからシカゴへ移る名盤だそうです。岩浪さんも大学の授業で教えているけれど、この良さは学生にはわからないとのことでした。寺島さんは「これがわかるには人生かなり後ろにならないとだめです。」と言っていました。そうですよね。
先ほどの話の続き。寺島さんから「じゃあ岩浪さんには何があるんですか?」と質問されたことへの答えです。岩浪さんは「俺のアイデンティティは”正当性”」と答えたそうです。寺島さんは「私に言わせるとそれは”正当性なるもの”。独りよがりだ。」と反論したとか。で、寺島さんは反論することが自分のアイデンティティだと思ったんだとか。それを聞いていたモラスキーさんは「正当性は時代によって変わるもの。」と言っていました。”正当性”とはまた高尚な(笑)。自分のアイデンティティね~。私は強いてあげるなら”ユーモア”かな(笑)?
ここで、《アローン・トゥギャザー》が日本で好まれるのは、日本人がマイナー曲を好きだからという話へ。「歌謡曲、民謡はマイナー曲で、売れているものはマイナー曲。」と寺島さん。モラスキーさんもマイナー曲が好きとのことでした。「アメリカ人はメジャーが好きと言われる。」と寺島さんが言うと、モラスキーさんと岩浪さんは「そのマイナー・スタンダード曲を作ったのはアメリカ人。ただソングライターは一部を除いてほとんどジュ―イッシュ(ユダヤ系)なので、マイナー曲はユダヤ人の好み。」と言う話になります。モラスキーさんもユダヤ系とのことで、だからマイナー曲が好きなんだろうとのことでした。私もマイナー曲は好きですが、微妙にジュ―イッシュ・メロディーがダメなんですよね~。不思議です。
「マイナーを愛でる感性がある日本人は素晴らしい。ジャズ批評界は甘いメロディー、哀愁、センチメンタリズム、感傷主義を一段低く見るところがあるがおかしい。俺は歌謡曲で育っているからそういうのが好きだ。」と寺島さん。これはいつもの寺島流”ジャズはメロディー(テーマ)だ”論(笑)。こんな寺島さんのことを、スイングジャーナル誌のエッセイで山中千尋さんが、砂糖水メロディーをこよなく愛する”ホタル族”と言っています(笑)。それを聞いたモラスキーさんは「《アローン・トゥギャザー》は甘いと思わない。」と不思議がっていました。どうやらマイナー=甘いメロディーとする寺島さんの感性も怪しそうです(笑)。
ここで出ました!恐怖のブラインド・フォールド・テスト。問題発言アリ!
「対照的なピアノ2曲をかけるので、どう思うか感想を聞かせて下さい。」ということで女性ピアニストだけ明かしてピアノ・トリオ2曲を続けてかけました。かける前に寺島さんはタイプや考え方が全く違うと強調していました。モラスキーさんは「「メグ」に飾ってあるCDを知っているので、きっと1人はオジサン達にうける美人女性ピアニストでしょう。」と言っていました(笑)。女性かどうかは聴けばだいたいわかるとも言っていました。
最初にかけたのがビージー・アデール。
『マイ・ピアノ・ロマンス』から《ラブミー・テンダー》。
*
次にかけたのが平林牧子の『ハイド・アンド・シーク』からタイトル曲。
私の感想は書きませんが、モラスキーさんのご意見にほぼ賛成です。
まずはモラスキーさん。ここではまだ誰かは知らされていません。
「最初のは前に知らされていなくても女性だとわかったと思う。タッチがソフトでコードを砕いて装飾音が多い。甘ったるいオヤジを喜ばせるような人じゃないか(笑)?甘過ぎて芯がない。2曲目は対照的に野心的で難しいやり方。こういうのは最近の主流で例えばジェイソン・モランとかは好き。これはバリバリ複雑なリズムが強烈だけれど、ピアノのタッチは大人しい。ただこのタッチについてはライブで聴かないとわからない。」とのことでした。
余談として、「メグ」でCDを聴いたタッチが強力なピアニストについて荒井さん(「メグ:の番頭さん)に尋ねたら、この人は「メグ」でライブもやるけれど実際はタッチは弱いと言っていたという話がありました。
モラスキーさんはもう一度繰り返して、「一つ目は甘ったるくクラシック的でジャズになっていない。かわいすぎる。コードを崩して装飾音が多く、リズム感がない。二つ目は目指している新しいことをやろうという構想はわかるが、自意識過剰で頭でやろうとしている。まだ自分のものになっていない。」とのことでした。いやっ~かなり辛口の感想でした。でも言われてみればそのとおりだとも思いました。
岩浪さんは「最初のは、曲がジャズにするのは難しい曲で、崩すとメロディーの良さがなくなり、そのまま弾くとジャズにはならない。サロンで弾くピアニスト。二つ目は今時のピアノ/ベース/ドラム。ピアノはもっと”ガーン”とパワーでやらないと様にならない。」とのことでした。ほとんどモラスキーさん寄りの感想。この番組で平林牧子は何度かかけたんですが、岩浪さんは今までそんなこと言ってましたっけ(笑)?
寺島さんは「あれでピアノに”ガンガン”やられたら堪らない。耳をふさぎたくなる。あのくらいの優しさがいい。」と言うと、モラスキーさんは「いや、耳をふさぎたくなるくらいやらないとダメ。フリー(ジャズ)でもそうだが”ガンガン”やらないと様にならない。」と切り返していました(笑)。
ここで種明かし。
最初は73歳のアメリカ人(モラスキーさんは知っているそうで、昔はオヤジに受けた美人かも?と笑っていました)。銀座山野で長蛇の列で売れている。←ほんとですか?ほんとだったんですね。私は知りませんでした。スイングジャーナル誌5月号で3.5星。
2曲目は今デンマークに住んでいて、今度日本に来る方。ジャズ批評誌のジャズオーディオ・ディスク大賞金賞。スイングジャーナル誌5月号で5星。
と寺島さんから説明がありました。
モラスキーさんは賞を取ったとか私には一切関係ないと言っていましたよ。
寺島さんが「今日本のジャズに一番足りないのは、誰が聴いてもわかるジャズ。アデールのようなジャズが必要。」と言うと、「それならジュニア・マンスやレッド・ガーランドを聴いてほしい。アデールでは日本人のジャズは広げられない。」とモラスキーさん。「アデールを買っている人がいるわけで、こういうジャズがないとダメ。」と寺島さん。「メジャーはアデールのようなものを出せばいい。この辺からジャズに入らないとダメ。平林さんはマイナーから出して100枚売れればいい。アデールがBGMというのはわかっている。最初から平林さんは聴かない。」と寺島さんは畳み掛けていました(笑)。いや~っ、これについてはもう色々言いたくありません。寺島さんの考え方に私は賛成できません(笑)。
モラスキーさんがまた、「それならアーマッド・ジャマルやレッド・ガーランドを聴いてほしい。」と言うと、寺島さんは「古いのはもういい。ジャマルはシカゴ(これについてはピッツバーグ出身と、モラスキーさんから訂正されていました。笑)の人にしかわからない。アデールは全日本人にわかる。」と更に食い下がっていました。岩浪さんは「アデールはジャズになっていない。」と言っていました。全日本人にわかることがどうだというのでしょう?ジャズってマイナーな音楽だと、いつも言ってますよね。なぜそこに全日本人向けアデールを推すのでしょう?まっ、単に寺島さん好みなんだろうと、私は思います。寺島さん推薦テナー・サックスのボディル・ニスカと同じ理屈(笑)?
「それならレッド・ガーランドやジーン・ハリスを聴いて下さいよ。」ということで、モラスキーさんの選曲。とにかくスイングしているから気持ちいいということで、ジーン・ハリス・カルテットで《ブルース・フォー・ベイシー》。90年代の演奏です。
オーソドックスなジャズです。安心して聴いていられました。
モラスキーさんが「こういうのがジャズ。ジャズになっている。」と言うと、寺島さんが「アデールはジャズ風のジャズでいいじゃないですか。なんでわかってくれないの。」と言います。岩浪さんは「寺島さんが『これが売れないと日本のジャズがダメになる。』なんて言うから賛同できない。アデールはジャズじゃなくていいんじゃないの。」と言うと、寺島さんは「僕は極論を言っているかもしれない。岩浪さんやモラスキーさんは正しいことを言っているかもしれないが、9割間違いで1割正しい・・・。」と反論。わかるようなわからないような・・・(笑)。
岩浪さんから「何を言いたいのかわからない。」と言われると、寺島さんは「スイングジャーナルでこれ(アデール)を低く評価したことに憤りっている。評文は演奏内容のことを書いているが、なぜ今これが出てきた(日本独自にコンパイルした本邦デビュー作)のかを評価してほしい。(ちなみにSJ誌の評者は杉田宏樹さん)」と返していました。岩浪さんからは「論旨のすり替えだね。(アデールは)ただ面白くない。BGMのピアノ音楽としてなら、、カーメン・キャバレロの方が楽しい。」と突っ込まれていました。今日は最近珍しく岩浪さんの良いツッコミがありました。いいぞっ、岩浪さん(笑)!寺島さんは、「アーマッド・ジャマルやジーン・ハリスはアメリカ人の入門。アデールは日本人の入門。岩浪さんは”風”をわかっていない。どうしてお二人にはわかってもらえないのかな~。もういいです。」と、これにて終了。なんだかな~。聞いていて呆れてしまいましたよ。でも寺島さんらしい論旨なので、すいませんが笑いながら聞かせていただきました。m(_ _)m。
次は岩浪さんの選曲。デナ・デローズ(ザ・ディッセンバー・セカンド・カルテット)の『スターズ』から《ホエン・ユー・ウィッシュ・アポン・ア・スター》。
私はデナ・デローズの歌が好きです。ピアノも上手かったです。私のブログの栄えある最初の記事が、デナ・デローズのライブ・レポートだということを皆さんはご存じですか?CDを買ってサインしてもらい、2ショット写真を撮ってもらったのに、誰が写真を撮ったかわからないので写真はありません(笑)。
ベニー・グリーンのピアノを伴奏にして歌っています。岩浪さんが「グリーンのピアノがいいよね。」と言うと、モラスキーさんもグリーンのピアンを褒めていました。寺島さんが「この人がデビューした時、日本では人気がなかった。白いピアノを弾く人という評価だった。」と言うと、モラスキーさんが「この人はアート・ブレイキーのメッセンジャーズやベニー・カーターに引き抜かれた人(黒さはある)。なぜ日本人は”白黒”言うのか?目をつぶって聴いてわかるのか?」と反論していました。それを受け寺島さんは「当時この人の顔が幼いので、『ジャズができるか?』という話があった。」と言っていました。そういう顔がどうだからジャズ/ジャズじゃないって、寺島さんの本に散見されますよ。う~ん、議論のレベルが・・・(苦笑)。
最後はもう一度モラスキーさんの新譜から《ナーディス》。
寺島さんが「前にピーター・マーチン(ジャズ・ピアニスト)が店に来た時、彼のCDを聴かせたら、『ペインフル(痛い)』と言ったんですが、モラスキーさんはどうですか?」と尋ねると、モラスキーさんは「1枚目よりペインフルじゃない。出したCDや本は世に出した以上は聴き返したり読み返したりしない。聴きたい人が聴けばいいと思っている。」と答えていました。私も書いたブログに対しては同じようなスタンスです。
低音域”グルグル”から入って、しばらくしてテーマが現ます。
なかなか個性的な解釈の演奏でした。
寺島さん、岩浪さん共になかなか個性的な演奏という感想でした。モラスキーさんは、「自分のスタイルを築くのが大切。どんなに上手く出来るより、誰にも似ていないことのほうが大事。」と言っていました。拙ブログに対して言うのもお恥ずかしいのですが、私も個性的でありたいと思っています。
というわけで、やっと終了。
ここまでお読みいただいた皆さん。どうもありがとうございました。
寺島さんが「今日はモラスキーさんの”ジャズ度”を測りたい。」と言っていましたが、私はモラスキーさんは”ジャズがわかった方”だと納得しました。後は早く「ジャズ喫茶論」を読み終えないといけませんね(笑)。
今日はミュージックバードのクラシック・チャンネルをBGMにして
ブログを書いています。
たまにはクラシックもいいもんです。
*
<訂正とお詫び>
読者の方からご指摘いただきました。
だいぶ以前から「岩浪さん」を「岩波さん」と誤記していました。
たいへん申し訳ありませんでした。
過去にさかのぼって訂正します。
*
本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバードの
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」を
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。
いっきさん、こんばんは。
はっははは。あれは自分に対する宣言なんだよ。
「よし!新しいことするぞ!」っという逃げ止め(笑)。
あれくらい書いて置いたら、戒めになるでしょう?
やっぱりねぇ、ジャズ聴きってコミュニティーにはならないって
思うんだよね。ジャズでも好きな事が違い過ぎるし、
目的をひとつには絞れないないんだよね。
ジャズ界隈では、大きなプロモーションは難しそうだからね。
こうなったらUstに参入して、キャラを売り込もうって思っていましす。
いわゆるメディアミックスってやつですよ。
はじまったばかりなので、ハードル低いし。元々映像スキルはあるからね。
そこから、「ジャズを聴こう」に持って行ければ良し!ツーことです。
日本全国のライブハウスからUstするぞ!!オーッ。
*
確かに落ち着いて読むと自分への戒めですね。
最初読んだ時はブロガーを挑発しているのかと思いました(笑)。
狭いコミュニティーでいいんじゃないですか?
無理して広げる必要はないと思います。
ジャズでメジャー感を出すなら今は上原ひろみ(笑)。
日本に居た間ですが、あれだけたくさんTVに出たジャズ・ミュージシャンは
他にいないと思いますよ。
Ustはどんな展開になるのかとても楽しみにしています。
さて、ブログの件ですが、
私は表現の新旧とかより、”楽しさ”を伝えることこそが大切だと思います。
何事でもそうですが、やっている人が楽しそうでないと、
「じゃあ俺も私もやって(聴いて)みよう。」とは思わないと思うのですが?
まっ、私なりの信念でブログは続けてくということで。よしなに(笑)。